「未だに目を覚まさないと?」
『はい』
昨日、芋同志イエヤスの頼みで助けた少女、サヨの様子を見ていた自動人形から報告を聞いていた。
治療としては、斬られた脚の止血。その後の義足への交換、鞭の後や刺し傷等は、治療後に人形用の人工皮膚を人間用にしたもの貼り付けて傷も隠してある。
「これから俺は工房の整理をするから、引き続きサヨを頼む」
『了解しました』
そう言って地下にある工房へと入る。
くれーえの屋敷には4つの工房がある。一つ目は錬金術用の工房。ここは最近使用していないことから、特に念入りに掃除が必要でもある。二つ目は鍛冶工房。金属製品を多く扱う
最後の四つ目は総合的な魔術工房。宝石魔術やルーン魔術の研究にはこの工房を使う。
「さて、どこにやったかな?」
今クレーエは、大臣に一度だけ見せてもらった、帝具の文献の写しを探している。
(それにしても)
目の前の作業台を見る。第四工房も相当散らかっていた。一般人には落書きにしか見えない礼装兵器の設計図、ルーン文字や魔法陣の書かれた紙、何らかの薬品が入った瓶、表側に鴉の描かれた7枚のコイン。他にも、味方に引き入れた武官や文官のリスト、買い上げた鉱山関係の書類等、魔術とは全く関係ない書類まで置いてあった。
「えっと、設計図はこっちの棚。この薬品は錬金工房。このコインは使えもしない占星術の練習に使った奴だな。このリストは私室で、こっちのは宮殿の執務室・・・全く、アンゼルム爺やも鉱山ひとつ丸々くれなくても」
帝国経済の重鎮なのか、ほんとに。と、愚痴を漏らしながらも片付けを続ける。
「・・・・・・なんだこれ?」
それは一冊の古ぼけた手帳だった。それは始めて見る筈なのに、ひどく懐かしく感じた。よく見ると栞が挟まってるのに気が付きた。
恐る恐る、そのページを開く。
「―――――っ!」
突然、激しい頭痛がクレーエを襲った。
「な、んだごれぇええ!」
頭痛と共に様々な情報がフラッシュバックする。
幼い頃の事、自身に石を投げる人々、それを庇う一人の女性。
「―――――!」
頭痛が治まると、クレーエは手帳を作業台に置いたまま錬金工房へと行く。
『ご主人様、彼女が目覚めました』
~~~
「記憶が無い?」
「はい。私が何故帝都に来たのか、何が出来るのかが分からないんです」
夜、クレーエは目が覚めたサヨと食事を摂りながら、話をする。
「それにしても、帝都ではジャガイモを主食に食べるのですか?」
「いや、家が特殊なだけだ。にしても、このスーパージャガ王はうまいな。さすがはゴードン元隊長だ」
クレーエは退役後に帝国の東で農家をしている壮年のかつて部下の事を思い出しながら芋を頬張った。