(リメイク)彼と彼女の相聞歌   作:水天宮

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┌(┌ ^o^)┐ユリィ…

タイトルは執着、愛執、確執の意。







 

 

 

前列と後列で風邪を引くほど空気の温度差がある。

三人並んで進む沖田、ノッブ、西行は和気藹々と会話しており、微笑ましい。

一方その後ろにいるマシュ、頼光に自分との間には絶対零度の重みがある。

当然ながらあっちに混ざりたいけど、両隣の二名がそれを許さない。

……とはいえ、確認を怠った自分の自業自得だから、仕方ないのだろう。

 

 

 

「───ていうか、人斬りはこやつに反応なしか?」

「え、何です。特に因縁とかありませんよ?」

「何じゃ知らんのか。確か……えーと……高杉? とかいう奴が……」

「あ゙?」

「西行にちなんで自分の号を「東行」に定めたとかなんとか……」

「……あぁ、何だそういう話ですか。

いや別に、薩長はともかく西行さんは関係ないですし」

 

しれっとノッブに返答する沖田。

一瞬凄んで見せたがそれもすぐさま消え失せた。

 

 

 

 

ノッブが言っていたのは高杉晋作のことだろう。

確かに、彼は西行にちなんで東行という号を冠した。

この名には、「東に行く」───つまり、討幕の意思が込められているらしい。

 

 

───後世に至るまで、数多くの歌人たちを魅了した歌聖。

それがこんなにも心優しい女性だったとは、誰一人思いもしなかっただろう。

 

 

 

 

 

 

「………………」

「どうしたんじゃ? そんな辛気臭い顔をして」

 

ノッブが西行に振り返る。

彼女の視点では、きっと西行は憂いを帯びた面持ちだったのだろう。

 

「いえ、その……立香さんや、秀郷様に名を呼び掛けられましたが……」

「まだ確証が持てないんですか?」

「はい。何と表現すればいいのでしょう……」

 

苦悩するように西行は息を吐き出した。

 

「私を───西行という人間の、もっとも重要な「ナニカ」が、まだ分からないのです」

「もっとも重要な「ナニカ」……ですか」

「はい。この事物なくして「私」は語れない。そんな、とても大切な物……」

 

西行という一人の女性を語るうえでの最重要項目。

自分が思いつく範囲ならば、まず間違いなく和歌があげられる。

そして旅、仏道、武芸……といったところだろうか。

しかし、これらの事物をちゃんと彼女は認識しているため、あてはまらない。

 

つまり、自分たちが知らないこと。

歴史の影に隠れた、当事者しか知りえない真実。

……おおよその予測をつけるならこんなところだろうか。

 

「この先に待ち構えている帝ならば分かるのかもしれませんがねえ……」

「どの道門番はあと一体じゃ。あまり考え込むでないぞ」

「そう、ですね……」

 

ノッブの労りに西行の声色が上向きになる。

きっと、花がほころんだような、可憐なほほえみを浮かべていたんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

途中、一時の休憩をとることになった。

前回同様、無人の邸宅の一軒を少しばかり拝借する。

 

相違点を挙げるとすれば、目に見えてより豪勢な屋敷であることだろうか。

此処は大内裏に近く、加えて左京側であるため、とても広々として調度品も煌びやかだ。

この邸宅を選んだのはノッブだが、何か琴線に触れたのだろうか。

 

 

 

 

「思えば京の都もずいぶん久しく感じます。不思議ですね」

 

西行は笑っていた。

開け放たれた一室でのことである。

 

やはり、進むのは不安だろうか?

