急いで書いたので誤字脱字があるかもしれません。見つけたら、報告してくれると助かります。
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大きなドームに一面の観客。溢れんばかりの歓声。響き渡る拍手。ステージの上で、両手を大きく広げて、涙を浮かべ、しかし満面の笑みで歓声を浴びる少女。
8月10日。渋谷凛のバースデイライブは、こうして大成功を収め、終了した。
「お疲れ様」
そう言ってポーツドリンクをパイプ椅子に腰掛けている凛に渡す。凛は力なく受け取り、一気に飲み干した。
「さすがに疲れたか」
「うん。ライブには慣れたつもりだったけど」
「まあ、いつものライブとは規模が違うからな。無理もないさ。ほら、立てるか」
そう言って凛に手を差し伸べる。
「ほら。せっかくの誕生日なんだ。楽しもうぜ」
笑いながら言う。
「うん、そうだね。時間は有限なんだし、早く行こうか」
凛も笑いながら俺の手をとった。
「あ、これとかいいかも」
デパートの中のアクセサリーショップ。大きなデパートだけあって、それなりに大きく品揃えも揃っていて、商品の幅が広く安いものから高級品まで。学生にも人気らしい。周りにも、制服を着た女の子がチラホラと見える。
「あ、プロデューサー、これとかどう思う?」
髪をポニーテールにまとめ、キャスケット帽をかぶり、伊達メガネをかけた凛が、ショーケースの中にあるネックレスを指さした。
「まあ悪くはないな。けど、少し凛には派手すぎるんじゃないか?」
そう言って、その二つ右にあるネックレスを指さす。
「これとかどうだ? 程よくシンプルだし、凛の服にもよく合うと思うんだが」
「うーん……今持ってる服だといいかもしれないけど、卯月や未央と行くと普段とは違う服とか買ったりするから」
着せ替え人形にされてる凛が目に浮かぶ。やばい、見てみたい。
「じゃあこっちとか? 普段の服にも合うだろうし。凛のイメージにあってるだろうし」
「あ、いいかも。じゃあこれにしてもいい?」
「ああ、値段もいい感じだし」
店員を呼びに頼み、ラッピングをしてもらう。
「じゃあ、買うものも買ったし、行くか」
大きなデパートだけあって、レストランや喫茶店の類も結構ある。歩き疲れたことだし休憩することにしよう。
「はい。誕生日おめでとう」
頼んでいた飲み物が届いた所でさっき買ったネックレスを渡す。
「ん、ありがと」
凛の誕生日プレゼント、事前に何がほしいか聞いてみたところ、
――うーん……それもいいけど、プロデューサーと買いに行きたい
ということで、凛と一緒に、誕生日プレゼントを買いに来ていたのだった。
「しかしでかい分人も多いな。夏休みってこともあるだろうが」
「プロデューサーはこういうとこ、来ないの?」
「まあな。忙しいし、基本私服は安物で済ませるし」
ケーキをつつきながら、他愛ない話をする。普段と同じような会話。だが、凛はいつもよりも上機嫌な様子だった。
そして、ケーキも食べ終わり、飲み物も飲み終わり。
「それじゃ行くか。ちょっとよってみたい場所があるんだ」
「よってみたいところ?」
「ああ。一度ネットで見てな。前から行ってみたかったんだ」
赤く染まった空。そして、空と同じ色に染まった海。
「うわぁ…近くにこんなところ、あったんだ」
「これは……すごいな」
今まで見たことのない光景。海に溶けていく夕日。
「事務所から歩いてこれるところにこんな場所があったんだね」
「ああ。俺も気づかなかった」
灯台下暗し、とはよく言ったものだ。
海の見える公園。事務所の近くに公園があることは知っていたが、こんな光景が見えるとは知らなかった。
「凛と出会ってから1年半。そういえば、事務所の周りは見て回ったことはなかったな」
「そういえばそうだね。今度行ってみる?」
「ああ、そうだな。今度のオフにでも行ってみるか」
柵によりかかり、隣にいる凛を盗み見る。柵の上で両腕を組み、夕日を眺めている。
しばらくぼーっと眺めていると、なに、と少しむくれた感じで聞いてきた。
「いや、なんでもないさ」
「ならいいけどさ」
さすがに見つめられるのは恥ずかしかったのだろうか。凛の頬は少し赤く染まっていた。
「さーて、この後どうすっかねえ」
見れば、太陽は既にその体のを海へと隠していた。
季節は夏。太陽が完全に沈んだということは、もう結構な時間なのだろう。が、事務所で開かれる凛の誕生日パーティーまではまだ時間がある。向こうはまだ準備の最中だろう。そこへ主役を連れて行くのはやはりマズイだろう。さて、どうやって時間をつぶそうか。そう考えていると、凛がポツリと話馴染めた。
「……そっか。プロデューサーと出会ってから、もう1年半も経つんだね」
「そうだな。こうしてリンの誕生日を祝うのも2回めになるわけだ」
もっとも、去年は事務所ができてからまだ半年とちょっと、落ち着いてお祝いをしている余裕もなかったのだが。
「俺がこの事務所のアイドルで一番付き合いが長いのは凛だもんな。懐かしいなー」
──ふーん、私のプロデューサー? ……まぁ、悪く無いかな
開口一番、こんなことを言ってのけたのだ、この少女は。あの時は、何だコイツ、と思ったものだ。まあ、接しているうちにその印象も薄れていったのだが。
「もう、あの頃の話はやめてよ」
「はは、悪い悪い」
着崩した制服にピアス。その上あの発言。最初はとんでもない少女の担当に鳴ったもんだと思った。実際は仕事熱心で思いやりもある優しい少女だったのだが。
「しかし、凛も今じゃトップアイドル。遠くまで来たもんだ
「まだまだこれからだよ、プロデューサー」
「そうか」
「そうだよ」
それから、しばらく無言の時間が続く。すっかり暗くなった空。凛と二人だと、お互いが無言の時間が暫く続くことがある。最初は戸惑ったが、今はそれを心地よく感じている自分がいる、おそらく凛もそうだろう。
しばらく二人ですっかり暗くなった海を眺めていた。
「ねえ、プロデューサー」
「なんだ?」
「私、まだまだ走り続けるよ」
ああ、そうだ。これが渋谷凛だ。俺の初めてのアイドル、1年半以上の時を共に過ごしてきたパートナーだ。
「そうか。そうだよな、うん。わかってる」
右手を、凛に差し出す。
「二人なら、どこだって行けるさ」
「うん……そうだね」
凛の右手が、力強く俺の右手を握る。その顔には確かなほほ笑みが浮かんでいた。
その後。
しばらく凛と二人で手を握り合いながら見つめ合っていると、ふと背後からの視線に気づき。
振り返ると、どこからか話を聞きつけたらしい卯月と未央の姿が。
からかう卯月と未央、顔を真っ赤にして反論する凛という構図が出来上がり。
自然と、顔に笑が浮かんでくるのであった。