みーんなー!
レイドイベ、はっじまーるよー!
バルバトス君復刻せえへんかな……
というか年末恒例行事にしてほしいな……
実際、キャスターは相当武闘派のサーヴァントだった。
所持していた武器を巧みに操っている。
とりわけ弓は弓兵として召喚されてもおかしくないレベルの腕前だ。
朱雀大路ほどではないが、広い道路にて。
彼女は飛び交う天狗たちを的確なほどに撃ち抜いていた。
後ろに回り込まれても、馬を巧みに操り、残さず処理している。
……何故、
「先輩……キャスターさんをみつめて黙っています。どうしたのですか?」
いやなに、変わったサーヴァントだなあと。
最も、サーヴァントに何の特徴もない者は基本存在しないが。
「はあ。確かに、ライダークラスの方が違和感はありませんね」
「僧侶として召喚されたからではないでしょうか?
恐らく、仏門に入る前はとても優れた武士なのでしょう」
……なるほど。
サーヴァントステータスには確かに「無窮の武錬」のスキルが存在している。
ランクこそBと頼光に比べると低いが高い武芸技術を保持していることは明らかだ。
きっと別クラスならばもっと高いランクだったのだろう。
馬に乗ったまま弓を射る。
言葉にしてしまえば簡単だが、実際には高レベルな技術が求められるのだろう。
テレビなんかでよく見る流鏑馬の中継を見る度に感嘆していた。
当然、自分には到底真似できるとは思えない。
これをこなしていた武士は一体何者なのかと見る度に疑問に───
───流鏑馬……
「あらかた片付きましたね。進みましょう、立香さん。……立香さん?」
「マスター? どうしたのです、考え込んで……」
……いや、先に進もう。
「了解しました」
「あの、立香さん。よろしければ、私の馬に乗りますか?」
キャスターから予想外の申し出。
間違いなく純粋な厚意なのは分かるが……しかし、何故?
「いえ、その、歩き詰めでお疲れではないかと。
立香さんは私やマシュさん、頼光様と違って、人間ですから」
なるほど、そういうことか。
折角の厚意だが、丁重に断りたい。
自分はまだまだ歩けるし、戦闘になった際、さすがに邪魔だろう。
「ご安心をキャスターさん。先輩はアメリカ大陸の往復を経験しています。
加えて、レオニダスさんの特訓を受けていますから!」
『レオニダス王……スパルタ……特訓……うっ、頭が……!』
「な、なるほど。さすがは特異点を巡ったカルデアのマスターですね」
通信でドクターが呻いている。
何となく、他スタッフの呻き声も聞こえた気がした。
『ま、まあ……あれはあれでいい経験だったと思うよ。基本、運動不足だしね。
それより───気を付けてくれ。この先に大きな反応がある。第一の門番の登場だ』
ドクターの報告に頭を切り替える。
「サーヴァントの反応は?」
『もちろんある。近くなったから、観測精度が上がったのかな。
しかも、ボクたちもよく知ってる「鬼」だよ』
鬼。鬼と来たか。
この天狗まみれの都で鬼はある意味異色といえるだろう。
「ふふ、そうやねえ。こうも天狗が飛び交う都なんてのは、初めて見るわあ。
うちも少し寂しいんやけど……旦那はんが来てくれて、ほんま嬉しいわあ」
脳をとろかす甘い声。
独特の調子で紡がれる京ことば。
マシュは驚愕に息をのむ。
キャスターは額の角に目を見開く。
……傍らの武人は、殺気立つ。
酒呑童子。
大江山に茨木童子によって招かれた鬼。
日本三大悪妖怪の一角として語られる、かつて京にて暴虐の限りを尽くした鬼。
最終的に、頼光と坂田金時ら四天王によって討伐された。
「酒呑童子さん。あなたが門番のサーヴァントだったのですか……」
「そう驚かんといてや。別に何の義理もあらへんけど、
ご近所づきあいも大切にせなあかんからなあ。───そうは思わんか、そこな僧侶」
「え───私、ですか……?」
恐らく、頼光はあえて無視しているのだろう。
いや、むしろ、初めから目当てはキャスターなのか?
