9割近い方が見たいと言ってくださり嬉しかったです。
まあ自分としても書く気ではいましたので……バッドエンドマジで嫌いなんです。
それと、少し謝罪を。
この小説を書くにあたり期間が開くことが多々ありますが、こういう寝取られものをハッピーエンドで終わらせるためとはいえ、その過程を知るためにはその作品を知らねばならないので……少なくはないダメージを負うわけです(笑)
後はまあ期間が開くとポロっと書きたいことが浮かんで、そのまま書いていけた場合に投稿するという感じですね。
不定期なのは本当に申し訳ないです。
ここだけの話ですけど、ここで書く作品は全てエロゲなわけですが、やってないものも含まれてます。
野球部マネージャーのやつは体験版だけ、後はストーリーとキャラ紹介のみの情報だけで書いてますね。
「……ぅん?」
瞼に伝わる眩しさを感じて僕は目を覚ました。
何と言うか、とてつもなく長い夢を見た気がするのは気のせいだろうか。……夢というよりも、僕に似た誰かの生き様を体験したような得体の知れない感覚だ。
得体の知れないと言いはしたが、別に怖いことなんかなくて……何だろうな。どことなく僕に対するメッセージのような気もする。怖がって逃げるな、恐れるな……自分の意思をしっかり持って生きろみたいな。
「……なんかいつもと違う感じがする。僕ってこんなだっけ」
放課後の教室で一人何を言っているんだと、他に人が居たらそう言われそうだけど幸いに今は僕一人。この独り言が誰かに聞かれることはなかった。
何をするにも自信が持てない僕、意見を真っ直ぐに言えない僕は本当に根暗な人間だろう。人と接するのが怖くて、陰口やいじめを恐れ本心を隠す生き方……僕はずっとそんな生き方をしていた。でもそんな生き方ってとても窮屈ではないだろうか。正直どうしてこのようなことを考え始めたのかは分からない。けれど何となく、僕は今本当の意味で変われる気がするんだ。
「……っとそうだ! 天川さんとの約束があったんだ」
放課後一緒に遊びに行こうっていう約束をしていたのを思い出した。天川さんは先生に呼ばれて少し遅くなるらしく、それがあって僕はこうして待っていたんだっけ。まさかこんなに寝てしまうとは思わなかったから慌てて荷物を纏める。
少し乱雑に教科書やらを鞄に詰め込んだ僕は天川さんを探しに教室を出るのだった。
スマホで連絡を取った方が早いのだけど、校内での使用は校則違反だから自分の足で探さないといけない。ちょっと大変だけど、天川さんに会えることを考えたら僕の足取りはとても軽かった。
(……やっぱり、好きなんだよね。僕は天川さんのことが)
クラス一の美人、優しくて思いやりのある天川さん。
こんな僕だから彼女と釣り合うわけがないと、ずっと自分にそう言い聞かせて彼女の好意から逃げていた。本当は気づいていたんだ……天川さんが僕に好意を持ってくれていたことを。でも僕はこんなだから、そんなはずはないって思い込んでしまって……それが時に天川さんに寂しそうな表情を浮かべさせていた。
「馬鹿だろ僕は! どこまでも怖がって……本当の意味で彼女に向き合おうとしなかった!」
本当に今までの自分を殴り飛ばしたいくらいだ。天川さんのことが好きなら、彼女の笑顔をずっと見ていたいと思うなら……ただそう言えばいいだけじゃないか。本心を隠し続けて次こそは、次こそはって逃げ続ける奴が前に進めるわけがないじゃないか!
逸る気持ちを抑えながら僕は天川さんを探す。
ある程度校内を歩き回った所で僕はやっと天川さんを見つけた。けれど少し様子がおかしい。
「離して!!」
「いいじゃねえか天川。俺の女になれって」
「嫌よ! お願いだから離してってば!!」
「強情だねぇ。ま、お前みたいな女は一度抱いちまえばすぐ堕ちそうだけどな」
僕の目の前で天川さん、そして嫌がる彼女に言い寄る黒い噂の絶えない男――松岡が居た。天川さんは目に涙を溜めながら松岡を睨み続け、逆に松岡はそんな天川さんを見て舌なめずりをしていた。
「……離せよその手を」
……自分でも驚くほどに冷たい声が出た。そのことに僕は一瞬驚くが、すぐにそんな驚きを洗い流すほどに僕の心は黒く染まっていく。天川さんを泣かせていることに対する怒り、松岡に対する嫌悪感……そして何より感じたのは、天川さんを絶対に誰にも渡さないという独占欲だ。
僕は一気に走って松岡から天川さんを奪うように引き離した。
「西田君!?」
「……んだよ西田」
間に入った僕を天川さんは驚くように見つめ、松岡は今にでも殴り掛かってきそうなほどに睨み付けてくる。その視線に少し恐れを抱いたけど、後ろにいる天川さんのことを考えたら恐れなんてすぐに無くなった。
僕は松岡を睨みながら、今までの自分と決別するかのように口を開く。
「彼女に近寄るな……お前みたいな屑が天川さんに近寄るんじゃない!!」
廊下に響き渡るほどの声量、僕ってこんな声が出せたんだな。
後ろから息を吞むような気配、反対に眼前に居る松岡は一瞬呆けていたがすぐに怒りの形相になる。それもそのはずで、松岡からすれば僕は取るに足らない存在だろう。そんなちっぽけな存在から屑なんて言われれば、無駄にプライドの高そうな松岡のことだから逆上することなんて簡単に想像が付く。
「言うじゃねえか西田。雑魚の根暗オタクのくせに誰にモノを言ってんのか分かってんのか?」
そう言って僕の胸倉を掴んだ松岡はそう言ってくるが、やっぱり僕は怖くなんてなかった。だからこう言ってやるのさ。
「もちろん分かってるよ。でもそこまで怒るってことは……もしかして自覚があったのかな?」
蔑むように笑ってやるのも忘れない。
その瞬間、僕は頬を思いっきり殴られた。歯が何本か抜け、生暖かい液体が口内から流れるのを感じる。今までに感じたことのない痛みに思わず泣きそうになる……いや、もう涙は出ている。無様に僕は泣いている……でも絶対に僕はここを退かない。天川さんを守ってみせる、僕はもう絶対に逃げないんだ!
