川岸で石遊びをコツメカワウソから教えてもらっていると、ジャガーが現れ、一行はジャガーの引っ張る板切れに乗ってアンイン橋へ向かう事となった。
「たてがみちゃん?さっきから黙ってるけど大丈夫?」
「大丈夫や・・・で。サーバルは気にせんでエエから」
たてがみは皆に背を向けて足を川につけながら頭を抱える。
「お客さん、足を水につけてない?今日はいつもよりちょっと重いから、抵抗を増やすのはやめてね」
「たてがみちゃん。足引っ込めよう」
「あ、うん・・・すまんな。重くて大変やのに」
たてがみはますます落ち込んでしまう。新入りのかばんに先輩風を吹かせていたたてがみであったが、朝食と今回のことは完全に空回りしてしまっていた。
「ジャガーさんって、泳ぐのが上手なんですね」
「ジャガーはネコ科では珍しく、泳げるんだ」
「そーよ!」
更に不幸だったのは、ジャガーが同じネコ科であったことだ。ネコ科は泳げないと豪語してしまっただけに、せめてカワウソが迎えに来てくれれば・・・とたてがみはため息を付いた。和気藹々とジャガーと話すかばんに、たてがみの自尊心は大きく傷ついた。
「あそこがアンイン橋だよ!」
コツメカワウソが川岸を指差す。一行が上陸して森の中に入ると、蔦や泥に汚れたバスの車体が見つかった。
「これがバスか?」
「キャハハ!おもしろい!おもしろい!」
サーバル達は初めて見るバスにはしゃぐが、ボスはこのままでは動かせないと言う。
「運転席がないよ・・・本当は、ここにも車体があるはずなんだ。検索中、検索中・・・」
その後、ジャガーが似たようなものを対岸で見たと言い、案内してもらうと運転席は見つかった。しかし、ジャガーの渡し船で運ぶには重すぎ、再び立ち往生することとなった。
「すみません。僕の都合で・・・」
「大丈夫!私もバスになるとこ見たいもん!」
サーバルはかばんを元気づける。たてがみは相変わらず拗ねて遠くから眺めていたが、ジャガーが横に座って話しかけた。
「あなたがたてがみよね。ここを通るフレンズからよく聞いてるよ」
「そうなんか?」
「ここはさばんなちほーとさばくちほーを結ぶ大事な道で、みんなが通るんだよね。そういう子たちは決まって、あなたの話をしてるわ。噂と違って随分シャイみたいだけど」
ジャガーはたてがみの様子に気づいていたらしい。
「うーんとな。ウチってなんやかんやで自分の名前知らんでも楽しく暮らしてこれてん。それがかばんに会って、かばんが自分の名前知りたいって言うからええ機会やし先輩として助けたいなって思うて。それでついてきたんやけど、川に来て面倒くさなって帰ろって言うてもうてな。かばんもサーバルも一生懸命やのに、ウチだけ軽い気持ちでついてきたからちょっと居づらくなったんや」
たてがみとしては、たとえ名前が判らずともさばんなで仲間と楽しく生活が立てられたので、かばんもきっと同じだろうと考えた。ところがかばんの固い決意とそれを支えるサーバルの本気に押されて、2人と距離感が出来てしまったのだ。
「かばんもサーバルも好きやけど、やっぱりウチは他のフレンズとは違うんやなって・・・」
ジャパリまんを食べて日々何の疑問も持たず生活する普通のフレンズでもなければ、かばんのように一貫した意思があるわけでもない。サーバルと一緒に居てすっかり忘れていたが、たてがみは動物にもフレンズにもなりきれない自分という存在の異質さを改めて思い知らされたのだ。
「ふーん。まぁ、私はそんな大袈裟に落ち込むこともないと思うけど。泳げないのに自分だけでなんとかしようなんて、普通は考えないと思うよ。でも、だから私に会った子はみんな喜んでくれて、この仕事のやり甲斐になるんだけどね。たてがみの話をしたフレンズの中にも、たてがみに感謝してたフレンズが結構居たよ。あのとき、たてがみが居なかったら今の出会いもなかったって。図書館に行くんだったら、これからもっと色んな所を通らないといけないし、これぐらいでくよくよしてたら持たないと思うよ」
