異世界に行こう(凍結)   作:紺色メガネ

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22話 ファッションセンス

 

 

「ヨミちゃん!このワンピース着たら絶対可愛いよ!」

 

「ヨミー、この服も可愛いぞ?ヨミに似合うと思って選んでみた。」

 

 

現在俺たち3人はユーちゃんおすすめの服屋に来ている。そこでヨミの普段着を2着ほど買う予定だ。

 

 

「え、えっと……ご主人様の方で」

 

 

ヨミはユーちゃんが持っている白いワンピースではなく、俺が選んだ黒いブラウスと膝下のスカートを取った。

 

 

「えー!?」

 

「よっしゃ!ヨミは解ってるな。」

 

 

服屋について早々にユーちゃんから、どちらがヨミを可愛く着飾れるか勝負を申し込まれた俺は、さっそく1勝を勝ち取った。

 

 

「ワンピース可愛いのにー。」

 

「あの、ユーちゃんさんの方も可愛いと思います。」

 

 

ヨミは最初ユーちゃんを何て呼んでいいのか悩んでいたらしく、俺が「ユーちゃんで良いんじゃない?」と言ったら変な呼び方をするようになった。

 

 

「なら勝負は引き分けってことにして、買うのはこの2着にするか。ヨミもそれでいい?」

 

「はい、ご主人様。」

 

 

ヨミは俺の言うことに否と言わない。奴隷紋には命令違反で罰を与える設定がしてあるが、嫌だと言うくらいなら発動しないようになってる。だからヨミも好みくらいは言ってほしいんだけどな。

 

 

「3点で銀貨32枚です。お買い上げありがとうございました。」

 

 

営業スマイルを張り付けた女性に見送られて服屋を出る。あの人、やけに俺たちを見ていたけど何だったんだろう。

 

 

「折角だったら更衣室貸してもらって着替えて行けば良かったじゃないですかー。」

 

「これから装備品見に行くのに、動きにくい格好してたらダメでしょ。」

 

「むぅ、確かに。」

 

 

隣を歩くユーちゃんをからかいながら防具が売っている店に向かう。残りは銀貨101枚、武器は俺のを渡せばいいとして、防具は何がいいかね?

 

 

「いらっしゃい!うちの防具はタルクス一だよ!」

 

 

悩んでいるうちに防具屋に着いてしまった。にしても、タルクスで1番って言う店が多いんだけど。どこの店もタルクス一ですよ!って言ってくる。

 

ともかく防具は店内を見てみて決めようか。ヨミに確認を取りながら、どれが良いかを聞くんだが……良いとしか言わないんだよね。どれがあってるかが解らない。

 

俺が悩んでいると、店頭で声をかけてきた見習いの少年に肩を叩かれた。

 

 

「ちょっとごめんね。……やっぱり、バノス村の英雄だ!師匠呼んできますね!」

 

 

俺が振り返ってから数秒で、見習いの少年は奥に走り去ってしまった。そのあだ名、もう広がってたんだな。

 

店内を物色しながら待つと、奥から師匠らしき人が現れた。

 

 

「あんたがバノス村の英雄か。」

 

「英雄だなんて畏れ多いね。勘違いで巻き込まれただけだ。」

 

 

勘違いしたのはバノス村の人たちと俺だ。つまり俺のせいでもあるんだが、英雄とか気恥ずかしい。

 

 

「俺はあの村の出身でな、あんたに感謝してるんだ。礼といっちゃなんだが、あんたが買うなら安くしとくよ。」

 

「それならこの子のやつを頼むよ。何が良いのか解らなくてさ。」

 

 

親父さんが言ってた助かった人には、こういう間接的な人も含まれるんだな。ありがたいけど、俺にはまだ実感できない。

 

 

「猫系獣人なら重いやつより、軽くて要所要所を守る方が良いな。皮の胸当てと腰具とかどうだ?」

 

 

胸当ては俺が着けているやつを一回り小さくしたもの。腰具はポーチやナイフをつけるのにちょうど良いな。

 

 

「それにするよ、値段はどのくらい?」

 

「あわせて銀貨120枚ってところだが、80枚にしとくよ。」

 

 

銀貨40枚もまけていいのかと思うが、まけてもらわないと払えなかった。今回は甘えさせてもらおう。

 

銀貨80枚をきっちり払って防具を受けとる。残り銀貨21枚、あとは下着類とかに消えそうだ。明日と言わずに午後から働こうかな。

 

 

「さて、次は……ユーちゃんお願いね。」

 

 

肌着や下着類なんかは俺では解らないし、ヨミも嫌だと思うのでユーちゃんに銀貨20枚を渡して、ヨミと一緒に選んでもらう。

 

街中のベンチに腰を下ろしてこれからを考える。スラリと伸びた棒の上の時計を見ると、まだ昼前。2人の買い物が長引いても午後になることはないだろう。

 

2人が戻ってきたら仔猫の尻尾亭に戻って昼飯を食べる。そのあとは冒険者ギルドでヨミの冒険者登録をして、近場の依頼でも受けようかな。ヨミの能力も把握しておきたいし。

 

でもギルドの登録料っていくらだろう、ユーちゃんとヨミが全額使うとは思えないけど、なるべく手元に残しておきたいな。

 

カインズとリンクのことは親父さんに話してあるから、2人が来ても伝言をくれるか待っていてくれるだろ。

 

あー、ヨミのことなんて説明しようかな。カインズは夜半(よわ)のこと嫌ってたし、仔猫の尻尾亭に帰るときに、ヨミにはフードを被っててもらうか。

 

 

