異世界に行こう(凍結)   作:紺色メガネ

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13話 バノス村

 

タルクスを出てバノス村に向かう道中、歩き始めてから6匹目となるスライムを焼いた時に頭の中でファンファーレが鳴った。

 

 

『おめでとー、レベル5になったよ。

 ついでに火魔法のレベルも上がったよ。

 …………これでいい?ディバイン?解ってるよ、せめてレベルアップ通達はやれって言うんでしょ?いいですよー、やりますよー。でも、この音楽必要あるの?面倒なんだけどー。

 ……………え?繋がってる?あ、そっか、このボタンね。えいっ』

 

 

可愛らしい掛け声とともに念話が切れる。ディバイン様も大変だな、レベルアップ通達だけでも嬉しいです。

 

あまり魔物を倒してない気もするけどレベルが上がったみたいだし、ステータス確認するか。

 

 

「ステータスオープン。」

 

 

 

 

 

名前:ソウヤ・カニエ

種族:人族 異世界人

性別:男

役職:迷い人 G級冒険者(10/1000)

状態:普通

レベル:5/40

HP:150/150

MP:3537/3537

SP:40/40

攻撃:31

防御:22

魔力:36

速度:24

運:16

 

《スキル》

・初級火魔法(2/10)

 →火の球(ファイアーボール)

  火魔法消費MP減少(小)

 

・異世界言語翻訳

・鑑定

・アイテムボックス

・異世界の女神ナチュムの加護

・月を追う銀狼ハティの加護

 

《称号》

・異世界の女神ナチュムの加護を受けし者

・月を追う銀狼ハティの加護を受けし者

 

 

 

 

 

なんか大幅に上がってる!もしかして隠された力とか?5の倍数で大幅アップとか?……んー、5の倍数説が濃厚かな。レベル5になるまで結構経験値必要だったし。10になった時にも大幅アップしたら確定だ。

 

それにしても鑑定最適化してから装備のプラス値が見えなくなった。装備品の鑑定でも表示されないし、もうちょい細かく設定すれば良かったな。

 

そして火魔法もレベルアップとはナチュム様の加護のおかげだな。火魔法限定だけど消費MP減少(小)はなかなか美味しいのではないだろうか。そもそものMP量が人族最高峰だから実感ないけどさ。

 

旅が始まって1時間ほどで美味しい収穫だ。今回は問題もなく良い依頼になりそうだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてお昼頃、時計などないから腹が空いたら昼と決めているだけだが。

 

アイテムボックスからバケット内の包みを1つだけ取り出す。無駄に自室で換装(かんそう)をしまくっていたわけではない。まとまっている物でも1つだけ取り出すなんて造作もない。

 

サンドイッチをもくもくと食べながらも火魔法を使ってみる。地面に打ち込むと火事になりかねないので空に打ち続ける。スライムに打ってる間も徐々に魔法になれてきたので、ついには無詠唱で発動できるようになった。

 

 

『火魔法のレベルが上がったよー。……あ、ファンファーレ忘れた。まぁ、いいよね。』

 

 

おー、昼飯食い終わると同時にレベルアップか。さて何が使えるようになったのかなー?

 

 

「変化したステータスだけオープン。」

 

 

これなら変化したやつが解りやすいし見やすい。MP変化をいちいち見なくてはならなかったので、編み出した技だ。今ではステータスを開いていなくても視界にHPとMPを表示できる。さらに楽になったな。

 

 

 

MP:3486/3537

魔力:38

《スキル》

・初級火魔法(3/10)

 →火の球(ファイアーボール)

  火魔法消費MP減少(小)

  火の矢(ファイアーアロー)

 

 

 

あれ、火魔法だけ表示しようと思ったのに。変化したステータスだけだと、減少したMPと少し上がった魔力も表示されるか。改良の余地ありだな。

 

火魔法第2の魔法はファイアーアローか、次の魔物に試してみよう。初めて使う魔法だし、詠唱しなくてはいけないのが面倒だけど。

 

昼飯を食べて腹も膨れたし食後の運動をかねて、バノス村に向かって歩き出すとしますかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、ゴブリン見っけ。」

 

 

薬草の採取のために道を外れて散策してる最中、遠くにゴブリン3体を見つけた。相手は気づいてないし、ファイアーアローの試し打ちしてみよう。換装して右手に火の魔法使い入門書を出す。そしてファイアーアローのページを開き、文字を読みとく。

 

 

「我、自らの魔素を糧として世界に力を顕現する。願うは火、形は矢。【ファイアーアロー】」

 

 

火で形成された矢が真っ直ぐにゴブリンに飛び、3体の内真ん中のゴブリンの胴体に突き刺さった。火の矢は刺さってからゴブリンを燃やした。

 