「旦那はんは物わかりがええなあ。せや、門番もやけど、うちの任務はあんたを連れてくこと。
ふふ……ほんまはそんなん無視してうちが独占したいわあ。あんた……えらい
「何を、言って───あ、ああ……!?」
「キャスターさん!?」
様子が一変した。
眼を見開いている表情は時折見ていたが、これは驚愕ではなく恐怖の貌だ。
頭を抱え、何かに怯えるように酒呑童子を見据えている。
「私……知って、ます。貴方とは初対面です。けど、その瞳、その眼を知っています……!」
「あれまあ。もう誰かがあんたのこと狙ってたんやろか。多分……あの子、やろなあ」
獲物を見つけた猛獣のような獰猛さと、玩具を見つけた幼児のような残酷さを併せ持った眼差し。
それでいて、愛しい恋人を見つめるような艶やかさがある。
……一体、酒呑童子はキャスターに何を見出したというのか。
「んー、見出したんは今の上司なんやけど……ふふ、あの二人が惚れるのも同感やわあ」
「二人……?」
「少し喋りすぎたやろか? まあええわ。それで? 来るん?」
こてり、と愛らしく首をかしげる酒呑童子。
何も声に出さない頼光の殺気も相まって、緊迫した空気だ。
「───いいえ」
そんな中でも、キャスターは毅然と拒絶の意を表した。
指先も唇も、恐怖で震えているのに、その瞳は真っ直ぐと、清廉とした光を宿していた。
「記憶がどうあれ、今の私はサーヴァント。マスターをお守りすることこそ、私の使命」
「ふうん……まあ予想通りやね。なら、うちも手段を替えへんとなあ」
優美なほほえみを浮かべ、柏手を打つ酒呑童子。
ぱん、ぱん、ぱん───と、ともすれば場違いにも思える音が大路に響く。
すると、大きな羽ばたき音と共に巨大な影が頭上から降りてきた。
漆黒の翼にギロリと睨みつける鋭い眼光。
これまでの天狗たちとは比べものにならないほどの巨躯の天狗が現れた。
「紹介するわあ。太郎坊はん、言うんや。この仕事では、うちの相方やね」
「膨大な魔力反応……鬼ヶ島における三体の鬼と同等です」
「いえ、むしろこちらの方が格上でしょう。あくまであちらは
ですが、この天狗は間違いなく天狗道より来たりし正真正銘本物の魔……」
思わず息をのむ。
目前の太郎坊という名の天狗は、ともすれば神霊にも近しい存在であるのだ。
いや、恐らくこれまで自分たちが狩ってきた天狗たちも同様だろう。
つまり、この先に待ち受けている首魁の正体は───
「太郎坊、酒呑童子、両者戦闘態勢に入りました! マスター……!」
分かっている。
息を深く吐き出し、魔術回路を起動。
「何にせよ、京の守護こそ我が使命。三代目源氏棟梁、源頼光、参る!」
「私も、戦います……!」
***
役割自体はすぐに分かれた。
マシュが太郎坊と酒呑童子の攻撃を受け、頼光がそこに攻撃を畳み掛ける。
隙をついてキャスターが弓で射抜き、適宜支援の術を掛ける。
戦闘につられて襲い掛かってくる天狗たちもキャスターに射落とされていた。
「っ、この、貧相な鬼娘が───!」
「頼光様、強化いたします! 立香さんも!」
分かっている。
「我が一刀の冴え、受けるがいい───!」
キャスターと自分の支援で頼光の「魔力放出(雷)」が大幅に強化された。
辺り一帯を照らす稲光が太郎坊と酒呑童子を屠ろうと空を走り───
「ふ、あはは! よっわい雷やわぁ」
「っ───」
しかし、太郎坊の錫杖による一閃で跡形もなく消されてしまう。
太郎坊が強力だから、というのもあるだろうが……。
「やはり、この酒気はどうにかしないといけませんね」
「はい。これではどれだけ強化をかけても大した威力にはなりません」
周辺にたちこめる強い香り。
まるで誰もを魅了し誘惑する甘い毒の果実の様な。
……「千紫万紅」と名付けられたこの領域。
酒呑童子の宝具が常時発動しており、持続的ダメージと大幅な弱体化を引き起こす。
加えて、この強い香りがサーヴァントとマスターの判断を鈍らせる。
これは毒耐性だけではどうにもならない代物だ。正直、立っているのもつらい。
「旦那はんはもう限界みたいやな? ふふ、気張りや」
「小癪な……!」
殺意まるだしで酒呑童子を睨み付ける頼光。しかし、顔色は蒼い。
「その小癪な鬼にやられてるあんたは何様のつもりなんや、牛女!」
「ぐっ……はああああ!!!」
酒呑童子の真上から剣を振り下ろす攻撃を刀でどうにか受け止める頼光。
そのまま壮絶な斬り合いが始まった。
しかし、酒呑童子が有利な状態であることは火を見るより明らかだ。
「ふふ、あははは! 昂るわあ、いけすかない頼光をいたぶる時が来るなんて!
