LUKに全振りした少女の奮闘記   作:騎士見習い

2 / 4
YUU=ユウとします


ダンジョン探索

平凡な日々を過ごそうと努力しているにも関わらず非平凡な日々の訪れがすぐに来る。

 

 

「ユウちゃんは私たち血盟騎士団と共にダンジョンへ連れていきます!」

 

 

栗色の長い髪の毛が、発せられる言葉の強さを表現するかのようになびく。整った美しい容姿が若干、怒りに満ちているところを見るとコチラが怯みそうになる。

 

 

「い〜や、ユウは俺が二週間前から予約済みだ。残念だったな」

 

 

涼しい顔で平然と嘘を吐く彼。黒い髪に幼さを残す中性的な容姿と反対にメンタルは黒曜石並である。

 

 

「見え見えの嘘をつくな、黒の剣士」

 

 

「おいおい、人を嘘つき呼ばりなんて酷いぜ騎士様。俺が予約をしていないっていう証拠があるのか?」

 

お、おのれ…、と火に油ではなくガソリンを注いだらしく、剣の柄に手をかけようとする名も知らぬ血盟騎士団の団員。

 

 

「もう……勘弁してよぉぉ……」

 

 

 

 

 

私はホームを持たないけど毎朝の日課として、42層でNPCが経営している『森の窯』という喫茶店での朝食が私にとっての幸せの一時である。ここのフレンチトーストと日替わりの果物が絶品である。

 

黄金色と少しの焦げ目がフレンチトーストの表面を彩る。今日の果物は《クヌの実》というキウイフルーツに似た果物。

この店の良いところはプレイヤー自身がNPCに好みの味や食感を伝えれば、それに合った果物を用意してくれるところです。

 

 

「いただきます!」

 

 

出来立てのフレンチトーストをフォークとナイフで一口サイズに切り、口に運ぶ。絶妙な味付け、とろける食感、まさに絶品!

 

 

「こうして美味しいものを食べれることこそが幸福ぅ〜」

 

 

ハムハムと食べ進め、食後のミルクを味わっていると、バタン!と乱暴にドアを開ける音が店内に響き渡る。私は恐る恐る振り返ると、そこには赤と白を主体とした店に似つかわしくない甲冑に身を包んだ騎士が五人ほどいた。

嫌な予感がビンビンとする中、騎士の集団を割って入るように一人の女性が現れた。

 

「やっほ〜、突然来てごめんね。ユウちゃん」

 

「ものすごく気にしてるけど大丈夫だよ、アスナちゃん」

 

「あはは……。ま、まぁ、それは置いといてくれるとありがたい、かな」

 

 

困り気味の苦笑いでも絵になるのが美少女。クッ、これがヒロイン属性ってヤツなの!?

 

 

「それでね。今日、来たのは私たちと一緒に……」

 

 

アスナちゃんの言葉を遮るように、またしてもドアが勢い良く開く。

 

 

「やぁ、ユウ。元気……か。ってなんで血盟騎士団が?」

 

「やぁ、キリトさん。さっきまで元気だったけど今まさに元気を失ったところだよ」

 

 

平穏を脅かす奴らが来たのだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

と、こんな感じの回想でした。はい。

 

未だに睨み合いが続いてる。

事が終わるまで大人しく残りのミルクを味わおうと思い、再び席につきコップに手を伸ばそうとすると、サッと横から取られる。

 

 

「いつもいつも言ってるじゃないですか……。朝だけはやめて欲しいって。ねぇアルゴさん」

 

 

今回の騒動の原因+ミルクを取った犯人の方を見る。黄色いフードを深く被っているせいで素顔は見えないが立派なネズミの髭だけは本人だと証明してくれる。そう、SAO界の情報屋である鼠のアルゴであ〜る。

 

 

「にゃはは。売れる情報は何でも売るが性分だからネ。確実にユーちゃんが捕まる場所となると、この場所のこの時間帯しかないからネ。恨むなら毎朝の日常を変えるしかないネ」

 

 

「いや、それ私にとって死ねって言ってるのと同義ですよ」

 

 

にゃははと笑われ、からかわれたことに気づく。

 

 

「真面目に言うと、ダ。ユーちゃんの幸運がとてつもないからだヨ。LUKなんてネタだと百人聞けば百人が肯定するステータスに全振りした挙句、効果が出てるんダ。この世界にとってレアアイテムは生命線だからネ」

 

 

「そりゃあそうですけど、中層プレイヤーを最前線に連れていくって非人道的行いですよ!死んじゃいます!不幸です!」

 

 

「そこは大丈夫だヨ。なんたって閃光のアスナと黒の剣士キリトが護衛役なんだゼ。ユーちゃんの幸運も、伊達じゃないみたいだゾ」

 

