LUKに全振りした少女の奮闘記   作:騎士見習い

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遅めの始まり

 

いつもの平穏な日々を送るべく一日一善をできる限り心がけるように生きております。けれど、そんな私の行いとは裏腹に平穏をぶち壊す者がやってくる。

 

ほんと勘弁して欲しいよ……。

 

 

 

 

 

毎朝の習慣で『森の窯』で朝食を取っていると私の平和守るセンサーがビンビンに敵を感知する。食べきっていないのに席を立ち上がることを申し訳ないと思いつつ、店のドアの前で構える。そしてゆっくりとドアが開き、一人の男性と向き合う形になる。

 

 

「君がユウ……」

 

 

「人違いです。帰ってください」

 

 

最後まで言わせずに全力でドアを閉めようとするが、寸前のところで男性の指がドアを掴んでしまった。

 

 

「ググッ、君が……ユウ君だぁ……ね」

 

 

「うぎぎっ!人、違いで……すぅ!」

 

 

両者譲らず、ドアが壊れてしまうんではないかというぐらい軋む音が反響しているが、均衡していたと思われていた力の勝負はあっという間に決着がついてしまい、徐々にドアが開きつつある。

 

 

「やめてぇくださいぃぃ。ハラスメントコードが出てますよぉ!!」

 

「ふふっ、この程度ではハラスメントコードが出ないことは検証済みだよ!ふんっ!!」

 

 

本気を出され、なすすべなくドアは完全に開けられてしまった。

くっ、こんなことならレベルを上げてSTRに少しでも多く振っとけばよかった。と後悔しながら睨みつけるように目の前の男性を見る。

 

 

「やぁ。何度かギルドで会ったと思うが、あらためて名乗った方がいいだろう。血盟騎士団団長のヒースクリフと言えば通じるかね?いつもダンジョン攻略で世話になったね」

 

 

先程までの攻防はなかったかのように爽やかな自己紹介をされ、腹が立ってしかたがない。だが目の前にいるのがアインクラッドで最強を誇るギルドの血盟騎士団と同時にキリトくんのように最強プレイヤーの一人として名を馳せているヒースクリフさんである。

 

 

 

 

 

「で?何のようですか?」

 

 

中でゆっくりと話そう、と半ば強引に連れられてしまい小さな復讐として普段の私には手が出せない最高級ケーキと最高級ミルクを注文してやった。奢るなんて言葉を易々と言えないようにたらふく食べてやる!

 

 

「そんな邪険に扱わないでくれたまえ。今日は日頃からお世話になっている感謝という名目で君を勧誘しにきたんだよ」

 

「お礼ですか……まぁありがたく受け取っておきますけど中層のプレイヤーなんて勧誘したら団員が騒いじゃいますよ」

 

 

「ただの中層プレイヤーならそうかもしれないが、君の重要性を知らない攻略組プレイヤーなんていないだろう。これを機にギルドに来てくれれば我々としては今以上に攻略は早く安全にできるだろう」

 

 

そんなわけないと否定したいところだけど、LUKが高ければトラップは発動せず、レアなアイテム手に入ることやモンスターとのエンカウントが減ったりとボス部屋までの道程が効率的かつ有意義になる。けれど……。

 

 

「知らないわけないですよね?LUKは自分以外には反映されないことを。トラップがありそうな部屋には私を入れて様子を見るということを毎回するんですか?LUKは万能じゃないです。本音を言えば死にたくないだけです」

 

 

柄ではない力説をしたことに少し恥ずかしくなりがら喉から出かけてる文句を飲み込むようにミルクを流し込む。

自分でもいまだにLUKのことを全て把握しているわけでない。信じすぎて思わぬしっぺ返しを食らうかもしれないしね。

 

 

 

「君を勧誘できたらアスナ君が喜ぶと思うのだが……残念だ」

 

「思ってたよりもヒースクリフさんって……性格悪いですよね」

 

 

正直者は嫌いではないよ、とヒースクリフさんは用事が済んだらしく席から立ち上がった。なんだかんだ奢ってもらったのでお礼を言いながら私も立ち上がる。

 

 

「有意義な時間だったよユウ君。いつでもギルドに来て他の女性団員たちの相手をしてほしい」

 

 

「はい、もちろん行かせていただきます。でも、勧誘はなしですからね」

 

 

「それは残念だ」

 

 

なかなかノリが良い人だと今までの認識がガラッと変わったことに私も有意義な時間を過ごせたと考える。ヒースクリフさんの背中を見送っていると、ドアに手をかけたヒースクリフさんは振り向かずに一言、言い残していった。

 

 

『今度のダンジョン攻略、心待ちにしているよ』

 

 

まるで全てを見透かされているかのように心の内側に響く声で言われた瞬間、背中は命の危機とはまた違う悪寒を感じた。

ヒースクリフさんが出ていってから私は少しの間だけドアを見つめ続けた。

 

 

 

 

 

先日の約束通り、キリトくんが採ってきた最高級の厳選食材をアスナちゃんに腕によりをかけて料理してもらうためにアスナちゃんの家に来ましたよ。

 

良い機会だと思い、あの一件のことを教える。

 

「ってことがあったんだよ!アスナちゃん!!どゆこと!?!?」

 

 

「ん〜そう言われてもなぁ〜困ったなあ」

 

 

滅多に見ることができないアスナちゃんの私服にエプロン姿というブロマイドなんかにすれば巨万の富をアインクラッドで築けるだろう。

そして空気のように存在感を消しながら私の話をBGMのように聞き流しアスナちゃんの手料理を夢中で食べるキリトくん。

 