刺さるまでは矢として刺さってからは火として効力を発揮するのか、数が増やせれば使いようがありそうだな。これがほんとの火矢だー、なんて。

 

味方を殺した敵がどこにいるのか解らない様子のゴブリン2体は戸惑っている。それならもう1度お見舞いしてやろう。

 

 

「我、自らの魔素を糧として世界に力を顕現する。願うは火、形は矢。【ファイアーアロー】」

 

 

飛んでいく火の矢は今度は眉間に突き刺さり、ゴブリンの顔を燃やした。

 

 

「あちゃー、討伐証明の耳、回収できなくなったかな。」

 

 

間の抜けた声を耳にしたらしく、残ったゴブリンはようやく俺を見つけた。怒り心頭といった様子で全力疾走してくる。

その間にもう1度換装し、本と左腕についてる盾を愛刀と交換する。

 

 

75㎝ほどの長さで形状で言えば反りが少なく打ち刀に入るが、鋭さと長さで言うと太刀に入る。日本刀としては少し重く、その鋭さと相まって振り下ろす際には鉄さえも切り裂けそうなほど。鉄で鉄を切るなんてしたことないからな、できるのか解らないが。

 

鞘、柄が深い藍色、鍔は鉄の色だ。そして刀身は真っ黒で波紋まで黒い。素材に使った物の関係らしいが、中二臭くていけない。

 

1撃目でゴブリンのこん棒を上に弾き、2撃目でこん棒を持った手を手首ごと切り落とす。そして刀を横凪ぎして両足を真ん中ほどで断ち切った。片手と両足を失ったゴブリンはしばし騒いでいたが、首に突きを入れるとこと切れた。

 

 

ほへー、前から切れ味は良かったけど更に良くなってるな。斬った感触があまりなくて空ぶったかと思った。

 

3体のゴブリンの死体を丸ごとアイテムボックスに入れる。あとで時間があるときに解体の仕方を教えてもらおう。

 

 

「うしっ、薬草探すか。」

 

 

周囲が少し血生臭くなってしまったが、そもそも薬草を採取しに寄り道したんだ。今回の依頼で使ってしまうので予備で10枚ほど欲しいな。バノス村で使うなら調合もやるんだろうし、教えてもらうことにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

採取の結果としては薬草を30枚も手に入れることができた。後世に残す分もしっかり残してこの成果は上々だな。

 

元の道に戻り、空を見上げると太陽が真上にのぼっていた。

 

そろそろ2時といったところかな。門を出る際に見た時計が午前7時なので、7時間ほど歩いたことになる。あと5時間くらいで着くのか、結構遠いな。歩いて半日ってことは58㎞~72㎞ってところか?

 

街からこんな近くに村があるのはどうなんだろうかとか思わなくもないが、俺には解らないな。前に住んでいたところは、そもそも村とか県とかの区分けがなかったし、物語や歴史の中でしか知らない。これから沢山旅して知っていこう。

 

その最初の一歩がバノス村だ、困ってる村人を助けて調合や解体を教えてもらおう。そうしよう。

 

目標が決まれば速く着きたくなるのが人の心理だ。急がば回れって言葉もあるけど、居ても立ってもいられない。俺は村への道を走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体感時間で3時間ほど走るとようやくバノス村に到着した。

 

途中ゴブリンやスライムと戦ったり、癒花などを採取していたので更に1時間といったくらいだろう。

 

村の裏手には巨大な森が見える。あそこからゴブリンが出てくるのか。

 

しばらくすると日が沈むので、ゴブリンが出る夜までは宿屋で休ませてもらおう。まずは依頼主に会ってからだけど。

 

依頼書の写しを片手に村の中を彷徨く、すると村人の1人に声をかけられた。

 

 

「お、おい、あんた!依頼を受けて来てくれたのか!?」

 

 

彼は手元の写しを指差して言っているので、彼が依頼主なのだろう。

 

 

「あぁ、そうだ。ギルドで依頼を受けてな、あんたが依頼主?それで、どっちの……

 

 

「村長がお待ちだ、こっちに来てくれ!」

 

 

彼は最後まで聞かずに村の奥の他の家よりも少し豪華な家に走っていった。あれが村長の家なんだろうけど……依頼主村長だっけ?手元の写しを見ても村長とは書いてない。それとも村に来た冒険者は村長に挨拶するのが決まりなんだろうか。

 

 

「んー、ともかく行ってみるか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よくぞ来てくれた冒険者殿!このバノス村始まって以来の危機なのだ!しかし、タルクスギルドの対応の早さには感服いたす。こうも速く駆け付けていただけるとは。」

 

 

「は、はぁ……。」

 

 

ゴブリン10匹の討伐と薬草と癒花の納品でそんな危機に陥るなら、この村は何度始まって以来の危機に陥っているのか解ったもんじゃないと思うんだが。

 

