理不尽外道神話録   作:EX=ZERO

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世にも奇妙な文明

 

 

 

「旅してきた文明ね・・」

 

《そう、君が旅した世界で印象に残った文明の話を聞かせてよ

 よりひどかったもの、より優れていたものをね》

 

世界はまさしく無限にある。

それこそありえない、聞いたものが馬鹿にしすぎていると

怒り狂うような世界すら存在していた。

 

「一応聞くが人間を基準にしてるのか?」

 

《然り、然りだよ、できるだけ低い文明に転生者を送る必要があるんだ》

 

「理由は?」

 

《じゃないと転生者がその世界で好きにできないだろう?》

 

「転生者の知能を上げたほうが早いだろ」

 

《上げてるよ、その上で低い文明に飛ばすのさ》

 

そうじゃなければ面白くない、自分が優位であれば優位であるほど

人間と言う生き物は欲が出る、心の奥底に眠る本質が顕になる。

文明の差異、価値観の差異、力の差、それらが広がれば広がるほど

優位な者は下を見下す、そしてその果てにあるのは孤立、孤独、絶望

『影の怪物』が見たいのはそんな転生者の愚かな末路である。

 

「しかしまーた転生者か、お前もいい加減そいつらの話するのやめねえか?」

 

《君が私と会うたびに神を創るのをやめたら考えてあげるよ》

 

そもそも銀騎士が神を創って放置しているから

世界の管理や転生神として働かせているのだ。悪循環である

 

「で?具体的にどういう文明の話が聞きたいんだ?」

 

案の定銀騎士はこの話を無かったことにした。

しかしいつものことなので影の怪物もそれ以上は触れない。

 

《じゃあまずは食べ物かな、君が思う酷かったのはどんな文明だい?》

 

影の怪物としては肉を生で食べる原始的な文明が出てくるだろうと睨んだ。

 

「土食って岩舐めてた」

 

しかし銀騎士の口から出てきたのは普通の人間が食べるものですらなかった。

 

《うん、原始的以前の問題だね、それはまず人間なのかい?》

 

「きちんと人間だ、お前のその見た目と同じような種族だよ」

 

今の影の怪物は金髪赤眼の胸以外が幼い少女の姿を取っている。

たまにある事なのだが銀騎士は人間がどんな種族だったか忘れる事があり

昔豚の頭に牛の胴体、蛇のような尻尾に背に蝙蝠の羽をつけた珍獣を

人間だと認識していた頃もあったのだ。彼になにがあったのだろうか?

 

《そこまで酷いと文明がそもそもないんじゃないかい?》

 

「いや普通に街やら城があったぞ?学問も戦争もなんでもござれだ

 管理してる神もいないし魔法文明がないから全て人間の手製だ」

 

《その世界の人間は美味しいもの食べたいって思わなかったのかい?》

 

「価値観の違いって奴だ、思いつきもしなかったんだろうよ

 だからこそ俺様が英雄としてその世界を救済するのさ」

 

《まあそんな世界だ、君の英雄気取りが十分発揮されてるだろうね》

 

『銀騎士』は英雄という肩書きにやたら固執する癖がある

実際は真逆であり力だけは無駄にあるはた迷惑な存在でしかないが

救われている者の方が圧倒的に多いためタチが悪い。

 

「俺様の技術をもってすれば土や草も豪華絢爛ディナーに早変わり

 あの世界の人間に幸せな土料理のレシピを教えてやったぜ」

 

《いや普通の食事を食べさせてあげなよ》

 

ただその救い方がまともであればどれほど良かっただろうか。

 

「栄養心配してんだろ?大丈夫だ

 土に人間に必要な栄養を摂取できるように改良したし

 味だってそうさ、口に含んで噛めば噛むほど肉の味が次々とだな」

 

《うん、そうじゃない、そうじゃないんだよ

 普通にそのへんのお肉食べさせた方が早くないかい?》

 

「その世界でやる必要性が感じられなかった

 今まで土を食って生きてたなら土をより美味しいものにするべきだろ?」

 

言われて影の怪物は紅い眼を閉じて考える

周りに豊富な食材があると思われるその世界で

どいつもこいつも土をむしゃむしゃ食べている世界

 

《なるほど、それはそれは惨めで楽しい世界だね》

 

そう、影の怪物は満面の笑みで答えた

ここでそう答えるあたり影の怪物も同類である。

 

「幸せな事にはかわりないさ、それを惨めと言えるのか?

