さてその頃、我らが主人公・司波達也(大黒竜也)は何をしていたのかといえば……。
これがUSNA国内に留まらざるを得なかったのである。
リーナのことは解決したが、その代償としてリーナは謹慎を命じられ、さらにエドワードとその息子・レイモンドによって達也とリーナが戦略級魔法師であることが世界中にばれてしまった。
達也は敵を恐れはしない。また、他の人間にどう見られようが気にはしない。
だがさすがに、孤立するのはまずかった。それでは自分の夢がかなえられないし、少なくとも表世界で生きていくことが難しくなる。
(俺には、俺がわかる人間がいてくれればいい……)
そして、自分の側にいる相棒を見つめた。
(そして、このかけがえのない相棒がいてくれたら、何も言うことはない……)
達也は相棒を見つめながら、笑みをこぼす。
それに気づいたリーナが、
「何?」
と、尋ねる。それに対して、
「いや……リーナ……俺もお前も戦略級魔法師と世界中にわかってしまった……これから、お前はどうするつもりなんだ?」
すると、
「なんだ。そんなこと?」
そう言いながら、リーナは達也の右手を両手で握りしめる。
「気にしないわよ」
そして、リーナが自らの顔を達也に近づける。
「私には、貴方がいてくれるんだから」
そう言った相棒の顔が、今まで見たことがないくらい笑顔だったのを、達也は嬉しそうに見つめていた。
さて、ところかわって日本である。
「やれやれ……主は四葉と敵対することがどういうことかをわかっておられない……」
七草家の執事・名倉三郎が喫茶店で一服しながらそう思っていた。
ちなみに名倉は一人で行動している。弘一からは七草家の兵隊を好きなように使え、と言われていたが、四葉深雪のことを調べ上げていくうちにそんな兵隊が何の意味もないことがわかっていたから、あえて兵隊は連れて来なかったのである。
名倉自身も、数字落ちだが腕には自信がある。しかしその彼でも、
「四葉と刺し違える覚悟でいかないと、勝ち目はないだろうな……」
と、思っていた。
「どうしたものかな……」
と、考えながら、調べ上げていたデーターに目を通していた。そして、
「ん?」
と、ある情報に目が留まった。
「これは……」
そして、名倉がデーターを次々と目に通してゆく。そして、
「使えるかもしれないな……仮にこいつらがやられても……」
そう言う名倉の顔に、酷薄な笑みが浮かんでいた。
そしてこちらでは。
九島家当主・九島真言が四葉家の執事・花菱と改めて会っていた。
ちなみにこの時、息子の兵庫は深雪と連絡をとるためにその場を外している。
「決心はつきましたかな?」
「ああ」
花菱の質問に、和式の部屋で脇息にもたれかかる真言が答える。
「では」
「ああ。そちらの申し出、お受けしよう」
「ありがとうございます」
「ただしッ!」
と、真言が付け加える。
「ただし、私はあくまで第三者としての立場に徹する。私が協力するのは影ながらだ。あの御方が亡くなるのはあくまで『不幸な事故』であって私のせいではない。それが前提条件だ」
すると、花菱が頭を下げる。
「それで十分でございます。よく決心していただきました」
「…………」
「ならば、計画のほうですが……」
と、説明を始める花菱。
それに対して、
(私はこれで……本当に良かったのだろうか……)
と、どことなく虚ろな瞳で、なおも全身を震わせながら迷う真言が、そこにいた。
そしてそれは、2096年の6月を迎えたときのことである。
USNAにいる達也の下に、日本に残していた黒羽亜夜子から信じられない報告が届けられたのである。
それは何と、達也の師匠である九島烈が行方不明になったというものであった。
次回は「老雄」です。