メガテン二次書くのに忙しくて最初に更新して以降ずっと更新してなかったこと侘びます。
安心してください、と言うべきか。ちゃんとこの作品も完結目指してやります。
と言うわけで唐突ですけど、第一部のクライマックス突入です。
朝、目を覚ますと一面の向日葵が咲き誇っていた。
「………………あら、これは」
綺麗、ではあるがおかしい、何故ってまだ春だ。
向日葵が咲く夏にはまだ程遠い。
それに起き抜けから鼻腔を突き刺すようなこの香りは…………。
「そう…………もうそんな時期なのね」
脳裏に浮かぶあの時の記憶に一瞬殺気があふれ出しそうになる、がギリギリで留める。
「…………少し見て回りましょうか、そうすれば」
この陰鬱な気分も晴れるだろうか…………?
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「ほわあ…………お花いっぱいです」
幻想郷中に咲いた花と言う花たちを見て咲が感嘆したような声を漏らす。
「あら、本当ね、どうなってるのかしら?」
もう秋の半ばだと言うのに明らかに秋の花では無い花たちが咲いているのが見える。
向日葵は全て枯れてしまっているので咲いてはいないようだが、遠くの山では桜が咲いているのすら見える。
いくらなんでも季節を無視し過ぎだ。明らかな異変、そしてその原因もすぐに気づく。
「霊ね…………そう、今年は回帰の年だったのね」
夏に入ってから死者の霊が急増しだしているのは知っていたが、それがとうとう死神の許容量を超えたらしい。
「あまりこう言う不自然な咲き方は好きではないのだけれど…………」
家のガラス窓に張り付いて楽しそうに外を眺めている少女にはそんなこと言えない。
「お姉ちゃん、お花いっぱいですよ!」
満面の笑みでそう言う少女に苦笑しながらその頭を撫でる。
「そうね…………でも残念だけど今日は家の中にいなさい」
まだ幼い子供にこの死の香りは毒でしかない。特に咲は物珍しい能力を持ってはいるものの本質的には人里の一般人となんら変わりないのだから。
さらに言えば、この異変に当てられた妖精が凶暴になっており、さきほど家の周囲をぐるりと見て回った時も何十と言う妖精が襲い掛かってきた。
しかも漂う死の香りに当てられた力の弱い妖怪も自我を失って凶暴化しており、普段なら絶対に来ないだろうこの太陽の畑にも朝から何匹もやってきては返り討ちにあっている。
「むうー」
頬を膨らせながらこちらをちらちらと見つめてくる咲にそれでもダメ、と言うとしゅん、となっておとなしくなる。
「ほら、この間から何かやってたでしょ、今日はそれをしてなさい」
「むう…………はーい」
不承不承と言った感じではあったが咲が頷き部屋の片隅の置かれた机を見る。
「お姉ちゃん、これ窓のところまで持っていって良い?」
「良いわよ、ちょっと貸しなさい」
咲では力が足りないだろうから、机を持って窓辺まで移動させてやると、いつの間にか持ってきていた裁縫の道具を机の上に広げ、時折窓の外を見ながらちくちくと作業を始めた。
「ところで、先週くらいからずっとやっているけれど、何をしてるのかしら?」
残念ながら自身は裁縫の類はやったことが無いので何を作っているのかさっぱりわからない。
「んー? あのね、きーちゃんのためにお人形さん作ってるの」
「きーちゃん?」
初めて聞く名前に首を傾げる、それを察した咲が付け加える。
「あのねー、里にいる私の友達。とってもキレイなんだよ」
咲の友達、と言うとまだ十前後と言ったところか? 里にいるらしいので人間なのは間違いない。
目の前にいるこの幼い少女と同世代で綺麗、と言う形容詞が付く、と言うのはちょっと興味があるかもしれない。
「どんな子なのかしら?」
そんな自身の問いに咲が、んー、と困ったように首を捻る。と言ってもその手は一切止まらず糸を縫い続けているのだが。
「きーちゃんのお
物がいっぱいでそれを買いに人が来る、何かのお店だろうか?
