(リメイク)彼と彼女の相聞歌   作:水天宮

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桜花と魔炎

 

 

 

天狗は相変わらず襲撃してくる。

酒呑童子と太郎坊を撃破したために、向こうの警戒レベルが引き上げられたのか。

マスターである自分を積極的に狙って来たり、背後から攻撃を仕掛けたり。

目に見えて、彼らの戦い方が変化している。

 

不可解なのは、キャスターがほとんど攻撃されない点だ。

頼光やマシュ、それに自分があれだけ標的に定められているのに、彼女にはほとんどない。

その分、支援がスムーズにいくため、助かってはいるのだが……。

 

 

 

 

何となく、キャスターと首魁の真名に予想はつく。

武芸と和歌に優れた僧など、「あの人物」以外に想像がつかない。

いや、もしかしたらいるのかもしれないが、少なくとも自分は知らない。

そして、それは首魁も同様だ。

天狗を総べる「帝」というのも、一人を除いていないだろう。

 

確かに、自分が予想する二人は生前に面識があるはずだ。

だが、かといってそれが攻撃しない指示につながるのだろうか?

余りにも徹底的というか。敵の真意が分からない。

 

 

 

 

「掃討完了しました」

『お疲れ様。そろそろ休憩したほうがいいんじゃないかな?』

「そうですわね……この屋敷を拝借しましょうか?」

「分かりました。立香さんも、よろしいですか?」

 

分かった。

人のない屋敷。少しばかり、借りてもいいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

寝殿造りはこうして本物を見るのは初めてだ。

開け放たれていることもあり、割と室内は明るい。

……うむ。

マシュが人理修復の旅に感謝するのも分かる。

こうして過去の遺物を肌で感じる貴重な経験……たまらない。

 

 

 

 

「立香さん? どうしたのですか?」

 

いや、何でもない。

それよりキャスター。記憶と真名のほうはどうだろうか。

 

「……申し訳ありません。それが、まだ不明瞭で……」

 

気にすることはない。

戦っていくうちに、おのずと判明すると思う。

 

「そう、でしょうか。私は……正直、不安です」

 

と、言うと?

 

「先程の酒呑童子殿。間違いなく私が何者かを知っていました。

それは恐らく、禁中で待ち構えているらしい存在から聞いたのでしょう。

つまり、この異変の黒幕は、私を知っている……」

 

掌を握りしめるキャスター。

 

「もう一人、私の関係者と思われる存在のことも口にしていました。

あの時、彼女が私に向けた視線を覚えています。

生前……だったかどうかは分かりませんが、一度同じ目で見られたことがあります」

 

……あの眼差し。

カルデアにも似たようなモノを自分に向けるサーヴァントは何名かいる。

現在も同行している頼光はさることながら、清姫や静謐のハサン。

そして、酒呑童子にも冗談交じりに色っぽく見つめられたことがある。

 

 

 

甘くとろけた、それでいて仄暗い感情を乗せたモノ。

恋心? そんな優しいものではないだろう。

これはもっと欲深く、嗜虐的で、あらゆる感情を混ぜ込んだ黒い情動。

そういったモノを、酒呑童子はキャスターに向けていた。

 

……思い返せば「()()()」と言っていたような。

 

 

 

 

 

「すみません、これからも戦いは続くというのに。

ただ、どうにも恐ろしいとしか思えないのです。

もしかしたらあの目をしている存在が、他にもいるかもしれない」

 

ふむ。

確かにこの先どんな人物が出てくるかなんて、予想がつかない。

敵は首魁だけではないだろう。まだあと二体の門番が残っている。

ただ、これだけは忘れないでほしい。

もし何かあっても、この特異点では自分はキャスターの味方だ。

なるべく手助けするし、何者かが襲ってきてもマシュに守るよう指示する。

 

 

 

 

「────」

 

 

 

不明瞭な未来が恐ろしくとも、前に進むしかない。

そうやって、人間は進歩を続けてきた。

……大丈夫。

自分も、マシュも、頼光も、手助けはする。

 

「あ───え、っ……」

 

キャスター!?

彼女の瞳からぽろぽろと涙がこぼれ出した。

すまない、変な気遣いだっただろうか。

今のは忘れて───

 

「い、いいえ! 違います、そうではないのです。

ただ、その……嬉しくて。本当に」

 

ふにゃり、と笑うキャスター。

 

「ありがとうございます、立香さん。貴方のおかげで、踏ん切りがつきました」

 

そう言って、涙をぬぐい、自分の前に跪いた。

 

「サーヴァント、キャスター。真名は未だ定まらねど、我が心は変わりませぬ。

これよりは、我が一矢は貴方のために。我が歌は貴方の心のために。

どうぞ、存分にお使いください、我が(マスター)……」

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

休息も十分にとり、万全のコンディションで出立した。

この先、厳しい戦いが続くだろう。

 

『さて。ちらほらとサーヴァントの反応もみられる。

出来ることなら彼らの助力も得るべきだと思うよ』

「一体誰でしょう……」

 

それは分からない。

恐らくは、出典地域が日本のサーヴァントだと思われる。

それこそ鬼ヶ島における弁慶や小太郎の様に。

 

「ですが、反対にわたしたちと戦闘になる可能性もありますね」

「恐れることはありませんよマシュさん。マスターの敵は、即刻焼き払いますもの」

「何と勇ましい……さすがは伝説に名高い源氏の棟梁。私も見習わねば」

 

あれ、彼女は源氏の系譜だったか?

