彼方と奏でるharmonies   作:望月 慧

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第2話です!
短い文章でコンスタントに、を目標にしていこうかなと。
ではどうぞ!


No.2 〜始まらない旋律〜

 

「流石に酷くない!?」

 

 

 

一度自分によって閉じられた襖の扉が、勢いよく開かれた。こちらを睨んで真っ直ぐ見つめてくる女の子が目の前にいた。いつも通りの高海千歌だった。

 

 

「なんだやっぱり千歌だったのか」

 

「何だって何!千歌は千・歌・だよ!!」

「いやさ、理解不能で見たこともないポーズ取るから認識できなくて」

「これがスクールアイドルなの!」

「つまり変人?」

「違う!!」

 

僕の頭では理解が追いつかなかった。謎のポーズを取るのがスクール、学校のアイドル…?ついに千歌は頭をやられてしまったのだろうか。

 

「悩みとかあったら聞くけど…?」

 

「もー!!!そういう事じゃないから!!!早くそこに座る!!!」

 

相手の的が外れた質問に痺れを切らした千歌は、そそくさと電話で話した、説明を始める事にしたようだ。

 

「ははは…」

 

千歌の隣で薄ら笑いを浮かべているのは渡辺曜。彼女もまた僕たちと幼馴染の関係にある。

「因みにさ曜、俺がここにくるまで2人でなんの話してたんだ?」

 

何やら必死にスマートフォンを操作する千歌を見計らい、曜に話題を振った。幸い千歌は躍起になっているので、この時だけは噛み付かれずには済んでいて、今しかない、と話しかけた次第だった。

 

「えっとね…スクールアイドルだよ」

 

「もしかして…ずっと?」

 

「うん…そうだね……」

 

よく考えたら話していた方も衝撃だったようで。尻すぼみで言葉は帰ってきた。

 

 

スクールアイドルを始めると、連絡があったのがだいたい30分前。その後電話で呼び出され、電話を切った後、メッセージで曜もいると知らされていたので、つまり30分間ずっと同じ事について話していた事になる。…熱中しすぎじゃないか?

 

二週間前に遊んだ時も同じだった気がするし。

 

今回は相当のめり込んでいるように思えるけど。

 

悪く言えば、いつも通りで。

 

 

だからこそ、

 

長続き、するんだろうか。

 

そう思った。

 

 

 

取り組んでは、匙を投げる事を繰り返した彼女に。

 

 

 

心配は尽きないけれど、取り敢えず聞く事にしよう。

 

 

僕の頭に入るかは、別として。

 

 

 

 

 

 

 

「でね、スクールアイドルっていうのは……」

 

 

 

千歌の長い長い説明が行われている。

実際にどんな子たちが活動しているのか、スマートフォンに映し出された画像を見せられた。

なるほど、華やかだ。

そう思った。衣装はほつれひとつない細かさで、素人が作った、と聞いた時は信じられなかったほどだ。

 

 

「でね、千歌はこの輝いているスクールアイドルを始めようと思ったのです!」

 

 

「分かった。大体理解した」

 

「そう!それでかなちゃんには…」

 

「作曲をやって欲しい、てことか?」

 

「あっ、うん…」

 

言葉通り、僕は殆ど理解した。

 

 

何故女の子中心に活動するスクールアイドルのことについて僕が呼ばれたのか。

 

 

「悪いけど、もう鍵盤を弾く気にはなれないよ」

 

 

そう言った瞬間、千歌の表情が曇った。曜もどこかやるせない顔になった。

 

こうなるとは分かっていた。

分かっていたけれど。

 

 

 

「ああ、ごめん。

できる限り協力はするよ、幼馴染が頑張ろうとしてるんだから」

 

 

「そしたら…」

 

 

「でも、何があろうと僕は音楽に触れない。

触れたくないから。」

 

 

嫌な沈黙。

 

 

千歌としては、「あの出来事」から時間が経っていたから、もしかしたらもうピアノをもう一度弾き直し始めたんじゃないか、せめて触れているんじゃないか、

快く協力してくれるんじゃないか、って思ったのかもしれない。

 

「ごめんね、

千歌、気合い入れすぎちゃったかな〜ははは…」

 

どこか気まずそうに、かつ口早に、無理矢理言葉を紡いでいる。

分かってはいる。そんな事を言って欲しい訳じゃないって。

 

 

「曜ちゃんもう終バス近いんじゃない?」

 

ふと時計を見ると6時前。家の前のバス停から出る沼津行きはそろそろ終わる時間帯だ。

 

「あっ、本当だ!」

 

いそいそと荷物をまとめはじめる曜。

僕も千歌と一緒に部屋の片付けを始める。

 

 

一応それは解散の合図で、冷え切っていたものはどこか温まり始めた気がするけれど。

 

それは気がするだけで。

僕の一言によって生まれてしまった、微妙な空気は完全に戻り切ってくれなかった。

 

 

「じゃあね曜ちゃん!

また明日!」

 

「またな!」

 

ヨーソロー!と小気味よく挨拶を返し、曜は帰っていった。

まるで何事も無かったかのように元気に。

 

 

 

「じゃあ、僕も帰るよ」

 

「うん、また今度ね…」

 

どこか申し訳なさそうに、遠慮がちに喋る。

そんな彼女に後ろめたさを感じて、

別れ際に僕は言い訳、とも言える補足をした。

 

「後さ、別に何もする気がない訳じゃないから。できる限りのことはやるから。

僕のできる範囲で。」

 

「…わかった。」

 

俯きがちのまま返事をする千歌。思い付いていたであろう言葉を飲み込むように。

 

「じゃあね!気をつけて」

 

「うん、また!」

 

「もうスクールアイドルのこと忘れちゃダメだよ!!」

 

「忘れないって」

 

少し笑いながら。どうにか笑えた状態で。

僕は千歌の家を後にした。

 

 

 

 

 

やっぱり僕はどうしようもないな。

 

 

 

 

最低だって。

 

 

 

そう、思った。

 

 




お読み頂きありがとうございます。

2話でもうシリアスでした。彼方くん自重しないね。重いね。

触れる機会出来ずじまいなんですが、彼方くんは高校2年生です。

ようちかとまるっきり一緒に育ってる、ということなんですが。


後書き書いてたら展開思いつきました。

唐突だなお前。

ではまた次のお話で!
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