「きーちゃんは兄弟がいないからお家をつがないといけないんだって。でもきーちゃん、それが嫌だって言ってた」
家を継ぐ、と言う言葉の意味をよく理解していない咲が自分の言葉に首を傾げながら話を続ける。
「きーちゃんね、そとのせかい、って場所をもっと知りたいんだって、いつかそとのせかい、ってところに行ってみたい、って言ってた」
そとのせかい…………外の世界か。珍しいことではない、幻想郷には外の世界からさまざまなものが流れついてくる。幻想郷ではまず見ることも無いような物珍しいものばかりだ。
そう言った見たことも聞いたことも無いようなものを作り出す外の世界に憧れる人間と言うのは意外と多い。
逆に妖怪は古い幻想を廃した外の世界から逃げてきたものばかりであり、外の世界に帰るなど真っ平だ、と言う者が多い。
「でねー、りんくんも外の世界にきょーみしんしんだから二人はとっても仲が良いの」
「りんくん?」
新しく出てきた名前を問う。
「りんくんはね、どーぐの名前と使い道が分かるんだって、けどどうやって使うのかがわかんないからけっきょく使えないの」
それは、能力か何かだろうか? と咲に問うと、分からない、との答え。
「りんくん、あんまり遊ばないから良く知らないの。でも仲良くはなりたいよ」
仲良くなりたい、と咲が言った瞬間、むっ、とした自分がいたことに気づき、苦笑する。
まるで、と言うとそのものずばりで、自分は咲が自分の知らない人間と仲良くすることが気に食わないらしい。
こう言う感情を嫉妬と言うのだろうか、ただの咲の希望でしかないのに、もし咲がその人間と仲良くなってしまったら、と考えてしまっている自分を客観的に見てしまうと酷く滑稽で、苦笑しか出てこない。
存外自分は嫉妬深い性格だったらしい、千年以上生きてきて初めて知った事実である。
それとも…………咲によって変えられてしまっただけなのだろうか?
二ヶ月前の自分と今の自分を比べてみれば、そのあまりの豹変ぶりに自分のことを知っている存在なら誰でも驚くだろう。
それほどまでに…………自身の中で、咲の存在と言うものは、大きかった。
そう…………とてつもなく、大きかったのだ。
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太陽の畑にある自身の家に戻ると、先客がいた。
「…………あら、来てたのね」
夕日に赤く焼けた向日葵たちを見つめ立ち尽くすその背中に声をかけると、彼女が振り返る。
「…………こんにちは、もうこんばんはでしょうか? そう長居するつもりはありません」
怖い妖怪がここにはいますから、と茶化すような口調で彼女が寂しそうに笑う。
「…………今くらいはその仕事口調外しなさい、あの子のために来たのなら、ね」
「………………………………そうね、そうさせてもらうわ」
そうして彼女ががらりと口調を変え、けれど表情は変わらない。
「今年でもう六十年、ね……………………風見幽香、あなた結局、この六十年で作らなかったのね」
あの子の墓を。
その言葉に頷く。
「地獄に直接行って聞いてきたわ…………あの子の魂は裁かれていない、そもそも三途の川を渡ってすらいない」
私の言葉に彼女が呆れたような声で返す。
「いくらあの子のためとは言え、あなたがそこまでするなんてね…………予想もしてなかったわ、あなたがそこまで変えられるなんて…………私がこうまで変えられる、なんてね」
寂しそうにぽつりとそこに佇みながら…………どこか懐かしむように、遠くを見据える彼女。
「…………………………」
そんな彼女に私はかける言葉が見つからなかった。
結局、私の心にぽっかりと空いた穴も、彼女の心についた傷痕も。
あの子がいなければ一生かけても癒えたりはしないのだろう。
「一つ聞いておくわ」
そうして無言の時間が続き、ふと、その静寂を切り裂くように彼女が言葉を発する。
「あなたは今でも探しているの? 彼女を」
「ええ」
即答。返事を考えるよりも早く、本能が答えを返した。
そんな私の返答に彼女が苦笑する。
「即答、ね…………本当に変わったわね」
「…………それで、それがどうかしたの?」
少々苛々としながら尋ねると、彼女が神妙な表情をしながら振り向く。
「今朝のことです…………私がこの異変のことを調べるために各地に出向いた時、同じように異変を調べる巫女や魔法使いたちに出会いました」
「それなら私も出会ったわね…………それがどうかしたのかしら?」
「兎には出会いましたか?」
「兎? それは知らないわね」
兎、と言うと妖怪兎か何かだろうか? 竹林にそう言った類が多くいた気がするが…………。
「竹林へ行った時に出会った妖怪兎がこんなことを言っていました」
植物の妖怪と言葉を交わす少女がいる、と。
ぞわ、と背筋がざわめき立つ。
「私はね、これでも情報には聡いほうだと思ってるわ…………幻想郷中をいつも駆けずり回って自分の目で耳で集めているのだから、八雲を除けば一番の情報通だと自負しているわ。けどね、そんな私でも植物の妖怪と意思疎通をする存在なんてあなたしか知らないわ」
彼女を除けば、ね。
そう続けられた言葉に、声が出ない。
「けれど幻想郷であなたを知らない存在なんてほとんどいない、大妖怪風見幽香の名を知らない存在なんて、ね。それにあの兎が言っていた少女、と言う言葉はあなたに当てはめるには少し無理があるわ」
並べられる言葉の数々、それら全てが自身に予感を感じさせていく。
「ねえ…………その少女って…………」
紡がれた言葉の先は…………自身の予感と一致していた。
最後に出てきた「彼女」が誰かなんて東方信者の読者さんなら簡単に予想できますよね?
言ったことなかったと思いますけど、まあ多分予想されてとも思いますが。
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↑が入ると、過去編と未来編が切り替わります。
1945年の過去編と2005年の未来編の二つのサイドで書いてます。
今更ですけど、超今更ですが。