無理をする必要はない。最悪、自分たちだけでも───

 

「いいえ。大丈夫ですよマスター。私は貴方がたと共に進み、共に戦います。

その先に何があるのかは分かりません。ですが、貴方とならきっと大丈夫です。

……ふふふ、おかしいですよね。何故だか、そんな気がしているのです」

 

彼女の眼差しは強く輝いている。

不安は確かにあるのかもしれないが、それ以上に前に進む意思を感じた。

 

「崇徳院……きっと、私を苛む欠落の正体はあのお方なのでしょう。

どのような関係で、どういった交流を深めたのか、それすらも分からない。

それは嫌です。私は、ちゃんと向き合って、ちゃんと言葉を交わしたい」

 

 

確固たる決意だった。

純粋な祈念だった。

穏やかな憧憬だった。

 

誰一人として侵せない、壊せない、清廉とした精神(こころ)だった。

 

 

 

 

 

───なんて、眩しい───

 

 

 

 

「ごめんなさい立香さん。こちらこそ、私につき合わせてしまって」

 

困ったように笑いかける西行。

思わず訂正した。

そんなことはない。協力してくれて本当に助かっている。

だから、西行もどうかこちらを頼ってほしい。

出来ることがあったら、自分も力になりたいから。

 

「立香さん……」

 

二人で笑いあう。

きっと大丈夫だと、未来(さき)を遥かに見据えながら───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「随分と仲が良いようじゃな歌人よ。この京にいながら妾を忘れるとは。

……まぁよかろう。わざわざ捕らえるまでもなく自ら縄張りにやってきたのだ。

自分の行動に責任はとれるじゃろう? なあ……■■よ」

 

 

 

 

声。

頼光でもなく、信長でもなく。

ましてマシュでも沖田でもない。

……そして、自分でも西行でもない。

 

「な──────あ、なたは───!?」

「ほほほほ。相変わらず愛らしい瞳じゃ。えぐり取って飴玉にしたくなる。

それとも氷につけて飾るのもよいかもしれぬな。貴様はどうしたい?」

 

 

 

聞いたことのある声だった。

聞いたことのない口調だった。

見たことのある外見だった。

見たことのない眼差しだった。

 

 

 

「……なんじゃ星見(カルデア)の。まるで亡霊でも目撃したかのようにじろじろと……。

目障りじゃ。その首、落とされたいか? ああ応答は要らぬ、今すぐ処断してくれよう」

 

 

ひやり、と背筋が凍る。こめかみに脂汗が浮かぶ。

……何が禁中に潜む天狗だ、眼前の大化生のほうがよっぽど危険じゃないか!

 

 

 

『ちょ───何事だい!? そこにいるのは……サーヴァント、なのか?!

馬鹿な、霊基数値が異常だよ! こんなの、まるで……───』

「……羽虫まで増えたか。煩わしいにも程がある!」

『なっ……計器に異じょ───ザザザ……ガガガガガ───』

 

 

ノイズの後にプツン、と音を立てて通信は途絶えた。

当然、眼前の女とカルデアに召喚されている彼女とは別個体だろう。

 

 

 

 

玉藻の前───白面金毛の狐。

かつてこの国の王を籠絡せしめんとした大妖怪。

 

 

だが、何故今になって現れたのか?

確かに、西行の人生を辿れば玉藻との交友は多少なりともあるのかもしれないが……。

 

「何故、だと? おかしなことを。獲物をとらえたら取りに行くのが道理じゃろう。

罠から丁寧に肢体を取り外し、料理し、そのまま頂く……人間と何も変わらぬ」

 

心底不思議そうに語る玉藻。

視界の隅で西行の手が震えている気がした。

思わず、そこに自分の掌を重ねた。

 

「ふん……腹立たしい。何故妾の誘いを袖にして、そこな人間の求めに応えるのじゃ。

まさか、たかが矮小な人間に妾が劣るとでも? 随分と感性が腐っ──────」

 

 

玉藻の言葉は最後まで紡がれなかった。

パパパパパパパパ! と、連射音に遮られ、襲い掛かる弾丸を防いだからだ。

 

 

 

 

「ふ、ふははははははははは! マヌケなことを言いおったな野良狐!

何故貴様が拒まれただと? そんなもの、貴様が気色悪いからじゃろうが!」

 

 

高笑いを響かせる信長。

 

 

「罠にはまった? ンなわけなかろう。あえて! この屋敷に踏み入ったのじゃ!

儂の勘……具体的には天下布武スキルが言っていた。ここがキナ臭いと!」

「……はっ。尾張の言葉は訛りがきつくて聞こえぬな」

「そうか、ならばいくらでも言ってやろう! この淫乱クソババア!

