種の起源 -BIO CRISIS-   作:カイバル峠

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どうも、カイバル峠ともうします。
以前も二次創作を投稿していましたが、ずっと以前から練っていたゾイドの二次創作を書いてみたいと思い、投稿することにしました。

作者がゾイドに慣れ親しんだのは10年近く前になるので、うろ覚えの部分も多く、また捏造設定も多数存在しますので、バトストなど原典に忠実な作風を求める方はブラウザバックを推奨いたします。

それではどうぞ。


プロローグ

プロローグ

 

 

 

 

「戦いは、これで終わりだぁぁッッ!!!」

 

二振りの大刀を掲げた白金の獅子が、闇を溶かし込んだような漆黒の装甲を纏う異形の暴竜に斬りかかる。

 

「バカな?!我は、神であるぞぉぉぉッ?!!」

 

漠々とした平原に木霊する断末魔の叫び声。

両断された異形の暴竜は大破・四散し、搭乗者もろとも灰燼に帰す。

 

ここに、惑星制覇を目論んだ“唯一絶対神”の野望は潰えたのであった。

 

 

「討伐軍から入電があった―――“ジーン”が討たれたそうだ。」

 

その言葉に、一同は複雑な表情をしつつもどこかほっとした様子でもあった。

 

「そうですか、ついに……どうかなされたか、プロメ部長?」

「…いいえ、少し考え事をしていました。でもこれで漸く戦いが終わったのですね。」

 

プロメと呼ばれたのはその場に集う集団の中でもひときわ浮世離れした雰囲気を持つ長い金髪の女性。彼女の何か思いつめたような様子を察し、傍らに座る同僚と思しき人物が声を掛ける。

 

「それにしては随分うかない顔をしておいでだな……やはりジーンのことですかな?」

「……いえ、ジーンが我々に反旗を翻し、結果としてソラは滅びたことは疑いようもない事実です。しかし、我々の認識の甘さがジーンの、ディガルドの増長を招き、地上で多くの犠牲を生むこととなったこともまた事実。」

「左様。だが、それは我らソラの民全員の過ちであろう。最終的にディガルドに技術を提供することを決めたのはソラの総意なのだから。」

「その通りだ。ですが、もし唯一幸いな点があるとすれば、バイオゾイドの技術が()()()()()()()()ということでしょう。」

 

「バイオゾイド……あれも本来、古の大変動よりもずっと古い時代に生み出されたものだったな。」

「ええ。通常ゾイドよりも種類も少なく、開発者やその意図も不明。製造された期間も短かったらしいということだけが残された資料からわかっているくらいです。技術保護部がソラに残されていた断片的な記録と、機体の一部と思われる金属片を発見し、それを基に復元を試みたのですが……」

「結果は不完全だったと。」

「はい。エヴォルト同様、ソラに実物が残っていない技術の一つでした。」

 

一同の間を沈黙が支配する。

もし仮にバイオゾイドの復元が完全なものであったなら。

それは考えるだけでも身の毛のよだつ話だ。

 

「…いずれにせよ、戦いは終わった。確かに失ったものは多いが、これからは未来に向かって歩き出さねばならない。我々の企ては想像以上に多くの者に災いをもたらしたことは紛れもない事実だ。」

「そうですね。我々の蒔いた種は我々自身で拾う義務がある。どれだけかかるかは分からない、けれどもソラと地上とが再び一つになるためにも、我々の保有技術を復興に用いることをここに提案します。」

「うむ。プロメ部長はいかがかな?」

 

長老格の男性は先ほどプロメと呼ばれた女性に視線を送る。

 

「無論異論はございません。寧ろ、パラ部長の提案を支持します。」

「そうか、ではこの議案を評議会議長バナの名のもとに承認する。これからまた忙しくなるぞ。」

 

 

――――――――――――

 

この後、討伐軍とディガルド代表の間で停戦協定が結ばれ、その後間もなく和平条約も締結。

ここに“ディガルド戦争”は幕を下ろした。

武帝ジーンの敗死で混迷する中、離反兵を統率し、ジーン派を抑えてディガルドの暫定代表となった元ディガルド将校のザイリン、ボラー両名主導のもと武装解除が行われ、各地に展開していたディガルド兵団の撤退とともにバイオゾイドの製造プラントも徹底的に破壊された。また多くの将兵が離反するきっかけとなった機械兵の製造技術も破棄され、元々適合者の極めて少ないバイオゾイドは急速に衰退することとなった。

