一段落したらここまでの間の話も番外編でやりたいな・・・
たてがみがジャパリパークに来てから、早くも1年が経った。博士の助言もあって、食べられる虫や樹の実などを漁るようになると、生活にも余裕が出始めた。また、博士たちを助けた噂が広まったのか、自力でセルリアンに対処できないフレンズがたてがみを頼るようになり、その代わりにフレンズ達がこっそりと食べていた珍味を分けてもらうことを通じて、フレンズたちとの関係も改善した。
「ありがとー!」
「おう、またなんかあったら呼んでな!」
「元気でねー!」
今日もセルリアンを退治すると、対価をもらって縄張りへと戻る。縄張りは丘の近くの休憩所だ。丘の上の泉や他のちほーへとつながる要所で、最初は不法占拠であったが、たてがみの実力が認められて縄張り扱いになった。帰るついでに水でも飲もうかと思い、泉への道を歩いていると、サーバルに出会った。
「たてがみちゃん!今日は何を貰ったの?」
「おう、サーバルやないか?今日はな・・・」
たてがみは服の間に挟んだ瓶を取り出す。瓶は休憩所のソファーの下に転がっていたのをたまたま見つけたのだった。中には黄色い透明なものが入っている。
「蜂蜜だ!すっごーい!」
「あとで一緒に舐めよう」
泉に着くと、多くのフレンズで賑わっていた。
「よう、たてがみ」
「たてがみ!この前はありがとな!」
「今度一緒に狩りごっこしましょう?」
フレンズ達はたてがみに気づくとそれぞれ話しかける。草食系のフレンズからはお礼の言葉、肉食系のフレンズからは狩りごっこの誘い。種族の垣根を超えてたてがみは人気者だ。
「ほんとに、私を襲った時からは想像できませんわね」
「よ、カバはん。達者かいな?」
「えぇ。しかし、あなたには呆れますわ。ジャパリまんは食べないし、パークの掟はお構いなし。堂々と縄張りを超えて、手助けと称してサーバルと好き勝手暴れまわって」
「でも、みんな喜んでくれとるで」
「えぇ、パークには、あなたのような輩も必要なのかもしれないと、私まで思うようになってきましたわ」
たてがみは肉を食べる上に縄張りも気にせず移動する、本来のパークにとってはイレギュラーな存在である。しかし、それ故にカバを始めとする一部のフレンズ達には、パークの掟に縛られてはどうにもならない問題を解決できる存在として認識されていた。泉の前の休憩所に縄張りを認めるという破格の待遇もそのためである。
「そういや最近、セルリアンが多なった気がするんやけど」
「えぇ、この時期になると増えてきますわ」
「てことは、もうすぐアレなの?」
サーバルが遠くの山脈を見やる。その先には七色の鉱物が張り出した巨大な火山が、噴煙を上げていた。
「そうですわ。もうすぐ噴火が近いと、博士が触れ回ってるらしいんですわ」
「噴火って?」
「サンドスターが降ってきて、フレンズが生まれるんだよ!たてがみちゃんみたいに・・・ってことは」
サーバルは何か考え込んでいる様子だった。たてがみは首を傾げた。
サーバルと縄張りまで帰ると、日が暮れるまで昼寝をする。サーバルは木の上に、たてがみはソファーに寝そべった。
「最近体が重なって木に登れんようになったわ」
「食べ過ぎで太ったんじゃないの?」
「そ、その分ちゃんとパワーがついたから大丈夫やで・・・きっと成長したんや、きっと」
「ふーん」
サーバルが木から降りて、寝転がっているたてがみの二の腕を掴む。
「ぎゃぁぁああ!やめて!」
「うーん・・・でも、痩せて元気がないよりはいいよね。私も添い寝していい?」
「えぇで、やみつきになるわ」
サーバルがソファーに上がってくる。ソファー自体はそれほど大きくないため、二人はかなり密着した形で横になった。
「えっへへ、吐息が感じられちゃうくらいすっごく顔近いね」
「暑苦しくないか?狭かったらサーバルだけでもエエで」
「大丈夫大丈夫・・・ネコだから狭くってもってうわぁ」
サーバルがソファーから落ちそうになり、たてがみは慌ててサーバルを抱き寄せる。全身が密着する形になり、互いの熱を直に感じた。サーバルの体温が急に上がり始める。
