本篇未投稿の身ですが、推し誕故、執筆してしまった事をご容赦下さい。
では、始まり始まり~!
国木田花丸編 WHAT'S UP GUYS?
いつも通り、花丸の家に邪魔していた2月終盤の正午過ぎ。
会話のなかった空間に対し、俺はふと話題を思い付いたかの様に口を開いた。
「花丸、誕生日は何が欲しい?」
「えっと、マルは〜…て、そういう事は本人に聞くことじゃないと思うずら」
「…それもそうなんだけどね」
もののついでに、呆れたように返されてしまった。
彼女と僕は物心つく前からの長い付き合いであり、小学生になる頃から何度も誕生日を祝っている。
もうかれこれ10回くらいはプレゼントをあげたりしているのだ。正直言ってネタが尽きている。こう言うと凄く失礼だけど。
自分なりに何が良いか考えてはみたものの、いまいち思い付かずいっその事本人に聞いてしまえ、と思った次第だった。
「オラは祝ってもらえるだけで嬉しいから、物にこだわりはないよ。彼方くんからだったら、何でもうれしいずら」
「何でも、か」
自分の癖かもしれないが、今脳内では様々な可能性を考えてしまっている。キーホルダーがいいとか、食べ物にしようとか。今までだったらその可能性から絞っていくのに苦労した覚えはないが、それを渋ってしまうのは花丸自身の変化にあった。
この1年で花丸は変わった。自分に閉じこもりがちだった彼女は、Aqoursの活動を通して様々な事に積極的になるようになり、身を引く事を美徳とせず、時には自分の為に動く人間へと成長したのだ。
だからこそ、そんな彼女にはありきたりなものではなく、最高のプレゼントでもてなしてあげたい、と考えていた。
とどのつまり、意気込むあまり決めきれないのである。言いようもなく苦しい。
取り敢えずこのまま考え続けていても、正直思考がまとまりそうにない。取り敢えず、花丸と付き合いの長いルビィに夜に連絡を取ってみるか、なんて考えていた。
「ねぇ、彼方くん」
「どうしたよ」
さっきまで読書ついでに話していた花丸が、改まって話そうとしていた。
「彼方くんのことだから、今のマルにとって一番良いものを、なんて考えているかもしれないけど…」
付き合いの長さ故か、早速図星をついてきた花丸。そしてそのまま続ける。
「マルにとって、オラ自身にとって大事なのはそこじゃない。
彼方くんがくれたものと一緒に居れた時間ずら。
今までだってそうだったし、これからもそう。
だから、彼方くんは飾らないで、素直に一番贈りたいものが欲しいな。それがマルにとっても一番嬉しい。」
花丸は一言一言、大事なものを取り出すかの様に紡いだ。紛れもなく、その中には大事な事が詰まっていた。
「そう、か…いや、そうかもな」
色々囚われすぎたな、と少し反省した。可能性だなんて考える必要はなかった。そんな、「自分も他人も思いやれる」花丸に対して、俺が贈りたいもの、そしてその中にある想いもただ一つだった。
「ありがとな、花丸」
「いいよ。お食事券、楽しみにしてるずら。」
「はいよ…ってなんでそっちになるんだ?!」
「やっぱ実用性があってお得な物じゃないと!」
「あのなぁ…」
さっき言った事を台無しにしている。
いっそのこと何も買ってやらないぞ、なんて言ったらえぇー!冗談ずらー!!と訴えてきた。
そんな喜怒哀楽をめいいっぱい表現してくれる彼女といる時間は大切なものなんだと、再認識できた気がした。
これなら、相談しなくてもすみそうかな。
…やはり、手放したいだなんて思えないな。
そして3月4日の誕生日当日。
浦女のスクールアイドル部の部室にて、花丸の誕生会が開かれていた。
俺も当事者としてAqoursの8人と一緒に彼女の誕生日を祝っていた。
…何故か何回もメンバーの誕生日を祝っているのに、準備に難航したが。
ダイヤが仕切ろうとするも、善子がもっと黒くしようだとか、それに鞠莉が悪ノリするかの如くゴージャスに、なんて言い出したり。
衣装を作っているせいか、こういう時はこだわりを捨てず主張する曜とルビィ。
結局千歌が上手くまとめようとするうちに方向性を忘れ、果南が上手く包括する。
