博士はサブヒロインです。
苦労人キャラが板についているかばんちゃんの立ち位置は終わり方によって変わってくる予定です。
コメントで書式について指摘があったのでこっちでスタンダードになってるセリフと地の文を分離したものにしました。正直なんか落ち着かない・・・
その後仕切り直して、かばんが何の動物か教えてほしいと頼んだのだが、博士は料理を作れと要求してきた。
「料理というのは、食材を組み合わせ、加工し、違う形で味わえるようにしたものです」
「なのです」
「そんなの、ジャパリマンでいいじゃない?」
「せやせや。せっかくフレンズになったんなら、肉や樹の実でええやん」
サーバルとたてがみが方向性の180度違う反論をする。しかし博士はそれにも飽きているようだ。
「食べ飽きたのです。たしかにジャパリまんは、各個体向けに栄養バッチリでお腹も満たされますが、私達はグルメなので」
「折角この体になったので、この体でしか食べられないものを食べたいのです。それに、頭を使うには、エネルギーが必要です。我々は賢いので」
「料理がないと、思い出せないかもしれないのです。われわれはかしこいので」
「さぁ、我々を満足させてみせるのです」
「やるですか?やらないですか?」
博士達は決断を迫った。殆ど脅迫のようなものだが、受けない理由もない。
「楽しそう!やるよー!」
「う、うん!」
「ウチも頑張るで!」
たてがみも加わろうとしたのだが、博士はそれを止めた。
「たてがみは参加してはいけないのです」
「えぇ!?どうして?」
「たてがみは我々とともに審査役となるのです。我々だけで審査して後から文句を出されても困るので」
「そうです、アナタは我々と一緒に待つのです」
「わっ、とっと待ってって」
そう言って博士は強引にたてがみを連れ込んでしまった。
「たてがみちゃんと一緒に料理したかったなぁ」
せっかくの夫婦での共同作業に水をさされ、サーバルは落ち込んでしまう。たてがみはサーバルを励ました。
「んー、でも、ウチはサーバルの手料理が食べたいけどな」
その言葉にサーバルの全身の毛が逆立った。
「・・・かばんちゃん!たてがみちゃんが満足できるような美味しい料理作ろう!」
「う、うん・・・」
サーバルの目から迸るやる気に、かばんも頷かざるを得なかった。
「この砂がなくなるまでに料理をして、私達がおいしいと言えば、お前が何の動物か教えてあげるのです」
「ついでに、副賞もつけるですよ」
「頑張ってな」
「よーし、やるぞ!」
かばんとサーバルを図書館に案内した博士達は、ルールを説明し料理を始めさせた。まず本を読んで調べることから始めなければならないので、実質ここはかばんの独壇場である。たてがみと博士は上の階に登ってそれを観察する。
博士は助手に椅子を持ってこさせ、たてがみを座らせるとその膝の上にちょこんと乗った。
「・・・何をしているのです?早く撫でるのです」
「は?」
「散々やってたじゃないですか、早くやるのです」
突然のおねだりにたてがみは困惑するが、上目遣いに見つめられて頭を撫で始める。しばらく無言でいると今度はチラチラと物欲しそうな目で窺ってくるので、たてがみは疑問に思ったことを訊いてみる。
「で?何でかばんに料理させるんや?」
たてがみがかつて自分の正体を訊いたときはこれと言って対価を要求することはなかったし、名前を教えることはビーバーの家造りのような特別大掛かりなことでもないだろうに、妙に回りくどい要求をする。博士と助手は質問を受けると小さな胸を張って答えた。
「それは、教えるための高尚な試練なのです」
「島の長としての責務なのです」
「その心は?」
「島長権限でヒトの料理を作らせて美味しい思いをするのです。じゅるり」
「役得なのです、じゅるり」
「やっぱり煩悩まみれやないか・・・」
気持ちよくてうっかりと本音ダダ漏れの答えをした博士にたてがみも呆れる。それに気付いた博士は慌てて言い訳を始めた。
「ち、違うのですよ!料理はたしかに食べたいですがそれは島の発展のためで・・・」
「あぁ、意固地になるコノハかわいいかわいい」
「だーかーらー!子供扱いしないでください!」
頬を膨らませる博士を見てたてがみの頬も緩む。博士は長としての皮をむけばこうも表情豊かなのだ。見栄をはらずにもっと表に出せばいいのに、とたてがみは思った。
「そーれーよーりーも、ウチの有る事無い事言いふらしとるようやないか・・・誰がもふり魔の変態悪食獣やて?」
「はわわ・・・助手、助けるのです!」
「はい」
助手が手に持った機械をたてがみに向けるとフラッシュが焚かれて、たてがみは目を閉じた。
「うおっまぶし!何やこれ?」
「はい、博士がたてがみにセクハラされる決定的瞬間を収めました」
機械の中から紙が出てきて、たてがみに妙にいやらしい手つきで全身を撫で回される博士の絵が写っていた。それを見た博士は勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
