進撃の芋女【完結】   作:秋月月日

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 はい、二話連続投稿です。

 今回は『Seo』様から頂いたネタで、104期訓練兵の数人による合同コンパです。

 なんか書いてる内にテンションが上がってしまい、まさかの二部構成に。

 というわけで、番外編その2――進撃開始です。



番外編 初めての合コン(前編)

 それは、ライナー=ブラウンの一言から始まった。

 

「合コン、というものを経験してみねぇか?」

 

『合コン?』

 

 厳しくキツイ訓練を終えて「さぁ今から寝ましょう」とほとんどの訓練兵たちが布団に潜り込んでいく中、ライナーを始めとした四人の少年たちは男子寮の中央にあるテーブルに円を描くように集まっていた。

 リィン=マクガーデン。

 エレン=イェーガー。

 ジャン=キルシュタイン。

 そして、ライナー=ブラウン。

 彼らはいろんな意味で今期の注目だと言われているわけだが、その注目を消し飛ばすほどに彼らは無秩序な連中だった。一応のルールは守るが、自分の琴線に触れることがあればルールを無視してでもそちらに意識を向けてしまう――そんな年相応の少年たちだった。

 ドヤ顔で意味不明なことを言い放つライナーに怪訝な表情を向ける少年たち。その中でも常人以上に顔立ちが整っている白髪の少年ことリィン=マクガーデンは肩を竦め、

 

「エルヴィンさんから聞かされたことあっけど、合コンってアレだろ? 結婚適応年齢をぶっちぎってしまいそーな男と女が最後の希望として実行するっつー、負け組の集会だろ? なんで俺たちみてーな子供がンなことせにゃならねーんだよ」

 

 正解なような不正解なような、とにかく凄く中途半端に合コンを理解しているリィンの言葉を真に受け、エレンとジャンは知ったかぶって首を縦に振る。過去にエロ本を読んでいるところを母親に見つかってしまいそうになったジャンと昔からミカサ以外の女子との接点が皆無だったエレンだから仕方がないっちゃないのだろうが、それにしても知ったかぶりは酷すぎる。せめて疑問で返せよお前ら。

 だが、ライナー=ブラウンはリィンの言葉には屈しない。どうやら彼は彼なりに『合コン』について調べてきたようで、超絶的にウザいドヤ顔を浮かべながらライナーは彼ら三人に言う。

 

「上官たちが話してたのを聴いたところによると、合コンってのは別に結婚に焦る男女だけがするものじゃないらしい。ただ単純に異性間で楽しみたい、とかそんな感じの理由で開催される祭りのようなものみてぇだな。――もちろん、俺たちにだってやろうと思えばやれる祭りだ」

 

 おぉ! とライナーから齎された豆知識に三人はどよめきを見せる。勿論、彼が言っていることの全てが正解という訳ではないのだが、彼らはまだまだ幼気な子供なのだ。別に『合コン』の本当の意味を知らなくても、「楽しけりゃいいや」ぐらいにしか物事を見定めていないから大丈夫と言えるだろう。

 ライナーはテーブルの中央にコブシを突き出し、覚悟を決めた『漢』の顔で三人に言う。

 

「合コンの予定日は月に一度の休暇である明日。俺は今日の訓練の合間を縫って、合コンに参加してくれる女子たちを予め集めてる。分からないことが多いだろうが、俺がお前たちを先達してやる。――参加する意思は、決まったか?」

 

 そんなライナーの言葉に三人は一瞬だけ戸惑いの色を浮かべるが、すぐに覚悟を決めた『漢』の顔で彼の拳に自らの拳をぶつけ合う。まるで言葉なんて必要ないとでも言うように、彼らは視線だけで意志を疎通し合っていた。

 そんなこんなの穴だらけなやり取りを経て、彼ら四人は人生初の『合コン』にその身を投じることとなる。

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 開始五秒で帰宅願いを出したが、流石に許可されなかった。

 月に一度の休暇を利用してトロスト区にある喫茶店で合コンが開催されたわけだが、リィンとエレンとジャンは周囲にばれないように彼らの間に座っているライナーの脚を蹴りつけていた。心成しか、顔色がとても優れない。

 彼らの顔色が優れない原因は、この合コンに集まった女性陣にある。

 「じゃ、じゃあ、俺たち男子の自己紹介は終わってるから、女子の自己紹介を頼めるか?」ライナーは左右から襲い掛かる『明確な理由のある暴力』に必死に耐えながら、この絶望的な空気を作り出した元凶と言える女性陣に自己紹介を促すことにした。

 

「アニ=レオンハート。趣味は『人を蹴り飛ばすこと』で、特技は『人を蹴り飛ばすこと』だね」

 

「……ミカサ=アッカーマン。趣味は『エレン』で、特技は『肉を削ぎ落とすこと』……です」

 