ジャガーはたてがみの背中を叩いて元気づける。昨日かばんを励ましたばかりなのに、今度は自分が苦心していたことが馬鹿らしくなってきた。
「らしくもないことで悩んでしもうたわ。ありがとうな。ジャガー」
「元気だしてくれればいいって。たてがみはそっちのほうが似合ってると思うな。それより、今は後輩ちゃんのためにバスのことを考えるべきじゃない?」
「せやな。しかし、ジャガーがおらんときはどうやってみんなここを通っとたんやろ・・・」
その言葉に、川に残った橋桁を見ていたかばんが何かひらめいた。
「あの・・・一つ思いつきが。ちょっと大変かもですが」
かばんは川岸や近くの茂みに散乱してた橋の残骸を回収して、それを蔓を束ねたもので繋いだ。それを待機したカワウソに渡すと橋桁に引っ掛けて岸へ戻し、蔓を引っ張った。
「たてがみさん。お願いします」
「よし。任しとき」
3人で蔓を引っ張ると、川の中に足場ができる。蔓を輪にしたものを橋桁に引っ掛けて補強すると、これを3回繰り返し、サーバルが飛んで川を渡れる程度の足場を作った。サーバルが試しに渡ってみると、問題なく使うことができた。
「すごいね!魔法みたい!」
「そうでしょ!かばんちゃんってすっごいんだよ」
「じゃあ、本番やってみましょう!」
たてがみが手伝ってサーバルに操縦席を持ち上げさせる。
「飛ぶまでは面倒見るから、あとは勢いで行くんやで」
「うん!うんにににに・・・・とぅ!」
サーバルは操縦席を抱えたまま飛び立つと、見事に次の足場へと飛び立つ。1つ、2つと無事に飛び越えたのだが、3つ目の足場に着地した直後、足場をつなぐ橋桁が大きく傾いた。
「あれ、うわっ!」
それだけなら良かったのだが予想以上の沈み込みにサーバルが姿勢を崩し、勢いが止まってしまった。
「サーバル!バスを捨てるんや!」
「で、でも・・・あわわわ」
橋桁はいつ折れてもおかしくない。サーバルの足場はドンドン沈んでいく。
「え、えぇ・・・このままじゃ」
「えっと、どうすれば・・・」
予想外の事態にかばんも対応できない。真っ先に動いたのはたてがみだった。たてがみは足場を飛び越えて橋桁に飛びつくと、蔓を引いて足場を支えた。
「今や!サーバル!飛ぶんや!」
「たてがみちゃん!」
「この橋を壊すわけにはいかん!この橋がこれからフレンズ皆の宝になることぐらいサーバルにも解るやろ!」
たてがみの声にサーバルは意を決して飛び出した。サーバルは川を渡りきり、操縦席を運ぶことに成功した。
「ありがとー!たてがみちゃん!」
「ふう、よかった」
たてがみはそれを見てフッと笑う。しかし、油断したのもつかの間、たてがみの掴まっていた橋桁はあっけなく折れて、たてがみは川に投げ出された。
「たてがみちゃん!」
悲鳴を上げるかばんとサーバルの声が聞こえる。たてがみは川の中で必死にもがくが、泳ぎ方も知らない体は鎮み、泥水が口の中に入る。泥の河は陽の光を通さず、たてがみの意識とともに視界が闇に閉ざされかけたところ、だれかが手を掴んで引っ張り上げた。
「ふぅ、無茶しすぎ」
「こっちは大丈夫だよー!」
ジャガーとコツメカワウソに抱えられて、たてがみは無事に岸まで帰還した。
なぜだか自分の中でジャガーちゃんの話し方が安定しない。
真姫ちゃんってほどツンデレでもないし、ワイルドさ成分が掴みきれてない。結構好きだし天王寺の実物も見にも行ったのに(解説の檻の背景はマジであれそのままでした)。