夜、クレーエは家に帰ると、工房で礼装の調整をしていた。
「どうだ?帝都と西の異民族との攻防地点は離れているが、聞き取れるか?」
『・・・はい、問題ありま・・・せん。少し・・・飛びますが、音は拾えています』
クレーエが指輪に声をかけると、指輪から声が返ってくる。
(指輪型の通信礼装。まだ問題点は多いが、一応は完成か)
「そっちの状況は?」
『はい、左翼側が奇襲を受けた際に少し後退。しかしすぐに圧し返せます』
「よろしい。一段落ついたら帝都で俺の補佐に回れ」
『え?私が、ですか?』
話し相手の少女が驚く。そんな彼女に対して、クレーエは一から事情を説明していく。
『確かに私は、対帝具使い用に戦闘調整が施されておりますが・・・・・・ナイトレイド程の猛者ともなると・・・』
「問題ない。そもそもナイトレイドにはもう少し・・・・・・オネストを殺してもらうまでは存在してもらわないと困るからな」
『・・・了解しました』
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宝石が灰となり、通信礼装としての効力を失った指輪を握りつぶす。
「セノア様」
「ええ、私も敵を視認しました。ありがとうございます」
セノアと呼ばれた女性は長い金髪をと軍服のスカートを翻しながら、敵のいる方向とは別の方向をみる。
「第3機構腕作動。『私は、理の枷から離脱する』」
いつの間にか、セノアには4本の腕が生えていた。そのうちの一本、3本目の腕が紫色の光を放ちながら、内部機構を稼働させる。自動人形であり、道具作成EXによって生み出された礼装兵器を所持している。
「先ずは先制攻撃しましょう。大丈夫です、たかだか瓦礫や岩を砲弾代わりにするだけですから」
セノアが目を向けていた場所にある岩が宙に浮いた。
「攻撃開始」
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「少年、芋は好きかね?」
朝。クレーエはある貴族の屋敷に忍び込んでいた。正確には地方から来た人間を親切を装い捕らえていると噂をされている貴族の屋敷。と、その屋敷にある倉庫。
目に映るのは手足の欠損した人の死体に拷問器具の数々。それと檻に捕らわれた人々。
しかも薬物の中毒症状のような痙攣まで起きている。
「あんた、何者?」
近くの檻の中からハチマキを着けた少年が鉄格子を掴みながら、か細く震える声で話しかけてきた。
「質問を質問で返すなぁ!」
少年の入っている檻を蹴り飛ばす。倉庫にはあらかじめ防音のルーンと人避けの結界を張ってある。
「す、好きだ!芋が好きだ!」
「そうか。ならば同志よ、願いを言え。望みを叶えてやろう」
クレーエは少年を見ながら問う。
(ルボラ病の末期。しかも何らかの薬物中毒あり・・・助からんな)
もし、自分を助けてくれと言ったら、知覚されない速度で殺そう。とクレーエは考える。しかしその考えは杞憂に終わった。いい意味で。
「サヨを助けてくれ!! 俺と違ってまだ助かるはずだ!」
少年が檻の外に腕を出して宙を指差す。少年が指差した方を見ると片足を切断され吊るされている少女の姿があった。
かろうじて生きているがこのままでは出血死するのも時間の問題だろう。
「その願い、聞き入れた」
少女を吊るしていた縄を切ると着ていたスーツの袖を千切り、止血を行う。そのまま、戦闘用に仕立てた黒いロングコートを少女に被せる。
「因みに、名前は?」
「ああ、俺の名はイエヤスだ!」
「そうか。俺はクレーエだ。芋好きのよしみだ、覚えておいてやろう」