「西田君!!」
「大丈夫だから!!」
後ろから天川さんが悲鳴のように僕の名前を呼ぶけど、僕は大丈夫だと声を大にした。そしてもう一発僕は殴られる……でも耐える。
「僕は……天川さんが好きだ」
「っ!?」
「だから……絶対に守る。こんなやつに渡さない……僕は天川さんを守ってみせるんだ!」
大きな声を出すということは勢いも強い、口の中に溜まった血が松岡の顔に掛かる。松岡は僕の勢いに少し後ずさったけど、また僕を殴ろうと振りかぶった。
「このクソ野郎があああああ!!」
先の二発よりも明らかに威力がありそうな拳、しかしその拳が僕に届くことはなかった。
「何をしている!!」
「……ちっ!」
流石に騒ぎ過ぎたのか、先生が飛んできた。
先生は僕の顔を見てすぐに傍に居た生徒に保険医を呼んでくるように指示を出し、そして松岡の体を拘束するように僕から引き離した。
松岡は暴れているが、その先生は生活指導の先生であり体格がとても大きい。如何に松岡と言えど先生には勝てないようでそのまま引きずられていった。
「……はぁ……あ」
緊張が解けてしまったのか膝が折れる感覚で、僕はゆっくり倒れる。受け身を取らないと思うのに、頭が少しボーっとして駄目だった。このまま地面に顔面から落ちるとか痛そうだな……そう思った僕だけど、固い地面とは比べ物にならないほどに柔らかい何かに受け止められた。
一体何だこれはと、そう思ったけどすぐに答えは出た。
「……ぐすっ! 西田君……っ!」
僕は天川さんに抱き留められていたんだ。彼女の豊かな胸はとても温かくて柔らかい、正に至福の瞬間だけど僕はすぐに慌てるように離れようとする……でも。
「ダメだよ。先生が来るまでジッとしてないと」
天川さんにもっと強く、けれども優しく抱きしめられた。
「天川さん……血が付いちゃうよ」
「気にしないよ。西田君のだもん」
……それは理由になるんでしょうかね。
でも不思議だな。凄く痛かったはずなのに、こうして天川さんに抱きしめられているだけで痛みが引いていくような感じがする。
顔を上げれば天川さんは涙を流しながらも女神と見違えるような笑みで僕を見ていた。恥ずかしくなったけど、僕の口から溢れる言葉は止まらなかった。
「天川さん……僕は君が好きだ」
「……………」
「君が松岡と一緒に居る時、僕の中で汚い感情が溢れた。それはたぶん独占欲で、天川さんを絶対に渡さないって思って……僕はこの場に来たんだ」
「……西田君」
「……気持ち悪いって思われたかもしれない。でも僕はもう本心を隠さない、ずっと抱えてきたこの気持ちを天川さんに伝えたい……もう一度言うよ。僕は君が好きだ! 僕のモノにして、誰にも渡したくない!!」
……本当に醜いなこの感情は。
嫉妬、独占欲、モノにしたいなんていう束縛を思わせる言葉。天川さんはどんな言葉を返してくれるのだろうか、受け入れてくれるのか拒絶するのか……ジッと待つ僕に天川さんは顔を近づけて――。
「……え」
呆然とする僕。それも仕方ない。何故なら天川さんにキスをされたから。血で汚いはずなのに、天川さんは全然気にすることなく僕にキスをしたんだ。そして――。
「私も西田君が好きです。どうしようもないほどに好きなの。私を西田君の彼女にしてくれますか?」
こう言ってくれた。
僕はもちろんそれに頷き、正式に僕と天川さんは付き合うことになった。今までの自分と決別した日、僕は何よりも大切な存在を手に入れることができたのだった。
あれからのことを話そうか。
僕と天川さん、そして松岡のことは結構なニュースとなって学校中を駆け巡った。僕の告白、それを受けた天川さんのことは見ていた人が結構いたらしく、別の学年にさえこの出来事は知られることとなったのだ。
僕と天川さんは周りにからかわれながらも、恋人としての時間を過ごしていき今まで以上に深く繋がることができた。……しかし、そんな生活を送る中で一つだけ分からないことがあった。それは松岡のことで、あいつは親が金持ちということもあってすぐに学校に復帰していたのだけど、ある時にふらっと居なくなるように退学していったのだ。直近の松岡を見た生徒は何かに恐れるようだった、情緒が不安定だったとか色々言っていたけど、結局最後の最後まで松岡に何があったのか僕は知る由もなかったのだ。
