夢を見ていた。粛々とした、洗練された、黄昏のような夢を見ていた。
「やほー。元気元気?」
黒いスーツ、長い黒髪、全体的に細く見えるが、細く見せているだけの抜群なプロポーション。
貞淑でありながら威厳のある女性なのだが、中身がアッパーテンションでコミカルな女神だから台無しである。
「なにこれ?」
しかもこの空間そのものが妙だった。
ウサギとカメが機銃やらミサイルやら何やらを乗せながら戦争をしているのだ。
―――――なんなのだこの、コミカルだがマッドでバッドな世界は・・・
「今の私の心情を現してるんだよっ!」
「貴様の仕業か!」
しかもクレーエの姿も変わっていた。
ジャージ姿に五号と書かれた紙袋をクレーエは被ってこの世界に招かれていた。
「さて、ほかの神様にこうやって密会しているのがばれたら、さすがにまずいから、要件を言うね?」
「最初からそうしろ」
「ザンク君に英霊の霊基を代入したけど、すぐ死んじゃうみたいだから、抑止力として使える転生者を送り込むことにしたの」
これからは私に介入されたいように、静かに幸福を目指しなさい!
その言葉と共に、クレーエの意識は闇に沈んだ。
~~~
朝、クレーエは屋敷の寝室で目を覚ました。
なんだか、とても不思議な夢だった。コミカルだがマッドでバッドな世界で集合無意識と話をしていたような・・・・・・
コンコンッ、とドアがノックされた。
「閣下、失礼致します」
「ああ、少し待て」
そう言いながらいつも着ているものと同じスーツに着替える。その上戦闘用コートに装備を付ける。
「セノア、おはよう」
「はい、おはようございます。閣下」
ドアを開けると、青い軍服を纏った金髪ツインテールの女性が立っていた。
「
「ああ、読む読む。ようやくナイトレイドのターゲットについて調べてくれたんだ」
セノアが持ってきたのは、革命軍にスパイとして潜入させていたTTから送られたナイトレイドの標的となっている人物のリストだ。
「麻薬の密売人に、闇商人・・・こいつ爺やの傘下の奴だ。他にもいろいろいるな」
「いったいそんなもの、どうするおつもりですか?」
セノアが小首を傾げながら、尋ねる。
「ふふふ、じきにわかる」
~~~
宮殿内―――――謁見の間。
「申し上げます。ナカキド将軍、ヘミ将軍。両将軍が離反、反乱軍に合流した模様です!」
現在クレーエは、オネスト大臣と皇帝、文官達と共に帝国軍兵士の報告を聞いていた。
「戦上手のナカキド将軍まで・・・・・・」
「反乱軍が恐るべき勢力に育っているぞ・・・・・・」
「早く手を打たねば・・・・・・」
口々に不安を漏らす文官達。
「うろたえるではないっ!!」
そこに皇帝が立ち上がり、マントをはためかせる。
「所詮は南端にある勢力・・・・・・いつでも対処できる!」
クレーエは直感よりも早く、心眼(真)で読み取った。
(大臣の入れ知恵だな)
「反乱分子は集めるだけ集めて掃除した方が効率が良い!!・・・・・・で、よいのだろう、大臣」
「ヌフフ・・・・・・さすがは陛下、落ち着いたものです!」
案の定オネストの入れ知恵だった。
「ともかく、今は遠くの賊よりも近くの賊です。クレーエ将軍」
「ええ。現在五大将の一人、TTが反乱軍で工作をしています。すでに位の高い指揮官を暗殺しています」
クレーエの報告を聞いた文官達が驚きの表情を浮かべる。
「ほう、もう動いていましたか。なら北を制圧したエスデス将軍を引き戻しましょう」
エスデス将軍の名が出た途端に何人かの文官が焦った表情を浮かべる。
「て、帝都にはブドー大将軍、クレーエ将軍がおりましょう!」
「それに、五大将の一人であるロラン騎士団長も呼び戻したことですし・・・・・・」
「大将軍が賊狩りなど彼のプライドが許しないでしょうし、何よりもクレーエ将軍は帝都警備隊の最高責任者も兼任してます」
「エスデスか・・・・・・」
陛下が考えるようにその名を言う。
「彼女ならブドー、クレーエと並ぶ英傑……安心だ! 異民族40万を生き埋め処刑した氷の女ですからな」
(そんな物騒な女の何処に安心出来る要素があるんだか)
「将軍。生死は問いません! 1匹でも多く、賊を狩りだし始末するのです!!」
「もちろん。ただ、賊だけではなく帝都に住む犯罪者らも、同時に狩りましょう」
「うむ! クレーエ、裁量は任せる。民たちの安寧のために頼んだぞ」
「お任せください」
裁量を任されたこの機会を使わない手はない。
少し予定を繰り上げて、腐敗した貴族を狩ることにした。