行き遅れの哀れな野生動物! 三大妖怪とか言う割に他二人と比べて地味!」

 

九割、信長の思い付きだろう言葉の羅列が投げかけられる。

 

「出番少なめ不遇なサブヒロイン! シリアスブレイク通り越してただのKY!

あと……えーと、えーと……あ、ぶっちゃけ某割烹着とキャラ被ってるよね!

そうそう、いい加減自分の年齢考えやがれ××××! やーい、ぼっち乙!」

 

それからー、と言うことが尽きたのか考え始める信長。

すでに自分と西行の前方にはマシュが盾を構えており、頼光は刀を抜いている。

加えて、玉藻の背後では沖田が刀を振りかぶっていた。

 

 

 

「───言いたいことはそれだけか、人間!」

「ぐっ……」

 

玉藻を中心に強烈な風が吹き荒れた。

ガキンッ、と沖田の剣戟を弾く甲高い音が鳴る。

 

……黄金に波打つ九尾。

恐らくあの尾が刀を防いだのだろうが、そうは見えない。

流血どころか、かすり傷でさえ見当たらない。

 

 

 

「妾を侮辱した代償…………その身体(からだ)で払ってもらおうぞ!」

「え───」

 

パァ、と玉藻の体が光に包まれる。

それは西行も同様だった。

 

 

 

「ふん。少しばかり、失敗したな……」

 

そう呟きを残して、玉藻は光となって消えた。

西行も、何も言えずに消えてしまった。

……これは、一体───?

 

「転移!? 一体、どこに……」

「ドクター! 応答してください、ドクター!」

『ザザザザ───あぁ、やっと繋がった!

様子は伺えたから分かってる。西行は、すぐ近くにいる!』

「近くに……!?」

「多分、あっちじゃろ。ほら、一番中心じゃし?」

 

信長が指差したのは邸宅の中心、主人の寝殿だった。

そうとわかれば話は早い。

西行を助けに行こう。

前衛はマシュ、沖田で後衛は信長、頼光でいいだろうか?

 

「了解しました。これより、西行さんの救出に向かいます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

呼吸が出来なかった。

 

 

 

白い壁に囲まれた暗い一室。灯りは一本の燭台のみ。

そこで西行は玉藻に押し倒されていた。

 

「は───ぐ、ぅ……」

「ああ、腹立たしい……こんなにも(はらわた)煮えくり返るのは初めてじゃ。

あの田舎者が妾を侮辱したことも、貴様があの者どもと共にいることも!」

 

 

激情のままに、玉藻は西行の首を締める。

僅かに口と鼻から漏れる呼気が、玉藻には甘美な花の匂いに感じられた。

 

それだけではない。

目元からこぼれ落ちる涙は、まるで甘い毒の蜜のように思えた。

一本一本が艶やかな髪の生え際から染み出る汗は肢体(からだ)を乱す香のようだった。

 

───■■という女を構成する肉体的要素のすべてが。

玉藻にとっては、どんな人間よりもそそられる極上の料理に見えた。

 

 

 

当然、肉体だけではない。

何よりも、魂があまりにも輝かしく見えた。

それは宝玉というより花。

鮮やかな大輪ではなく可憐な一片(ひとひら)

 

……例えるなら、そう、桜がいい。

咲き誇るのは僅かな間なのに、人々を魅了してやまない。

そんな、眩しくも罪深い花。

 

 

 

 

「は……はぁ、はぁ……ふ、んむ───」

「ん───ちゅむ、ちゅ───」

 

首を絞めていた掌をほどき、唇を重ねる。

空いた手は西行の手首を拘束した。

最初は触れ合うだけだが、その触れ合いからあまりにも強い。

呼吸を求めて開けられた西行の口から玉藻の舌を差し込む。

 

「む……ふ、ちゅう……ちゅ」

「ふぁ───ん、あ───」

 

乱暴にするのもいいが、今はそういう気分ではなかったらしい。

だから、丁寧に、行儀よく、舌で西行の腔内を乱していった。

 

始めは歯茎をなぞり。

次に舌をからめ。

そして上あごを撫で。

最後に奥を突いた。

 