……後はそうだなぁ。これは贅沢な悩みになってしまうのかな。
天川さん……花奏と付き合うことになった僕だけど、花奏はとにかく尽くすタイプだったのだ。これはあれだ、男を駄目にする典型のタイプかもしれない。
付き合うことになった翌日から花奏は僕の傍を離れようとせず、家にさえ押しかけて来たくらいだ。食事も作ってくれるし、他の家事だって苦なく熟す……本当にお嫁さんのようだった。
「……何考えているの? 一君」
「いや、花奏は本当に綺麗だなってそう思ってた」
「も、もう……好き。そうやって言ってくれるのほんとに好き」
そう言って顔を近づけてくる花奏に応えるように僕はキスをした。最初は唇が触れ合うだけのキスだったのに、いつの間にか舌を絡め合わせる濃厚なモノへと変化した。
「……一君、いい?」
「うん。僕も我慢できない」
……まあ花奏と僕は既に裸だったから準備は万端だったんだけどね。
改めて裸の花奏を見る。長く艶のある黒髪、シミ一つない白い肌。ムッチリとした胸に大きなお尻、こういっては何だけど僕の好みをこれでもかと詰め込んだ美少女だった。
……絶対に誰にも渡さない、彼女の全ては僕のモノなんだ。
「花奏」
彼女を押し倒して、僕は口を開く。
花奏の目に映る僕、そんな僕の目は黒く濁っていた。
「君を誰にも渡さない。一生僕の傍で、僕だけを愛してくれる?」
僕の言葉に、花奏は頬を赤くしながら頷いてくれた。
「うん。その代わり一君も私だけを愛してね? 絶対に離れて行かないでね?」
その言葉に僕が頷くのも当然だった。
一の家で幾度となく繰り返されてきた交わり、花奏は一から与えられる快楽を受けながらこれでもかと幸せを実感していた。大好きな人から愛される幸せ、それを噛みしめながら花奏は少し前の過去に想いを馳せる。
あの日、松岡に襲われそうになった時の少し前。花奏はよく分からない不可思議な記憶を見た。その中の自分は松岡に犯し尽くされ、一を捨てるという最悪の行為を行った記憶だ。
あの時から……否、ずっと前から一を好きだった花奏にとってそんな記憶は絶対に許せるものではなかった。いきなり見た記憶だったせいで、そんなふざけた未来に涙を流したところを松岡に見られてあのような現場になったわけだが……正直言えばあの記憶を見たせいなのか分からないが花奏の心に住み着く人間は一しか居なくなっていた。彼だけの為に生きることこそが己の生きる意味、そんな風にさえ思うほどだ。
松岡に言い寄られている時、思わず殺してやりたくなったがその前に一が割って入った。一の想いを聞き、自分だけの独りよがりの気持ちではなかったことを知った花奏は、一の言葉に感動すると同時にこれからの一生を何があっても一の為に捧げようと決心をした瞬間でもあった。
いくつもの嬉しいこと、変わることの多かった日々……だが当然一を傷つけた松岡に対し、花奏が何もしないなんてことはなかったが。
『貴方は絶対に許さない。一君を傷つけた罪は重いわ……だから、居なくなってくれる?』
何があったのか想像したくもないが、おそらく松岡が消えた理由には花奏が関わっているのだろう。
『一君には何だってしてあげる。私は一君だけのモノだもの……ふふ、凄い素敵』
歪んだ微笑みは恐ろしく不気味さを感じさせる。でもこの花奏の暗い笑み、一はこの笑みが好きだった。一に縛り付けられた花奏をこれでもかと実感できるからだ。
『君を誰にも渡さない。一生僕の傍で、僕だけを愛してくれる?』
一から伝えられたこの言葉、この言葉は一という存在を永遠に花奏へと刻む呪いだ。その言葉を聞いただけで下半身が疼き、花奏の体は一を求めてしまう。
想いだけでなく、体も全てを求め、溶けるように。
『うん。その代わり一君も私だけを愛してね? 絶対に離れて行かないでね?』
この言葉を口にした花奏、一の目に映る彼女の目は暗く濁り光はなかった。
普通の人とは違うお互いが持つ独占欲、何を犠牲にしてでも手放さないと共通した認識を持つ一と花奏……歪んだ愛の形だが、本人たちが幸せであるならそれもまた正しい愛の形なのかもしれない。
両方ヤンデレエンドを予想できた方はおられますでしょうか。