黒羽亜夜子からその報告を聞かされた司波達也の表情は真剣そのものだった。
場所はスターズ総隊長室の執務室。
そこでひとり、目を閉じて黙考していた。
そして、すぐに指示を飛ばす。
黒羽亜夜子には直ちに母・司波深夜の身柄を他の場所に移して安全を図らせ。
その弟の文弥には黒羽家の生き残った魔法師を連れて亜夜子と合流して守りを固めさせ。
九島光宣には情報収集ならびに連絡役としての役目を命じた。
そして、自らも日本に向かうべく用意を始める。
そこに、相棒がやって来た。
「どこに行く気なの? 達也」
「見ての通りだ。日本に帰る」
「……私を置いて?」
「ああ……今度は、シルヴィアを置いていく。それなら……」
最後まで言う前に、リーナは達也に抱きついた。
そして、達也の唇に自分の唇を重ねる。
「…………ッ!」
さすがの達也も、これには驚いた。
達也は最強といわれる男だが、まだ17歳。青年である。しかもこういうことには疎いから、激しく動揺した。
そんな達也にリーナが言う。
「離さないわよ……達也……」
「…………」
「私と貴方は、何があっても切れない相棒。お互いに助け合う相棒でしょ? その相棒を置いて一人で行くっていうの?」
「……リーナ。俺は遊びにいくんじゃない。日本に戻って蹴りをつけてくる。……妹とのな……そのために戻るんだ」
「なら、私も行くわ。相棒としてね」
「ダメだ。お前の実力は知っているが今回は危険すぎる。相手が相手だ。それに、上は戦略級魔法師が二人もまた国を離れると知れば、決して許さないだろう。それに、お前はまだ謹慎期間中だ」
「……言ったでしょ以前? 私と貴方がクラーク父子によって戦略級魔法師だって世界中にばれたあの時、貴方は私に「どうするんだ?」って言ったわよね? 私は言ったはずよ。「気にしない。だって、貴方がいるんだから」って」
「…………」
「達也。私は貴方と一緒ならどこまでも一緒についていくつもりよ……たとえそれが、地獄だろうとどこだろうとね……私は、貴方となら、地獄にだって堕ちてもいいって、思っているわ」
「…………」
すると、達也がフッと笑った。
「リーナ……お前はバカだ」
「…………」
「そして、俺にとってはこの世で最高の相棒だ……何よりもかけがえのない……」
そして、達也もリーナを抱きしめた。
二人には、もはや迷いも何もなかった。
ただ、どこまでも一緒だと誓い合った二人が、そこにいたのである。
達也はすぐに手を打った。
自分とリーナが無断で日本に戻れば、もはやアメリカに戻ることも無理になる。今度は、アメリカとて許さないだろう。
そこで、バランスとウォーカーを通じて、自分とリーナの日本渡航を認めるよう上層部に対して裏工作を開始した。
バランスはカノープスの反乱などでスターズの魔法師の多くが失われていることを危惧している。これはウォーカーも同様だ。
アメリカの覇権を維持するためには、どうしても達也とリーナと言う二大魔法師はまだまだ戦力として必要である。
そして、上層部は期限付きで両名の渡航を許した。
ただし、期限内に戻らなければ、今度こそアメリカ側も容赦しないという決意をもって臨んでいる。
こうして、戦略級魔法師である司波達也とアンジェリーナ=クドウ=シールズは再び日本に向かったのであった。
日本の地で、最後の大決戦が始まろうとしていた。
次回は「格の違い」です。