異世界に行こう(凍結)   作:紺色メガネ

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20話 奴隷との出会い

 

タルクスの東門で2人とは別れた。宿の名前は話したので後で落ち合う予定だ。

 

俺はギルドに行かなくてはいけないし、2人はお嬢様を連れてタルクスの領主に会いに行かなくてはいけないらしいから別行動のほうが良い。

 

カインズは礼ができなくて申し訳なさそうだったけど、リンクに諭されて諦めたようだ。リンクは俺の目的が解ってるし協力してくれたんだな。

 

門の馬車用通り口は混んでいて、2人がタルクスに入れるのは少し先となる。俺は騎手席から飛び降りて通常の通り口に向かう。2人に手を振ってタルクスに入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギルドで依頼達成を報告したあと、リンクに聞いた奴隷商の元に向かった。裏路地に入っていりくんだ道を進む。何度目かの角を曲がると、昔画像で見たサーカスのテントのようなものが建っていた。

 

 

「おや、お客様ですかな?」

 

 

入口から身なりの良い男が出てきた。サングラスをしていて目元が見えない。服の豪華さと相まって胡散臭い感じになっている。

 

 

「そうだ、ここは奴隷を売ってるんだよな?」

 

 

裏路地を進んだ先にある怪しげなテントがそうでなかったら逆に驚くのだが。

 

 

「ええ、ええ、私めは奴隷商人にございます。今回はどのような奴隷をお探しで?」

 

 

奴隷商の男に促されてテントの中に入る。中には奴隷が入った檻が並んでいた。なんだかペットショップみたいだな。中3の時に見たアニメの、主人公たちが猫を買う時に向かった店の並びとよく似ていた。

 

 

「入口に近いほど高価な奴隷となっております。お客様くらいですと……奥の商品でないと手が届かないと思いますよ?」

 

 

入口近くの檻にかけられている値札は、とても手が出る値段ではなかった。檻も大きくて、待遇も良さそうだ。あくまで奴隷としての範疇だが。

 

 

「そうみたいだな、奥を見せてくれるか?」

 

 

テントの中は何区切りかあり、奴隷のランクごとに区分けされているらしい。その中でも最後から3番目のところに通してもらう。

 

 

「これ以上下げてしまうと、お見せできるものではありませんので。お客様のためにもここまでにするのが良いかと。」

 

 

たしかに死に近い生物が出す、死臭や腐臭が臭ってくる。3年前なら大丈夫だったが、最近は少し耐性が落ちてきたな。

 

 

「あぁ、ここで選ぶよ。」

 

 

手持ちは銀貨で182枚。銀貨80枚くらいで戦える奴隷が欲しいのだが……なかなかいないな。

 

 

「銀貨80枚程度で戦える奴隷はいないか?」

 

「そうなりますと……獣人族や混種になりますね。それでもよろしければこちらへ。」

 

 

檻の壁を横目に同じ区画内の奥へ進み。ここら辺は獣人が多いな。それとさっきいた場所より少し安い。

 

 

「銀貨80枚程度ですと、こちらですね。」

 

 

奴隷商が指差したのは3人。

右から、左目を瞑った蛇系獣人っぽい男性、獣度合い強め。

右肘から先のない豚系獣人の女性、鼻と耳以外は人間に見える。

痩せている少年、人間みたいだけど目が爬虫類みたくなっている、トカゲみたいな尻尾も生えてるし。

 

 

「右から90枚、75枚、60枚です。」

 

 

蛇系獣人の男性は片目がなくても戦闘はできる。豚系獣人の女性は戦闘は難しくても女性ということで高め。トカゲ少年はこれからに期待、ってところかな。ここはトカゲ少年にして、一緒に強くなってくのも良いかもしれない。

 

買ってから後悔はしたくないので鑑定もしとくか。3人を順番に鑑定していく。ふむ、豚系獣人の女性とトカゲ少年はともかく、蛇系獣人の男性まで俺よりステータスが低いな。

 

これは奴隷が弱いんじゃく、俺が強くなったと考えた方がいいかな。どのみち一緒に強くなってく方針でいいんだし。

 

 

「……ん?なぁ、奴隷商、そっちの布がかかってるのは何が入ってるんだ?」

 

 

鑑定を発動していると視界の端に何か引っ掛かった。布がかかっているので詳しくは見れないけど、生物が入っているのは確かみたいだ。

 

 

「こ、こちらは……処分品でして、明日にでも処理してしまうものなんですよ。……ご覧になりますか?」

 

 

奴隷で処理ってことは殺されるんだよな。見てしまうと情がわいてしまうかもしれないが、一応見ておきたい。

 