いや……単に憧れなだけか。

 

 

彼女もかつては武士だというのなら、割と脳筋な思考なのかもしれない。

何百年もの間、ずっと内乱をしていた国で戦いを一手に担っていたのだから。

元寇時や、島津の武士たちなんていい例だろう。

近代化の後でも、変な方向で諸外国に名を轟かせていたらしい。

 

 

 

「先輩? どうしました、そんな曖昧な顔で……」

 

何でもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

徒歩が続く。

道中、天狗を倒しながら適度に会話を交わす。

 

「……それでですね、先輩は……」

「……ふふ、可愛らしい……」

「……私が思うに、それは……」

 

今は三人の会話が盛り上がっているらしい。

話の内容は自分だとか。

気恥ずかしいやら内容が気になるやらでどうすればいいのだろう。

 

『んー……一応、地雷踏まないように黙っておけば?』

 

それがいいかもしれない。

マシュも楽しそうだし、このままにしておこう。

 

 

 

 

 

 

すると、路に複数の影が立ち塞がった。

 

「ギャギャギャ! 貴様、アノ時ノ僧侶! 懲リモセズ戻ッテキタカ!」

「っ───」

「貴様ノ歌集ハソレナリニ金ニナッタ……サア、次ハソノ弓ヲ頂クゾ!」

 

この天狗だらけの京では珍しい、鬼ヶ島と同じ鬼たちだ。

キイキイ声で笑い声をあげる鬼。

……どうやら彼女の歌集を奪われたらしい。あの時半泣きだったのはそのためか。

では、この鬼たちは次にキャスターの弓を持ち去ろうとしているらしい。

 

「まあまあ、何を言い出すかと思えば……何を、どうするんですって?」

「ナ、何ダオ前タチハ!?」

「疾く失せなさい。───もっとも、この世から……ですが」

「何ヲ───ギィヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

鬼たちは頼光の雷光で焼き払われた。

後には何も残っていない。

 

「まったく、丑御前(わたし)にも困ったものです……。

後処理くらい、ちゃんとすればいいものを。いえそれ以前に、しつけの一つや二つ……」

「あ、あの頼光様……ありがとうございました」

「どういたしまして。ですが、たかが物取りにやり込められるなど武士の恥ですわ。

戦う者ならば、屠って見せなさい。僧ならば、説法でもすればいいものを」

「す、すみません……」

 

消滅した鬼たちには目もくれず、頼光はお説教しだした。

こういう光景を見ると、母親なんだなあと実感するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

『───注意してくれ。サーヴァント反応……二騎だ』

「先輩、下がってください」

 

マシュが最前列に出る。

傍らで頼光が刀を構え、後方でキャスターが弓に矢をつがえた。

彼女たちに囲まれながらじりじりと反応のある方向に進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「あ~……なんなんじゃここ。こんな京があってたまるか。

そもそも儂が知ってる京と違い過ぎるんじゃが。ここ何処?」

「知りませんよそんなこと。ほら、喋ってないで種子島撃ってください。

今回はたまたま相性スキルが役に立つんですから、使わないでどうするんです」

「んー、恨むべきはFGO限定のクラス相性……」

 

 

 

パァン、パァン! と音が立て続けに鳴り響く。

飛行していた複数の天狗があっという間に撃ち抜かれ墜ちていった。

 

 

 

「っちゅーかお主も働かぬか人斬り。それぐらいしか役立たぬくせに」

「うるさいですね、天狗がこっちに来ないんですよ」

「ワープしろよ」

「ああもう、分かりましたよ! やればいいんでしょやれb───コフッ」

「相変わらず唐突じゃな!?」

 

 

口元から飛び散る血液。

 

 

「えっと、マスター……」

『……一応、対応は任せるよ』

 

ふむ。

まあ戦力にはなりそうだし、一応声をかけておこう。

 

「ええ、はい、了解しました……」

「マシュさん? あの、あの二人が何か?」

「いえ……」

 

目に見えて気落ちしているマシュ。

大丈夫、彼女たちも話は分かるハズだ。

 

 

 

 

 

「───む、気配!」

「なんじゃ?」

 

はろー。

二人そろって何してるの?

 

「なんじゃマスターか。レイシフトか?」

「そりゃそうでしょう……わたし達みたく勝手に来てる方がおかしいんですよ」

 

うむ。

どうやってこの特異点に来たのかは聞かないでおこう。

何はともあれ、自分たちに協力して欲しい。

 

「どうします?」

「そりゃついていくじゃろ……一応、こやつの従者(サーヴァント)じゃし」

「ですよねえ。分かりましたマスター。沖田総司、お供しますよ」

 

てってれー。

沖田とノッブが仲間になったー。わーい。

 

「あぁ……マスターまでぐだぐだしてしまいました……」

 

失敬な。

自分はいつもこんな感じだ。

 

「マスター? 真面目にやってくださいね?」

 

うぃっす。

分かってるから頼光、そういう何かくらーい虚無の目で見るのはやめて。恐い。

 

 

***

 

タイトル回収。

同行者:おき太&ノッブ

何故いるのかは気にしてはいけない。

まあ羅生門イベの金時程度に考えておけば。

 

 

 

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