アイドルマスターシンデレラガールズ短編集   作:テレフォン

5 / 6
渋谷凛の誕生日SSです。だいぶ遅れました。
急いで書いたので誤字脱字があるかもしれません。見つけたら、報告してくれると助かります。

pixivにも同じ物を投稿しています。


今までの道、これからの道(渋谷凛)

 

 

 大きなドームに一面の観客。溢れんばかりの歓声。響き渡る拍手。ステージの上で、両手を大きく広げて、涙を浮かべ、しかし満面の笑みで歓声を浴びる少女。

 

 8月10日。渋谷凛のバースデイライブは、こうして大成功を収め、終了した。

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様」

 

 そう言ってポーツドリンクをパイプ椅子に腰掛けている凛に渡す。凛は力なく受け取り、一気に飲み干した。

 

「さすがに疲れたか」

 

「うん。ライブには慣れたつもりだったけど」

 

「まあ、いつものライブとは規模が違うからな。無理もないさ。ほら、立てるか」

 

 そう言って凛に手を差し伸べる。

 

「ほら。せっかくの誕生日なんだ。楽しもうぜ」

 

 笑いながら言う。

 

「うん、そうだね。時間は有限なんだし、早く行こうか」

 

 凛も笑いながら俺の手をとった。

 

 

 

 

 

 

「あ、これとかいいかも」

 

 デパートの中のアクセサリーショップ。大きなデパートだけあって、それなりに大きく品揃えも揃っていて、商品の幅が広く安いものから高級品まで。学生にも人気らしい。周りにも、制服を着た女の子がチラホラと見える。

 

「あ、プロデューサー、これとかどう思う?」

 

 髪をポニーテールにまとめ、キャスケット帽をかぶり、伊達メガネをかけた凛が、ショーケースの中にあるネックレスを指さした。

 

「まあ悪くはないな。けど、少し凛には派手すぎるんじゃないか?」

 

 そう言って、その二つ右にあるネックレスを指さす。

 

「これとかどうだ? 程よくシンプルだし、凛の服にもよく合うと思うんだが」

 

「うーん……今持ってる服だといいかもしれないけど、卯月や未央と行くと普段とは違う服とか買ったりするから」

 

 着せ替え人形にされてる凛が目に浮かぶ。やばい、見てみたい。

 

「じゃあこっちとか? 普段の服にも合うだろうし。凛のイメージにあってるだろうし」

 

「あ、いいかも。じゃあこれにしてもいい?」

 

「ああ、値段もいい感じだし」

 

 店員を呼びに頼み、ラッピングをしてもらう。

 

「じゃあ、買うものも買ったし、行くか」

 

 大きなデパートだけあって、レストランや喫茶店の類も結構ある。歩き疲れたことだし休憩することにしよう。

 

 

 

 

 

 

「はい。誕生日おめでとう」

 

 頼んでいた飲み物が届いた所でさっき買ったネックレスを渡す。

 

「ん、ありがと」

 

 凛の誕生日プレゼント、事前に何がほしいか聞いてみたところ、

 

――うーん……それもいいけど、プロデューサーと買いに行きたい

 

ということで、凛と一緒に、誕生日プレゼントを買いに来ていたのだった。

 

「しかしでかい分人も多いな。夏休みってこともあるだろうが」

 

「プロデューサーはこういうとこ、来ないの?」

 

「まあな。忙しいし、基本私服は安物で済ませるし」

 

 ケーキをつつきながら、他愛ない話をする。普段と同じような会話。だが、凛はいつもよりも上機嫌な様子だった。

 

 

 そして、ケーキも食べ終わり、飲み物も飲み終わり。

 

「それじゃ行くか。ちょっとよってみたい場所があるんだ」

 

「よってみたいところ?」

 

「ああ。一度ネットで見てな。前から行ってみたかったんだ」

 

 

 

 

 

 赤く染まった空。そして、空と同じ色に染まった海。

 

