復讐の劣等生   作:ミスト2世

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計画の発表

 2096年。11月中旬。

 場所はUSNA領アルパカーキ空港。

 ここに、我らが主人公である司波達也がいた。

 ちなみに達也は以前、クラーク父子による策略でリーナと共にその正体がばれている。とはいえ、変装すれば案外ばれないもので、この時も変装して民間人の中に平然といた。

 その中で、達也は空港のロビーにいる。

 そんな中、達也は腕時計に目を通した。

 そしてアナウンスが入る。

「そろそろ……か……」

 達也は到着客出口に視線を移す。しばらくすると、そこへ人の波が押し寄せた。

 そんな人の波の中で、達也は一人の目当ての人物を見つけた。

 そして声をかける。

「……迎えに来てくれたんですか」

 女性の声であった。

「ええ。私の片腕としてこれから働いてくれる女性に、失礼はできませんからね」

「そうですか……直接お会いするのは久しぶりですね。大黒竜也くん」

「ええ。そうですね」

 と、達也がわざとらしくここで咳払いする。

「市原先輩。いえ、一花鈴音先輩」

 

 市原鈴音。かつて達也が第一高校に在籍していたときの2年上の先輩である。

 その彼女がなぜここにいるのか。それは、達也がエスケイプス計画の実行に向けて必要としたひとりが、彼女だったからである。

 …………。

 あまり接点のなかったこの二人が急速に接近するきっかけ。それは九校戦であった。

 あのとき、達也はエンジニアとしてCADの調整を担当した。

 その腕は余りに見事で、市原鈴音は一度、達也と話をする機会を持った。

 やはり技術者としての知識が豊富な二人である。すぐに意気投合した。ちなみにこのとき、リーナが二人が話をしているのを隠れて見ていたのはいつものお約束であったが。

 とはいえ、意気投合した二人。すぐに話はとんとん拍子に弾んだ。

 そして、

「大黒くん。私の目指している研究テーマは重力制御魔法式熱核融合炉の実現です」

「!」

 達也が驚いたように鈴音を見つめる。

「魔法師の地位向上。それも政治的圧力によってではなく、経済的必要性によって、魔法師の地位を変えるのです。魔法を経済活動に不可欠なファクターとすることで、魔法師は本当の意味で兵器として産み出された宿命から解放されます。重力制御魔法式熱核融合炉はそのための有力な手段になると考えています」

「…………」

 達也は、目の前にいる女性の聡明さに驚いた。自分以外にそんな考えを持つ「高校生」がいるとは思わなかったからである。

 経済的便益の提供による魔法師の地位向上は20年余り前から提唱されている。しかし実現の兆しは見えていない。今でも魔法師の主な用途は、軍事目的である。

 世界情勢が小康状態の現在は、実際に兵器として使用される事例は減少している。しかし魔法師の開発─魔法の開発ではなく─は、軍事利用を目的とするものが依然として9割を占めていると言われている。

 だが、それは現状では仕方のないことだった。民生に転用可能なほとんどの魔法は、機械技術で代替できる。温度をコントロールする技術も、物体を加減速する技術も、魔法ほど劇的な効果は得られないとしても、社会活動に必要なレベルであれば、非魔法技術で安定的に供給することができる。わざわざ魔法で代替する必要はない。高度に発達した自動機械を魔法師に置き換える必要はない。機械を操作し、プログラムするのに魔法技能は必要ない。現在の科学技術では実現不可能なテクノロジーが魔法により実用化され、それが社会に必要とされる、そんな状況が作り出されない限り、「経済的便益による魔法師の解放」は理想主義者の空想に過ぎない。

 その一方で、重力制御魔法式熱核融合炉もまた、達也のオリジナルではない。こちらは核融合炉の研究が行き詰まった50年前から、魔法によって実現できないかどうかが研究されている。しかしこの研究も、現在では下火となっている。

 魔法師の地位向上と重力制御魔法式熱核融合炉の実現を結びつけて論じる者は、少なくとも現在においては、ほとんど見られない。

 このとき、達也は彼女と関係を持って連絡を取り合う仲となった。

 そして、すぐに彼女の素性を調査した。

 彼女の実家・市原家が元々、一花家という数字付きナンバーズの一家であったことがこの時に判明した。そしてその一花家が研究していた魔法が人体に直接干渉する魔法であったため、研究のためには人体実験が必要となり、それが故に一花家が数字を剥奪されて市原と改名せざるを得なくなり、いわゆる数字落ち、すなわちエクストラとなってしまったことも。

「彼女の頭脳は、俺の片腕にどうしても必要だ……」

 そして、達也は動いた。

 九島烈を動かしたのである。

 この頃、九島烈は九重八雲のために負った傷から回復していた。その烈に、達也は求めたのである。

 一花家のナンバーズの復帰を。

 勿論、これはすぐにできることではない。だが、烈という多大な影響力を保持している男が動けば、話は別である。

 一花家の復帰には反対意見もあった。だが、烈の存在はやはり大きかった。

 烈の一押しで反対意見は黙らされ、市原家は一花家として復帰し、ナンバーズになった。

 そして、その見返りに達也は鈴音に渡米と自身への協力を求めたのである。

 このとき、達也は自分が四葉の人間であること以外の全てを鈴音に対して明かしている。

 鈴音はさすがに驚いたが、そこはやはり聡明なのだろうか。

「わかりました。私の夢の実現のために、協力しましょう」

 そして、鈴音は渡米したのであった。




次回は「計画の発表、その2」です。
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