 むしろ今までが異常で実は人間は土食文化が常識だったんじゃあないかい?」

 

《うん、少なくともそれなりに文明持ってて

 土食ってるような人間は普通見ないね》

 

普通そこまで文明が発達しているのなら気づくはずなのだ

なにより食物連鎖を見る機会があったはずなのだから同じ物を食べればいい。

 

《文明が低いとそういう事情になるのはわかったよ

 じゃあ逆に文明が進んでいる世界ではどうなるんだい?》

 

「空気かな」

 

《うん、ついに食べることすら放棄しちゃったんだね》

 

「大気中に溶けている物を無駄なく摂取できるようになると

 食料がそもそもいらなくなる、そうすれば生産者もいなくなる

 結果なにも食べない、食べる必要のないというのが究極とも言えるさ」

 

《食べる必要のない君が言っても説得力ないね》

 

遥か昔、銀騎士は効率のいい食事を目指した結果

なにも食べなくてもいい能力を身につけている。

 

「必要ないからと言って食わないのはつまんねえぞ?

 世界は無限だ、食べ物だって無限だ、求めるのが普通だよ」

 

それは永く生き続けられるからこそ

本当の意味で食に困ることがないからこそ言える贅沢な台詞なのだが

影の怪物も同じようなものなので否定する材料を持ち合わせていなかった。

 

《食に関してはよくわかった、さすがに土だと転生者が理解できそうにない

 せめて肉を生で食べるような世界にでも送ってみようじゃないか》

 

「転生者送るのはいいんだが俺のコレクションを送るのをやめてくれ

 与えるなら自分で用意しろよ、能力で用意できるだろう?」

 

銀騎士がコレクションとか偉そうな事を言っているが

集めてる最中にどうせ銀騎士は興味を失ってそのまま忘れてしまうのだ。

それならば有効利用したほうが何倍もいい

 

《同じのたくさん持ってるんだからいいじゃないか

 ああ、君が持っている『輪廻包丁』を与えてもいいかい?》

 

「ん?それはまあ・・対したものじゃねえからいいだろう」

 

『輪廻包丁』とは、生物から生きたまま肉をそぎ落とす包丁である。

削ぎ落とされたところから再生され、切られたものは痛みも感じない

銀騎士が自分を食べようとして作ったのだが包丁が刺さらなくて諦めた品だ。

 

《そうだね、じゃあ次は建物かな

 今まで見た中で酷かったものや変わった文明はあったかい?》

 

「ん?酷いものだけに限定はしないのか?」

 

《こればかりは文明が低くても転生者に介入の余地が無いからね》

 

建物に関してはあまり転生者が介入しにくい。

高度な文明を持っていたとしても建築は専門家の領分

例え転落事故などで『死亡させた』土木作業員を転生させたところで

設計ができるかと言われればまた別の話だ。

 

《それでもまあ介入できる部分はあるだろうけれどね

 それで?何か印象に残るような世界はあるのかな?》

 

「変わったってんなら・・そうだな、天井がなかった」

 

《うん、・・うん?》

 

「ないんだよ、街のどの建物にも城にも迷宮にもだ

 面白いぞ?天井ないのに二階建て三階建てとか普通にあるんだぞ?」

 

《それ上の階に床あるのかい?》

 

「あるわけないだろ、天井がないって言っただろうよ」

 

「見ろよ」と銀騎士は一枚の写真を取り出した。

そこに写っているのは一階は普通の部屋、しかしそれ以降の階層は

家具の一つ一つがハンモックのような何かで支えられている奇妙な光景だった。

 

《これ明らかに手間かかってるよね?

