異世界に行こう(凍結)   作:紺色メガネ

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17話 とりあえず精霊のせい

 

 

朝早いというのにバノス村は慌ただしかった。怒声と焦ったような声が聞こえる。何かあったのかな。

 

騒ぎは村の中央、村長宅前の広場で起こってるようだ。心配そうにそちらを見ている村の人たちに挨拶しながら広場に向かう。挨拶した村の人が二度見してくるがそんなに驚くことだろうか、俺だって挨拶するよ?

 

広場に近づくに連れて何を話してくるのか明確になってくる。なぜ1人で行かせた!とかそれよりも早く助けに!とか。村の子供が迷子にでなったのかな?それなら俺も協力しよう。

 

話に混ざるために広場で話している一団に近づく。村長と……冒険者かな?昨日は見なかった顔だし、いかにも冒険者然とした格好をしている人が6人。彼らが冒険者なんだとしたらこの村に何で冒険者がいるんだろう。彼らも依頼受けたのかな?

 

 

「何かあったのか?協力できることなら力を貸すぞ。」

 

 

俺の顔を見た村長は幽霊でも見たような顔になる。さっき挨拶した村の人もこんな顔をしてたな。冒険者たちのほうは誰だこいつって顔。

 

 

「G級冒険者のソウヤだ。それで何があったんだ?」

 

 

俺が名乗ると冒険者たちまで驚いた顔になる。なんなの?俺が挨拶したら変か?

 

 

「お、お前……いや、そうか。まだゴブリンたちは森にいるんだな。ともかく無事で良かった、俺たちは森に行くから馬車でタルクスまで戻ってくれ。馬車は村の入口に停めてある、騎手に鉄の翼(アイアンウィング)のアックスからといえば乗せてくれる。」

 

 

アックスと名乗る冒険者6人のリーダーらしき人は、俺の話を聞かずに一息で捲し立てた。あの森にはゴブリンもういませんよ?

 

しかし鉄の翼一行はもう森に向かって行ってしまった。人の話を聞いてほしい。

 

 

「あ、あの、冒険者殿……。」

 

「何ですか、村長?」

 

 

俺同様置いてきぼりをくらった村長が声をかけてくる。なにやら申し訳なさそうだな。

 

 

「すみませんでした、別の依頼を受けて下さってたのですね。」

 

 

別の依頼?俺が受けた2つ以外にも依頼があったのかな、それで俺がそっちを受けたと勘違いしたってことか。

 

 

「どうやらそうみたいですね。これ依頼があったやつです。」

 

 

アイテムボックスから薬草、癒花5本ずつとゴブリン10体の死体を出す。薬草と癒花を村長に手渡して依頼書の写しに達成のサインをもらう。ゴブリンの死体のほうは持って帰って構わないそうだ。

 

報酬として調合の仕方を教えてくれと言ったら、調合の入門書と調合に必要な器材をもらった。他にもなにかと言われたが、特になかったので今度村に来たときにもらうと言って村を出た。

 

 

 

 

村の入口に停められているという馬車はすぐに見つかった。騎手の人に事情を話すと数時間で着くそうだ。

 

馬車は荷馬車のようで、屋根がついてはいるが乗り心地はあまり良くない。移動のためだけなら十分だし、文句を言うつもりはないが。

 

 

「なぁあんた、迷い人だって話だけど。」

 

 

どうにか寝れないかと悩んでいると、荷馬車の騎手席に座っている人が声をかけてきた。声からして少年のようだ、もうちょい年いってるかも思ってた。

 

 

「うん、そうだよ。それが?」

 

「いや、別になんでもないんだ。暇そうだったからさ、気を悪くしたなら謝る。」

 

 

別に気を悪くしてるわけではないんだけど、威圧的だっただろうか。気を使ってくれたのに悪いことしたな。

 

 

「そういうわけじゃないよ、気を使ってくれたのに悪いな。」

 

「……気にしなくていい。」

 

「………………。」

 

「………………。」

 

 

き、気まずい。どうしよう、何か話題ないかな。この状況を打開する情報がないかと、彼を鑑定しようとする。が、鑑定は了承を得ないと発動しないんだったよな。鑑定で階級とか解れば話題にしやすいのにな。

