誰もが、その光景に我が目を疑っていた。
大黒竜也ひとりをのぞいて。
運動場の中央に平然と立っているのは金髪の美少女であるリーナ。
あおむけに倒れているのは副会長の服部である。
…………。
服部は、勝負が始まると基礎単一系振動魔法を使ってリーナを10メートルほど吹き飛ばして、戦闘不能にするつもりだった。女性に手をかけられない気持ちがまだ、この時点ではあったのだ。
ところが試合が始まると、リーナのそれまで柔らかい目に殺気が生まれた。
「ッ!」
服部が一瞬ひるみ、その一瞬をリーナは逃がさなかった。
目にもとまらぬ速さで服部の前方に移動すると、服部の腹部に拳を突き入れたのである。
「カハッ!」
服部がうめき声をあげる。
女性のパンチだから重さなどない。腹筋で受け止めてやろうとしたが、それは間違いだった。
(なんて重さだ……!)
服部が腹を抑え込む。それを見てリーナが攻撃を繰り返す。
一気にワンサイドゲームになった。
パンチ、蹴り、掌底と全てにおいてリーナは正確に服部に決めている。
服部は防戦一方しかできない。
そして、
「これで終わりです。先輩」
リーナが、服部の顎を掌底で突き飛ばした。
服部は最早うめき声もあげれない。立ち上がることもできない。
それを見た渡辺が、倒れた服部を呆然と見つめている。
リーナが言う。
「審判。まだやりましょうか?」
その言葉に、渡辺がハッと我を取り戻す。
「い、いや勝負、ここまでッ。勝者、アンジェリーナ=クドウ=シールズッ」
そして、リーナが右手を挙げた。
それを、竜也は無表情に見つめていた。
(リーナが負けるわけないだろ。あいつは俺の次に強いんだ。そうでないと、俺の相棒が務まるかよ)
(しかし、大人気ないなリーナの奴も……)
竜也は、担架で保健室に運ばれようとしている服部を見つめている。
(あの程度の奴、その気になればリーナなら最初の1撃で終わらせることもできたはずだ。それをしなかったのは、あの副会長によっぽど怒りをためていたということか……)
(しかし、リーナに体術を教えた師匠として言わせてもらえれば、あれではただの弱いものイジメだ。俺はあくまで戦闘で役立つのは魔法だけでないから、という意味でリーナには教えたつもりなんだがな……)
「竜也くんッ!」
エリカが怒鳴る。それに竜也が、
「な、なんだ?」
「なんだじゃないわよッ。さっきからずっと呼んでるのに、ひとりで何か考え事しちゃって!」
「え?」
竜也は自分の世界にいたため、それに気づけていなかった。
「あ、ああ。悪かった」
「リーナさんって、お強いんですね。知らなかったです」
美月である。
「あれでまだ30パーセントくらいの実力だ。ちなみに自己加速術式以外は、全て体術だよ」
「…………」
美月、エリカ、レオたちが驚いた表情で見つめる。
そこに、リーナがやって来た。
「ご苦労だったな。リーナ」
「あの程度の相手に、私が負けると思ってた?」
「いいや。思ってないよ」
と、竜也がリーナの頭にポン、と手を置いた。そしてなでる。
「勝利の褒美に、俺が昼飯をおごってやる。学食へ行こう」
そして、竜也とリーナ、その友人らが食堂に向かった。
このとき、リーナに特定の視線を向ける者が2人いた。
ひとりは司波深雪。
そして、もうひとりは十文字克人である。
竜也はそれに気づいてはいたが、気づいていないふりをしてその場を去ったのである。
すみません。短いうえに相変わらずの駄作です。
次回は「剣道部から始まる」を予定しています。