 

アルゴさんが横見ており、釣られて私も同じ方向を見ると、喧嘩は終わっていた。

私のダンジョンに行かないという意見は気にもせず、どうやら一緒に同行しアイテムは山分けということに収まったらしい。

 

 

「ねぇねぇ、ほんとに行かなきゃ……ダメ?」

 

 

「一緒に来てくれたらアスナが美味いものをご馳走してくれるらしいぞ」

 

 

「ちょっと!何かってに約束してるのよ。……なら、キリトくんが最高級の厳選食材を手に入れてくれるらしいわよ」

「お、おま!?」

 

 

アスナちゃんの手料理……厳選食材………。自分のチョロさが恨めしいが自分に素直な自分が大好きです!

 

 

「もうしょうがないなぁ〜しっかり私を守ってね」

 

 

 

 

 

 

下層、中層の迷宮区はたいして変わり映えがしなかった。迷宮区を語れるほど訪れてるわけじゃないけど、明らかに最前線の迷宮区は迷路のような壁がない。開放的な広い空間に不思議な素材でできた大きな道が複数に別れている。けど、共通してるのは、とても冷たく、不安感に駆られるという点。

 

もちろん。モンスターも段違いの強さで単調な動きなんてなく、思考を持って動いてるように感じる。そんなのを相手にひたすら戦闘をしている攻略組を尊敬してしまう。

 

 

「お疲れ様です♪あのぉ〜HPポーションです!」

 

 

運動部のマネージャーっぽく媚を売るように猫を被り満面の笑みで血盟騎士団の団員一人一人に手渡す。もちろん、されげなく手と手が触れ合うように渡す。

 

 

「ものすごく強くって頼もしいです。こうしてるとまるで………騎士とお姫様みたいです、ね?あっ、エヘヘ……恥ずかしいこと言っちゃいました」

 

 

「「「「「(ズキューン!!!)」」」」」

 

 

SAOの男女割合は圧倒的に女性が少ない。ましてや、攻略組に女性なんてアスナちゃんぐらいしかいない。女性免疫のない男性なんてメルヘンチックな理想的女性を演じるだけで十分。日々パイプ作りは忘れない。

 

 

「ユウちゃん。私たちにもHPポーションもってきてくれないかな?」

 

 

背筋をゾクッとさせる恐怖を植え付けてくる笑顔。

 

 

「いやぁ、アスナちゃんHP減ってないから大丈夫じゃない、か……な」

 

 

「ううん。減ってるよ。だから、ね?持ってきてくれないかな?」

 

 

「すぐお持ちします!」

 

 

一気にアスナちゃんの元へ駆けつけHPポーションを震える手で渡そうとした瞬間に手首を掴まれる。細身の腕からは考えられないほどの握力でHPが減っているんじゃないかと思うほど骨が軋む。

 

キリトさんに助けを求めるべく、顔を見ると肩をすくめドンマイ、と体で表現していた。

 

 

「もう、あまり勘違いするようなことしてると後悔するよ。最近はストーカー事件とか起きてるのよ」

 

 

「は〜い。でもでも私みたいな中層プレイヤーには心強いプレイヤーが知り合いにいれば困らないんだよ」

 

 

「なら、私かキリトくんがいるじゃない。クラインさんもいるよ」

 

 

はっ!と納得した顔をするとアスナちゃんはため息をつき、呆れられてしまった。

ちなみにクラインさんとはギルド風林火山のリーダーです。侍らしい無精髭を生やし、誰にも優しく接する良い人。キリトさん経由で紹介してもらいました。

 

「面倒事だけはよしてくれよ」

 

 

「とか言いつつ自分から面倒事に首を突っ込んでいくキリトさんのこと私、好きだぜ!」

 

 

そんなこんなでワチャワチャと来る敵をちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返しながら歩いていく。攻略済みの迷宮区を探索してもレアアイテムなんて見つかりやしないと考える。

ふっ、と足元に小石があるのを発見し、気が向いたので蹴ってみる。

 

すると──

 

 

たまたま蹴った方向には石柱があり──

 

たまたま飛んでいった小石は石柱の小さな穴に吸い込まれるようにハマった──

 

たまたま小石がハマった石柱は地震のような揺れと同時に倒れ落ちた──

 

たまたま倒れ落ちた石柱は進行不能だと思われていた浮島のようなところとの架け橋となった。

 

 

「やっぱり私は幸運なのかも!」

 

 

突然の出来事に他のみんなは目を丸くしていた。数秒後に思考を回復したキリトさんは丸くしていた目を輝かせ一目散に石柱の橋を渡り出した。それに釣られてアスナちゃんたちも渡り出す。もちろん殿は私です。