バイオゾイドの脅威の記憶もはじめのうちは元被占領地域の住民の間で語り継がれるものであったが、復興の進展と世代交代を繰り返す中で次第に忘れ去られていった。

 

バイオゾイドは誰が、何のために生み出したのか。

 

旧文明が滅んで幾千年、その記憶を留めたソラも滅亡した今となっては、もはや知る由もなく、この忌むべき負の遺産の謎を進んで解き明かそうとする者もいないだろう。

 

しかし忘れることが本当に解決することだといえるのだろうか。

また何者かがこの力を利用するのではないか。

奇しくも、私の一族には遠い過去の時代に猛威を奮ったという銀色のゾイドの記録が残っている。

絵文書に残る姿かたち、そして光も鉄の弾も効かないという特徴はバイオゾイドそっくりだ。

おまけに一族の間で禁忌として守られてきた謎の祠まである。おそらくそこにこの銀色のゾイドを巡る、何か重大な秘密が隠されているのではないか。

討伐軍がここの噂を聞きつけてやってくるのも時間の問題だ。バイオゾイドにまつわる諸々がタブーとなりつつある今、もし彼らがやってきたとしたら跡形もなく破壊されてしまうかもしれない。

そうなる前に、私はこの謎を解き明かしたいと思う。

一族の者たちは私が禁忌の領域に立ち入ったと知ればただでは済まさないだろう。

 

危険は承知だが、それでもやるしかないのだ。

 

 

とある歴史家の手記より

 

――――――――

 

 

 

※※※

 

 

 

――時を遡ること数千年。

 

 

――ZAC2110年。

 

 

この年は惑星Ziの歴史の中でも特筆すべき一年だった。

ヘリック・ガイロス連合軍とネオゼネバス帝国の戦争が漸く終結したのだ。

これまで破竹の勢いで快進撃を続けていたネオゼネバス帝国だったが、前年のヘリックシティ近郊での両軍衝突以来風向きが変わり、帝国側の勢力は急速に瓦解し、そのままヘリック側との停戦協定に至った。

主戦場となった中央大陸(デルポイ)西方大陸(エウロペ)そして暗黒大陸(ニクス)の三大陸の人々は未だ戦争の残り火が燻る中、荒れ果てた国土の復興に向けて慌ただしくも希望に満ちた日々を送っていた。

 

そんな他大陸の喧騒を他所に、ここ南方大陸は開発ブームに沸いていた。

有史以来に人が足を踏み入れた痕跡はほとんどなく、ゆえに希少な生態系や鉱物資源、野生ゾイドの発見が期待されるフロンティアであり、戦争終結とともにほど近い西方大陸の人々が入植。新天地を目指し、日夜未開の大地の開拓に勤しんでいた。

 

そして今日も森の中の獣道を進むグスタフが一台。

荷台に開拓用の重機と拠点構築用の資材を乗せ、コマンドウルフ、続いてゴドスがぴったりと着いて両脇を固め、護衛の任に当たっていた。

 

「今日は予定通りA-3ポイントにある開拓拠点まで向かう。そこで資材の搬入、あとは拠点拡大のための伐採、基礎工事だ。」

『了解。』

 

戦争が終わった後も、ゾイドは変わらず人々の生活になくてはならない存在であり続けた。

殊土木作業のような現場では、下手に重機を使うよりもゾイドの方が馬力、機動性、耐久性などあらゆる点で優れているのもまた事実、加えてこの未開の大陸ではどのような野生ゾイドが生息しているのかといった調査もまだ進んでいないため、開拓者の一行にはゾイドが随伴するのが恒例となっている。

 

「周囲に異常はないか?」

『はい、異常ありませ……ん?』

「どうした?」

『今、茂みの中で何かが動いたような……』

 

グスタフを操る、この一行の長と思しき人物が後方のゴドスのパイロットの通信を受け、レーダーに目を落とす。

 

「……何も反応はないぞ?」

『はぁ、すみません。どうやら見間違いのようです。』

『おいおいイゴーリ、ここまで来るのは初めてだからってビビり過ぎだろ。そんなんで後方の護衛大丈夫か?』

 

今度はコマンドウルフのパイロットが通信に割って入り、心配性なゴドスの同僚を茶化す。すると周囲、もう一頭のコマンドウルフとゴドスのパイロットも冗談めいた調子でそれに乗じる。だがそこには辱めるような意図はない。むしろ先ほどよりもメンバーの雰囲気が心なしか柔らかくなったようにさえ感じられる。

