「あっはっはっはっはっはっは!午前中は書類仕事だけとか、楽しいなあ!」
朝9時。クレーエは宮殿の執務室で書類整理をしていた。
その隣ではクレーエを補佐するクレーエと同じ見た目の人形。
(まあ、強すぎると神に干渉されるからな)
本来ならクレーエは星の開拓者や天賦の叡智、マハトマや根元接続等のスキルを取得する筈だった。
だが―――――――
『チートスキル選んだり、パワーバランスが崩れたら、抑止力働くから、気をつけるんだぞ♪』
「なーにが『気をつけるんだぞ♪』だ!いくら神でも俺の好みの女性像でんなふざけたこと言ってんじゃねえ!」
書類仕事を終わらせ、デスクテーブルに拳を叩きつける。
「あーイライラする。警備隊行ってくる」
~~~
帝都警備隊。名前の通り帝都全体を警備する警察部隊。今回クレーエはその隊長であるオーガに用があってやってきた。
「お疲れ様です!」
ビシッと敬礼をする帝都警備隊隊員。
「オーガ、いる?」
「それが、現在来客中でして・・・・・・」
「おお、それは都合がいい!セリュー。セリュー隊員!オーガのとこまで行くぞ!」
「へ?あ、はいっ!」
近くにいた隊員のセリューを引き連れてオーガのいる場所まで向かう。
「あ、あの~将軍。なんだか機嫌が良さそうですね?」
「ん?そう見えるか?」
「は、はい。とても」
「まあ時期に分かる。ところでセリュー隊員、正義とはなんだ?」
隣を歩くセリューを見る。
セリュー・ユビキタス。帝都警備隊のヒラ隊員でありながら、帝具『魔獣変化ヘカトンケイル』を所持している帝具使いの隊員だ。
彼女は父親を賊に殺された過去があり、それ以来「正義対悪」という極端な価値観を持っている。
「はい!悪に対して勝利する力の事です!」
「・・・・・・そうか。っと、ついたついた」
話し込んでいるうちに、オーガとオーガの客人のいる部屋えとたどり着いた。
「・・・入らないのですか?」
「ああ。ここまで来ることが目的だったからな」
そう言いながら目を閉じる。イメージは宝箱。閉まりつつある箱の中から、もっとも価値のある代物のみを奪い取る。
「奪え、望むままに」
瞬間、人払いの結界を廊下に張り、扉に盗聴用のルーンを描く。
『オーガ隊長、この前はお世話になりました』
『なんのなんの!こっちもいっぱいもらっているからな!』
これをすると、部屋の会話は筒抜けとなる。
『いやはや、帝都警備隊の隊長が、これしきの金で濡れ衣を着せてくれるとは』
「え?これって・・・」
青ざめた顔のセリューがクレーエを見る。きっと信じられないのだろう。自分が尊敬していた上司が賄賂を受け取って、罪をもみ消していたなどと。
「ではセリュー隊員に問おう。汚職とは悪か?悪ならば何をすれば正しいか?」
その答えは、火を見るよりも明らかだった。
「オォォォォォォォォォォォガァァァァァァァァァァ!!」
セリューは扉を蹴破って、中に入る。その手には
ドドドドドドドドド。
旋棍銃化から放たれた銃弾が、オーガと話していた男達を撃ち抜く。
「なっ!セリューてめぇ!」
「コロ!腕!」
セリューがコロと呼んだのは、彼女が持っている帝具ヘカトンケイルだ。
巨大化した手でオーガを握りつぶし、そのままヘカトンケイルに捕食させる。
「おめでとう、君は悪を倒した」
クレーエは背後からセリューに話しかける。
「だが、考えてほしい。君の倒した悪を」
「黙れ」
「君の倒した悪。帝都警備隊の隊長。なら―――――」
「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
クレーエの言葉を遮るように叫ぶセリュー。
「オーガを尊敬し、オーガに言われるがまま悪を殺してきた君も、悪だ」
「違う、私は・・・・・・」
「違わない。君は、理由をつけて暴れたかっただけの小娘だ」
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
セリューは泣きながら飛び出していった。
ああ、わかっている、行動の結果くらい。
ああ、分かっていた、なのに何故・・・!
気に入らないなんて理由でオーガとセリューを部隊から下ろすべきでは無かった。
仕事が増えたが、首切りのザンクが現れたのは運がいい。
奴の帝具さえ手に入れれば代わりなんて幾らでも作れる。
だが、しかし・・・!