「ダウパー村出身、サシャ=ブラウス! えっと、趣味は『食べること』で特技は『食べること』です! 美味しいものがたくさん食べられると聞いたので、役不足ながらも参加させてもらうことになりました!」

 

「え、えっと、クリスタ=レンズです。趣味は『花を愛でること』で、特技は……『人助け』かな?」

 

 ライナーの脚を襲うキックの威力が倍増した。

 予想にもしなかった面子にだらだらと大量の冷や汗を流しながら、リィンとジャンとエレンは女性陣に聞こえないように叫び散らす。

 

「(オイコラふざけんなこの女神信仰者! サシャが来るなんて聞ぃーてねーぞ!?)」

 

「(ミカサが来るってのも俺は聞いてねえ! 自分の家族を前にして好き勝手に振舞えるわけねえだろ、このバカライナー!)」

 

「(それ以前にどうしてアニを呼んだんだよ! もっとまともな女子がいたんじゃねぇの!?)」

 

「(……クリスタ、結婚しよ)」

 

『(ライナァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーッ!)』

 

 幸せすぎて昇天してしまいそうなライナーの脚をリィン達被害者三人組は己が持つ全力の力でドスドスドスドスと蹴りつける。普通なら足の骨が折れてしまう程の威力なのだが、人生の絶頂期にいるライナーの脚は傷一つ追わずに地面に根を張ってしまっていた。どんな邪魔が入ろうがこの場を動く気はないのだろう。

 だが、いつまでも女子をほったらかしにしておくわけにはいかない。既に大量の料理を食べ始めたサシャと怒ることが決してないクリスタは構わないかもしれないが、アニとミカサを野放しにしておくのはかなりマズイ。具体的に何がヤバイかというと、今日の八つ当たりに明日の訓練で半殺しにされてしまうぐらいにヤバイ。

 とりあえずテーブルの下でジャンケンをし、一発目からグー三人チョキ一人というなんとも『不幸』な敗北を喫したリィン=マクガーデンが話を切り出すことになった。

 

「え、えーっと……す、『好きな男のタイプ』はなんですか?」

 

 ドゴン! という音と共にリィンの脇腹に衝撃が走った。

 「はぅ……ちょ、おまっ……ッ!」殴られた脇腹を抑えてぴくぴくと痙攣するリィンを睨みつけながら、男子三人はこれまた女子に聞こえないように叫び散らす。

 

「(ド直球すぎんだろぉおおおおお! お前の頭ン中には順序って言葉が存在しねぇのか!?)」

 

「(ああもうミカサの顔が固くなった! アルミン無しでミカサを相手取るとか俺にはハードルが高すぎるって!)」

 

「(リィンの質問に真っ赤になるクリスタ可愛い。――結婚しよ)」

 

『(お前はもう黙ってろ!)』

 

 脳内お花畑なメルヘンゴリラを黙らせるべく、エレンとジャンは拳を握る。

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 開始数分で二人の犠牲者が出るという波乱の幕開けを喫した合コンは、小一時間が経過する頃にはとてもいい雰囲気に包まれていた。――主にジャンの活躍によるものだが。

 ライナーとリィンという空気読めないバカ二人によって作り上げられた拷問のような空気を霧散させるためにジャンが行ったのは、『ダウンした二人の恥ずかしい秘密大暴露大会』だった。

 なんとも他人頼りな作戦だが、それでも、落ち込んでいた場の空気を盛り上げることには役立った。涙目ながらにジャンが場を盛り上げることに成功した後は、これまでの流れでコツを掴んだエレンもジャンと同じようにリィンとライナーの『赤裸々な秘密』を余すことなく暴露していた。二人によって齎された情報に女子たちがドン引きしていたのでリィンとライナーは必死に反論を試みたが、両脚に襲いくるキックの嵐によって強制的に喋りを制限されてしまっていた。

 そんな騒がしくも楽しい時間のおかげで調子が良くなってきたのか、痛みを快感に変換することに成功したライナーは「それじゃあ場の空気も整ってきたところで、ゲームを始めようぜ!」と叫びながら懐から何かを取り出した。

 それは、何の変哲もない木製の棒だった。あえて特徴を上げるならば、『本数が人数分ある』ことと『それぞれに数字が振られていて、その中の一本だけ先が赤く塗られている』ことぐらいだろうか。

 彼が何をしようとしているのかが分からないライナー以外の男性陣と女性陣は「???」と首を傾げるが、ライナーはそんな彼らに分かりやすいように懇切丁寧に説明を開始した。

 

「今俺が持っている棒を合図とともに引き、その引いた棒に書いてある数字を確認する。この時、自分が引いた数字は他の奴らに言ってはならねぇ。絶対にだぞ? そして、先が赤く塗られている棒を引いた奴が『王様』となり、他の奴らに命令することができるんだ。『王様』の命令には絶対に逆らえないから、拒否することは許されない。つまるところの――『王様ゲーム』の始まりだ!」