「でかしたのです!これがあればたてがみなど恐るに足らずです」
「何やと」
「浮気の証拠写真をサーバルに見られたくなければ、我々に屈服するのです」
「ハメよったな!」
たてがみが写真を奪おうとするが、助手と博士は空を飛んで逃げてしまう。
「やったのです助手、これでたてがみは私のものなのです」
「やりました博士。この写真をばら撒けば、カリスマブレイクでたてがみだけでなく博士も破滅ですよ」
「え?」
助手の発言に博士は驚愕する。助手は黒い笑みを浮かべて博士を見下ろした。
「さぁ、博士。馬鹿騒ぎしていると写真をうっかりサーバルに渡しちゃいますよ。或いはホラ吹き漫画家のネタとして後世に残る名作のワンシーンを飾るか・・・」
「すぐにその写真を捨てるのです!助手!それを捨てるのです!」
「なら、もっと誠意を示すのです。頭が高いですよ」
「わかった、わかったですから!処分してください!」
必死に懇願する博士を見るとたてがみは博士が気の毒になってきた。助手も満足したのか、博士いじりをやめていつもの表情に戻る。
「ふふ、冗談ですよ。たてがみとのやり取りを見ていてつい自分もやってみたくなっただけです。博士あっての助手ですから、裏切るようなことはしませんよ」
「はぁ・・・助手の言うことは冗談には聞こえないのです」
「私はいつだって本気ですよ。我々は賢いので」
助手は博士の頭をポンポンと撫でる。この図書館の上下関係がよく理解できる一面であった。下から観察していたたてがみは、感心して言う。
「しっかし、下から見てると、ミミは意外とグラマーやな」
「やっぱ晒すのです」
「助手!?」
「あのーお鍋っていうのが必要らしいんですが・・・」
その後写真は飯盒の燃料として処分された。かばんは写真と博士の迫真の表情を見比べて、黙ってそれを火にくべたのであった。
「これで安心なのです」
かばんが火を使った調理をしているのを遠巻きに確認し、博士は漸く安心したのだった。
「しばらくは具材を炒めたり煮込む作業があるので、皆さんはゆっくり休んでいてください」
「しっかし、料理って随分と時間がかかるんやな」
「ホントにね。私ならそのままでもかぶりついちゃうのに」
たてがみとサーバルは料理に使った機材や本の山を見て言う。一つの料理をつくるためにこれだけの道具を使い、幾つもの手順を踏まなければならないのだ。必要な道具や使い方を覚えるだけでも途方もない苦労だろうに、それを読んだだけで理解するかばんは大したものである。
「そこが料理の難しいところなのです。我々も本の内容を知識として理解できても、実際に手順を組んで道具を使うのは、やはりお手本を見なければ困難なことが多いのです」
助手は苦々しげに言う。博士たちは道具の使い方を理解しても修理はできないし、文字は読めても書くことは出来ない。図書館の権威の元となる道具は全て人間の遺物であって、自分達が作ったものは何一つないのだ。
「それがかばんなら出来ると・・・つまり、最初からかばんの正体を知ってたってことやな」
たてがみはアッサリ博士の意図をバラす。サーバルは驚いた様子で博士たちを見た。
「えぇ!?思い出せないんじゃなかったの?」
「そないなわけ無いやろ。ヒトが考えた料理を作らせるっちゅうのは相手がヒトやって前提がないと成立せえへん。教えることを条件にかばんに言うこと聞かすためのフェイクや。他のフレンズにも同じような手段であれこれ美味い汁吸ぅとったんやろ?」
たてがみが博士を見下ろすと博士もはいと答えるしかなかった。サーバルが「ひどいよー」と非難すると、博士は肩をすくめる。
「まぁ、サーバルもそない怒らんと・・・ウチ等もかばんがヒトやってほとんど知ってて来たんやし、ウチは料理を食べれればエエかな」
「それでも、たてがみちゃんの正体まで条件に入れることはないよ」
「そ、それは・・・」
サーバルの問いかけに、博士は答えるのを躊躇った。口籠る博士に変わり、助手が理由を説明した。
「それは教える手間を一度で済ませるためですよ。質問の機会は一度に纏めたいですし。我々もヒトを見るのは初めてなので、改めて確認するためのこの手順を取らせていただいたのです。たてがみの話を鵜呑みにしないでください」
「助手・・・」
「なーんだ。そんなことだったんだ!私達、ヒトがどこに住んでるかを知りたいんだ。たてがみちゃんが言うには、そこにたてがみちゃんも居たらしいから、一緒に解決して欲しいの。大丈夫!かばんちゃんはすごいんだから、きっと博士を満足させられる料理を作ってくれるよ」
自信満々にかばんのことを自慢するサーバルにたてがみも頷いて答える。しかし、その言葉を聞いた博士の表情が何処か不安げなことにたてがみは気付いた。
「どうしたんコノハ?」
「あ、いいえ。かばんが大丈夫でもサーバルがミスしていないとも限らないのです。せいぜい頑張るのです」
「もう!博士の意地悪」
サーバルの批難を気にも留めず、博士は助手と図書館の中へ飛び去ってしまった。