異世界に行こう(凍結)   作:紺色メガネ

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24話 夜の半分

 

ダイヤシーフ家から戻り、仔猫の尻尾亭に帰った頃にはもう夕方になっていた。これから冒険者ギルドに行って依頼を受けるのは良い選択ではないな。ヨミの登録も明日一緒にするとしよう。

 

 

「ソーヤさん、お帰りなさい!」

 

「お帰りなさいませ、ご主人様。」

 

 

俺が扉を開けるよりも早く、ユーちゃんとヨミが出迎えてくれた。犬耳と猫耳の少女2人は息ぴったりだ。

 

 

「ただいま、ユーちゃん、ヨミ。お土産があるよ。」

 

 

 

 

 

店内に入り席につく。昼飯はダイヤシーフ家で軽く食べたが、もう夕飯時だ。食堂内にただよう旨そうな匂いに腹が減ってくる。

 

その後は昼飯代も上乗せされた、夕飯を2人と一緒に食べた。ユーちゃんは昼時にヨミを誘って一緒に食べてくれたらしく、2人の距離が縮まっている気がした。

 

そして、お土産としてユーちゃんにクッキー缶を一箱渡す。お母さん、お父さんと一緒に食べる!と喜んでくれた。

 

 

「ソーヤさん、ヨミちゃん、おやすみなさい!」

 

「ユーちゃんもおやすみ。」

 

「ユーちゃんさん、おやすみなさい……です。」

 

 

夕飯を済ませ2階に上がる。解りにくいが、ヨミな表情も綻んでいるようだ。昨日は少し不安もあったが、大丈夫みたいだな。流石宿屋の娘だ、コミュニケーション能力が高い。

 

 

 

 

 

部屋に戻り、風呂を入れる。風呂とは言っても、水魔法で入れ物に水を注ぎ、火魔法で温度を上げただけのものだ。

 

他の都市では、魔法学校の生徒が公衆浴場でこうして、小銭稼ぎをしているらしい。そのため市民でも安く風呂に入れるんだとか。

 

その話をダイヤシーフ家で聞いたので、俺でも出来るかもと思いやってみたが、上手くいったらしい。

 

 

「ヨミ、お風呂にお湯入れたから入ってくれ。」

 

 

一番風呂はヨミに譲ろう。ヨミが入ってる間に風邪薬作っちゃいたいし。それから魔法やスキル、アイテムボックス内の確認と整理もしてしまおう。

 

 

「はい、ご主人様。………一緒にお入りにならないのですか?」

 

「はいっ!?」

 

 

ヨミがいきなりキラーパスを出してきた。どんな意図があっての質問なのだろうか。もしかして、主人としての誠実さを示せ、とか?確かに、自分に手を出すような主人は嫌だもんな。

 

 

「いや、遠慮しておくよ。」

 

「………そうですか。では1人で入ってきます。」

 

 

よしよし、これで紳士さをアピールできただろう。主人として正しい振る舞いをしなきゃな。

 

 

 

「……おかしいな、隣の檻にいたお姉さんはこれでイチコロだって言っていたのに。」

 

 

 

さて、整理を始めちゃうか、先ずはステータスからいこう。

 

 

 

名前:ソウヤ・カニエ

種族:人族 異世界人

性別:男

役職:迷い人 G級冒険者(100/1000)

状態:普通

レベル:17/40

HP:292/292

MP:3726/3726

SP:81/81

攻撃:74

防御:58

魔力:101

速度:63

運:21

 

《スキル》

・初級火魔法(10/10)

・初級水魔法(2/10)

・初級氷魔法(3/10)

・初級回復魔法(4/10)

 

・調合師

 

・異世界言語翻訳

・鑑定

・アイテムボックス

・異世界の女神ナチュムの加護

・月を追う銀狼ハティの加護

 

《称号》

・異世界の女神ナチュムの加護を受けし者

・月を追う銀狼ハティの加護を受けし者

 

 

 

魔法のレベルが上がって使える魔法が増えたな。そして魔力が100を越えてる。最近魔法を使ってたから増してきたのか。

 

んー、開いてみたはいいけど、別段整理することもないな。スキルの種類ごとに別けられているし、このままでも見る分には問題ない。

 

なら次はアイテムボックスかな。中身は武器一式、薬草沢山、魔水大量、クッキー缶9箱、小瓶3本、調合道具一式。そして魔法の本などの貰い物。

 

こん棒はダンジョン内に捨てたし、ゴブリンの素材はこの前のバノス村でのどさくさに紛れて入れておいた。

 

こちらもあまり整理しなくて良さそうだ。もともとどこの空間に入っているのか解らないスキルだし、整理するってのが無理な話だな。頭のなかでやっておくで十分だ。

 

よーし、風邪薬の調合するか。小瓶3本と調合道具、素材を取り出して調合を始める。ヨミが上がって来る前に、3本とも作り終えた。

 

 

「ただいま上がりました。」

 

 

脱衣場できちんと服を着てきたヨミは、戻ってくるなり、かしづいた。せっかく風呂に入ったのに冷たい床に座り込ませるのは、心持ちが良くない。

 

 

「ヨミ、これからは一々頭を下げなくていいから。」

 

「……はい、申し訳あり

 