 

「大丈夫だ、見せてくれ。」

 

「解りました。……案外お客様なら気に入るかもしれませんね。」

 

 

奴隷商がどこからか呼びつけた大男が布を外す。そこには檻があり、他と同じく奴隷が入っていた。

 

髪の上に猫耳が乗っている、そして体の後ろには臀部から伸びているであろう尻尾が見える。他の部分は人間で、目は黄色い。だが、それよりも目に入ったのは髪の色だ。

 

 

「黒いな。」

 

「えぇ、こちらの娘は夜半(よわ)でして。獣人差別と夜半差別があるこの国では、どちらか片方ならまともな売れ方をするんですがね。」

 

「虐待用ってことか。」

 

 

少女の体には鞭で打たれたような痕や火傷が見える。ステータスで見てもHPが減ってる、けっこうボロボロだな。

 

 

「でも虐待用なら差別意識の両方を兼ね備えてるこいつは売れるんじゃないのか?」

 

「実はこの娘、猫系獣人特有の奇病を持っていまして。」

 

「奇病?どんな病気なんだ?」

 

 

ステータスを見ても病気とはあるが奇病とはない。ただの病気が猫系獣人だと奇病とか?

 

 

「おや、ご存じない?

 猫系獣人では100年に1度ほど、片目の色が違うものが生まれるそうです。その病気は生まれついての視力低下、そして徐々に視力が下がっていき、最後には盲目になってしまうそうです。

 一部の猫系獣人の里では先祖返りとして崇められるそうですがね。」

 

 

それはオッドアイじゃないか?オッドアイの視力低下の話はデマのはずなんだけど、こっちの世界では医学的に証明されてないとか?

 

 

「ふーん、でもこの子は両目とも黄色いぞ?」

 

 

檻の中の少女は弱々しい視線を自らの爪先に向けており、その目は黄色く闇に光っている。

 

 

「この娘は死に瀕した時だけ左目が赤くなるそうです。そのため虐待用に買われたお客様も気味が悪いと返却をされるんです。」

 

 

獣人で夜半で奇病持ち。どれか2つならまだ良いけど3つ揃うと厄介者か。それで買い手がつかなくなって処分品行きってところだな。

 

足を折って座り、檻の中の少女と目線を合わせる。奴隷商と大男に聞こえないよう小声で少女に声をかける。

 

 

「……ちょっと鑑定してもいいかな?」

 

「…え?……はい。」

 

了承をもらったところで改めて鑑定をかける。俺は承諾をもらわなくても鑑定できるが、許可をもらってからだと全ステータスをみることができるようだ。朝、親父さんに昼飯の相談をしているときに試してみるとできたのだ。もちろん親父さんには口をつぐむ約束をしてもらった。

 

 

 

 

 

名前:ヨミ

種族: 獣人族猫種 夜半(よわ)

性別:女

役職:奴隷

状態:風邪(中) 空腹(中) 衰弱(小)

レベル:1

HP:47/76

MP:33/33

SP:29/29

攻撃:18

防御:12

魔力:21

速度:18

運:2

 

《スキル》

・魔眼(0/10)

《称号》

 

 

 

 

 

レベル1なのに、俺のレベル2の時よりも強いな。獣人族はMPと魔力が低くて、他が高い。夜半はMPと魔力が高いって話だから悪いところを補っていて強いのか。

 

まぁ、そんなことはどうでもいいんだよ。……魔眼ってなに!?スキルレベルは0だけど、すごい気になる。ステータス欄にも薄ぼんやりとしか表示されてないし、まだ発動してないってことかな?もしかすると奇病の左目もその魔眼なのかも。

 

 

「よし、この子を買うよ。いくら?」

 

「明日にでも処分する予定の奴隷ですから、銀貨50枚で良いですよ。本当によろしいんですか、返品は受け付けませんよ?」

 

 

大丈夫だと念押しして銀貨50枚を手渡す。奴隷商はそれを大男に渡すと奥に下がらせた。

 

 

「では奴隷紋を作動させるのでこちらにどうぞ。」

 

 

促されてまた別の区画へ入る。猫耳少女は檻ごと先程とは別の大男に運ばれて後ろをついてきている。

 

奴隷紋についてはリンクから聞いている。奴隷に刻まれた奴隷紋と呼ばれる紋章に、主人となる者の血が混じった特殊な液体を流すのだという。それで奴隷の登録ができ、命令違反のさいなどに罰を下せるらしい。

 

奴隷商に渡された小皿に、指先をナイフで切って血を流す。この傷は後で回復魔法の練習にしよう。

 

