USNAにその報告が入ったのは、事件から数日後のことである。
その報告は、基地内において、スターズの主だった人物を集めて行なわれた。
「日本の伊豆において新ソ連の戦略級魔法、トゥマーン・ボンバを撃たれた模様」
「その撃たれた場所に、スターズ総隊長である大黒竜也中佐がいたようだ」
「大黒中佐の生死は不明。また、トゥマーン・ボンバにより伊豆の市民が負傷したことも確認されている」
それらの報告を聞いたとき、達也から留守を任されていたアンジェリーナ・クドウ・シールズは頭の中が真っ白になった。
何を言ってるのかすぐに理解できなかった。
-達也に対して戦略級魔法が撃たれた-
-私の前任者のシリウスを葬り去ったあの忌まわしいトゥマーン・ボンバで-
-達也の生死はわからない-
-達也には再成がある-
-だから、達也は死なない-
-必ずや、達也は私のもとに戻ってくる-
-達也だって、そう言っていたじゃない。出立前に-
だが、達也の再成は無敵ではない。死が定着すれば達也だって死ぬ。
戦略級魔法を撃たれて、達也は-。
リーナは余りのことに、席からガクッと崩れて倒れてしまった。
「少佐どのッ!」
リーナの副官的地位にあったシルヴィア・マーキュリー・ファーストがリーナを抱き抱え、すぐに医務室に運んだ。
このことを聞いて、喜んだ者たちがいた。
アレクサンダー・アークトゥルスにシャルロット・ベガたちである。共に少尉である。
この二人、実は以前、カノープスが反乱を起こした際にカノープスに協力して共に反乱を起こした。反乱はカノープスに協力した者が思ったより少なかったことに、達也の反撃ですぐに鎮圧されてしまった。
反乱が鎮圧されると、達也はすぐにカノープスを処分し、さらにそれに協力したメンバー、つまりベガたちも処分しようとした。
ところが、これに反対したのがリーナだった。リーナは彼らを許すように達也に求めたのである。
「彼らは私たちと共に死線を潜り抜けてきた仲間よ。どうか寛大な心で慈悲を授けてあげて……」
それに対して、達也は最初は受け入れなかった。
「リーナ。お前は甘い。甘すぎる。奴らは反乱を起こしたんだ。許すわけにはいけない。奴らは、殺すしかないんだ」
だが、リーナは達也に強く彼らを許すように求めた。
さすがの達也も根負けし、やむなくカノープス以外は降格のみで許したのである。
ただし、それを達也やリーナの慈悲ととるか、それとも逆恨みするかは彼ら次第であった。
そして、それが悪いほうになってしまった。
もともとベガは、リーナや達也より10歳以上年上で、階級で自分が劣っていることに不満を抱いていた。そのため、リーナや達也に対して私怨を抱いていた。
今回の降格についても、本来なら死刑なのを寛大に許してもらったととらえずに、むしろ年下の小僧っこたちに情けを受けた、と逆恨みする始末だった。
アークトゥルスはリーナや達也に反抗的ではないが、親密でもない。
ただし、達也の激しいやり方には不満を抱いていた。
達也はある意味でやりすぎる時がある。カノープスは軍事法廷での弁明の機会も与えられず、達也によって処分されている。そのため、達也たちとは心理的な距離があった。
そして、アークトゥルスの旧部下、アルフレッド・フォーマルハウト軍曹も反達也、反リーナのひとりとして以前の反乱で処分されていたが、そのために逆恨みしていた。
いや、それだけではない。
実は達也はリーナの妊娠を隠していたのだが、それはベガには見破られていた。
ベガは結婚も出産も経験していないが、リーナが妊娠していることはすぐにわかった。
リーナが訓練中、あるいは更衣室などで腹部を愛しそうにさすったり、柔らかな愛しさの溢れる表情を時折見せたりすることで、彼女にはすぐにわかった。
そして、その腹の中にいる新しい生命の父親が誰かもすぐにわかった。
(あいつら……軍の中で何てことを……)
こうして、ベガは決意した。
スターズで、再び動乱が起きようとしていた。
次回は「逃げよ、リーナ」です。