「何を、言って……!」
喜色満面の笑みを浮かべる酒呑童子。
頼光にはいつもの覇気がない。酒気に加え、戦闘の疲労が出始めているのだろう。
「さあて、図体だけの牛女を殺すときや。太郎坊はん、協力してくれるかいな?」
傍らの天狗に視線を向ける鬼。
天狗は黙したまま答えないが、どうやら同意しているようで。
酒呑童子は剣を、太郎坊は錫杖を振りかざし、頼光にとどめを刺そうと───
……マシュ!
「はい! 頼光さんは、やらせません!」
「なっ───」
奮い断つ決意の盾。
マシュの精神性が昇華されたモノ。
自身の防御力をあげ、敵の攻撃を引きつけるスキル。
これにより、マシュは酒呑童子と太郎坊の猛攻を一身に受けることになる。
一撃、二撃、三撃、……───
「なんちゅう固さや。いつもは頼れるけど、敵に回ったら厄介この上ない。
……でも、それも終いやね。さあ、太郎坊はん! 小娘消したら頼光を滅ぼす!」
一瞬、酒呑童子は苦々しい顔をしたがそれも掻き消え、嗜虐的な笑みを浮かべた。
太郎坊の錫杖がマシュの守りを砕こうと振り下ろされ───
「っ、はい! まだ、倒れません───!」
「この……小癪な!」
ガアアアアン! と、轟音が響く。しかし、マシュはまだ立っていた。
自分が付与したガッツスキルが発動した。
まだ、マシュは戦える。
そして、彼女が十分に時間を稼いでくれたおかげで、こちらも準備が整った。
───いけるか、頼光。
「ええ。ご命令とあらば、この頼光、鬼となりましょう───!」
「な───」
状態異常を解除するスキル。
加えて───
「いつの間に長き眠りの夢さめておどろくことのあらんとすらむ」
(いつになれば長き迷いから目覚めて、あらゆることに対して
不動の心を持つことが出来るようになるのでしょうか)
キャスターの支援。
消耗した体力も回復し、濃厚な酒気が頼光の妨げとなることはない。
「来たれ我が忠臣、我が手足、我が具足───四天王なぞ是この通り」
バチバチバチィ! と耳をつんざくほどの雷鳴が彼女から発せられる。
空気そのものが焼かれているような、とてつもない熱。
「牛王招来・天網恢恢───!!!!」
雷が、落ちた。
***
「はあ……負けや負け。酒もろとも焼き払うとかアホなんとちゃう?」
太郎坊は消滅した。
酒呑童子も、まもなく光の粒子となって消えるだろう。
大路にはくっきりと雷の焦げ跡が残っている。
頼光の宝具は、千紫万紅の芳香を消し去るには十分な威力だった。
「じゃ、うちはこれで。ああでも、そこの僧侶?」
「私ですか……?」
「せや。あんたはもうお帰り。拒絶したならそうさせろってゆう命令なんや。
けど、あんたがそれでも禁中に行くんなら……ええ加減に覚悟しときよ?」
そう言って、一瞬、頼光を睨み付け、酒呑童子は消えた。
「酒呑童子、消滅を確認しました。あの、キャスターさん……」
「……いいえ。大丈夫ですよマシュさん。きっと、私の宿業なのでしょう」
「宿業、ですか?」
「はい。これは、私が向き合うべき問題です。
───さあ、禁中に向かいますよ」
そう言って、キャスターは少し悲しげに微笑んだ。
***
作中の天狗「太郎坊」は実際に愛宕山・富士山で祀られてます。
フィールド効果発動!
「千紫万紅」
ゲーム的には味方全体に大量のデバフと毎ターンHP減少。
全体回復や全体解除が出来る鯖がお勧めです。
マスターのスキル使用描写が難しいんで
EXTRAのコードキャスト形式にしてみました。
スキル名をもとにオリジナルで名づけ。
え? アトラス院とアニバーサリーが混ざってる?
細けえこたあいいんだよ。
ぶっちゃけ礼装縛りは書いてるこっちがきつい。
すごいなあ立香……たった三つで戦ってるなんて……
しかし戦闘描写が難しい……。
言い訳するとゲームのシナリオを想像して書いてるからですかね。
よく考えたら雑魚エネミーが神霊とかやばいな。