「ソーヤさーん、買い物終わりましたー!はいこれ、お釣りです。」

 

「ご主人様、お時間をとらせてしまい、すいませんでした。」

 

「そんに待ってない、大丈夫だよ。」

 

 

今にもかしずきそうなヨミの頭を撫でる。何故か硬直したヨミの手から買った物をさらいとってアイテムボックスに入れる。

 

 

「お腹も空いてきたことだし、仔猫の尻尾亭に戻ろうか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ソーヤ、お前にお客さんだ。」

 

 

仔猫の尻尾亭に入るなり親父から言われた。多分カインズとリンクだな。

 

 

「ヨミ、悪いけど先部屋行ってて。」

 

 

ヨミに部屋の鍵と買った荷物を渡して2階に行かせる。カインズたちと長い付き合いになるなら何処かで紹介しないといけないけど、今のところ長くなりそうにないし、今回は避けた方が無難だな。

 

ヨミが階段を登るのを見届けてから、リンクとカインズがついているテーブルに座る。

 

 

「直ぐに来れなくて、すまなかった。俺たちを救ってくれたことを改めて感謝する。」

 

「いいって、通りがかっただけだし。」

 

 

テーブルに額をぶつけんばかりに頭を下げるカインズに、頭を上げさせる。

 

 

「通りがかっても助けてくれるやつなんてのは稀だよ。大概は見て見ぬふりして逃げるさ。」

 

 

リンクは頬杖をついていない方の手で、からかうようにヒラヒラさせた。

 

ほとんどの人はトラブルに巻き込まれないように動く。ユーちゃんの時もそうだったしな。

 

「それでな、ついさっきお嬢様が寝覚めたんだ。起きているうちに、命の恩人であるソーヤに一目会いたいと仰ってる。」

 

「つまりは、ちょっと俺たちに着いてきてくれね?ってこと。」

 

 

もう昼時なのに、この時間に起きるってお嬢様はだらけた人なのか?それとも偉い人は皆ロングスリーパーの可能性。

 

 

「いいよ、首を突っ込んだ身だしね。それなら最後まで付き合うべきだ。」

 

「この宿の裏手に馬車が停めてある。屋敷までそれほどかからずに行けるだろう。」

 

「先に行って準備してするから、ソーヤも用意済ませたら来てくれ。急かす訳じゃないけど、なるべく早くな?」

 

 

2人に了解と言ったあと、2階に上がり自分の部屋に行く。ヨミに遅くなるから先に昼飯取っとけと言わなくては、それと風邪薬も渡しておくか。

 

 

「ヨミー、帰りが遅くなるから先に昼飯食べておいてくれ。それから……、あれ?ヨミどこだ?」

 

 

しかし、部屋の中にヨミは居なかった。ベットの下にもクローゼットの中にもいない。逃走禁止の設定もしてあるので、逃げたとは思えないし、どこに行ったんだ?

 

 

「あ……ご主人…様。」

 

 

もう書き置きと風邪薬だけ置いて行ってしまおうかと考えていると、背後からヨミの声がした。

 

 

「どこ行ってたん……だ?」

 

 

振り返ると、風呂あがりらしきヨミが立っていた。体は大きめのタオルで隠されているが、タオルの奥のヨミは恐らく何も身に付けていない。

 

振り返った勢いそのままに、さらに半回転する。さっきはただ回転したかっただけ、そう、それだけだ。俺は何も見てないぞ。

 

 

「お話が長くなりそうでしたので、先に品物を確認しておこうかと。せっかくご主人様が買ってくれた物を汚すは無礼ですので、その前に水浴びをしていたんです。」

 

 

この部屋にも風呂らしきものはついている。ついているだけで、ただの水桶のようなものだが。それに水を入れてタオルなどで体を拭くだけ。その水だって宿横の井戸から汲んでこないといけない。

 

 

「そ、そうか。なら早く洋服着ちゃいな。俺が振り返れないからさ。」

 

「……はい。申し訳ありません、ご主人様。」

 

 

振り返れないので解らないけど、 多分ヨミは今、頭を深々と下げている。

 

「ヨミは悪くないだろ。俺のタイミングが悪かっただけだ。」そう言ってやりたいけど、言ったらヨミは反論するんだよな。

 

普段は好みすら言わないのに、奴隷としての扱われ方にこだわる子だ。

 

 

「背中を向けたままで悪いんだけど。帰りが遅くなるから先に昼飯食べててもらいたいんだ。親父さんに話はしておくから、言えば出してくれる。」

 

「……はい。解りました、ご主人様。」

 

「それから、風邪薬置いておくから、食後に飲むように。」

 

 

ベットの脇に風邪薬の入った小瓶を置く。これで最後だし、ヨミの風邪が治らなかったら新しいのを作ろう。

 

 

「はい、ご主人様。……着替え終わりました。」

 

 

終わったようだ、ヨミの着替えが早くて良かった。リンクに早く来いと手前、時間をかけるのは悪いしな。

 

再度振り返れる。今度はちゃんと服を着たヨミが立っていた。どうやら俺が選んだ服を着てみたようだ。

 

 

「おぉ……可愛いな、思った通りだ。」

 

 

上下とも黒い服はヨミの黒髪と白い肌に、良くあっていた。脛辺りまであるスカートの裾から黒い尻尾が見えている。そういやヨミって尻尾長いな。

 

ムッとした顔をしているヨミの頭を、耳に気を付けながら撫でる。するとヨミは俯いてしまった。あー……嫌だったかな、悪いことをした。

 

 

「それじゃ、行ってくる。」

 

「あ!………はい、行ってらっしゃいませ、ご主人様。」

 

 

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