実際に一行の間に響く笑い声を聞いてイゴーリと呼ばれたゴドスのパイロットも気持ちが幾分か楽になったし、グスタフの中で一連のやり取りを聞いていた隊長もフッと笑みをこぼす。こうしてメンバー間の関係が良好であることはいい傾向だと彼は感じていた。

 

そして一行はそのまま、森の奥深くの開発予定地まで進んでいく。

だがこの時一行は知らなかった。彼らの背後で再び森がざわめき、木々の合間から赤く光る双眸が彼らをじっと見つめていたことに。

 

彼らがたどり着いたのは広場状に開けた場所だった。

先遣隊によって複数台のゾイドが停泊できるくらいのスペースが確保されており、一行はゾイドを止めると、資材の運び出しとその後の工事の準備に取り掛かった。

作業を始めてから30分ほどが過ぎたころだったろうか。

 

突然、辺りの茂みが大きくざわつく。

作業員たちが異変に気付くが、それは既に遅かった。

 

『な、なんだこいつは?!!う、うわああああああッ――――――』

 

急遽、設営予定エリアで資材の運び出しを行っていたゴドスからの緊急の通信が入ったかと思えば、次に一行が耳にしたのはパイロットの絶叫。そしてそのまま沈黙した。

 

「おい!どうしたダレス?!応答しろ!何があった?!!」

 

事態を重く見た隊長はグスタフの無線をつなぎ、今しがた通信してきたパイロットとの通信を試みるが、耳に入ってくるのはノイズだけ。肝心のパイロットの肉声は最早聞こえない。

そこへ代わりに応えたのは先ほど道中で同僚からイジられていたイゴーリだった。

 

『…た……長…隊長!聞こえますか?!』

「イゴーリか?!ダレスとの連絡が取れない!そっちで何があった!!」

『ゾ、ゾイドです!外見からして恐らく野生ゾイド、あんなの見たこともありません!!』

「落ち着けイゴール、一体どんな奴だ?!」

『か、形はヴェロキラプトルタイプ、ですが、あんな大きなのは見たことがない……あ、奴がこっちに―――――』

 

次の瞬間、一瞬暴力的な破砕音が聞こえ、そののちイゴーリ機も沈黙する。

 

「ちくしょうがッ!!」

 

先ほどイゴーリを茶化していたコマンドウルフのパイロットはすぐさま止めてあった自らの愛機に飛び乗り、コンバットシステムを立ち上げる。

 

「待てバルド!!一体どうするつもりだ?!!」

「決まってんでしょーがッ!!アイツらを助けに行くんスよ!!」

「通信を聞いていただろう?!あの様子じゃあ二人とももう……」

「だからって放っておくわけにはいかんでしょ!!それに、仮にも戦闘ゾイドのゴドスが両方ともやられたってことはこのままだと俺たちもヤバい!!」

 

バルドの言葉に隊長は言葉に詰まる。

彼はそれを肯定と受け取り、コマンドウルフを走らせる。

 

「くっ、こうなったら我々も行くぞ、フォーゲル、お前もコマンドウルフで来い!」

「りょ、了解!!」

 

隊長のグスタフ、そしてフォーゲルの操るもう一頭のコマンドウルフもそれに続く。

 

 

 

※※※

 

 

 

「なんだよ…これは……ッ」

 

真っ先に敵地に飛び込んだバルドが目にしたもの、それはついさっきまで同僚が乗って作業をしていたはずのゴドスの残骸だった。

ちぎられた四肢、引き裂かれた胴、落とされた頭部―――共に悲惨な状態であり、特にうち一方はキャノピーごと大きく砕かれていて、大量の血痕が付着していた。

 

「一体、どこのどいつがこんなことを……ッ!」

 

バルドは怒りに肩を震わせる。

そんな主人の気持ちが伝わったのか、コマンドウルフも低く唸る。

 

その時だった。

 

ふと、背後に殺気を感じ取り、バルドは横に大きく飛びのいた。

そしてその判断が正解であったことはすぐにわかった。

振り下ろされた巨大な鉤爪が地面に突き刺さる。

 

体勢を立て直してたバルドは襲撃者に向き直り、その敵影を視界に収めた。

 

「……おいおい、マジかよ……こりゃあヤバいなんてもんじゃねぇぞ……」

 