「頭、下げない。」

 

「は、はい、ご主人様。」

 

 

なんとかヨミに頭を下げさせるのを止めさせた。奴隷紋を使って命令することもできるけど、なるべくならしたくない。

 

 

「風呂に入ってくる。……卓上の風邪薬、冷えたら1本飲んでおいて。」

 

 

久しぶりに肩まで湯に浸かることができたが、やはり風呂はいいな。これからは毎日風呂を入れよう。魔法の練習にもなっていいし。

 

風呂から出ると、ヨミは床に座って待っていた。なぜ床に座るんだ、ベッドか椅子に腰かければいいのに。

 

 

「風邪薬、飲み終わりました。」

 

 

140㎝前後のヨミの脇を抱えてベッドに座らせて、今後はここに座るよう言い聞かせた。ヨミの長い尻尾が左右に揺れる。鞭のようにしなって振れているので、尾先が風切り音を奏でている。

 

 

「よしよし、良く飲めたな。ご褒美にクッキー缶をあげよう。」

 

 

アイテムボックスからお土産でもらった缶詰めを取り出し、蓋にヨミと書く。書き終わったら、またアイテムボックスに収納。

 

 

「これから、クッキーが欲しいときに言ってくれれば出すから。でも今日はもう遅いから明日からな。」

 

「……私は奴隷ですよ、褒美は必要ありません。ご主人様の命令を聞くだけの存在ですから。」

 

 

ヨミはじっと俺の目を見て言った。明るいときと比べると、黒目が真ん丸で大きくなっている。良く見ないと変化に気付かないが、やはりヨミも猫なんだな。

 

 

「ヨミ、俺が欲しいのは命令に頷くことだけしかできない奴隷じゃない。自分で判断して動くことのできる相棒(パートナー)だ。」

 

 

共に戦う冒険者としてヨミを買った。戦闘で最も怖いのは後ろから刺されることだからだ。その点奴隷なら裏切ることはできない。

 

でも、自分で判断して動くことができないのなら、戦闘で足手まといになる。もしヨミがそうなったら、冒険者として育てるのは止めよう。

 

返品は出来ないし、する気もない。その時は、ヨミを家において、俺の稼ぎで過ごすことになるかな。

 

 

「……パートナー?」

 

「そうだよ、考えるんだ。」

 

 

ヨミを横たわらせ布団をかけ、寝る体制にはいる。ヨミはまだ何か言いたそうだったが、もう俺は眠い。

 

 

「おやすみ、ヨミ。」

 

「……おやすみなさい、ご主人様。」

 

 

目を閉じる前に見たヨミは、泣きそうな顔をしていた。……そんな顔をさせると心が痛むな。だがヨミの主人として、ヨミを立派に育てなくては。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「登録料は銀貨3枚ですよ。それと、奴隷の行ったことは主人が全責任をおいます。大丈夫ですか?」

 

「了解、大丈夫だよ。」

 

 

カークに登録料と、ヨミの種族や得意武器などを書いた用紙を渡す。

 

朝方、仔猫の尻尾亭を出るときに、親父さんから布団代の銀貨2枚を受け取ったし、昨日の買い物の残りもある。料金の方は問題ない。

 

用紙はヨミのことを鑑定で見ておいたので、スラスラ書ける。得意武器はナイフにしておいた。

 

 

「てか、ソーヤさん。G級で奴隷買うなんて前代未聞ですよ?しかも獣人で夜半って、色々トラブルが起こりそうですけど……。」

 

 

カークがカウンターに乗り出して耳打ちしてくる。現在ヨミは別室でサラさんと撮影中だ。仏頂面になってないといいけど。

 

 

「そこら辺は大丈夫。……それで今日中に依頼受けられそう?」

 

「ギルドカードは明日になりますけど、依頼は今日から受けて大丈夫ですよ。

 あ、そうだ。2人になりましたし、パーティー組みますか?」

 

 

カウンターの下から先程の用紙とは別の紙を取り出してきた。目を通すと、パーティー編成がどうとか書いてあった。

 

 

「2人でも組めるのか?」

 

「はい、2人以上なら大丈夫ですよ。

 パーティーで依頼を受ける時は、パーティーランクにGPが加算されます。もちろん個人にも加算されるので安心してください。

 個人のランクを上げるときと同様に、パーティーランクを上げるときも試験が必要になりますからね。」

 

 

パーティーでもGPが稼げるなら大丈夫か。それでヨミの冒険者ランクが上がれば、ヨミ1人でも依頼を受けられるようになるし。

 

 

「ならパーティー登録しとこうかな。」

 

 

用紙に俺とヨミの2人分の情報を書き込んでいく。最後にはパーティー名の欄が残った。

 

 

「例えばですけど、アックスさんの鉄の翼(アイアンウィング)とかみたいに、覚えてもらいやすい名前が良いですよ。」

 

 

少し中二くさい気もするけど、確かに覚えやすいな。覚えやすい名前か、それなら良いのがあるな。

 

思い付いたパーティー名を書いて、カークに提出する。それを見たカークが吹いていたが知らん顔をしておいた。

 

さて、何か良い依頼はあるかね?夜の半分(ハーフ・オブ・ナイト)の初仕事だ。

 

 

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