思い付きのネタ集   作:とちおとめ

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あかねのが行き詰ったので息抜きに。
あそこまでは覚えているんですがその先が少し曖昧なので。


今回は寝取られとは少し違う趣旨の作品を。

よく広告で見る淫妖蟲です。
ヤマトの中に眠る鬼が某カードゲームの王様みたいな立場ならどうなんだと思った次第です。




番外編1

 とある森の奥で、一人の少女が触手によって拘束されていた。赤く艶のある長い髪に、男の欲望を誘う凹凸のある体……ありとあらゆる彼女の構成する全てが極上と言っても過言ではなかった。それを証明するかのように、彼女を捕えた妖魔は厭らしく笑みを零す。

 

「クククッ、やはり人間は弱い存在だな。だが安心するといい、貴様は殺さんよ。大事な苗床となるのだからな」

 

 妖魔が口にした苗床という言葉、それは女性の体を無理やりに犯し、妖魔の子供を産むだけの存在とすることを指す。大凡女性にとっては誇りと尊厳を奪われ、死ぬことよりも遥かに辛い現実を突き付ける行為だ。とはいえ最初は嫌がっていても、妖魔の持つ体液は強力な媚薬の効果を持っているため、少しすれば女性は喜んでその腰を振り出すだろう……それがこの世において、妖魔に捕まった女性の行きつく先だ。

 

「……………」

 

 妖魔に捕まった少女は表情を変えず、ゆっくり寄ってくる妖魔に対して無感情を思わせる瞳を向ける。特に泣き叫ぶことのない女性を見て、妖魔は恐ろしさに声を出せないのだと思っていた――だがすぐに気づく。それは全くの間違いだったということを。

 少女を拘束する触手を通し、何かが妖魔に伝わった――それは妖気。

 元来先天的な何か、或いは後天的な何かがない限り人間が妖気を放つことはない。何故なら妖気とは妖魔のみが放つことのできるものだからだ。少女から伝わってきた妖気をその身に受け、少女を犯すことのみを考えていた妖魔は一気に額から汗を噴き出させる。

 

「な、なんだ……この女は……貴様! 人間ではなかったのか!?」

 

 焦りと恐れを滲ませた妖魔の叫びが響き渡る。

 人間と妖魔のハーフと言った存在ならば妖気を放つこともあるだろう……そういう可能性があるかもしれないのに、どうしてこの妖魔はここまで少女に恐れを持ったのか、それは少女が放つ妖気の特徴にあった。力強く、禍々しく、全てを破壊せんと蠢くそれは多くの伝承で上位に位置する妖魔――“鬼”が持つ妖気だったのだ。

 少女から放たれる妖気の正体は鬼、それに気づいた妖魔に対して少女は薄く笑み、ここでようやく口を開いた。

 

「気づいたのね。でももう遅いわ。私に手を出した時点であなた、終わってるから」

 

 そう言葉を発した瞬間、少女を拘束していた触手は跡形もなく切り刻まれる。触手から伝わる裂傷の痛みは妖魔を襲い、とてつもない激痛を伴った悲鳴を轟かせる。蹲る妖魔に近づき少女は死の宣告を告げる。あまりにあっさりに、あまりに短く、あまりに無慈悲に。

 

「さようなら。名も知らぬ妖魔さん」

 

 次の瞬間、妖魔は少女の刀によって真っ二つに切り裂かれるのだった。

 切り裂かれた妖魔は存在する力を失い、灰となって闇へと消えて行く。少女は妖魔が消えた場所を少し眺めた後、この場から去るために足を動かすのだった。

 少女が歩みを進めるたびに、少しずつ放たれていた鬼の妖気が収まっていく。完全に妖気が収まった時、その場に居たのはどこにでもいる普通の少女だった。

 

「ふぅ。相変わらず凄いよねこの力……ふふ、ここに来る前にヤマトといっぱいエッチしてて良かった♡」

 

 少女――白鳥深琴は熱い吐息を漏らす。

 思い描くは大好きな幼馴染の顔、次いで思い浮かべたのは数時間前に激しく交わった記憶……その全てが愛おしく深琴を狂わせるほどの甘美な時間だった。今回も無事に戻ったから褒めてくれるだろうか、いっぱい愛してくれるだろうか、それだけを深琴は考え快感に身を震わせる。もう深琴には先ほど己を犯そうとしていた妖魔のことなど綺麗に頭から抜け落ちていた。今の深琴の脳内を占めるのは、ヤマトと呼んだ愛する幼馴染のことだけ。

 

「ヤマト、私ね。貴方の為ならなんだってできるの。妖魔を殺してこいって言うなら喜んでするし、武や水衣が邪魔だって言うなら消してあげる……死ねと言われれば……ううん、それだけは嫌! 私はずっとヤマトの傍に居るんだから!」

