季節的にこちらにも投稿しようかどうか迷ったのですが、こちらにも投稿することにしました。
バレンタインデー。
今日、2月14日のイベントであり、元々はキリスト教の記念日である。
欧米では男女関係なく親しい人に花やお菓子、カードなどを贈る日であったが、日本に入ってからはなぜか女性が愛情の告白としてチョコレートを送る日となっている。
まあ、義理チョコやら友チョコやらもあるが、やはり日本においては告白こそがメインなのだろう。
さて、そんなバレンタインデーに俺は何をしているのかといえば。
アイドル事務所のプロデューサーとして、担当アイドルの渋谷凛、島村卯月、本田未央とともに、バレンタインのイベントの真っ最中であった。
「ふぅ……今回も大成功だったな、凛」
「う、うん……」
イベントは終了後。大きな拍手と声援を背に戻ってきた凛に、声をかける。
あれだけのファンの前だけあり、さすがに緊張したのだろう。少し、落ち着かない様子だった。
しかし、ニュージェネレーションの3人も人気になったものだ。プロデューサーとして、喜ばしい限りである……なんて感傷に浸っていると、他の二人が戻ってこないことに気づいた。
「ああ、卯月と未央なら用事があるって。……まったく、二人ともほんとに……」
「そうか。なら、先に帰る準備始めちまうか」
「あ……ま、まって、プロデューサー」
歩き出そうとした所で、凛に呼び止められた。落ち着かないというか、イベントをやっている時より緊張しているような……。
「プ、プロデューサー心をこめて作りました。これからもずっと、私のチョコをもらってください!…………はぁ……やっと……言えた……」
そう言って凛から差し出されたものは、綺麗にラッピングがされた、ハートの形をした青い箱だった。中身は、今日の日付や今の凛のセリフからして、おそらくチョコ。
チョコを受け取ると、凛は一度ため息とともに落ち着いた様子を見せたが、すぐにその整った顔を真赤に染め出した。
「そ、そう……! こ、これは罰ゲームでちょっと卯月と未央とチョコを作ってるときに間違えてチョコ味見しちゃったからで、だいたいあの二人のせいっていうか……! ってちょっとプロデューサー、笑わないでよ!」
慌てふためいている凛がおかしくて、つい吹き出してしまった。
「悪いってそんな怒るなよ」
「もう……人がせっかく勇気出したのに、その態度はひどいよ」
ああ、でも、本当に……
「ありがとう,凛。嬉しいよ。本当に嬉しい」
真っ直ぐに、いつも真っ直ぐな凛の瞳を見ながら、そう言った。
途端、凛の顔が真っ赤に染まる。
「――ッ! ほ、ほらっ! もう行くよ、プロデューサー!」
くるりと体を180度回転させ、そのまま歩き出す凛。その足取りは、どこか嬉しそうだった。それがおかしくて、また吹き出してしまった。
事務所への帰り道。
会場が事務所から近かったということもあり、俺達は徒歩で帰っていた。
「それで、凛ちゃん。うまくいった?」
「ま、その様子だと、どうやらうまく行ったみたいだね!」
「うるさいよ、二人とも。隠れて見てたんだからいちいち聞かなくてもわかるでしょ」
二人とも、あの場所にいたらしい。これ以上はこちらにも被害が及びそうだったので、話の流れを変えるついでに凛をからかうことにした。
「もう、こんな事するのは、今回だけだからね。……今回だけだって」
来年も期待している……なんてことを言おうとしたのだが、先手を取られてしまった。
さらに、俺が何かを言おうとしたのに気づいて、釘を差されてしまう。
「とか言って、しぶりん、意外と乗り気なんじゃないのー?」
「大丈夫、私達も手伝うよ、凛ちゃん!」
「いや、だからやらないって!」
なぜだか、凛が来年もチョコをくれる、そんな気がした。本人は否定しているが。
風が冬の冷たい空気を運んでくる。
そんな中でも、彼女たちは楽しそうだった。
「……元気だなー、あいつら」
そして、そんな彼女たちがとても頼もしく思える。
バレンタインの街を、4人で並んで歩いて行く。
俺達のバレンタインは、こんなかんじで過ぎていくのだった。
……チョコは、甘くて、美味しかった。
「こりゃ、ホワイトデー頑張らないとな」
事務所のアイドルや事務員から見らった大量のチョコのお返し、という意味でも。