「うわぁ…近くにこんなところ、あったんだ」

 

「これは……すごいな」

 

 今まで見たことのない光景。海に溶けていく夕日。

 

「事務所から歩いてこれるところにこんな場所があったんだね」

 

「ああ。俺も気づかなかった」

 

 灯台下暗し、とはよく言ったものだ。

 

 海の見える公園。事務所の近くに公園があることは知っていたが、こんな光景が見えるとは知らなかった。

 

「凛と出会ってから1年半。そういえば、事務所の周りは見て回ったことはなかったな」

 

「そういえばそうだね。今度行ってみる?」

 

「ああ、そうだな。今度のオフにでも行ってみるか」

 

 柵によりかかり、隣にいる凛を盗み見る。柵の上で両腕を組み、夕日を眺めている。

 

 しばらくぼーっと眺めていると、なに、と少しむくれた感じで聞いてきた。

 

「いや、なんでもないさ」

 

「ならいいけどさ」

 

 さすがに見つめられるのは恥ずかしかったのだろうか。凛の頬は少し赤く染まっていた。

 

「さーて、この後どうすっかねえ」

 

 見れば、太陽は既にその体のを海へと隠していた。

 

 季節は夏。太陽が完全に沈んだということは、もう結構な時間なのだろう。が、事務所で開かれる凛の誕生日パーティーまではまだ時間がある。向こうはまだ準備の最中だろう。そこへ主役を連れて行くのはやはりマズイだろう。さて、どうやって時間をつぶそうか。そう考えていると、凛がポツリと話馴染めた。

 

「……そっか。プロデューサーと出会ってから、もう1年半も経つんだね」

 

「そうだな。こうしてリンの誕生日を祝うのも2回めになるわけだ」

 

 もっとも、去年は事務所ができてからまだ半年とちょっと、落ち着いてお祝いをしている余裕もなかったのだが。

 

「俺がこの事務所のアイドルで一番付き合いが長いのは凛だもんな。懐かしいなー」

 

──ふーん、私のプロデューサー? ……まぁ、悪く無いかな

 

 開口一番、こんなことを言ってのけたのだ、この少女は。あの時は、何だコイツ、と思ったものだ。まあ、接しているうちにその印象も薄れていったのだが。

 

「もう、あの頃の話はやめてよ」

 

「はは、悪い悪い」

 

 着崩した制服にピアス。その上あの発言。最初はとんでもない少女の担当に鳴ったもんだと思った。実際は仕事熱心で思いやりもある優しい少女だったのだが。

 

「しかし、凛も今じゃトップアイドル。遠くまで来たもんだ

 

「まだまだこれからだよ、プロデューサー」

 

「そうか」

 

「そうだよ」

 

 それから、しばらく無言の時間が続く。すっかり暗くなった空。凛と二人だと、お互いが無言の時間が暫く続くことがある。最初は戸惑ったが、今はそれを心地よく感じている自分がいる、おそらく凛もそうだろう。

 

 

 しばらく二人ですっかり暗くなった海を眺めていた。

 

「ねえ、プロデューサー」

 

「なんだ?」

 

「私、まだまだ走り続けるよ」

 

 ああ、そうだ。これが渋谷凛だ。俺の初めてのアイドル、1年半以上の時を共に過ごしてきたパートナーだ。

 

「そうか。そうだよな、うん。わかってる」

 

 右手を、凛に差し出す。

 

「二人なら、どこだって行けるさ」

 

「うん……そうだね」

 

 凛の右手が、力強く俺の右手を握る。その顔には確かなほほ笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後。

 

 しばらく凛と二人で手を握り合いながら見つめ合っていると、ふと背後からの視線に気づき。

 

 振り返ると、どこからか話を聞きつけたらしい卯月と未央の姿が。

 

 からかう卯月と未央、顔を真っ赤にして反論する凛という構図が出来上がり。

 

 自然と、顔に笑が浮かんでくるのであった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。