 

「しかし、お1人で大丈夫なのですかな?もしや他にお仲間がいらっしゃったりは?」

 

 

「いえ、この依頼は俺1人で受けました。職員の方も俺1人で大丈夫だと。」

 

 

「なんと!そんなにお強いのか……!?しかし、タルクスギルドの御仁がそう仰ったならそうなのであろう。貴方を信じます。どうか、どうかこの村をお救い下さい。」

 

 

ついに村長は土下座まで初めてしまった。本当にこの村大丈夫なのかな、心配になってきたんだけど。戦力的な意味で。

 

 

「頭あげてください。夜に出るって話だったんで、それまで宿屋で休ませてもらいたいんですが良いですか?それと薬草と癒花はどこに納品すれば?」

 

 

「そ、それは構わないのですが、いつゴブリンどもがこの村を襲うか解らない状況なのです。その、ですな、なるべく早く討伐してほしく……。」

 

 

あれ、夜って話だったけどこんな時間から出るんだ。まぁ今も夜みたいなもんか、それなら夕飯だけもらって討伐に行こうかな。

 

 

「解りました、それなら夕飯だけもらっていいですか?すぐに森に行きますので。」

 

 

「はい!直ちに用意させますので、しばしお待ちください。」

 

 

村長は腰を痛めるんじゃないかという速度で立ち上がると、家の奥に走っていった。見た目70代なのに元気なおじいさんだな。

 

待つこと数分で豪華な料理の数々が出てきた。宿と飯がついてるのは知ってたけど、こんなに豪華だなんて。

 

 

「こんなに、良いんですか?」

 

 

「はい、どのみちゴブリンたちに蹂躙されれば無駄となる食材です。どうぞ、お召し上がりください。」

 

 

ゴブリン10匹にそんな大袈裟なと思う。でも折角のご好意なのでいただいておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ行ってきますね。討伐し終えたら戻ってくるので、その時に薬草と癒花納品しますから。」

 

 

「はい、いってらっしゃいませ。」

 

「「「いってらっしゃいませ!!」」」

 

 

最後には村人総出でお見送りだ。依頼に来た冒険者みんなにやってるんだとしたら、この村の人はいい人だらけだな。

 

彼らに笑顔で手を振りながら森の中に入る。さて、さっさと10匹倒して安心させよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行ったか……。」

 

「村長、本当にあの小娘1人で大丈夫なんでしょうか。」

 

「黒髪に黒の瞳。あの娘は夜半(よわ)じゃ。夜半とは強靭な肉体と大量の魔素を持つという。だからこそ1人で派遣されて来たのじゃろう。」

 

「し、しかし、相手はゴブリン100匹ですよ!?それにホブゴブリンまで確認されてます。さらに、この森に潜むゴブリンたちまで加わるとすれば、いくら夜半とはいっても1人では……。」

 

「いまはあの夜半の少女を信じるしかあるまい。」

 

「村長……。」

 

「あぁ、あの少女が死ねば、儂らも死ぬであろうな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バノス村を出て森に向かう途中で、ふと思い付いたことがある。

 

バノス村の裏手にある森、バノスの森って言うらしい。まんまだ。その森から出てくるゴブリンを村の方に通してしまうと、10体倒したとしても依頼としては成功とは言えないのではないか。まぁ討伐しかいわれてないけどね。気持ち的な問題なんです。

 

つまり、ゴブリンを打ち漏らさずに狩るにはどうすればいいか?ということなんだが、直ぐに結論がでた。

 

ここはハティの加護を使えばいい。怖くて使ったことなかったが対象と範囲を指定できるみたいだし、ゴブリンにのみあわせて使おう。

 

俺はいい案がうかんだと、さっそくハティからもらった加護を発動させる。範囲は良く解らないので、バノスの森全域にする。そんな広くもないだろ。

 

 

「月を追う銀狼ハティの加護を発動!

 対象はゴブリン、範囲はバノスの森全域。

 範囲内の対象を挑発する!」

 

 

狼の遠吠えが何処からともなく聴こえる。多分俺から鳴っているのだろう。お前たちの俺はここだと、俺と戦えと。

 

この時の俺は知らなかったんだけど、ハティの加護は対象として設定した種族なら全部を挑発してしまうらしい。つまりこの場合ならゴブリンだけでなく、ゴブリンの役職持ちとホブゴブリンまでもを挑発することになる。

 

更にはバノスの森は広く、ゴブリンの群れが住み着いていることも知らなかった。

 

俺が、それらを知ることになるのはもう少し後の話だ。

 

 

「さてさて俺はここだぞ、ゴブリンども。」

 

 

俺は意気揚々とバノスの森に踏み込んだ。

 

 

森の奥に光る無数の視線に気付かずに。

 

 

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