 

 深琴の深い愛情はヤマトだけに向けられ、醜い嫉妬心と冷酷なまでの殺戮衝動はそれ以外の生物へと向けられる。心優しい深琴からは想像できないものだが、これもある意味深琴がその身に取り込んだ鬼の力に寄る部分が大きいのだろう。鬼とは全てを破壊し支配する者、その衝動が幾何か深琴の心を侵食しているのだから。

 

「待っててねヤマト、すぐに戻るから。あぁ、早く帰ってヤマトに抱き着きたい、いっぱい愛してもらいたい、いっぱい犯してもらいたい、いっぱいいっぱいいっぱいいっぱい……」

 

――私を壊してほしい――

 

 

 

 

 

 

 

「……なんだこれ」

 

 少年、橘木ヤマトは唖然とした様子で小さく呟いた。今ヤマトが居る場所はいつも彼が眠る寝室だが、同じベッドの中にヤマト以外の三人が居たのだ。そのどれもが極上のスタイルを持った美女たちで、加えて言うなら全裸の状態である。もちろんヤマトも全裸だ。

 

「……え、何があったの。てか俺に記憶が無いのは何事!?」

 

 割と本気で記憶がないことにヤマトは戦慄する。そんなヤマトの状況が心底楽しいと言わんばかりの笑い声が脳内に響いた。

 

『ククク、昨晩はお楽しみでしたねってやつか? なあヤマト、俺も引いちまうくらいに貪っていたじゃねえか』

「……本当に覚えがないんだが」

 

 脳内に響いた声にそう返すヤマト、傍から見たら独り言を言っているようで不気味だが、このヤマトという少年は少々特別なのだ。それというのも、ヤマトは鬼と人間のハーフである。鬼の因子を受け継いだことによりヤマトの中にはもう一人の自分、即ち鬼の部分のヤマト(以降は大和で統一)が住み着いているのだ。

 最初は凶悪な鬼がヤマトの中に住んでいるということで色々な対処法が取られようとされたのだが、大和は何故か宿主に対し協力的であったし、幾度と大和を助けてくれたため特に何もされることはなかった。大和曰くヤマトの傍に居るのは楽しそうだから、というのが理由だそうだが果たして。

 

「う~ん、ヤマトぉ~♡」

「橘木君♡」

「ヤマトさん……素敵♡」

 

 体を起こしてベッドから降りようとしたヤマトを逃がさない、そう言わんばかりに抱き着いてくる美女三人……非常に下半身に良くない現状だ。

 

「助けてくれ……」

『嫌だぜ☆』

「お前……っ!」

 

 救いの声届かず。

 どうにか三人を起こさないように脱出を図るヤマト、そんな彼を本当に楽しそうに眺めながら大和は口を開く。

 

『しっかし俺も予想外だったぜ。この女どもがまさか鬼の因子を力として取り込むとはなぁ』

「……らしいな。どういうわけか分からんけど」

 

 大和の言うそれは誰もが予想し得なかったことだ。

 ベッドで寝ている三人――白鳥深琴、白鳥武、香山水衣の全員がヤマトに対して並々ならぬ恋心を抱いている。若さゆえの過ちということもあり、三人で色々と画策しヤマトと肉体関係を結んだのだが……事はその時に起きた。粘膜接触もそうだが、体の交わりはヤマトの精を直接体の中に取り込むことで最終的には終わる。つまりヤマトの精に混じった鬼の因子を直接取り込んだことにより、彼女たちも鬼の力を行使することが可能になったというわけなのだ。もちろんこのような事例は初めてであり多くの混乱と憶測を呼んだが、特に人格に変化を及ぼすといったこともないためその場限りのこととされた。……蓋を開ければかなり危険な力なのは後に分かったが。

 

『深琴と武に関しては元々退魔師としてそれなりの使い手だったが、俺の力を受けてその能力は果てしない成長を遂げた。水衣に関しても戦う力は全くなかったが、そんなこいつが上級妖魔でさえ手玉に取るようになったもんだから分かんねえよなぁ』

 

 かつて多くの人を支配し、犯し、喰らってきた百戦錬磨の鬼が言うのだから相当凄いことなのだろう。まあヤマトからすればかなり複雑ではあるが。

 

『いいかヤマト、鬼ってのは欲深い生き物だ。欲しいと思った物は奪い、犯したいと思ったら貪る。そんな本能に生きるやつだ。故に、こいつらはこれからもずっとお前を離すことはねえ。こいつらの愛はお前だけに向けられるが、永遠の愛なんてもんは俺からしたら永遠の牢獄だ……ま、頑張れや』

「……………」

 

