ハリー・アップッ!!   作:炉心

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 意外に好評だったので、調子に乗って『IF』シリーズの第2弾。

 警告事項は前回同様です。

 追加補足として、

Ⅰ; ヒロインの性格が微妙に違ったりします(『成長』した為とお考えください)。
Ⅱ; 不安な表現も多いので、警告タグを追加しました。
Ⅲ; 最初に、ヒロインが文中で主人公に言う台詞が浮かびました。ある意味、それを実現したいが為だけに書いた話です。それ以上でも以下でもありません。

 では、以上の点を踏まえてお楽しみください。





IF ~即ち、妄想的でパラレルワールドな何か:パートⅡ~

 

 

「じゃあ、明後日から、その友達のお母さんの実家がある管理外世界に旅行に行くんだ」

 

「はい、そうです。運良く渡界の許可が取れたので、3泊4日の予定で。前に話していた、冬休み明けに提出予定のグループ課題のレポート……『管理外世界の文化・風俗について』の為の資料集めと、折角の機会なので現地見学も兼ねて」

 

 シンクで二人分の食器を手早く洗いながら、背後にいる相手へと言葉を掛けたセアレに、相槌の声が返ってくる。

 

「楽しそうだね、未知なる管理外世界への旅行か。――――出発の準備は? もう用意は出来てるの?」

 

「ええ、昨日の内に終わらせました。用意万端ですよ。だからこそ、こうやって遊びに来ているわけですから」

 

 濯ぎ終えた食器類は纏めて乾燥機へと突っ込み、これにて作業終了。ハンドタオルで濡れた手を拭き、セアレがリビングの方へ戻ると、ソファーに腰掛けていたコロナがティーカップにお茶を淹れて待っていた。

 

「ありがと。コロナちゃんは、お茶を淹れるのが上手いよな~。ホント、不可解と言うか不思議と言うか。同じ茶葉を使ってるはずなのに、俺が普段自分で淹れるものとは雲泥の差だな。何かコツとか有るの?」

 

 柔らかい笑顔で、「どうぞ」と言って差し出されたティーカップ。セアレへと向ける視線と同じくらいの、暖かな湯気が立ち昇っている。

 

「それは……秘密です。私が淹れる機会を失くしたくないですし」

 

 ソファーに腰掛け、口にした紅茶の芳醇で深い味わいに賞賛の声を上げ、コツを聞き出そうとするセアレに、自分の分のティーカップを両手で抱えながら、少しだけ思案したコロナは、答えを濁しつつ悪戯な笑みを浮かべてからティーカップに口を付けた。

 

「それは残念」

 

 全然残念そうじゃない笑顔で答えて、セアレも再びカップを口に持っていく。

 

「……そう言えば、最近は昔みたいな髪型してないよね」

 

 暫し無言でお茶を楽しんでいた二人だったが、静かに落ちる流水を想わせる青磁色の髪が耳から唇付近にまで掛かったのを掻揚げたコロナを横目に見たセアレは、伸ばした手でコロナの髪をひと房分掬い取り、何気なしに呟いた。

 

 セアレの一言に、コロナの体がピクンッと反応する。

 

「確かに最近は昔みたいな髪型はしてませんけど……セアレさん、もしかして、あの手の髪型の方が好きだったりするんですか?」

 

 すぐにセアレの手から解放された己の髪に手を当て、コロナは複雑な感情のまま疑問を口にする。

急に探り込むような目で見られ、思わず苦笑の声が漏れるセアレ。

 

「ん~、別に特別コレってわけじゃ……今のコロナちゃんの髪型も好きだよ、良く似合ってるし、大人びていてね。でも、昔よくコロナちゃんがしていた……ツーテールって言うんだっけ? あの髪型も相応に可愛かったし、似合ってもいたな~って思っただけ」

 

「それ、実は子供っぽかったってことですよね?」

 

 部屋の中ですごしている今はシュシュで簡単に纏めているが、ここ最近の髪型は基本的にストレートにして流していることが多い。あまり昔から髪型や服装の趣味に変化のない親友達と違って、コロナ自身は結構色々と試したり変えたりするのが好きだったりする。ただし、髪は長めで且つ手入れを怠らないという絶対的な不文律が彼女の中には存在するのだが。

 

「実際、コロナちゃんは俺より年下で、最初にあった頃はまだまだ子供だったし」

 

 数年前の懐かしい記憶。

 

 真面目で一生懸命、友人想いで照れ屋、初心で少しおマセさん、そんな微笑ましくも愛おしくなる姿の少女がそこにいた。

 

 今でも変らないところと、今とは大きく変わったところ。それは、精神面や身体面だけに留まらない様々な事柄。でも、本質的な部分はきっとそのまま。

 

