短い文章でコンスタントに、を目標にしていこうかなと。
ではどうぞ!
「流石に酷くない!?」
一度自分によって閉じられた襖の扉が、勢いよく開かれた。こちらを睨んで真っ直ぐ見つめてくる女の子が目の前にいた。いつも通りの高海千歌だった。
「なんだやっぱり千歌だったのか」
「何だって何!千歌は千・歌・だよ!!」
「いやさ、理解不能で見たこともないポーズ取るから認識できなくて」
「これがスクールアイドルなの!」
「つまり変人?」
「違う!!」
僕の頭では理解が追いつかなかった。謎のポーズを取るのがスクール、学校のアイドル…?ついに千歌は頭をやられてしまったのだろうか。
「悩みとかあったら聞くけど…?」
「もー!!!そういう事じゃないから!!!早くそこに座る!!!」
相手の的が外れた質問に痺れを切らした千歌は、そそくさと電話で話した、説明を始める事にしたようだ。
「ははは…」
千歌の隣で薄ら笑いを浮かべているのは渡辺曜。彼女もまた僕たちと幼馴染の関係にある。
「因みにさ曜、俺がここにくるまで2人でなんの話してたんだ?」
何やら必死にスマートフォンを操作する千歌を見計らい、曜に話題を振った。幸い千歌は躍起になっているので、この時だけは噛み付かれずには済んでいて、今しかない、と話しかけた次第だった。
「えっとね…スクールアイドルだよ」
「もしかして…ずっと?」
「うん…そうだね……」
よく考えたら話していた方も衝撃だったようで。尻すぼみで言葉は帰ってきた。
スクールアイドルを始めると、連絡があったのがだいたい30分前。その後電話で呼び出され、電話を切った後、メッセージで曜もいると知らされていたので、つまり30分間ずっと同じ事について話していた事になる。…熱中しすぎじゃないか?
二週間前に遊んだ時も同じだった気がするし。
今回は相当のめり込んでいるように思えるけど。
悪く言えば、いつも通りで。
だからこそ、
長続き、するんだろうか。
そう思った。
取り組んでは、匙を投げる事を繰り返した彼女に。
心配は尽きないけれど、取り敢えず聞く事にしよう。
僕の頭に入るかは、別として。
「でね、スクールアイドルっていうのは……」
千歌の長い長い説明が行われている。
実際にどんな子たちが活動しているのか、スマートフォンに映し出された画像を見せられた。
なるほど、華やかだ。
そう思った。衣装はほつれひとつない細かさで、素人が作った、と聞いた時は信じられなかったほどだ。
「でね、千歌はこの輝いているスクールアイドルを始めようと思ったのです!」
「分かった。大体理解した」
「そう!それでかなちゃんには…」
「作曲をやって欲しい、てことか?」
「あっ、うん…」
言葉通り、僕は殆ど理解した。
何故女の子中心に活動するスクールアイドルのことについて僕が呼ばれたのか。
「悪いけど、もう鍵盤を弾く気にはなれないよ」
そう言った瞬間、千歌の表情が曇った。曜もどこかやるせない顔になった。
こうなるとは分かっていた。
分かっていたけれど。
「ああ、ごめん。
できる限り協力はするよ、幼馴染が頑張ろうとしてるんだから」
「そしたら…」
「でも、何があろうと僕は音楽に触れない。
触れたくないから。」
嫌な沈黙。
千歌としては、「あの出来事」から時間が経っていたから、もしかしたらもうピアノをもう一度弾き直し始めたんじゃないか、せめて触れているんじゃないか、
快く協力してくれるんじゃないか、って思ったのかもしれない。
「ごめんね、
千歌、気合い入れすぎちゃったかな〜ははは…」
どこか気まずそうに、かつ口早に、無理矢理言葉を紡いでいる。
分かってはいる。そんな事を言って欲しい訳じゃないって。
「曜ちゃんもう終バス近いんじゃない?」
ふと時計を見ると6時前。家の前のバス停から出る沼津行きはそろそろ終わる時間帯だ。
「あっ、本当だ!」
いそいそと荷物をまとめはじめる曜。
僕も千歌と一緒に部屋の片付けを始める。
一応それは解散の合図で、冷え切っていたものはどこか温まり始めた気がするけれど。
それは気がするだけで。
僕の一言によって生まれてしまった、微妙な空気は完全に戻り切ってくれなかった。
「じゃあね曜ちゃん!
また明日!」
「またな!」
ヨーソロー!と小気味よく挨拶を返し、曜は帰っていった。
まるで何事も無かったかのように元気に。
「じゃあ、僕も帰るよ」
「うん、また今度ね…」
どこか申し訳なさそうに、遠慮がちに喋る。
そんな彼女に後ろめたさを感じて、
別れ際に僕は言い訳、とも言える補足をした。
「後さ、別に何もする気がない訳じゃないから。できる限りのことはやるから。
僕のできる範囲で。」
「…わかった。」
俯きがちのまま返事をする千歌。思い付いていたであろう言葉を飲み込むように。
「じゃあね!気をつけて」
「うん、また!」
「もうスクールアイドルのこと忘れちゃダメだよ!!」
「忘れないって」
少し笑いながら。どうにか笑えた状態で。
僕は千歌の家を後にした。
やっぱり僕はどうしようもないな。
最低だって。
そう、思った。
お読み頂きありがとうございます。
2話でもうシリアスでした。彼方くん自重しないね。重いね。
触れる機会出来ずじまいなんですが、彼方くんは高校2年生です。
ようちかとまるっきり一緒に育ってる、ということなんですが。
後書き書いてたら展開思いつきました。
唐突だなお前。
ではまた次のお話で!