なんてやってるうちにかなり時間が掛かってしまった。
危うく花丸に言っていた開始予定の時間をオーバーする勢いになる始末。
こういう所、やっぱりAqoursよね、なんて梨子が苦笑いしていたが、全くその通りだと思った。
こうやって個性をぶつけ合いながら、高めあっている仲間が居たからこそ、花丸も、僕も変われたのかな…なんて感じたのであった。
その後誕生会自体は無事に進行され、いよいよプレゼントを渡す時間になった。
みんな思い思いのものを渡していく(中には堕天グッズと称してお揃いのキーホルダーをあげる、なんて微笑ましい光景もあった)。
そして最後に自分の番になった。
決して豪華なものではない。でも、自分が一番納得したものだ。
だから、喜んで欲しい。
それに…これはそれだけじゃないから。
ルビィが渡し終わったことを確認し、一歩前に踏み出す。
凄く、緊張する。身体が乗っ取られたかのように、浮ついている。
けど、折角だ。
色んな想いをここに込めて贈りたい。
「花丸、誕生日おめでとう」
「ありがとうずら」
一瞬の間が訪れる。
「一番贈りたいものを用意したよ。出来れば、ここで開けてほしいんだ。」
大丈夫だ、ちゃんと喋れてる。
「うん。」
そう言うと、花丸はラッピングされた箱を丁寧に開封し始めた。
「…これは、ネックレス?」
「うん、花丸に着けて欲しくて。」
「…じゃあ、いまお願いしてもいいずら?」
まるで俺の考えを悟るかのように、優しげな表情でそう言うと、花丸はネックレスの入った箱を前に差し出した。
やらなければ。
心の中でそう意気込み、俺はネックレスを手に取ると、花丸の首に掛け、髪を優しく解いた。
「やっぱり、似合ってるよ」
「うん、ありがとう」
そして、この時のために必死に心の中で反覆した言葉を紡いだ。
「花丸、そのネックレスに俺自身の思いを乗せてもらった…だから、ありきたりかもしれないけど。
これからもずっと、そのネックレスと思い出、全部大切にしながら俺と2人で、一緒に歩いていって欲しい。」
マルにとって、好きという感情は、小さい頃から本の中にしか無くて。
正直に言うとよく分からない、なんて考えていました。
でも、高校生になって間もない時、恋人の闘病の物語、なんていう物語を読んで。
その中の1節、「かげがえのない人を失う苦しみは、何にも代え難いものだ」という言葉がその時凄く胸に刺さりました。
マルには恋人は居ないけれど…もし居たらどんな気分になってしまうのだろう…色々考えてみたけど、やっぱりしっくり来なくて。
誰か代わりの人を、なんて考えた時に、真っ先に浮かんできたのが彼方くんだった。
彼方くんで考えてみたら胸が締め付けられた。
悲しみの底に叩きつけられた気分になった。
まるで、物語の中の人みたいに。
その時、思いました。
マルにとって、彼方くんはそういう人なんだって。
そして、分からない、なんて思ってた好きという感情が、自分にも確かにあった事を。
でも、どこか臆病なマルは、どうしてもこの気持ちが言い出せずにいました。
今のこの2人の心地いい関係が、崩れたらどうしようかと考える余り。
でも、彼方くんは違った。
Aqoursの活動を支えてくれる中で、彼方くんは前向きに戻っていました。
昔みたいに、音楽が大好きで何事にも怖がらずに突き進む彼方くんに。
だからオラも、少し勇気を出してみようと思います。
「お礼、いいずら?」
「ん、そこまでしなくても………」
面食らった顔をする彼方くん。
マルの唇から、彼方くんの唇へ。
これが、マルの少しの勇気と精一杯のありがとう。
「これからもずっと、宜しくね」
最高の誕生日になりました。
いかがでしたでしょうか?
今回、提示させていただいた曲は90年代のアニソン…ということで、実は全然年代的にドンピシャではないのですが…
実は訳があったりしますが、ここでは伏せさせていただきますね?
またいつの日か、機会があれば。
一つ言うことがあるとすれば、彼方くん羨まけしからんということだけ。いいなぁ青春してて(オッサン並みの感想)
それではまた、次のお話で会いましょう!