進撃の芋女【完結】   作:秋月月日

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 前回の続きです。

 ついにアニメの方が原作四巻の終わりまで行きましたね。いやー、遅い遅い(震え声)。

 そういえば、進撃の巨人の新opの歌い手が決まったそうですね。
 
 誰が歌うことになったとしても、いままでのopを越えるのはかなり難しいと思うんですけど……皆さんどう思います?

 まぁ、そんなことはさておき、番外編三話目、進撃開始です。



番外編 初めての合コン(後編)

 アニを殴ろうとしたら逆に蹴り飛ばされた。

 ルールに則った形で王様となったミカサ=アッカーマンの命令に血涙を流しながらアニ=レオンハートに殴りかかったエレン=イェーガーだったが、気づいた時には背中が店の床に密着していた。――直後、激しい痛みがエレンの身体を襲う。

 

「いっ……てぇええええええええーッ!」

 

「エレン!」

 

 背中を抑えて目尻に涙を浮かべるエレンに駆け寄り、ミカサは彼の身体を優しく抱きしめる。いやお前が原因だよとその場に居合わせた全ての人間の思考が一致するが、とても話を聞きそうにない様子のミカサにその言葉を伝えようとする勇者はいない。店員的には今すぐにでも出ていってほしいところなのだが、流石にそんなことで儚い命を散らすわけにはいかない。ミカサがどれほど強い兵士なのかは知らないが、先ほど言い放った命令から予想するにさぞ人格が捻じ曲がった兵士なのだろう。――なんか全身の筋肉もとても女性とは思えないようなことになってるし。

 とりあえずエレンたち以外の客が明後日の方向へサッと目を逸らしたところで、エレンを抱きしめているミカサがアニをキッと睨みつけた。

 

「今のは明らかな命令違反。私はエレンを蹴り飛ばせだなんていう命令を下した覚えはない」

 

「命令を下されたのはエレンだけだろ? 私はアンタの命令に従ったエレンを蹴り飛ばしただけだよ。命令を下されたわけじゃないんだから、命令違反にはならないと思うけどね」

 

「…………チッ」

 

 相変わらずクールビューティなアニの言葉に反論する余地が無かったのか、ミカサは明らかに不機嫌な様子で元の位置へと戻っていく。ミカサの席がアニの隣だったために二次災害が起きる可能性も否めなかったが、クリスタの配慮でミカサを一番奥の席に座らせたために二次災害は無事に回避された。……このとき、ライナーがボソッと「結婚しよ」と言っていたが、あまりにもウザくなってきたので華麗にスルーしようと思う。

 何故か暴力沙汰となってしまったゲームを一旦中断し、ライナーは改めて「暴力行為禁止!」というルールを追加する。先ほどのエレンのような目に遭いたくないリィン達は反論することなくブンブンブン! と勢い良く首を縦に振っていた。

 そして先ほどの悲劇を記憶の片隅に追いやり、彼らは気を取り直して二回目の王様ゲームを開始した。

 

『王様だーれだっ!』

 

「あ、俺だ」

 

 ジャン=キルシュタイン。

 エレンにベタ惚れなミカサに恋するなんとも気の毒な少年であり、それが原因でエレンとは犬猿の仲でもある少年だ。自分の感情に素直なところで多くの同期から信頼を寄せられているが、捻くれ者のジャンはその事実に気づいていなかったりする。

 そんな他称「ツンデレ」なジャン=キルシュタインは「さて、どうしようか……」などとわざとらしく思考中をアピールするような声を漏らし、場の空気を盛り上げることも込みで他の面子に盛大に命令を下す。

 

「3番が6番と全裸で抱きしめ合う!」

 

『え゛』

 