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 五回に亘るルール説明のおかげで全員が完全にルールを理解したところで、地獄の『王様ゲーム』が幕を開けた。

 テーブルの中央に置かれたライナーの手に握られた棒に手を添え、リィン達八人は決められた掛け声とともに自らが選んだ棒を引いていく。

 

『――王様だーれだ!』

 

 瞬間、ライナーの脳裏に電撃が走る。

 彼は合コンが開催されることが決定した時点で、この『王様ゲーム』の下準備を始めていた。彼が想いを寄せているクリスタ=レンズとイチャイチャするためだけに、彼は棒にありとあらゆる細工を施した。

 王様の証である赤い印には僅かばかりの切れ目を入れ、自分の手のひらである程度の判別がつくようにした。他にも、全ての棒の数字が把握できるように数字に対応させた印をそれぞれの棒に刻みつけている。――完璧だ、この計画は一寸の狂いも無く完璧だ。ライナーは勝利を確信し、皆にばれないようにほくそ笑んでいた。

 

 

 だが、彼は最も大きな問題を見逃していた。

 

 

 棒に細工をしようが何をしようが、この問題だけは解決できない。というか、この問題を解決するためにはルール自体を変更しなければならない。

 つまり、何が言いたいかというと。

 

 

 細工したところで『王様』がライナーの思うとおりに命令してくれるわけないじゃん。

 

 

 明らかに致命的なミスだった。――だが、ライナーはそのミスに全く気付かない。それどころか、クリスタに生暖かい視線を向けている始末。なんて愚かな男であろうか。

 そんなうっかり男ライナーのミスなど知る由もない七人の男女は自らが引いた棒の先を確認し、思い思いの反応を見せていた。

 そして、最初の王様が名乗りを上げる。

 

「……私が『王様』」

 

 ミカサ=アッカーマン。

 あまりにも『王様』に不釣り合いなミカサの宣言に、エレンとジャンはだらだらだらと大量の冷や汗を流し始める。特にエレンに関しては、「(アイツが王様とかヤバすぎるだろ! っつか、ちゃんとルール理解してんだろうなぁ!?)」という何か少しずれた心配事に頭を抱えている。

 そんな先が読めない状況下、ミカサは相変わらずの無表情で彼らに命令を下す。

 

「『2番』が『5番』の――顔面を殴り飛ばす」

 

「あ、『5番』は私だね」

 

「お、『2番』は、お……れ……ッ!?」

 

 5番←アニ。

 

 2番←エレン。

 

 結論――明日の対人訓練は地獄。

 

「いやちょっと待てぇええええええええええええええーッ!」

 

 下手をすれば明日で寿命が尽きてしまうほどの緊急事態に、エレン=イェーガーは抗議の声を上げる。

 いきなり叫びだしたエレンをキョトンとした様子で見るミカサだったが、そんなミカサに食って掛かるようにエレンは叫ぶ。

 

「命令の撤回を要求する! というか、暴力沙汰はダメだろうが!」

 

「エレンに拒否権はないはず。ちゃんとルールに従ってほしい」

 

「ルールに従うとか従わないとか言うどころの話じゃなくなってんだよ! 俺の命にかかわる問題だ!」

 

「大丈夫、エレンは私が守るから」

 

「じゃあ今すぐに俺を護る為に命令を撤回しろよ! っつか、アニだってこんな命令には納得できないはずだぜ!? そうだろ、アニ!?」

 

 鬼気迫る表情で問うエレンに圧されながらも、アニはいつも通りに冷静に返答する。

 

「いや、私は別に構わないけど? ――ヘイ、カモンカモン!」

 

「場の空気を読むために不慣れなテンションを実行しないでくれねえかなぁ!? 正直ムカつくぞお前!」

 

「――いいから、早くアニを殴って。これは――『王様』の命令なの」

 

「ぐっ……」

 

 いつもは非常識なミカサの珍しい正論にエレンは思わず口籠る。

 みんなで決めて納得したルールである以上、エレンは反抗することなくこれに従わなければならない。それは人間として当たり前の常識であり、下手をすればエレン=イェーガーの人間性が疑われてしまうような絶対的な規則でもある。

 だが、こんなしょうもないゲームで命を散らすわけにはいかないエレンは涙目でこのゲームの意味のなさを周囲の奴らに訴えかける。

 

『…………(ふいっ)』

 

「なに目ぇ逸らしてんだこの白状者ぉおおおおおおおおおおおおおーッ!」

 

「エレンうるさい。いいから早く、アニを殴って」

 

「ああくそっ! やってやる! やってやるよこんちくしょうがぁあああああああああああーッ!」

 

 明日の命と明後日の命を天秤にかけながら、エレンーイェーガーは拳を握る。

 




 次回もお楽しみに!
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