二分割します。ラストスパート。
あと今回は場面転換が多いです。
巌窟王と相模坊を制し、朱雀門が開かれた。
この先に、黒幕───大天狗、崇徳院が待ち構えている。
『観測精度がちょっと上がったかな……凄まじい数値だ。
サーヴァント本来の格に加え、大幅な強化が施されている』
「この国の中枢、天子が治む宮殿───
建物一つ一つが膨大な力を備えた要塞にも等しいのです」
「……建造当時ならば、尚更ですね」
大内裏の中心、朝堂院の正殿はその名も「
もはや建物自体がある種の聖杯の様なものではないだろうか。
『本当にこの国はどうなっているんだい……』
「考察は後に回しましょう。───マスター!
これより、この
ああ。
目標、日本大魔縁、大天狗崇徳院!
大内裏に突入する!
***
政争の果てに消失した応天門も建築当時のままだ。
あらためてこの京の異様さを実感し、門を潜り抜ける。
瓦葺に朱塗の建造物が数多く目に入る。
『今君たちがいるのが朝堂院。八省院とも呼ばれるね。
一番奥、大きい建物が正殿の大極殿だよ』
両隣に整然と並んだ十二朝堂。
前方にそびえたつ宮殿。
その間にある広場で自分たちは立ち止った。
……静かだ。
いっそ不安になるくらい、静寂に包まれている。
天狗の襲撃もぱったりと止んでいる。
だが、沈黙は破られる。
『───霊基反応。気を引き締めてくれ!』
「マスター、この反応……建物自体が魔力を発しています!」
「なんじゃ……どう改造しおった?」
朝堂院の建物が淡い光を纏っている。
「───再三の警告にも関わらず、足を踏み入れてくるとはな。
貴様の忠誠も、そのような塵芥が供では値が落ちるというもの。
わざわざこの宮殿に踏み入ったのだ、覚悟は出来ていような?」
男の声。
見渡したが、それらしき影はない。
どうやら、西行に向けられているらしいが……。
「覚悟、でございますか」
「そうだ。例え貴様であろうと、余の計略を汚す以上看過できぬ。
ここで散るがいい。己が行動の浅ましさに悔いて死ね」
前方、広場の中心。
自分たちが立っている地点から十数メートル離れている。
そこに視覚化された魔力が渦を巻き始めた。
「では、そうですね。それはこちらの台詞……と返しましょう」
「何……?」
「在りし日の讃岐にて、私は貴方に申し上げました。
王位の理を、貴方様が犯した過ちを。何ゆえ白峰に流されたのか。
聡明な貴方様のことです、私の言が届かなかったとは思いません」
西行は静かに魔力の渦巻きを見つめている。
そこに、何者かの姿を見出しているらしい。
「私が言うべきことはあの時すべて申し上げました。
もはや私から申し上げることは何一つとして在りませぬ」
「貴様───」
「仮初とはいえ、今の私はカルデアの側に与する者。
人理を汚す魔縁を、英霊として討ち取るのみ───!」
ここまで連れそった青馬に騎乗し、弓を携えた西行。
まさに、かつて完全無欠と讃えられた武士の姿だった。
「なるほど。道理よな。
余は国を呪う魔縁、人の世を脅かす反英霊だ。
いずれ勇猛な
貴様以外にも、三人加わっているのも納得がいく」
魔力が人の形を成した。
異形を模した仮面をしており、顔立ちは分からない。
伸びきった頭髪は無造作に後ろに流されている。
背には漆黒の翼が生えており、髪と混じって区別がつかない。
簡素な色使いの直衣を纏っている。
彼が、大天狗……崇徳院。
「良かろう、ならば英霊としての責務を果たすがいい。
───余こそ新たな日ノ本を統べる治天の君!
焼却された人理の中で、我が国を再び手中にしてみせる!
それこそが我が願望、我が野望、我が……夢想!」
淡い光を纏っていた建物が、一気に眩く輝き始めた。
同時に、縦横無尽に光の線が地面を走りはじめる。
『なっ……こ、これは、まるで冬木の大聖杯じゃないか!
一体この国の王様は何を治めていたんだい?!』
「無論、神が造りたもうた葦原中津国に他ならない。
さあ───世界を救いし者よ、英雄譚を果たしてみせるがいい!」
***
どうもこの国の帝はとんでもない権限を有していたらしい。
朝堂院はそれ自体が冬木の大聖杯と同レベルの力を有していた。
この分ならば、有名な三種の神器も似たようなものだろう。
「マスター! 何か打開策はありませんか!