 ジャンのあまりにも恥ずかしすぎる命令に、芋女と不幸男から心底嫌そうな声が漏れた。

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 とりあえず店内の更衣室を借り、リィンとサシャは顔を真っ赤にしながらジャンの命令を遂行した。命令遂行後に元のテーブルに帰ってきたリィンとサシャの顔が夕日も目を見開いて驚くほどに真っ赤に染まっていたが、店内にいる客と店員を含めた全員が彼ら二人に声をかけることをしなかった。とりあえず「お幸せにっ!」と心の中でお祝いの言葉を述べるだけにしておいた。

 ちらっちらっと互いの顔を見ては赤面して俯く、というなんとも初々しい芋女と不幸男に生暖かい視線を向けながらも、合コン参加組は王様ゲームを再開する。

 

『王様だーれだっ!』

 

「あ、次の王様は私だね!」

 

 クリスタ=レンズ。

 もはや説明など必要ないだろうが、一応のキャラ紹介だけはしておこう。

 104期訓練兵団で最も心が優しいと言われている金髪で小柄な美少女であり、そのあまりにも素晴らしすぎる容姿と性格ゆえに『女神』とか『神様』だとか言う風に同期から崇められているある意味でトップの座に君臨している美少女様だ。

 だが、そんなクリスタにはユミルという用心棒的存在の同期がほぼ一日中隣にいて、どんな男性のアピールもそのユミルが一睨みで粉砕してしまうのだ。……そのせいで二人にレズ的関係が噂されているのだが、それはまた別の話。

 因みに、クリスタを敬愛する者の一人であるライナー=ブラウンは他の人からの命令でクリスタといちゃつきたいだけなので、クリスタが王様であるこの状況には大して意味を感じていない。さっさと命令を下して次のゲームに移ろうとぐらいにしか思っていないのだ。

 そんなライナーの心境など全くこれっぽっちも微塵も知る由もないクリスタは「えっと……」と可愛らしく首を傾げながら思考し、女神のような笑顔で盛大に命令を下す。

 

「2番が1番の身体を抱きしめながら『君は森羅万象のどれよりも美しい』って耳元で囁く!」

 

 2番←リィン。

 

 1番←サシャ。

 

 結論――なんとも居た堪れない空気になって以下省略。

 

『ちょ、ちょっと待ってぇえええええええええええええええーッ!』

 

 まさかの二連続指名に驚きを隠せない芋女と不幸男はテーブルをバン! バン! と乱暴に叩きながら勢いよくその場に立ち上がる。その際にエレンとジャンの水が盛大に彼らの身体にぶちまけられてしまっていたが、サシャとリィンは華麗にスルーして女神に向かって咆哮する。

 

「明らかに同じヤツがそんな恥ずかしい命令を二連続も遂行すんのはおかしーだろ! っつーか、どんな観察眼してんだよクリスターッ!」

 

「いや、あれだよね。これぞ愛の力! って感じだよね」

 

「なにが愛の力ですかなにが! ただ単純に面白がっているだけでしょう!? さっきの命令のときだって、死ぬほど恥ずかしかったんですからね!? リ、リィンの恥ずかしいところがごにょごにょごにょ……」

 

「サシャさぁあああああああああん!? まさかお前見てたんか!? あの、その、俺の『アレ』、見ちゃってたとか言うんじゃないでしょうねぇえええええええええええーッ!?」

 

「………………(ポッ)」

 

「殺せ! いっそ一思いに俺を殺しやがれぇええええええええええええーッ!」

 

 頬を赤らめながらそっぽを向くサシャに男の尊厳をズタズタに引き裂かれたリィンがフォーク片手に絶叫し、彼を止めるためにテーブルにいた全員が慌てた様子で立ち上がる。

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 エレンたちがリィンを抑えることになんとか成功した後、リィンとサシャは顔を通り越して耳の先までもを真っ赤に染めながらクリスタの命令を遂行した。

 そればかりか、その後三回に亘りクリスタが王様を引き当て、さらにその三回ともを神憑り的な観察眼でサシャとリィンに口にすることすら憚れるほど恥ずかしい命令を下したのだ。あまりにも可哀想すぎる二人に、いつも無表情なミカサは彼女にしては珍しく顔を引き攣らせていて、あまり他人に興味が無いはずのアニはこれまた彼女にしては珍しく、しくしくと涙を流す二人に慰めの言葉をかけていた。