 

「私からも一応団長に注意しとくから気にしない方がいいよ」

 

 

よっこいしょ、とオヤジくさいセリフを言いながらイスに座る動作も絵になってしまうことに同じ女性として負けた気分になる。

 

 

「ほんとアスナちゃんは良いお嫁さんになるよ。どうかな、私と結婚しない?」

 

「ちゃ〜んと働いて快適な生活をさせてくれるなら考えてあげるよ。ユウちゃん」

 

 

「ユウはどちらかというと養われる側だろうな」

 

 

私の性格を知っていて意地悪なことを言って仲良く笑うお二人さん。

こいつら早く結婚しちまえよ。

 

 

「でもまぁヒースクリフの言ったことも一理あるんだよなぁ。ユウがいればって場面がちょくちょくあるし」

 

「LUKはそんなに便利じゃありませぇぇん。良い機会だから教えてあげるよ」

 

 

ちゃちゃっとアイテムストレージから丁寧に包装された小さな箱を二つ取り出す。

 

「これって《きまぐれの箱》だよね。確か28とか29階層にあるNPC商人が売ってたような」

 

「28階層だな。何が出るかは運次第のギャンブルアイテムで一時期大量にプレイヤーたちが買って泣きを見ていたよ」

 

 

さすが攻略組。私が説明することなくスムーズに話が進む。《きまぐれの箱》にはランダムにアイテムが入っていて、とんでもなく強力なレアアイテムからどこにでも落ちてるようなクズアイテムまで幅が広い。

 

 

「概要だけ見れば夢のあるアイテムなんだが百箱開けても迷宮区に行けば取れるような物しか出てこないっていう詐欺同然の確率だよ」

 

 

「攻略組からしたらそうかもだけど。中層プレイヤーには人気なんだよね。賭け事やパーティーの催しの一つに使えるイベント感覚でみんな使ってるよ」

 

 

それは知らなかった、と関心するキリトくん。

 

 

「それでユウちゃんは何をするの?」

 

 

当然の疑問を投げかけられながら百聞は一見にしかず、ということで早速、一箱目に手をつける。飾りのリボンを解き、包装紙を丁寧に剥がす。見栄えがしない真っ白な姿となった箱を興味津々な二人に見守られながら開ける。

 

《女神の涙》

 

簡単な表記が現れ箱から取り出す。真っ先に反応したのはもちろんキリトくん。目を丸くし、飛びつく勢いで私の手を掴む。

 

「後生だ!譲ってくれ!!」

 

《女神の涙》ランダムでステータスを2ポイント自動的に割り振られるという壊れ性能のアイテム。

1ポイントが生死を分ける世界でこれほど貴重なアイテムは攻略組からしたら喉を通り越して小腸から手が出るほど欲しいアイテムに違いない。

 

 

「ダメです。ハイ次」

 

 

さっきと同じ動作をし二つ目の箱を開ける。

 

《石炭》

 

説明するまでもなくクズアイテムがオブジェクトとされる。偶然かもしれない現象に二人とも顔をしかめ考えるように黙り込む。

 

「どういうことだろう。ユウちゃんなら最低でもポーションぐらいは出せると思ってたけど……。」

 

私も初めて試した時は驚きのあまり何度もステータス画面を見たけどいつも通りだった。

 

 

「……乱数が意図的に操作されてるのか」

 

 

大正解!という意味を込めて先程出た石炭を手渡しする。

 

「つまり本来なら100%や90%で出るものがカーディナルのバランス調整によって0%に無理矢理されちゃうってこと?」

 

「んまぁ簡単に噛み砕くならそういうことだな。」

 

 

私がドヤ顔で語ろうと思っていたことを全て言われてしまい、いじけてしまいそうだが堪えながら話を切り出す。

 

 

「だから、ね。この世界がカーディナルという全てを司る神がいる時点で私のLUKにも限界があるってことかな。ゲームバランスが崩壊しない程度ならいくらでも私のLUKは輝くけど、崩壊するようなら強制的に不幸少女になるってこと」

 

 

ヒースクリフさんと会って以来、私は自分の幸運を調べるために色々なことを試し、ようやく《きまぐれの箱》によるLUKの欠点を見つけることができた。

 

 

「これが本当なら俺たちは無理にユウを攻略に誘えなくなったな。残念というか安心したのいうか、複雑だが手遅れになる前で良かったよ」

 

 

もう攻略しなくていいなんて言われたら泣いて喜んでいたと思うけど、

 

「残念がってるところ申し訳ないけど。私、決めたんだよね。これからLUKをフル活用して攻略組になるって!!」

 

 

なんでかって?思春期ですから!!

 

 

「「え?……えぇぇぇー!!!!」」

 

 

私が決意表明をしてから大変でした。嘘だろ?やデバフでも付いたの?という失礼極まりない言葉から巣立ちってこういうことなんだな、と感極まってたりと。でも、力になると言ってくれる辺り、最高の友達なんだなとあらためて思えました。

 

 

 

拝啓、私の両親へ。

私は平穏な日々から死が隣合わせの刺激に満ちた非日常的な日々に身を投じることになりました。死なないように頑張りますので応援よろしくお願いします。

 

 

 

 

 

 

 




どうも騎士見習いです。
ほぼ未定期更新なので読者がいるか不安ですが、読んでくれた方々に感謝です。

一応、これからも続けていきます。(たぶん)
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