 無責任だ……なんて責任転換をするつもりはなかった。鬼の因子を取り込んだにせよそうでないにせよ、ヤマトは三人のことを守り続けると心に誓っている。妖魔が溢れる現代において、力を持つ女性退魔師というのは狙われやすい。悲しいことに、これに関しては優秀な血が欲しいということで人間が狙ってくることが多い。女性に無理やり種を入れ子供を産ませさせる、それが最早普通のこととなっているのだ。

 もちろん深琴や武、水衣も狙われたのだが……敢えて言うならその相手はこの世からバッサリ消えたとだけ言っておこう。

 

「よっこらせっと、少し水でも飲んでくるか」

 

 離れても尚伸びてくる腕を掻い潜り、部屋から抜け出したヤマトは台所へと向かい水を飲む。カラカラに乾いた喉を潤す水がいつもより美味しい気がするのは気のせいだろうか。

 深琴たちから離れたヤマトだったが、彼の受難はまだ終わらない。

 

「ヤマト君?」

「? 初音さん?」

 

 現れてたのは白鳥初音、名字から分かるように深琴と武の母親である。彼女は包容力溢れる優しい女性としてヤマトに認知されており、退魔の仕事に追われるヤマトをいつも癒してくれるような存在だ。だが今回は少しだけ様子がおかしい様に思える……どこかヤマトを見つめる目が熱い何かを宿しているような気がしたのだ。

 ヤマトがそう感じたのは嘘ではなく、初音はゆっくりとヤマトに歩み寄り抱きしめて来た。

 

「ねえヤマト君、私もう我慢できないわ。ヤマト君のが欲しいの」

「……は?」

 

 ヤマト、混乱の極みである。初音の目に映るヤマトは息子のような存在ではなく、完全に一人の男を見るような目だ。まるで何回も逢引きを重ねた二人のように思えるが、当然のことながらヤマトに記憶はない……そこまで考えてヤマトははっとして鬼の自分に問いかけた。

 

「……お前まさか」

 

 ビクッと震える気配の大和、もう確定だった。

 

『いやよ、あれなんだよ。俺は深琴たちみたいなガキには興味ねえがよ、初音みたいな熟女は好きなんだよ。つまり何が言いたいかと言うとだ……ごめんちゃい!』

「死ねよお前!!」

 

 端的に言って襲ってしまったのだろう、ヤマトの意識がない時に体を使って。

 

『仕方ねえだろ! 旦那に先立たれて性欲を持て余す熟女を見たらお前――襲うだろ?(キリッ)』

「何かっこつけてんだてめえ! 使ったのは俺の体だろうが!」

 

 この熟女好きな最強の鬼、どうにかした方がいいのかもしれない。

 でも今はヤマトよ、目の前の獣になりかけている美しい人妻をどうにかした方が良いのではないだろうか。

 

「ねえヤマト君、見て?」

「何を……っ!?」

 

 身に纏っていた全ての服を脱いだ初音の姿にヤマトは息を吞む。もう40に届く年齢だと言うのに、全くの衰えを見せない肢体に目が離せなかった。そしてよくよく見てみれば、股を伝う透明の液体と胸から溢れる白い液体がやけに目に留まる。

 これはまずいと、想像以上にまずい状況だとヤマトは思った。

 

「これ以上はやばいって! お前、俺を助け――」

『現在俺は反応できません。ピーっとなりましたらご用件を――』

「AIBOOOOOOOOO!!」

 

 どこぞの王様よろしく見事なシャウトである。

 三十六計逃げるに如かず、ヤマトは逃げ出した、しかし。

 

「逃がさないわよ」

 

 回り込まれてしまった!

 よくよく考えれば分かることだが、ヤマトとどんな形であれ交わったということは初音も鬼の因子をその身に宿しているということで、深琴たちと同じように体が鬼に適応しているのだ。つまりどういうことか、退魔師としてペーペーのヤマトでは、現役に活躍した+鬼の力を併せ持った初音に対抗できるわけがない。

 

『大人しく食われとけ、深琴たちよりテクニックすげえぞ?』

「うるせえよもう!!」

 

 その後のことは語るに及ばず、食事を作るはずの台所からは絶対に聞こえることのない嬌声が響いたとだけ言っておこう。

 

 

 

 

 

 淫妖蟲、それはヒロインたちが妖魔や人間に凌辱されあられもない姿と表情を見せる物語だ。しかしこの世界でヒロインたちが敗北することはない、何故なら彼女たちは実力もそうだが頭の冴えも段違いだからである。全てはヤマトの為に、愛って凄いね。

 退魔師だからと言って彼女たちは捕まらないしアヘ顔も見せない、そんな顔はヤマトの前だけである。……実際に見たら妖魔にされるよりも酷い顔をしているのだが、それについては敢えて言及はしないでおこう。




一話完結型です。

続きはありません。

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