 不思議と笑みが浮かんでくる記憶に思いを馳せて、なんとはなしに感慨深い気分に浸っていたセアレだが、そんなセアレの様子を見ていたコロナの心境は違ったようだ。

 

「あんまり、いつまでも子供扱いするのはやめてください」

 

 ちょうど飲み終えたカップをテーブルに置き、居住まいを正したコロナは、横に座るセアレの顔を軽く睨みつけるようにして苦言を発する。

 

 伸ばした手でセアレの腕をほんの少しだけ抓ってみたのは、多少の抗議の気持ちを行動で示したものだったのだろう。

 

「第一、今の私が子供かどうかなんて……セアレさん自身が一番知っているはずです」

 

 真剣な表情で言葉を紡いでいたコロナだが、途中で顔を少し赤らめさせる。セアレに向ける視線に、僅かばかりの批難の念のようなものが一瞬だけ混じった。

 

 急に立ち上がり、「なんだか暑いです」と言って羽織っていた藤色のカーディガンを脱ぐと、丁寧に折り畳んでテーブルの隅に置いたコロナは、再びソファーに腰を落とす。先程までより、明らかにセアレに近付いた位置で。

 

 コロナの着ているオフホワイトのワンピースは緩やかなデザインだったが、それでも女性らしさを湛えだした少女の肢体のラインを充分に確認することができ、寸前にセアレに投げ掛けられたコロナの台詞を補足するだけの効果もまた十二分にあった。

 

「どう思いますか? 私は昔と全然変わっていませんか? まだ……子供でしょうか?」

 

 両手の平をソファーに押し付けるようにして置き、少しだけ上半身を乗り出すような姿勢で、コロナは訴え掛けるような視線で上目遣いにセアレの顔を覗き込む。

 

 意図したものかは定かではないが、僅かに見下ろすセアレの目線からは、コロナの持つ女性としての体のラインが途端に強調されたようにも見えた。

 

「…………」

 

「セアレさん?」

 

 押し黙って反応を返さないセアレに、小首を傾げて呼び掛けるコロナ。

 

 目を瞬くこと数回、セアレは漸く反応を返す。

 

「いや……そうだな。俺が悪かった。コロナちゃんも、いつの間にか随分と成長していたんだよな」

 

 頬を掻きながら、微妙に視線を合わせずに答えるセアレ。

 

 色々と複雑な感情や思惑(それは、心理的であったり倫理的であったり社会的であったりする葛藤)がセアレの脳内をグルグルと駆け回っているのだが、それを表立って晒すのは流石に情けないので、平静を装いつつ必死に隠しておく。……コロナにバレていないかは別にして。

 

「当然です。それに、セアレさんはまだ大きく勘違いしていますよ」

 

 セアレの言葉に嬉しそうな表情を見せたあと、

 

「私は『成長していた』ではなくて、まだまだ『成長中』なんですから」

 

 すぐに怒ったような、拗ねたような顔を見せるコロナ。尤も、瞳の奥に宿している光には、不敵で精強なものが瞬いているのだが。

 

 そんな何故か微笑ましくも逞しく感じる様子に、内心で苦笑を禁じ得なかったセアレだったが、

 

「あぁ、でも、本当は………」

 

「?」

 

 突然表情を変化させ、それまでの年相応の様子から一転して意味深でどこか大人びた雰囲気を纏ったコロナに、疑問の念と共に意識が否応無く引き摺られる。

 

「折角なら――――」

 

 不意に吐息が掛かるくらい傍まで擦り寄り、セアレの右手を取ると、コロナは自分の小さな右手を添えるようにして押し当て、ゆっくりとセアレの手と指の線と筋を確かめるようになぞる。

 

 暫く無言で触れ合っているお互いの手を見詰めていたコロナは、視線を上げ、その瞳に底知れない感情の渦を秘めて、挑戦的な表情となって微笑む。

 

「セアレさんのこの手で……もっともっと私を成長させて欲しいな~って思ったりもします」

 

 自身の指を絡めたセアレの手を引き寄せ、一瞬掠めるように口付けすると、激しく律動する心臓の収められた胸元へと導く。

 

 柔らかな起伏部に押し付けさせられた手。それを保持するように包み込んでいる小さな両手から伝わる熱。少しだけ荒んだ息。煽るような、訴えかけるような視線。

 

「……それ、もしかして誘ってる?」

 

 現状の突然で予想外の変転具合に、不格好ながらも年長者としての呆れ顔の仮面を被り、冗談めかして言ってみたセアレ。

 

 だが、

 

「はい!」

 

 素晴らしく迷いのない言葉で、即答で肯定の意思を伝えるコロナ。

 

 目が眩むほどに眩しい笑顔。

 

 セアレにとって、絶対に逆らえそうもない、世界最強の存在がそこにいた。

 

