落第騎士の英雄譚 破軍剣客浪漫譚「本編完結」 作：どこかのシャルロッ党
あれから数分。幾度なくぶつかった翔真と絢瀬。しかし怪我というハンデがある
翔真は綾瀬に圧倒されていた。飛天御剣流の技を発動させまいとあらゆる手で
絢瀬は翔真を追い詰めてゆく･･･傷口が開き、既に翔真は限界だった。出血が
原因で意識を失うのも時間の問題だった。
「綾崎君･･･悪いけどこれで決めるよ･･･」
「(くっそ･･･何も出来ないまま･･･)」
「どう?まだ戦うの?」
「アンタ･･･絶対に･･･後悔するぞ･･･こんなことして･･･
綾辻･･･海斗が喜ぶと･･･思って･･･」
刃を向ける絢瀬。彼女の足音が徐々に近づいてくるのがハッキリと分かる。
何も出来ない想いを抱いたまま翔真は気を失う。絢瀬が刃を降り下ろそうと
した時、屋上の扉が勢いよく開いた。現れたのは由紀江と朱乃だった。由紀江は
素早く絢瀬の緋刀を自身の固有霊装「飛梅」から繰り出した炎の壁で防ぐ。
「正気に戻ってください綾辻さん!なんで･･･なんでこんな」
「邪魔だよ･･･そこを退いて由紀江ちゃん」
「それは出来ません。これ以上綾崎先輩を傷付けるなら･･･私が」
絢瀬の前に立ち、飛梅を向ける由紀江。いざ立ち向かおうとした時――――
朱乃が由紀江の肩に手を置いた。今の朱乃の表情にはうっすらと怒りが
露となっていた。更にはここに来る前、アリスのある言葉を聞いていた。
現場を見て、それが確実に変わる。朱乃は由紀江を下がらせた。
「由紀江ちゃん。翔真君をお願い」
「姫島さん･･･」
「あとは･･･私が･･･やるわ」
「･･･!わ、分かりました!」
朱乃の雰囲気に押され、由紀江は翔真を担ぎ医療室へ運ぶ。そして
無言で自身の固有霊装「村雨」を召喚する朱乃。月の光りによって
照らされた刃をゆっくり絢瀬に向けた。
「貴女が初めてですわ･･･ここまで私を怒らせたのは･･･」
「･･･ッ!?」
膨れ上がる魔力に絢瀬は警戒を強める。朱乃の周りにはバチバチと
黄色い雷が発生している。村雨を構えて一歩――――目に見えぬ速さで
斬りに掛かる。しかし、緋刀の鍔で剣撃を受け流す絢瀬は直撃を免れた。
「･･･!」
だが攻撃は続く。周りにエネルギー弾を多数作り、それを彼女に
対して放つ。迫り来るエネルギー弾を絢瀬は斬ってゆく。朱乃は
雷の力を巧みに操りながらエネルギーの弾に変えて放つ。
「ッ!くッ!」
「痛いですか?けど、貴女が翔真君に与えた痛みはこんなものじゃない･･･」
怒りに身を震わせる朱乃。翔真の過去を知る数少ない人物である朱乃は
沢山傷付いた彼をまた傷付けた絢瀬に対して憎しみにも似た感情抱く。
一歩で絢瀬は息切れを起こしていた。交わしては斬るを何回も繰り返し
身体にも疲労が見え始めていた。
「翔真君は貴女を止める為に身を張った。大体の経緯は聞いていますわ。
ですが･･････今の貴女がやっていることは卑怯です」
「ッ･･･分かってる･･･よ。でも･･･でもボクはどうしても勝たなきゃ
いけないんだッ!!アイツに･･･全てを奪ったアイツに!」
「･･･少し頭を冷やしてくださいな」
朱乃は村雨を縦に一閃降り下ろす。回避させまいと朱乃は村雨で
乱撃を繰り出す。緋刀で受け止めながら絢瀬は追い詰められてゆく。
フェンスが背後にあるのを知り逃げ場を失った絢瀬。朱乃は村雨を下ろす。
パチン――――――――
乾いた音が場に響く。朱乃が絢瀬の頬を叩いたのだ。伐刀者としての誇りを
捨ててまで絢瀬がやりたかったこと。自らを囮とし黒鉄一輝に一刀修羅を
使わせて次の試合で有利に勝つことだった。だが天罰と言うべきか･･･
彼女の計画は儚くも失敗に終わった。
「綾辻さん･･･貴女に伐刀者を名乗る資格はありません。
ラストサムライの娘なら･･･堂々と戦いなさい･･･」
「･･････」
それだけを言い終え、朱乃は場を立ち去った。次第に雨が降り始める。
絢瀬は膝から崩れ落ちて、今までのことを思い出した。父と過ごした日々、
一輝達と過ごした鍛練の時間。雨に打たれるその身体を起こし、絢瀬は
何かを決意する。
「ボクは勝たなくちゃならないんだ･･･こうなったら･･･全力で」
朱乃さんの村雨は『アカメが斬る！』の中に出てくる帝具『一斬必殺 村雨』が
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