ハリー・アップッ!! 作:炉心
年末の多忙っぷりの影響でかなり間が空いてしまいましたが、漸くの新作投稿となります。
さて、今回はお読みになる方々にあらかじめ警告しておきます。
① 今回は完全にネタであり妄想です。
② 時系列的には本編から数年後を想定し(Forceより後くらいかな?)、登場人物達の関係も所謂“そういった関係”になったと想定しています。
③ サブタイトル通り、本編とは繋がりのない、あくまでパラレルワールド的な世界だと思ってください。
④ 直接的な描写はないですが、ギリギリに近い表現もしています。なので、その手の内容や雰囲気に少しでも嫌悪感を覚える方はお避けください。**尚、念の為に警告タグを追加しました。
以上の点を踏まえて、お楽しみくだされば幸いです。
~その壱~
4時間程の睡眠で目が覚めた。
年明けを迎えるカウントダウンイベントに参加して、思惑を同じくする多数の人達に紛れてのバカ騒ぎの余韻もそのままに、疲れきった体が休息と安眠を欲する切実な声に従がって、自宅に帰り着いた我が足がフラフラと吸い寄せられるようにして辿り着いたベッドに直行でダイブした記憶がある。
冬の夜が長い所為だろう。部屋の窓に引かれたカーテン越しに射し込む朝の光はまだまだ弱々しく、薄闇の帳が外の世界を支配している。
「よう、起きたか」
微睡みが意識を侵食している中、視界の隅に引っ掛かった存在と耳朶に響く自分以外の人の声。甘い何かが漂っている。
ボンヤリとした状態から、認識が徐々に追い付くにあたって、漸く違和感が湧き上がる。
「寝顔を見てるのも、結構楽しかったんだけどな」
Why?
何故、今この場所に彼女が居るんだろうか?
薄暗い部屋の中で、俺が横たわるベッドの端に腰掛けた状態で、柔らかくも不思議な慈愛の篭もった印象の微笑みを見せる彼女。存在しないはずの存在に、疑問の旋風が頭の中を駆け巡る。
確か、俺の持つ記憶に間違いがなければ、年越しイベントの終了した数時間前に彼女の自宅マンションへと送り届けたはずだ。
別れるギリギリまで、俺の部屋に泊まりたいと駄々を捏ねていたが、流石に新年早々のお泊りは駄目だろうと思い、なんとか説得し宥めすかして納得させた覚えもある。この時期は例年不在気味な彼女の両親が、今年は珍しく揃って家に戻ってきているらしいし。
彼女の、「お前、一人暮らしを始めたんだから、いいじゃねぇか別に~」という台詞と拗ねたような表情に理性がグラつきまくっていましたけどね!
「なんで俺の部屋にいるんだ?」
頭の片隅では答えがとっくの昔に導き出されてはいたが、それでも質問を口に出してみる。億劫で諦観な気分満載で、棒読みに近い発音だったけど。
「『新年あけましておめでとう』のサプライズさ」
まるで獲物に躙り寄る女豹のようにベッドの端から上部へと体を移動させ、仰向けに寝転がっている俺の体を跨ぐようにして静止する。四つん這いの姿勢から体を起こし、浮かしていた腰を毛布が掛けられている俺の下腹部のある位置へとストンッと落とす彼女。
「泊まるのはナシ。それで納得したんじゃなかったっけ?」
「ああ、納得したさ」
ニンマリと弦月の形に歪められた口から、真っ赤な物体をチラリチラリと覗かせながら、俺の上半身を覆っていた毛布をズリ下げ、外気に晒された寝巻き替わりにしているポロシャツ越しに俺の胸部へと手を這わせてくる。