 ここまで行くと素直に天井造った方がいいと思うよ?》

 

「その発想には至らなかったんだろうよ

 中途半端な建築でも建物が崩れたなんて事件はなかったらしいぞ」

 

よく見れば写真に密閉された樽が写っている。

それでも家も同じように上を塞ぐ発想がないのは妙だった。

 

《ふむ、ひょっとしたらあの四角い世界みたいなものなのかな?

 ところで雨はどうするんだい?防ぐ手段がないだろう?》

 

「この世界の管理者は雨を司る神だ、なら答えはわかるだろう?」

 

《ああなるほどね》

 

それなら合点がいく。雨の神が起こす雨はその神が持つ力にもよるが

高位のものであると一滴一滴が万病の薬にもなりうる。

より多くの信仰を集めるため、人間と雨の関わりを強くするために

雨を遮る屋根や天井をわざわざ周りくどい建築をさせてまで排除したのだろう

人間にとってははた迷惑な話だが。

 

《よくわかったよ

 じゃあ逆に高度な文明だとどうなるんだい?》

 

「建物が存在しない」

 

《ん?》

 

「ある世界で建物が存在しない世界ってのがあったんだ

 人間一人一人が異空間持っててそこに生活スペースがあるんだよ

 あの世界は『ワールドシステム』が採用されていてな

 それぞれ生まれつき持ってる拠点だけで生活するらしい」

 

『ワールドシステム』とは世界にステータスの概念を導入して

まるでゲームのようにお手軽に管理できる画期的なシステムである。

尚システムが認識してくれないため銀騎士は数値化できないらしい。

 

《それ建物が存在しないって言えるのかな?

 異空間でも一人一人持ってるんだろう?》

 

「ククク・・『システムダウン』使ったら全員路頭に迷ったぞ?」

 

《君なんてことしてるんだい》

 

『システムダウン』とは能力、魔法、身体能力、概念、恩恵、システムなど

その世界に存在するあらゆる力を無効化する封印魔法であり

仮にステータスが導入されている世界でこれ発動すると

世界中のステータスが強制的に全て0になり所持品を全てロストするのだ。

ワールドシステムを楽しめない銀騎士が八つ当たりで開発したものである。

 

「でだ、システムが使えなくなった状態で

 路頭に迷った奴らは家も立てずに雑魚寝してた

 食糧生産もできないだろうから今頃人類滅亡してそうだぜ」

 

《そんなんで崩れる世界がはたして高度と言えるのかい?》

 

「一人一人飢えもなく住むところに困らず服も用意できるらしい

 文明としてはある意味究極だろう?」

 

《うん、その究極とやらを台無しにした君が言う台詞じゃないよね?

 建築はこんなものかな、後は医学・・いや必要ないか》

 

「ん?医学はいいのか?」

 

《だって君治療が必要な時ってどうするよ?》

 

「俺の防御力舐めるな、俺が怪我したり病気になると思うかよ」

 

《だろう?聞くだけ無駄だよ》

 

 

 

その後も冶金、兵器、鑑識、魔術、超能力、娯楽

転生者が介入できそうな低い文明の話を銀騎士から聞き続けた。

 

話を聞いて吟味した結果、ある程度文明は発展しているものの

動物を生きたまま丸かじりするのが常識という食文化だけが低い世界に

特典を与えて転生者を送ったのだが運悪く銀騎士と遭遇してしまったらしく

世界の流儀に合わせて生きたまま丸かじりされてしまったのだった。

 

それを見て爆笑していた影の怪物は銀騎士がデザートも欲しがるだろうと

新たに転生者の少女にどうでもいいスキルを与えて送り込んでみた。

 

 







どうでもいいスキル(魔王をデコピンで粉砕できる力)


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