アイス・ピラーズ・ブレイクには司波深雪、北山雫、アンジェリーナ=クドウ=シールズが第一高校からは出場する。
大黒竜也は、この三人の実力にいささかの懸念も抱いていなかった。むしろ、
(なんだこれは……まるでファッションショーだな……)
と、思わざるを得なかった。
というのも、雫は振袖、深雪は白の着物に緋色袴の巫女装束、リーナは西部劇のガンマンが着ている黒服と来ているからだ。この3人の容姿にこれだから、周りの人間の視線は否応なしに注目の的になる。
ちなみに勝負のほうは、三人とも語るまでもなく圧勝したことと、試合より格好のほうが観客に大いに注目されていたことを付記しておく。
そしてクラウド・ボールでは、第一高校から里見スバルと春日菜々美が出場。こちらも予選は突破した。しかし、十七夜の敗戦で燃えている第三高校の一色愛梨の奮戦の前に、まず春日は準々決勝で敗北。
次に決勝戦でスバルが一色とあたり、スバルも善戦したが愛梨に遂に敗れて優勝は第三高校に、準優勝は第一高校に終わった。
その日の夜。夕食の時間。
第一高校である男のハーレムともいうべき状態が作られていた。
女性に囲まれた状態でいるのは大黒竜也。
そしてその周りにいるのは竜也にCADの調整をしてもらったり、作戦参謀として助言をもらった女子たちである。
(う~ん……視線が痛い……)
竜也は、その女子の囲みから少し離れたところにいる相棒の視線に痛さを感じていた。リーナの顔は笑顔だが、目が笑っていない。
ちなみに怒りや妬みの表情で竜也を見つめているのはリーナだけではない。第一高校の男子生徒もまたしかりだった。
というのも、新人戦女子の好成績に対し、男子は森崎駿がスピードシューティングで準優勝しただけで、後は散々な結果に終わっていたからである。
というのも、それは本人の実力や担当エンジニアにも問題があるのだが、選民意識が強すぎてしかも竜也の実力に嫉妬している彼らには、どうしても竜也に怒りが向いてしまう。
そしてその中で代表的なのが、一科生としてプライドが高い森崎で、森崎は竜也を見ていて嫉妬より怒りが先行し、遂に食事会場を出て行ってしまった。
「おい! 待てよ、森崎ッ」
チームメイトの呼び声を挙げて後を追い、しばらくして足を止めた森崎が振り返る。
「お前ら、明日のモノリス・コード絶対優勝するぞッ!」
「ああ。でも……」
チームメイトの脳裏に三高選手。特に高校最強で十師族の中でも実力者といわれる一条将輝とその参謀で名高い吉祥寺真九郎の顔が浮かぶ。
「あんなウィードごときと仲良くする女たらしに、俺が負けてたまるかッ」
この期に及んで、まだウィードと呼んでいる森崎であった。
新人戦3日目。アイスピラーズ・ブレイクの控え室に続く通路。
大黒竜也は相棒のリーナとともに控え室に向かっていた。その二人の前に、第三高校の制服を着た二人の少年が現れる。
一人は容姿が整った美少年。もう一人は年の割に幼さが残っているあどけなさがある少年である。
「第三高校一年、一条将輝だ」
「同じく第三高校一年の吉祥寺真紅郎です」
二人が自己紹介する。それに対して、
「第一高校一年、大黒竜也だ。それで、クリムゾン・プリンスとカーディナル・ジョージが何の用だ?」
「ほう……俺だけでなくジョージのことも知っているとは話が早い」
「大黒竜也……聞いたことのない名です。失礼かと思いましたが、九校戦始まって以来の天才技術者である君の顔を拝見しに来ました」
「それはそれは……弱冠13でカーディナル・コードの一つを発見した天才少年に天才と言われるのは非常に恐縮だが、確かに非常識だな」
そして、竜也はリーナのほうに振り向く。
「リーナ。先に用意していろ」
「ええ」
竜也の言葉に、リーナは目の前に一瞥をして去っていく。
竜也はリーナの背中を見つめながら、
「プリンス、そっちもそろそろ試合じゃないのか?」
と問いかける。それに対し、吉祥寺が言う。
「……僕たちは明日のモノリス・コードに出場します。君はどうなんですか?」
「……そっちは担当しない」
「そうですか……残念です。いずれ君の担当した選手と戦ってみたいですね。無論勝つのは僕たちですが」
「わざわざそれを言いに来たのか?」
達也は彼らの宣戦布告に興味無さそうに問い掛けた。
「それはついでです。今日は君の顔を見に来たんです。では」
「手間をとらせたな。次の機会を楽しみにしている」
そう言って、二人は去っていった。
それを見つめることなく、竜也もリーナの後をゆっくりと追っていった。
「何しにきたのかしら、あの二人?」
リーナが控室で竜也に問う。
「たぶん偵察と宣戦布告だろ」
「身の程知らずねえ……竜也に宣戦布告するなんて……」
「そうでもないさ」
「え?」
「あいつらは、第一高校で好成績を収めている選手が、俺の調整と作戦を受けていることを見抜いている。大した観察眼だよ。あのまま成長したら、将来的にスターズには脅威になるかもしれないな」
「…………」
そう言いながら、どこかライバルができてなのか、嬉しそうにしている竜也の顔をリーナは複雑な表情で見つめていた。
ちなみに、新人戦女子アイスピラーズ・ブレイクの3回戦だが、深雪、雫、リーナは3人とも勝利して決勝リーグへ進んだ。
バトル・ボードでも、竜也の作戦でほのかが決勝進出を決めた。
第一高校生徒会長・七草真由美はアイスピラーズ・ブレイクの上位者3名、すなわち自らの後輩である深雪・雫・リーナをミーティングルームに呼び出していた。
「大会委員から提案がありました。皆さんの活躍のおかげで、新人戦女子アイスピラーズ・ブレイクはスピード・シューティングに引き続き、我が第一高校が三位までを独占しました。当校に入るポイントは一緒なので、決勝を戦わずに3人とも同率優勝で如何かと」
それに対して、三名が互いの顔を見合わせる。
最初に口火を切ったのはリーナだった。
「私は戦いたいです。この中で誰が本当に強いのか、私は勝負をしたいです」
次に発言したのは、雫である。
「私もリーナと同じです……戦いたいと思います。二人と戦えるこの機会を逃したくありません」
「そうですか……。深雪さんはどうですか?」
「リーナや雫が私と戦いたいと言われるなら、私にそれを断る理由はありません」
「……わかりました」
こうして、第一高校の美しき戦姫三人による戦いが始まろうとしていた。
次回は「三人の戦姫」を予定しています。