 

肩を落とす俺の目の前に半透明の板が出現する。これは俺のステータスじゃない。そして物体を鑑定したときのものでもない。他の人を鑑定したときと同じ表記の仕方だ。

 

 

「あー、あのさ、俺はソウヤって言うんだ。君の名前は?」

 

「……サンガ。」

 

 

ステータスに表記してある名前と同じだ。

 

 

「もしかしてさ、初級剣術のスキル持ってる?」

 

「……なんで解ったんだ?」

 

 

サンガはこちらを振り返りながら聞いてくる。それはステータスにあったからだけど、正直には言えない。

 

 

「雰囲気とか立ち振舞いがさ、何て言うか、風格が出てるんだよ。」

 

 

はい、嘘です。そんなもん感じとれませんとも。しかしサンガが嬉しそうなのでいいだろう。

 

このステータスは間違いなく今馬車を運転しているサンガのものだ。鑑定は相手に了承を取らなくちゃいけないんじゃなかったのか?

 

 

 

 

 

その後、剣術や調合のことについて教わった。話していると数時間は直ぐにすぎ、タルクスに着いてしまった。サンガは馬車を停めてくると言うので、俺は1人でギルドに向かう。

 

鉄の翼の任務はゴブリンを食い止めることと、俺を助けだしギルドに送り届けることだったらしい。何が起っているのか解らないけどサラさんに聞けば解りそうな気がする。それにカークに依頼達成を報告しなきゃな。

 

 

 

 

冒険者ギルドに入り、空いているカウンターにつく。しばらく待てば誰か来るはずだ。そして待つこと数秒でカークが飛んできた。

 

 

「あれ、ソーヤさん!?なんでここに!?」

 

「なんだよ、居ちゃ悪いのか?依頼達成の報告に来たってのに。あ、それとなゴブリンを大量に

 

「ちょ、こっち来てください!」

 

 

カークは来たときと同じ速度でギルドマスターの部屋に向かってしまった。今日はやけに話を聞かれない日だな。

 

カークに続いて部屋に入るとバルドさんはともかくサラさんまでいた。仕事中だったんじゃないのか?俺は邪魔だろう。しかし2人はそんな素振りも見せず笑顔になった。

 

 

「無事だったんですね、ソーヤさん!」

 

「おぉ、無事だったか坊主。」

 

 

ゴブリン10体の討伐でここまで心配される俺って一体……?悲しさで涙が出そうだ。

 

 

「ゴブリン10体くらい倒せますよ!?むしろその10倍倒してやりましたよ!カーク、どこか広い場所に案内しろ!」

 

「え、俺?それなら解体場が広いですけど……何するんです?」

 

 

カークに案内させて解体場とやらに向かう。後ろからバルドさんとサラさんも着いてきた。証拠を見せるのにちょうどいい。

 

解体場は証拠を全部出すのに十分な広さがあった。アイテムボックス内に入っているゴブリンを全部出す。

 

 

「「「………………は?」」」

 

 

大量のゴブリンを見た3人は開いた口が塞がらない様子だった。

 

 

「どうですか、俺もやればこんだけできるんですよ。そうだカーク、解体の仕方を教えてくれよ、こんだけあれば十分練習できるだろう?」

 

 

3人は驚いた表情のまま固まっている。話をふられたカークも応えてくれない。ほんとに今日はみんな話を聞いてくれないな、悲しい。

 

表情の固まったサラさんがゆっくり俺の前に歩みでてきて肩を掴む。近くていい匂いがするけど、少し怖い。

 

 

「ソーヤさん、説明を。」

 

「バノスの森に入ったら襲い掛かって来たんですよ。だから迎撃してですね。あ、あと森の奥に魔族が作ったゴブリンの村があったんですけど、きっちり燃やしてきました!」

 

 

思わず早口での説明になる。美人の無表情ってのは怖いもんなんだな。1つ賢くなったよ。

 

説明したにも関わらずサラさんはまた固まってしまった。何だろう、この先行きが不安な感じは。

 

 

「坊主、お(めぇ)がタルクスを出たあとにあったことを説明するから、お前もきちんと説明しろ。……とりあえずこの山を片付けて部屋に戻るぞ。」

 