あの男、控えめに言って規格外です! 攻撃通りません!」
「そのまま強化に回しているのでしょうね……」
沖田と頼光の発言にしばし考える。
今現在の崇徳院は聖杯……とは異なるが、類似品で大幅に強化されている。
その強化を施しているのがこの朝堂院だ。
つまり、理論上はぶっ壊せばいい。
「おお、火力で焼き払うということじゃな!
うむ、任せよ! 儂の天下布武スキルも相性抜群じゃ!」
「膨大な神秘を有していますから、一応、わたしもですね」
ただ、あくまで理論の話。
恐らく防衛機構も備え付けているだろう。
「ですが、いいんでしょうか? この国の宮殿なのでは……」
「大丈夫ですよマシュさん、結局はあの帝が造った偽物です。
壊したところで、帝以外には別に誰も困りませんから」
「は、はあ……それでも、すべて破壊するのは困難なのでは……」
平安末期。
まだ神秘が残る時代の宮殿だ。
生半可な力では壊れないだろう。
「ひとまず、人手不足はどうにかなるじゃろ。なあ沖田?」
「そうですね。わたしの宝具なら新撰組の皆を呼びだせます」
なるほど。では役割を分担しよう。
宮殿の破壊に信長と頼光。
その間時間を稼ぐのに沖田、西行とマシュ。
新撰組の皆様方にはいい感じに分かれてもらいたい。
「マスターは、どうされますか?」
自分は破壊に回る。いけるだろうか?
「了解しました。では、作戦に移ります───!」
***
剣戟と破壊音が響く。
こういう時は、広域殲滅に特化したサーヴァントがいいのかもしれない。
無いものをねだったところでどうしようもない。
朝堂の一つに忍び込む。
魔術を扱うサーヴァントたちからそれなりに教えられてきた。
───
投げた宝石が光を放ち、炎となって爆ぜた。
あっという間に朝堂が火に包まれ燃え始める。
それを確認し、次の朝堂へと向───
「第四朝堂にて火災発生。侵入者抹殺準備開始」
防衛装置……!
事が起きてから対応するあたりが実に「らしい」と感心する。
ガシャン、と音を立てて巨大な影が現れた。
鎧武者の姿をしたソレは、侵入者を排除するための使い魔のようだ。
鈍器を携えており、振り回して頭蓋を破砕しようとしている。
その動きをよく見ながら、立ち回りに注意して回避する。
鎧武者は武器を遠心力のままに燃える柱に打ち付けた。
グシャ、と柱が崩れていき、そのまま一部の天井も落ちた。
……これなら、いけるかもしれない。
「抹殺困難。追加準備開始」
追加の使い魔!?
いや、待て。考えてみれば当然だ。一体だけと誰が決めたのか。
これはいい加減脱出しないといけない。
一酸化中毒で死ぬなんて、マヌケにも程があるだろう!
剣士。槍兵。弓兵。
そんな武士の姿を模していると思われる使い魔。
すぐさま自分に攻撃を仕掛けてきた。
先程の鈍器を使う鎧武者も一緒くただ。
振り下ろされた刀を回避したところを槍で突かれそうになる。
すんでの所で槍の持ち手を掴んで回避するも、矢が飛んでくる。
槍ではじいて第二撃、使い魔を盾にしたが、鈍器に諸共砕かれた。
……マズイ。
いい加減息が苦しくなってきた。
だが、ここで倒れたら一体誰が人理を修復するのか。
動け。動いて、自分の仕事をこなすんだ───!
「そうらよ!!!」
男の掛け声と共に刀が一閃される。
すぐさま、二、三と刀が振るわれた。
瞬く間に四体の使い魔が屠られた。
現れた人影は二人。
どちらも浅葱色のダンダラ羽織を着こんでいる。
……彼らは、新撰組? 何故、ここに。
「いや、沖田に頼まれたんだよ。
マスターの護衛をしてくれー、ってさ」
「まさか一人で戦っていたとはな……。
当分、俺たちが戦闘の代行をする。いいな?」
それはありがたい。
こちらこそ頼みたかった。
「おうよ。んじゃ、ひとまずここから出るとしますかね」
「ああ。すでにあの魔王と源氏の棟梁は各々二つ潰している。
俺たちもうかうかしていられないぞ」
二人の剣士の先導で、朝堂から脱出した。
ついでとばかりに三人で建物を破壊する。
ほとんど壊れているが、念のため、だ。
……ところで、この二人は誰だろう?
新撰組の真名は、ほとんど知らないのだが……。
***
正直外から壊した方が早いのでは、と思った。
試しにカルデアの備品からくすねてきた手榴弾を投げ込む。
ついてとばかりに宝石も一個投げる。
バゴオオオオン!!! ドオオオオオン!!!