一つ一つの行程をゆっくり時間をかけて行うのが、玉藻は好きだった。

その都度、どんな果実よりも甘い西行の唾液を味わった。

 

何度か繰り返して、ようやく西行の唇は離された。

 

「……ふん。物欲しげな顔をしおって。今のでは足りんか。

あぁそういえば、随分と久しぶりじゃな? 貴様の口を吸うのは」

「にょ、うご……さま……」

「───そう呼ばれるのも、久方ぶりじゃ」

 

 

 

すでに呪術はかかっている。

西行の手足は玉藻の術符に拘束され、思考は蕩かされままならない。

声を上げることもできなかった。

 

荒く息をする西行を一瞥し、玉藻は西行の衣服を脱がし始めた。

 

「!? 何を───」

「聞いていなかったのか。代償を払ってもらうと言ったはずじゃが」

 

しゅるしゅると音を立てて衣がほどけていった。

何枚か重ねられた衣服を少し開くと、白い胸元が玉藻の目に入る。

玉藻は不満げにため息をつく。

正直、全て脱がして西行の何もかもを溶かしこみ、自ら堪能したかった。

 

 

 

 

 

 

「───、──────!」

「……? ───。──────、───」

「──────、……。───」

 

 

 

 

 

 

「もう追いついたか。手早く済ませねば」

「っ───!」

「そう怯えるでない。少し、大人しくしていればいいだけじゃ」

 

そういうと玉藻はすぐさま、首筋に口づけた。

ちゅ、ちゅ、ちゅ、と立て続けに耳に入る音に西行は身を強張らせた。

 

 

西行の胸元、白い肌に点々とつけられた朱い痕。

精神の奥底から湧き出る所有感に玉藻は思わず嗜虐的な笑みを浮かべた。

この女を乱した。印をつけた。

ああ、なんて喜ばしいことなのだろうか。

 

 

 

ふと思う。

この証を、禁中で待っているらしい阿呆の小僧が見たらどう思うだろうか。

……口角が吊り上るのが分かった。

 

 

 

「分かっていると思うがな。貴様の名と記憶を封じたのは妾じゃ」

「………………」

「あの浅ましい小僧をどうすればいたぶれるか考えた結果じゃ。

やはり、あ奴には貴様を使うのが一番効果的のようじゃな」

 

思わず鼻で笑い、最後に首の付け根、耳のほど近くに口づける。

 

「───精々、あ奴の無様な姿を引き出すがよい。

此度の無礼、それで帳消しとしてやろう」

 

そう囁いて、玉藻は光になって消え失せた。

しばしの静寂が部屋を包む。

西行を縛っていた呪術はすでに解けていた。

 

 

 

思わず涙がこみ上げた。

理由は西行には分からなかった。

 

 

 

 

 

 

ガン! ガン! と、小さな扉が建物全体を揺るがすほど大きな音を立てた。

すると、バキ、と板が折れ、グシャッ、と乱暴に出入り口が出来た。

 

「無事か西行ー! あ、やっぱそっち系じゃったか!」

 

信長のよく通る声が部屋に響く。

衣が乱され、涙を流している西行を一目見て状況を察したらしい。

 

「───っ! マスターはそこで待っていてください!」

 

 

 

ガツン!

 

 

 

 

 

「ん? マシュさん、今の音、マスター盾にぶつかってませんか?」

「す、すみませんマスター! ……はい? 水とハンカチ?」

 

扉をふさぐように立てられたマシュの盾の隙間から物が差し出される。

水が入ったペットボトルに白いハンカチ。

 

「西行さん、大丈夫ですか? 先輩が、これを使ってほしいと……」

 

こちらを労わるマシュの視線。

手には未開封らしいペットボトルと真白の布。

 

何故だか、とても泣きたくなった。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

玉藻っち「m9(^Д^)プギャー」

崇徳さま「(^ω^#)ピキピキ」

 

シーズン1終わったらR18書こうかな。

 

多分カルデアでは二人が取り合ってるところに

「うちも混ぜて?」と酒呑が入ってくる。

西行さんの胃は死ぬ。

 

 

 

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