俺の許可も取らず、ボタンを上から順に外していきながら、ワザとかそれとも唯の偶然か、彼女は時折爪を立てて刺激を与えてくる。
「だから、一晩泊まるのは諦めて、こうして朝一で来てやったんだよ」
全てのボタンが外され、はだけさせられたシャツ。露わになった俺の胸肌に、彼女に少しだけヒンヤリとした繊指が触れる。
さっきから思いのほか寒くないとは思っていたけど、どうやらいつの間にか部屋には暖房が入れられているらしい。
そういう事か。ずっと気になっていた、彼女の今の格好にも多少の納得がいった。
「なんて言ったけ? どっかの世界の風習……姫ナンタラってやつさ」
「ふ~ん。……その格好も、その姫ナンタラに関係あるんだっけ?」
素肌の上に真っ白な大きめのカッターシャツだけを羽織った姿。どうやら辛うじて下の部位に関しては履いているみたいだが、それ以外は何ひとつ着けていない。
射し込む朝の僅かな光が白シャツの大きく開いた胸倉や鎖骨付近のキメ細やかな肌に反射し、視線を無理矢理下げれば、太股まで晒された彼女のおみ足が優美で魅惑的な輪郭を形造っている。
毛布とシャツに遮れながらも、チラチラと見え隠れする太股の先、付け根の箇所を覆っているのは、シャツと同じく一切の汚れを寄せ付けない色彩に染められた存在のようだ。
「この格好はオレの独断だ。特に深い意味はねえよ」
独断、か。それはなんとも……
「もしかして……嫌いだったのか?」
「大好きです。我ながら愚問でした」
夢みたいな格好じゃないか。嫌いなんて言う野郎がいるとは思えない。もし存在したら、そいつは間違いなくヘテロじゃないね。もしくは相当の偏屈者か異なった嗜好の持ち主か。
「ん……ふっ……」
急に漏れた喘ぎに意識を向ければ、紅潮し始めた頬に潤みを湛えている瞳。
擦るように小刻みに動き出した彼女の腰と、注がれる熱の篭もった視線が訴えかけてくる。
彼女のモードが既に切り替わっていることを。会話だけの時間が終わりを告げていることを。もう我慢していられないということを。
不意に己の後頭部に手をやると、彼女はいつもの見慣れた髪型を維持する為のリボンを勢い良く解く。形良く纏まっていたポニーテールがストレートヘアーへと変身し、軽く振った頭に引かれて流れるように空間に広がる。それはまるで、重さを感じさせない茜色に輝く金糸が空中を舞っているようだった。
「セ、セアレ……」
なんて甘い声だろう。
……ヤバいな。危うく理性が吹っ飛び、一瞬にして狼に変身してしまいそうだった。
だけど駄目だ。まだ駄目なのだ。場の雰囲気に流されるのはあと少しの辛抱だ。こういう時にこそ、ちゃんとしておきたいことがある。礼儀ってやつが存在する。些細だけど、それは大事なことだから。
「ハリー」
俺の真剣な声に、視線の先の彼女が少しだけ理性の戻った表情になる。
「あけましておめでとう――――」
その一瞬の隙をつくように、一気に言うべきことを言ってしまう。本当は、俺だってもう我慢の限界なのだから。
「今年もよろしく」
言い終わると同時に唇を重ね、素早く回した腕で彼女の肢体を抱き留めると、俺は有無を言う間もないほどの勢いで、力強く彼女を引き寄せた。
~その弐~
(え? あ、あの……ちょ、い、いきなり過ぎひん!?)