「――――……了解。それじゃあ、リクエストにお応えしましょう」

 

 空いていた左手をコロナの顎に添え、セアレは上向きの角度を多少調整したコロナの唇を快諾の意思を込めた行動で奪う。

 

「うんっぅ…………」

 

 最初の数度啄むような行為から、徐々に深いものへと変わっていく。隙間から漏れ出す己の吐息が耳に障ったコロナだが、すぐに連続して襲い来る感覚が増したことで気が回らなくなる。

 

 右手は己が導いた胸の上でゆっくりと動き出しながら、敏感な箇所を中心に言いようもない刺激を断続的に与えてくれる相手の手に添えたまま、左手の方は……無意識にだろう、縋り付くように相手の腰付近の服の一部を掴んでいる。

 

「……ぷぅァっ…………今日、泊まっていいですか?」

 

 離した唇同士を繋いでいた一筋の糸が途切れるのを残念な気持ちで眺めながら、コロナは部屋に来た時から秘かに切り出すタイミングを伺っていた言葉を告げる。

 

 コロナの台詞に多少なりと感情を冷ましたセアレは、それまで続けていた行為を中断し、少しだけお互いの距離を取って話を聞くことにする。

 

「遊びに行って、そのまま知り合いの人の家に泊まるかも……って親には言ってます」

 

「嘘吐いたんだ、ご両親に」

 

 聞かされた内容に、今度は正真正銘本気の呆れ顔で答えるセアレ。

 

「嘘なんか吐いてません。ただ……どんな知り合いの人の家に泊まるかは言わなかっただけです」

 

 キッパリとセアレの言葉を否定したコロナだが、セアレにはその時コロナが浮かべていた表情が、何故か小悪魔的な微笑みのように感じた。

 

「……本気で泊まるとしても、一応、ご両親にはもう一度連絡と許可を――――」

 

「もう、連絡しました。外泊の了解も貰っています」

 

「…………」

 

 セアレの懸念は、完全に処理済みのようだ。いつの間に連絡を取ったのかは分からないが、なんとも手際と準備の良いことである。

 

「多分、旅行に行って帰ってきたらすぐに新学期が始まって慌ただしくなるので、次にゆっくりとセアレさんに会えるのは、もしかしたら半月くらい先になると思うんです。だから……」

 

 寂しげな感情を少しだけ表情に覗かせたコロナだが、

 

「駄目……ですか?」

 

 再び己の体をセアレに躙り寄せ、セアレの太股付近に手を添えて訴える。

 

「仕方ないな……」

 

 瞑目して溜息を吐き、頭を掻いたセアレだが、次の瞬間にはもう何もかも吹っ切れた顔でコロナを見る。

 

「俺も当分会えないのは確かに寂しいし。それに……」

 

 内心、少しだけ少女の手の上で踊らされた気もしてはいるのだが、この際そんな些細なことは一切気にしないことにする。

 

「ちょっぴり嘘吐きでワルい子のコロナちゃんに、ちょっとばかしお仕置きもしてあげないといけないみたいだしな」

 

 言い訳にも似た台詞の終了と同時にセアレは両手で無造作にコロナの腰を掴み、一気に引き寄せて抱きしめ、再び唇を奪う。今度は、ついさっきまでとはまるで違う。激しくて遠慮のないもの。

 

「ううぅんぅ………」

 

 一瞬大きく目を見開いて、途端の行為再開に喘ぎを上げるコロナ。その反応にもセアレは手を緩めることなく、片方の手は回した腰から下に徐々に降りてゆき、瑞々しく張りのある少女の感触を確かめるように撫でている。もう一方の手は背筋に刺激を与えつつも上へと昇ってゆき、届いたファスナーへと指を掛ける。

 

「んぅ……セっ…ぅ…レさんんぅっんぅ……」

 

「――――何?」

 

 塞がれた唇の間隙から必死に何事かを訴えようとするコロナに、一端唇を離したセアレが荒い息と共に伺いの言葉を吐く。その間にも、コロナの上気した背中が外気に晒されていく。

 

 薄らと涙が煌めいた瞳に映るのは、歓喜と情欲の一片。そして、好意や愛情等がごちゃまぜになった深い想い。

 

 己の女としての内なる部分からとめどなく溢れてゆくそれを、必死に言の葉へと変えてゆくコロナ。

 

「大……きで…。お願……ます………今夜…私の…と……ずっ…もっと……セアレさんだけ…ものに…して……――――――――」

 

 音として紡がれた想いがセアレの耳に届くのと、繋ぎ留められていたホックが外されたのは同時だった。

 

 

 

 





 推敲の為に読み返して思いました。

 きっと、彼女はここまで変わるまでに本当に色々あったんだろうな~、と。

 謝意:

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 登録して下さった皆さんに、心からの『ありがとう』の言葉を!!


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