 

言われた通りにゴブリンをアイテムボックスに入れる。そして固まったままのカークとサラさんを引きずって行くバルドさんの後を追った。カークはともかくサラさんは引きずらないでやってほしい。

 

 

 

 

 

ギルドマスターの部屋に戻るとサラさんはなんとか回復したようで、これまでの経緯を説明してくれた。

 

俺がバノス村に向かった半日後、バノス村にゴブリンの群れが向かっている知らせがあったこと。

バノス村を救うため、そして俺を助けるために急遽討伐隊を組んでバノス村に向かったこと。

だというのに俺が1人でひょっこり戻ってきて、あろうことかバノス村に向かったというゴブリンを全滅させていて、ひどく驚いたこと。

 

さて、次は俺が説明する番か。とは言えさっきの説明で全部なんだけどな。俺は村に着いてから、タルクスに戻るまでの流れを全て話した。

 

バノスの森に入るとゴブリンが沢山いたこと。

泉の精霊のこと、そして森の奥にゴブリンの村があったこと。

精霊いわくその村は魔族が作ったもので、今回の騒動の首謀者であるだろうこと。

 

全てを話すとバルドさんは何やら考え込んでしまった。何か変なところでもあっただろうか。

 

 

「バノス村の連中が坊主のことを防衛依頼にきた冒険者とでも勘違いしたんだろ。魔族のことも解った、他のゴブリンが潜めそうな場所も探りを入れてみる。おい、カーク準備しろ。」

 

 

カークは慌てて部屋から出ていった。準備しろって言われただけで何をすればいいか解るのか。案外カークは優秀なのかな。

 

 

「……んでだ、坊主。お前さんはどうやって100をこえるゴブリンを撃退したんだ?」

 

「そりゃあ魔法で………あ、」

 

「ほうほう、魔法であの数をか。どんな魔素量なんだ?」

 

 

人族最高峰並みですとは答えられない。アイテムボックスや鑑定のことも話せば厄介ごとになる身なんだ。これ以上規格外なことをするのは不味い。どうにかして言い訳をしなければいけないのだが…………あ、あいつを使おう。

 

 

「泉の精霊ですよ!えーと、精霊が手を貸してくれて、というか全てやってくれたんです!」

 

「泉の精霊が斬ったり焼いたりできんのか?あの傷口はどう見ても刃物によるものだった。それに丸焦げのやつもいたぞ?」

 

 

ぐうの音も出ない。出ないけど認めるわけにはいかない。必死に目線を反らして知らんぷりする。

 

 

「…………はぁ、そういうことにしとくか。サラ、お前もそれでいいな?」

 

「はい、3人の秘密です。」

 

 

3人ってことはカークは含まれてないんだな。哀れカーク。

 

 

「でもな、そうすると坊主に討伐報酬が入らない可能性があるんだぞ?バノス村の連中が精霊のお陰だって言えば坊主に報酬を払うことはできなくなる。」

 

「それで大丈夫です、精霊のお陰ですか。」

 

 

報酬をどうするかは3日後くらいに解るらしい。俺はそれだけ聞いて部屋から出る。

 

 

 

 

 

朝から何も食べてないので食堂に行きたいが、金を持っていない。せめてご飯代だけでも俺がやりました!と言えば良かったが後の祭りだ。

 

街の外でスライムでも燃やして飯代を稼ごうとギルドを出ようとしたらカークに声をかけられた。

 

 

「ソーヤさん!依頼達成の報告聞いてないです!」

 

 

あ、忘れてた。達成した3つの依頼を報告すると報酬として銀貨1枚をもらった。バノス村の2つは報酬は現物支給だったので、これはスライム10匹の分だ。それにしては多すぎないか?

 

 

「俺が依頼勧めたせいで、大変な目にあったでしょう?少ないですけど迷惑料です。」

 

 

俺がその案にのったわけであってカークに落ち度はないのに。頭を下げるカークに、独り立ちしたら飯奢るよと言ってギルドを出た。

 

向かうはユーちゃんのところだ。サンドイッチの礼を言いにいこう。

 

 

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