あっというまに倒壊した朝堂院。
だが機能は喪失していないらしく、瓦礫の隙間から使い魔が這い出てきた。
「随分と思い切ったことするんだなアンタ……」
「だが確かに効率的だな。実際、あの二人も似たようなものだ」
剣士の一人がそう言うと、背後で雷が落ちた。
その轟音に思わずとび上がると、すぐ隣で銃声が響いた。
新撰組も外部内部問わず建物を壊しているらしく、破壊音が耳に入る。
「やれやれ、侍が天子の宮殿を破壊する時が来るとは」
「でもよ、全部パチモンなんだろ?」
「まあ、そうだが。何故だかむなしくなるのは俺だけか」
雑談しながら使い魔と剣戟を繰り広げる剣士二人。
その顔に焦りの色は見えない。
割と余裕のようだ。
「ん? ああ、まあな。そこまで強いって感じはしねえな」
「俺たちが生きた時代とは違い、
ならば、この手の防衛が杜撰なのも納得がいく。不要だからな」
なるほど……。
平安時代の外国からの攻撃といえば刀伊入寇くらいだろう。
それも西国で起きたこと。衝撃はあれど危機感があっただろうか。
「そういうことだ。……よし、次に行くぞ」
「おうよ」
彼らは使い魔たちを全て斬り伏せた。
……朝堂は他の面々に任せてもいいだろう。
そういう訳で、外壁と門を潰しに行こうと思うのだが。
「いいぜ? コツコツ潰すとしますかねえ」
二人の同意を得て、次の標的へ向かった。
***
「ふはははははははははははははははははは!!!
見よ、これぞまさに第二次応天門の変!
人理焼却の辻褄合わせだから是非もないネ!」
外壁を少しずつ破壊する。
多少火の手も上がっており、かつての壮麗な朝堂院は見る影もない。
さっきからふざけているノッブがその大半を破壊しているのだ。
おかげで壁も屋根もそこかしこが蜂の巣状態だ。
崇徳院も弱体化しているらしく、新撰組も全員、戦線に参加している。
同行していた二人もそちらに加わった。
これなら、あと少しで撃破できるだろう。
西行も宝具を発動。剣士たちの支援をしている。
「ん? なんじゃマスター。もう終わり?
えー。儂もちょっと燃やしたいんじゃが……」
「十分です。朝堂院の機能はほぼ喪失しました。
懸念は大極殿ですが……」
「なら、そっち燃やす。儂に任せよ!」
……そうだな。
後顧の憂いは断った方がいい。頼光、信長。手伝ってくれるか?
「よかろう!」
「もう……ええ。あなたの刃ですもの」
***
「はあ、はあ……」
「───その体でよくもここまで保つとはな。
それほどまでに戦を求めるか、田舎侍」
「当、然です。わたしの望みは……最後まで戦い抜くこと!」
そう言って、沖田は斬りかかった。
崇徳院の羽扇で受け止められるも、すぐさま第二撃を繰り出す。
背後からも新撰組の仲間が攻撃するが、回避され蹴り飛ばされた。
その隙に沖田は死角から突きだしたが防がれ、同様に蹴られた。
(規格外にもほどがあるでしょう……何なんですか。
宮殿も割と破壊されてるはずなんですがねえ……)
崇徳院が呪詛の焔を飛ばすも、マシュがすべて引き受ける。
雪花の盾は、彼の怨念では侵されない。
病弱スキルにより一時撤退を余儀なくされたこともある。
その間、マシュと仲間たちが懸命に時間を稼いでくれた。
西行も自分に回復の術をかけてくれた。
彼らは、全力で、沖田の助けとなってくれた。
ならば……それに応えずして、何が武士だというのか。
誓いの羽織は未だ破れず。
誠の旗は未だ倒れず。
まだ、戦いは続いている───
「一歩音越え」
マシュが少しよろめいた。
何とか持ち直して崇徳院の攻撃を防いでいる。
「二歩無間」
仲間が血まみれで蹲っていた。
それでも、死力を尽くして立ち上がり、組みついた。
全ては、沖田の
「三歩絶倒──────!」
白い刃がきらめく。
防御は不可能。身動きもとれない。
「無明……三段突き!!!!!」
***
もうちょっと続きます。
以下、解説という名の雑談。
朝堂院の機能はオリジナル設定。
「大極殿」だけど本当の名は「太極殿」です。
宮殿自体が冬木の大聖杯みたいなもん。
しかし度重なる火災で焼失。
要は昔の日本の術師ヤベエってことです。
そして帝は聖杯城で何をするのだろうか。
今現在設定はしてません。ゴジラ退治じゃない?
しかしこのままいくと日本がNIHONになりそう。
三種の神器設定した暁には大変なことに……。
え? もう原作がなってる? ……せやな。
snの時点でTSUBAMEだもんなぁ、HAHAHAHA!!!