 予想にもしなかった女神クリスタの暴挙に、ライナーとジャンとエレンの三人は冷や汗を大量に流しながら顔を真っ青に染める。すぐ隣で女神による『ドキッ☆ 芋女との黒歴史製造大会!』の被害者となってしまった不幸男がいるという事実が、彼ら三人の焦燥を掻きたててしまっている。

 このまま合コンを続けてしまうのはヤバイ。早く何らかの口実を見つけてさっさと退散する必要がある。男子三人はアイコンタクトで互いの意志が一致していることを確認し、それを即座に実行に移すことにした。

 だが、リィン=マクガーデンとサシャ=ブラウスは如何なる逃亡も許さない。

 

「それじゃー次の王様ゲームいってみよーッ!」

 

「そろそろライナーとかジャンも命令を下されたい頃ですよね! というわけで、王様だーれだっ!」

 

『被害者の被害者による被害者のための復讐劇ッ!?』

 

 血涙を流しながらクジを差し出す二人に圧倒されてしまいそうになるが、ライナーたち三人はなんとかこの場から逃亡しようと必死に脱出路を探す。――だが、リィンとサシャが彼ら三人の行く手を阻むように陣取っているせいで、ネズミ一匹すら逃げられないような絶体絶命の空間が完成してしまっていた。

 もはやあと一回だけでも王様ゲームをしないと解放されない二人の鬼のような形相に全てを悟った三人は渋々といった風に腰を下ろし、深呼吸をしてからその場にいる全員で一気にくじを引き抜いた。

 

『王様だーれだっ!』

 

「……王様は、私」

 

 ミカサ=アッカーマン。

 先ほどの暴力事件を発生させた元凶であり、104期訓練兵の中で最強と謳われている狂戦士の再来だった。

 「は、腹が痛いから帰宅願いを」『させるかぁっ!』あまりにも非常識すぎる命令によって結果的には宙を舞って背中を殴打した経験があるエレンは腹痛を訴えることで逃亡を図るが、凄くイイ笑顔を浮かべる男子三人の活躍によりその場に組み伏せられてしまう。

 

「バカお前ら、なにしやがる! 服が破けちゃうだろうが!」

 

「服が破けようがなんだろうが関係ねぇんだよ! テメェには今から天罰が下るんだ、そう簡単に逃がすわけにはいかねぇなぁ!」

 

「っつーかそもそも、この意味不明なまでに理不尽な流れを作り出したのはお前だろーが! 最後まで責任取りやがれ!」

 

「俺とクリスタのイチャイチャを邪魔しやがって……今ここで殴り飛ばしてやってもいいんだが!?」

 

「ジャンとリィンはともかくライナーは完全なる私怨じゃねえか!」

 

 男三人に組み伏せられながらも必死に体を動かして逃亡を図るエレンだったが、完全に勝者と化したリィンが「さぁ王様、早くこの3番なる者に命令を!」といろんな意味でルール違反な言葉でミカサ=アッカーマンに懇願する。

 「オイ! 今のってルール違反なんじゃねえのか!?」「うっさいボケ!」これから自分を襲うことになるであろう悲劇を前にエレンはリィンを殴り飛ばしながら立とうとするが、ミカサはそんなエレンを阻むように命令を下す。

 

「3番は今夜、王様と一緒のベッドで寝なければならない。王様直々の命令だから――エレンに拒否権はない」

 

『…………異議なし!』

 

「いやだから、これもルール違反だろうがぁああああああああああああーッ!」

 

 次の日の朝。

 何故か誰一人言葉を発さないせいで意味不明な沈黙に包まれている男子寮に真っ白な灰と化したエレン=イェーガーが全身に痣と掠り傷を負った状態で帰ってくることになるのだが――それはまた、別のお話。

 





 次回もお楽しみに!
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