 

 

「こんなことってありえるの……」

 

 

「実際に起きてるんだから納得するしかないだろうな。……にしてもLUKか」

 

 

「もしかして上げようとしてるの?」

 

 

「ま、まさか。は、ははっ」

 

 

暖かい目で仲良し二人を見ているのを邪魔するかのように、不意に長年培ってきた経験による直感が働く。

 

どうか…気のせいでありますように……。

 

ギギギッと錆付いたような、ぎこちない動きで後ろを振り返る。

そこには、自分の背丈以上の石でできた大剣を持った中世の騎士のような石像がいた。まだ、石柱に足をかけておらず、私たちとの距離はある。

 

《宝の守護者》

 

名は体を表す、という言葉がしっくりきた。本来なら私たちが浮島に着く寸前に不意打ちであの大きな大剣で奈落へ落としたり、致命傷のダメージを与えるつもりなんだろう。

 

はぁ、本当に運が良いのか悪いのか分からないよ……。

 

でも、やるべき事を一つでしょ──

 

 

「みんな!早く石柱を渡って!」

 

 

突然の大声にみんな振り返った。たった一瞬で全部を察して全速力で浮島に走り出した辺りは、さすがとしか言いようがない。それと同時に《宝の守護者》も逃げる私たちを追うように先ほどの隠密活動を止め、恐怖心を刷り込むような重い足音を響かせ走り出した。

 

不安定な足場のせいで全速力といっても駆け足ぐらいの速さしか出せない。このままだと確実に死ぬ。

 

《宝の守護者》は射程圏内に入ったことを示すように大剣を振りかぶっていた。目測で測ると、運悪く私だけを狙った攻撃っぽい。

 

 

「……やっぱり私、不幸かも……」

 

 

今度こそ終わりかな、と自らの人生に幕を閉じようとする。

 

 

「嫌だ嫌だ!!まだ、死にたくない!!」

 

 

知り合い全員から言われ続けた『似合わない』という武器。

 

そう!私の武器は両手剣!!選んだ理由は特に無し!!

 

 

「私は私の運を信じるから!」

 

 

みんなが私が戦うことを止めさせようと必死になる。残念だけどそれはできない。自分の一瞬一瞬の行動を信じなければ幸運というのは自分の元にやって来ない。

 

《宝の守護者》は大剣を綺麗な洗練された構えから確実に死へ導く横薙ぎの一閃が放たれる。

 

恐怖をで足が竦む。身体が鉛のように重たくなる。呼吸が荒くなる。現実では味わえないこの感覚が嫌いではない。

もちろん怖いのも痛いのも嫌だけど、『生きてる』って感覚を全身で味わってる状態は……

 

本当に──

 

 

「悪くないかもぉぉ!!!」

 

 

全身全霊で放つ私の二連撃ソードスキル《イラプション》

今の私の装備なら一撃は耐えられる。てか、絶対に耐えれる。それが胴装備の特性で一撃死の攻撃を受けてもHPが三分の一は残るという逸品。

 

ずばっ!と腹部に深い傷ができる。筋肉痛のような不愉快な痛みが全身を襲う。それでも私はソードスキルをキャンセルすることなく一連撃目の上から下への振り下ろしに力を込める。

 

 

「はぁぁぁぁ!!!あ、あれ?!」

 

 

力み過ぎたせいなのか気合いを入れすぎたせいなのか手から両手剣がすっぽ抜けてしまった

 

──あ、死んだ。

 

たまたま両手剣がすっぽ抜け──

 

たまたますっぽ抜けた影響でソードスキルはキャンセルされ──

 

たまたま両手剣は上へ飛んでいった──

 

たまたま飛んでいった両手剣は切っ先を下にし落ちていく──

 

たまたま落ちてきた両手剣は《宝の守護者》の頭上に落ちていった──

 

たまたま頭上に落ち、バランスを崩した《宝の守護者》は石柱から落ちていった──

 

 

「そう。私の両手剣と共に……」

 

 

 

 

 

 

 

 

無事に九死に一生を得た私たちは晴れて浮島の奥にあった宝箱を見つけることが出来た。泣きかけの私はアスナちゃんにあやされながら宝箱をみんなと一緒に開けました。

 

ここからが本題!

 

中には、そう!私が落とした両手剣がはいっていました!!

 

もちろん満場一致で私のものとなり、ダンジョン探索は幕を閉じました。

 

 

そして!約束通り厳選食材とアスナちゃんの手料理が私を待っているのです!!

 

 

 

 

 




ふう疲れました(o´Д`)
ボチボチがんばっていきます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。