敵の姿を確認するや否や、バルドは悪態を吐く。

全体的なフォルムはレブラプターやガンスナイパーといったヴェロキラプトル型に近い。

しかしながら特筆すべきはその大きさだ。

目測ではあるが全長は恐らく20メートルを超えており、機体の高さでもコマンドウルフより高く、こちらが見上げるような形になる。

外部武装の類は一切なく、細長くしなやかな体躯に、戦闘ゾイドのような武骨な機械的な造形が一切見られないその姿は、まさしく金属生命体本来の姿をとどめており、美しささえ感じさせる。

そしてそのゾイドの爪の先に残る血痕が、この一連の惨劇の首謀者が自身であることを物語っており、バルドの表情がより一層険しさを増す。

 

「クソッ……テメェが、テメェがダレスたちをやりやがったのかッッ!!」

 

バルドの怒りの咆哮。それに応えるようにコマンドウルフもまた吠える。

大地を蹴り、風のような速さで敵に肉薄する。

敵野生ゾイドもまた、彼とコマンドウルフの気迫に呼応して甲高い咆哮を上げ、突進してきた。

 

「うおおおおおおおおッ!!!」

 

コマンドウルフの背の二連装ビーム砲が火を噴く。

しかし敵ゾイドは凄まじいまでの敏捷性でそれらを悉く躱す。そして一発、敵の身体をかすめるが、触れた瞬間、ビーム砲のエネルギーが消失する。

 

「なっ?!」

 

予想だにしていなかった光景にほんの一瞬、バルドの意識をゾイドの操縦から引き離す。

だが、それが致命的な隙となった。

再び剛爪が振り降ろされ、バルドは住んでのところで回避に成功するが、装甲の一部が破損する。悪いことに、装甲を破壊した際に駆動系の回路が一部破壊されたらしく、コマンドウルフの動きが硬直する。

 

「嘘だろ…?戦闘ゾイドでもねぇのに……はっ!!」

 

バルドが敵の予想外の頑強さに驚嘆したその時、眼前に高速で移動する銀色の物体が迫っていることに気づく。

次の瞬間、コマンドウルフは勢いよく弾き飛ばされ、宙を舞った。直線上に存在する木々をなぎ倒し、やがて岩壁に当たったところで漸く止まる。

 

コマンドウルフごと転がされたバルドは満身創痍、ケガの痛みで朦朧とする意識の中でキャノピー越しに迫る敵の姿を目に焼き付けようと、懸命に意識を繋ぎ止める。

敵ゾイドは最早コマンドウルフが動かないと悟ったのか、ゆっくりとこちらに歩いてくる。

しかし、見れば見るほどに奇妙な姿をしているとバルドは感じた。

日光を浴びて銀色に輝く外殻は昔見た野生ゾイドの復元画そのものだった。

だが、それでは腑に落ちないことがあるのもまた事実だった。

本当にこいつが野生ゾイドなら、さきほどの、ビーム兵器を無効にするような外殻を纏っているというようなことがありうるのだろうか、と。

疑念は尽きないが、彼が思考をめぐらすことのできる時間は終わりが近づいていた。

野生ゾイドはコマンドウルフからほんの数メートルの位置まで近づくと、頭目がけて、鋭い歯の並んだ口を大きく開いた。

 

「ちく…しょう……」

 

バルドの意識もそこで途絶えた。

 

 

 

その後、駆け付けた仲間によってゴドスとコマンドウルフの計三体の残骸が発見された。

結果搭乗パイロットは全員死亡、ゾイドも再起不能と判断された。いずれも心臓部であるコアが抜き取られていたのだ。しかし大破したゾイドのメモリーを復元した結果、奇妙な事実が浮かび上がる。

突如として現れた謎のラプトル型ゾイド。

野生ゾイドと思われるが、今まで確認されているどの種とも異なる。

おまけに、外殻がコマンドウルフのビーム砲を無効化したような様子さえ見受けられた。

映像はコマンドウルフが横転し、画面が横倒しになるところで終わっており、その後の野生ゾイドの動向は不明。しかし、その事実は開拓で生計を立てるこの大陸の大半の住民に恐怖を抱かせるには十分すぎるものだった。

事態を重く見た開拓者たちは腕利きの賞金稼ぎなども投入して周辺の操作を実施。

しかしメモリーに残っていたようなゾイドはついぞ発見されることはなかった。

そして、その後も同様な事件は発生することもなく、また戦後の混乱期にあった他大陸からの移住者の流入も増加し、急速な開発の進展と経済発展の中でこの凄惨な事件も、次第に人々の記憶から失われていった。

 

 


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