「あーうん。これはちょっとアカンな」
「なんだか、寝てるだけなのにハアハアしちゃう」
「うん。ウチ、風にあたってくるわ」
結局たてがみは木の根元で寝ることになった。
夜、目を覚ますと空が虹色に光っていた。慌ててサーバルを起こす。
「なぁ!なぁサーバル!大変や!」
「うみゃ・・・どうしたの?」
「空がめっちゃおかしなことになっとんねん!」
「わぁ・・・きれい」
サーバルも身を起こし、夜空を見上げる。虹色の輝きが遥か遠くから流れ、川のようにさばんなちほーを横切って一本の道を作っている。
「すっごーい!こんなに明るいの初めてみた」
輝きの源である火山は大きな光を放ち、その周辺は昼間のように明るいだろうことが想像できるほどだった。
「なぁ、これって?」
「うん。これがサンドスターの放出。一年に一度、遠くの聖なる山が噴火して、サンドスターがパーク中に降り注ぐんだ。そうやって、サンドスターがいろんな生き物にかかって、それが新しいフレンズになるんだよ!」
「そうか・・・」
たてがみは1年前、ジャパリパークに来て初めて目を覚ましたときを思い出した。そのときも、虹色の砂がキラキラと輝いていた気がする。
「そして、サンドスターが降ったってことは・・・・」
サーバルは両腕を広げて笑顔でたてがみを見た。
「たてがみちゃん!誕生日おめでとう!」
サーバルは祝福するように両腕を広げた。サーバルはこれを解って一緒にいたようだ。
「ふふ、ありがとうな!サーバル」
たてがみはサーバルに抱きついて感謝した。
「えへへ、ねぇ、サンドスターの輝き、もっといい場所で見ようよ!」
サーバルは木の上に登って手を伸ばす。たてがみはサーバルの手を借りて木を登った。
「きれい・・・」
生き物たちに力と個性を与える母なる大地の輝石が、夏の天の川よりも更に明るく夜を照らす。その輝きが空を覆うと、次第に大地に向かって降り注ぎ始めた。
「まるで空が落ちてくるみたいだね」
「あぁ・・・」
幻想的な風景に心が洗われる。サーバルが星を見上げている間に、たてがみは瓶を取り出した。
「へへっ、サーバル。一緒に食べよう」
「わーい!」
蜂蜜を少しずつ指に垂らしながら舐めていく。
「えへへ・・・すっごく甘いね」
「うん。こんな日にぴったりや」
蜂蜜を味わっていた2人だったが、サーバルがうっかり瓶をひっくり返して、蜂蜜がたてがみの顔についてしまった。
「わわっ、ごめん」
「ええって。気にせんでも」
「私が舐め取ってあげるね」
そう言うとサーバルが蜂蜜の付いたたてがみの顔をペロペロと舐め始めた。
「なんや、オカンにやってもらってるみたいで恥ずかしいわ」
「えへへ、たてがみちゃんは私の妹みたいなものだからね。誕生日なんだし、気にしなくていいよ・・・でも、おかあさんか・・・」
サーバルは生まれたばかりの赤ん坊についた粘膜を舐めとるように、たてがみの顔を舐め回した。フレンズはサンドスターによって生まれ、全てが女性の姿になるため子供を作らない、故にサーバルにとって母性とは経験するはずのないものであった。
「たてがみちゃん・・・誕生日おめでとう」
その言葉を聞いて、たてがみは残った蜂蜜を指につけるとサーバルの顔に塗りたくった。
「ちょっと、たてがみちゃん?冷たいって・・・」
「サーバルもサンドスターで生まれたんなら、サーバルも誕生日やろ・・・」
「う、うん」
「なら、ウチからもお祝いせんと不公平やろ?」
その言葉に、サーバルの顔がまた熱くなる。大きな耳から蒸気が出ていた。
「で、でも、恥ずかしいよ」
「サーバル、誕生日おめでとうな」
「そんな、こんな所でひどいよー」
サーバルそう言いながらも嬉しそうだった。サーバルとたてがみは火山の噴火を眺めながらしばらくお互いの顔を舐めあった。
「今年はどんな子が生まれてくるかな?」
「いい友達になれればエエな」
「たてがみちゃんみたいなおっちょこちょいだったりして?」
「ウチみたいなんが3人もおったらかなわんわ」
「それって、私のことも含めてるの?」
「そうやけど」
「ひどいよー!」
そして素敵な旅が幕を開ける。