復讐の劣等生   作:ミスト2世

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九校戦にむけて

 2095年。7月。

 第一高校では九校戦の準備に向けて騒がしい毎日が続いていた。

 ちなみに九校戦とは、正式名称を全国魔法科高校親善魔法競技大会といい、毎年全国からよりすぐりの魔法科の第一から第九までの高校生たちを集め、そのプライドを懸けて戦いあう競技大会のことである。これは魔法関係者のみならず多くの観客を集める魔法科高校生たちの晴れ舞台であると同時に、次世代を担う若い人材をスカウトする場合も多いいわゆる一大イベントなのである。

 さて、そんな一大イベントの中で我ら一校では。

「十文字くんが協力してくれたおかげで選手の方はなんとか決まったんだけど……問題はエンジニアなのよ……」

 と、生徒会長・七草真由美が悩みを吐露していた。

「まだ数が揃わないのか?」

 風紀委員長・渡辺摩利が尋ねる。

「そうなのよ……特に三年生の技術者不足は危機的状況よ」

 大きな溜息をつく真由美。現在の三年生は実技方面に優秀な生徒が偏っているのに対し、技術方面で秀でた人材がほとんどいないという欠点がある。

「せめて摩利が自分のCADの調整ができれば良いんだけど……」

 と、親友をジト目で見る真由美に対し、

「いや、それは本当に深刻だな……」

 摩利はすぐに視線を逸らしてしまう。

 真由美が市原鈴音に声をかける。

「ねえ、リンちゃん。やっぱり……」

「無理です。私では中条さんたちの足を引っ張るだけです」

 と、鈴音は極めて冷徹に答える。そして、

「他に適任者がいないか、皆さんの意見を聞いてみたらどうですか?」

 と、意見を出す。

「そうね。わかったわ」

 そして、真由美の呼びかけで司波深雪、桜井水波、大黒竜也、アンジェリーナ=クドウ=シールズ、十三束鋼らがやって来る。

「皆さん。ご苦労様です。実は、九校戦のことなんだけど、選手は決まったんだけど、エンジニアがまだなの。それであなたたちには誰か心当たりがないかなと思って来てもらったの」

「…………」

 5人が、互いの顔を見合わせる。

 そして、

「自分でよければ、やりますよ」

 と、立候補したのは、大黒竜也である。

 これには、リーナが驚いた顔をしている。これまで、竜也はこういうことに自ら進んで立候補することなど極めて稀だったからだ。

「竜也くん、CADの調整ができるの?」

「はい」

 起立して答える竜也。

「お願い、竜也くん!」

「私からもお願いする」

 真由美と摩利の言葉に、

「わかりました。微力ながら尽力します」

 と、答える竜也だった。

 そんな竜也を、リーナは、

(変わったわね……竜也……)

 と、見つめていた。

 

 だが、そうなると反発の声も上がるのも必然かもしれない。

 何しろ実をいうと、過去に1年生が技術スタッフに選ばれた前例が無いからだ。

 そのため、放課後の部活連本部でのメンバー選定会議は荒れに荒れた。

 それに対し、竜也は腕を組んで目を閉じたまま聞き流している。その態度がかえって反対している生徒らの怒りを買っているのだが、竜也は相手にしない。

 ちなみに竜也のエンジニア入りに反対しているのは、一年の男子選手たちと一部の上級生男子選手たちである。

「いい加減にせんか」

 大きな声ではないが、何となく重さを感じさせるその声にそれまで怒号が飛んでいた室内が途端に静まり返る。

 発言者は会頭の十文字克人である。

「要するに、大黒の技術レベルが分からないから問題だというのだろう?」

「…………」

 騒いでいた連中に答える者はいない。

「だったら実際に調整をやらせて見れば済むことだ。俺が実験台になろう」

「!」

 これには、誰もが驚いた。そして、

「こいつの実力は未知数ですから危険すぎますッ!」

「おやめください、会頭ッ!」

 と、諫める声が相次いだ。

 それに対し、竜也は未だに目を閉じたまま開こうともしていない。

「黙れ!」

「!」

 克人のその一言に、騒いでいた連中が途端に静まり返る。

「いつまでも文句を言っていても始まらん。俺が実験台になると言ったのだ。意見は許さん!」

「…………」

 十文字の鋭い視線に静まり返る室内。そして、

「大黒。俺でお前の腕を見せてみろ」

「わかりました」

 竜也が目をカッと見開いて立ち上がった。

 

 竜也の調整能力に驚いたのは、中条あずさと五十里啓である。

「完全マニュアル調整……って……」

「啓、それって凄いの?」

 許婚者の千代田花音が尋ねる。

「うん。だけど自分たちの目の前でどれほど高度なオペレーションが行われているか、理解しているのは僕と中条さんくらいだろうね……」

 と、五十里はこの1年の実力に感嘆する。

「終わりました」

「それじゃ十文字くん。早速テストをお願いします」

 竜也からCADを受け取り、十文字が腕に装着する。そして、起動式を展開する。

「どう? 十文字くん」

「負担も違和感も全くない」

 十文字の答えに感心する者、そして竜也のエンジニア入りに快く思わない者の反応が現れる。そして、

「一応の技術はあるようですけど」

「あまりいい手際とは思えないね」

「やり方が変則的すぎる」

 と、反対者が口々に叫ぶ。

 そこに、中条あずさと服部刑部がすかさずエンジニア入り支持の意見を出す。

 そして十文字も、

「お前ら、いい加減にせんか!」

 と、文句を言い続ける反対者に対して怒鳴る。

「文句ばかり言うなら、お前らも技量で示せッ! 大黒は我が校の代表メンバーに相応しい技量を示したのだ。お前らもそれに負けない技量を示したらどうだッ!」

「…………」

 そして、

「俺は大黒のチーム入りを支持する」

 と、真由美に答える。

 こうして、大黒竜也のエンジニア入りが決定した。

 そしてこの時、十文字克人が自分をさらに強い視線で見つめていることに気づいていながら気づかないふりを続けていた、大黒竜也であった。




次回は「九校戦会場に向けて」を予定しています。
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