奴隷商は俺の血と謎の液体を混ぜ合わせ、筆ともにこちらに渡してきた。檻の中から少女を出して、首襟から見える胸元の紋章に塗った。紋章が起動して痛むのか少女は少し顔をしかめる。

 

紋章が薄く光り発動が完了した。光が収まるとうっすらとしてい紋章が真っ黒になっていた。

 

 

「これでこの奴隷はお嬢様の物です。」

 

「ふん、買い戻したいって言っても売らんぞ。」

 

 

奴隷商と薄暗い笑みを浮かべあうと、テントを後にしようとするが、まだ聞いていないことがあった。

 

 

「そう言えば命令違反とかの設定はどうするんだ?」

 

「奴隷紋に触れて設定と言えば発動します。初めから危害を加えることの禁止などを設定していますので、ご安心して触れてください。」

 

試しに紋章に触れてみると、ステータスと同じような半透明な板が出現した。そこにはチェック項目が多数あり、これにチェックをつけることで行動を縛るらしい。

 

 

「それから、リリンスハート家には気を付けたほうがよろしいでしょう。あの家の当主は獣人差別反対派で奴隷解放派ですからな。私たちも目をつけられておりますので。」

 

「それにしては随分と余裕のある商売してるじゃないか。昼まっから奴隷売りしてるくせに何を言う。」

 

 

裏路地のいりくんだ場所にあるとはいえ、表通りからそう離れてはいない。摘発があったら直ぐにバレるだろう。

 

 

「おやおや、これは手厳しい。いえね、摘発の際は何時も事前に匿名のかたが情報をくれるのですよ。……何方だかは知りませんが助かっておりますよ。」

 

「……なるほど、この国の貴族も一枚岩じゃないってことか。」

 

「はて、なんのことやら。深入りしないほうがいいことなどこの世にごまんとありますから。」

 

 

恐らく、そのリリンスハート家を快く思わない貴族が情報を流しているのだろう。良くある話だな。

 

さらに暗い笑みを浮かべる奴隷商に別れを告げて裏路地に戻る。時折、少女がついてきているか振り返って確認すると、下を見ていながらもついてきていた。

 

 

「あ、靴履いてないな。裸足だと痛いだろ、これ履いて。」

 

 

アイテムボックスから冒険者の靴を取り出して渡す。サイズが思いのままなので少女にも履けるサイズにしてから渡した。

 

 

「……………………。」

 

 

しかし少女は靴を持ったままこちらを見上げている。

 

 

「サイズあわないか?それとも靴下履かないと靴履きたくないとか?」

 

「……いえ、私は、奴隷ですから。……靴など履くわけには、いきません。」

 

 

そして持ったままこちらに返してきた。

 

 

「俺は迷い人だから解んないんだけど。奴隷だからって靴を履いちゃいけないなんてことはないと思うぞ?もしそんなことがあったとしても、俺が履いてほしいから履いてくれ。……これは命令ってことで。」

 

 

使いたくなかったけど、少女の奴隷紋に手を当てて脅してみる。すると少女は靴を履き始めた。これで痛くはないだろう。

 

あとは格好がなぁ。奴隷商から買ったときの服装なので、摩りきれた布の服だ。これで表通りを歩くと衛兵さんに声をかけられるかもしれない。

 

さらにアイテムボックスからダンジョン産の布の服を取り出す。フードをつけて、更にズボンのところをスカートにしてみた。それを少女に渡して着替えるよう言うと、その場で脱ぎ始めた。

 

慌てて背を向けて着替え終わるのを待つ。衣擦れ音が聞こえなくなるのを見計らって振り返り、お説教をする。

 

 

「女の子がいきなり着替え始めちゃダメだろ?」

 

 

「……私は奴隷で……貴方は、ご主人様です。私は、裸を見られることを、恥じることは……禁じられてます。」

 

 

そんな設定してやがったのか、あの奴隷商は。こんな年端もいかない少女に何を教えてやがる。フードを被せて、諭してやる。

 

 

「奴隷とか主人の前に、君は女の子で俺は男だ。女の子が男の前で裸になっちゃいけません、解った?……あとで設定変えてあげるから、今後はしちゃダメだよ。」

 

 

解ったような解っていないような少女は、首をかしげたまま、後ろをついてくる。

 

 

「…………ならばヨミは、何のために、買われたのです……?」

 

 

少女の声はか細く聞き取れなかったが、気にすることなく表通りに出た。これを聞き出しておいた方が良かったと後悔するのは少し先の話。

 

 

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