声を出せなかった為、内心で思いっきり叫んだ疑問。
それは、予想外への急変だった。
どこ世界でもきっと変らない、多忙なる年末年始の影響だったのだろう。
ここ数日が極端に忙しかったこともあり、漸く時間に余裕が生まれて、お互いの顔を合わせることが出来たのが、既に新たな年を迎えてから4日も経った今日の午前中だった。去年の最後に会った日から数えれば、実に10日振りでもある。
様々な次元世界の中心的役割を担うミッドチルダでは、当然ながら多様な文化・宗教・風習が入り混じって存在している為、特定の年明け行事が大々的に行われるわけではないが、それでも純粋な新年祝いのイベントやパーティー等、各出身世界に根ざした行事等が街のいたるところで見られる。
久々に会ったセアレとジークの二人は、そんな街の賑やかな空気を存分に楽しんだ後、周りの努力の甲斐もあって漸く定住することを決めたジークが住んでいるマンションの一室へと戻ってきた。
ジークのお手製の料理(新年用プチ豪華バージョン)に舌鼓を打ち、街で買った最近評判のデザートも平らげて、一息吐いたところで、「ちょっと待ってて」とセアレに言い置いて別室に引っ込んだジーク。
待つこと暫し。
戻って来たジークの姿に、セアレは危うく口に運ぼうとしたティーカップを取り落とすところだった。
薄桜色に綿雪の模様の入った和装に身を包み直し、静々とした足取りで部屋に入ってくるジーク。その様子をソファーに座って呆然と見ていたセアレの傍まで来ると、そのままセアレの横へと腰掛ける。
「どうやろか? ワンタッチ式の新作で、一人でも簡単に着られるタイプってことで貰ったんよ。折角やし、最初にセアレに見て欲しくて着てみたんやけど?」
小首を傾げながら、衣装の胸元に手を当てて囁くジーク。
軽く一纏めにした黒髪に刺された銀のかんざしの装飾が、シャリンシャリンと擦れる音を立てて揺れ、漂う甘い芳香は香水の類だろうか? 先程までは着けていなかったようだが。
「新年やし、異世界情緒があってエエ感じやと思わへん?」
擦り寄るように近づいて、見上げてくる空色の瞳は純粋そのもの。
無垢な乙女のような姿を見ているだけなのに、何故が己の中にある圧倒的な獣性と呼ぶべき衝動に駆られそうになるセアレ。
それらの感情を辛うじて抑え込み、セアレは求められたであろう返答を口にする。
「すごく……似合ってる」
「ほんま? 嬉しい。ありがとう」
セアレの賞賛に心底嬉しそうな笑顔を見せるジーク。
その姿を直視して、
「――――ゴメン。正直、我慢できない」
セアレの理性が一瞬で弾け飛んだ。
「え?」
告げられた言葉の意味を理解する間もなく、ジークは両手を掴まれ、眼前に好いた相手の顔が迫ったと思ったら、次の瞬間には口を塞がれる。
口内を蹂躙する甘く熱い感覚に脳の奥が痺れ、一気に朦朧となる意識。
力強く迫り来る勢いに抗うことも出来ず、そのままソファーに押し倒されるジーク。
数刻の間、休む間もなく続く行為。
「ちゅ……んぁ……」
漸く解放された口から漏れた吐息。僅か数十秒の遣り取りで、既にジークの息は絶え絶えだった。
ソファーに力なく横たわり、ジークは激しく胸を上下させる。一連の遣り取りで乱れた衣服の胸元がはだけ、扇情的且つ異性の欲を唆る風体を見せている。
「この服……ワンタッチ式って言ってよな。つまり、着るのも簡単だけど……脱がすのも簡単ってことだよな」
片方の手で赤く染まったジークの頬を優しく撫でながら、俯瞰するようにジークの衣装を見ていたセアレのもう片方の手が、和装の胸の合わせ目付近から徐々に下がって腰の帯部分へと至る。
見詰めてくるセアレの細めた目は、どこか獲物を狙う獣のそれのようにジークには思えた。
「セア……レ……」
「ん? 何、ジーク?」
ジークの掠れながらも紡いだ呼び声に、楽しげに反応を返すセアレ。頬から流れる黒髪へと移した手が、差し込まれていたかんざしを奪い取り、次の言葉を促すように何度も何度も髪を梳いてゆく。
「ウ、ウチも……実は……もう……」
蕩けそうな表情で、必死に言葉を繋ぐジークに、見ていたセアレの笑みが益々深まる。
「うん、言って。ジークは、『もう……』何?」
嗜虐的な表情でジークを見詰めながらも、甘い声で促し、その間にも片手は帯を解き、隙間から差し込んだ手でジークの柔肌を滑るように撫でていく。
「…………」
急に言い淀むジーク。口をパクパクと動かしてはいるが、そこから次の言葉が聞こえてくることはない。
(ジーク。さあ、言って)
無言で。視線だけで訴えて。セアレはただ静かに待つ。
目の前の愛しい少女の限界を。彼女の意志が示されるのを。その求めを。
そして、
「――――――――」
意を決した少女が不意に起き上がり、セアレの耳元に寄せた口から熱い吐息と共に囁かれた言葉。
お互い以外の誰にも聞かせられない睦言が引き金となり、二人は貪るようにして互いを求め合った。
お読みいただき、ありがとうございます。
新年の一発目がこんなのでしたが、どうだったでしょうか?
何はともあれ、本年も宜しくお願い致します。