「破邪騎士宮奥義 八重極星《やつえきわみぼし》」
相手の怪人(超偵)は赤く染まった剣で切りかかってきた。
俺は回避の動作を試みたが、これは…?
足元が凍っている!?
いや、違う…足元だけではない。
足も凍ってきている。
いつの間に?
身動きができなくなっている俺の懐に奴の剣が突き刺さった。
―――――キィ―――――ン。
甲高い金属音が鳴り響く。
俺のわき腹に刺さるはずだった剣は俺の腹に刺さる寸前で見えない壁に停められているかのように動かない。
「《方向操作 反射》」
本来は方向を逆向きに操作して相手に返す技なんだが…お互い微動だしない。
それどころか…これは?
「赤く光っている?」
そう俺の体中が、全身緋色に光り輝いているんだ…。
これと同じ現象は過去にもあった…。
確か一年前の芝公園で…。
ズキン…。
なんだ…?
頭が…痛い。
な…なんだ。
満月の夜…赤い鉄塔…銃を構える少女…。
記憶が、次々とフラッシュバックしてきた…。
そうだ…あいつが持っている銃は…あの少女と同じなんだ…。
ドクン、ドクン…ズキン。
「痛っ!?
なんだこれ…・」
右の心臓も痛い。
赤い、緋色の光は右胸を中心に輝いている。
俺は造られたときから…生まれた時から心臓の位置が常人と間逆にある奇形児だが、今まで受けたことのない痛みを感じる。
「これは…共鳴!?」
相手の怪人の呟きが聞こえたが今は気にしている場合じゃない…。
相手の動きが僅かに止まった。
チャンスだ!!
俺は一度相手と距離をとるために反射で氷を砕き、瞬間移動《テレポート》で短距離ジャンプした。
そして左手にリボルバー式拳銃コルト・キングコブラ、右手にリボルバー式拳銃M40通称レモンスクイザー《レモン搾り器》(別名『センチニアル』)を握る。
コルト・キングコブラは357マグナム弾を使用、レモンスクイザーは38㎜口径の9㎜弾を使用する拳銃だ。
俺は左右の銃で狙いをつけ、怪人に向けて発砲した。
「偏向射撃 曲弾(カーブ)」
放たれた銃弾は軌道を大きく曲げて弧を描き怪人の右胸に直撃する。
「っ!?
これは…?」
お~驚いてる、驚いてる。
方向操作と重力操作、風圧操作も行い銃弾の軌道を途中で曲げた。
もう一発やっとくか…。
「偏向射撃 流れ弾(スライダー)」
放った銃弾は相手と見当違いの方向に飛んでいきそこから直角に90度曲がって相手の左胸に直撃した。
「ぐっ…」
苦痛の呻き声をあげる怪人だが倒れはしない。
「どうなってるんだ!?」
思わず呟いてしまった。
Side風間 蒼輝
事の始まりは1時間前…。
強襲科で訓練中の俺の携帯に一本の電話がかかってきた。
表示を見ると《ジャンヌ・ダルク》と出ている。
俺は周りを見渡し邪魔者(某体育教師)が不在の事を確認してから電話に出た。
『風間か?
緊急の要件がある!!
今すぐ音楽室にフォローミーだ!!』
それだけ言うとジャンヌは電話を切ってしまった。
なんなんだ!?
俺はわけもわからずジャンヌの元に向かった…。
「突然呼び出してスマナイ…だが、お前にとって免れざる者がこの学校に入ってきた。
ソイツは一年前まで伊・Uと《収集家》に所属していて私や桃…夾とも面識がある。
超能力者では超一流の扱いを受けている男だ…」
室内に入るなりそんなことを言ってきたジャンヌ。
「そいつと俺がどんな係わり合いがあるんだ?」
身に覚えがなかった俺はジャンヌにそう返すと…。
「何をいってるのだ?
お前の妹、未来に重症を与えた男だろ!?」
何のことだかわからなかった…。
ジャンヌが取り出した資料によると…。
一年前の夏、芝公園内で武偵と犯罪者集団の戦闘行為があり、当時まだ武偵高生ではなかった妹も何故か参戦し、G30の超偵と戦い重度の負傷をした。
プロの武偵に助けられて一命はとりとめたようだが容疑者は逃走…未解決事項として情報科に資料が残っていたらしい…。
「男の名は?」
俺は自分でも驚くくらいの低い声で、怒りの感情を殺せないくらい激怒していた。
「し、資料ならここ…だ…!!」
ジャンヌが思いっきりビクついて引いているが…今は周りの事はどうでもいい。
資料を受け取り情報を確認した後、俺は装備品の確認をするために自室に帰ろうとした。
運命の女神がいるとしたら―――――その神は――――――いたずら好きだろ?
俺にこんなメールを…このタイミングで送ってくるように導いているんだからな…。
『拝啓 風間 蒼輝様
お前の妹のことはよく覚えてる!!
まだ生きていたんだな?
近いうちに再殺しに行ってやるよ…それまで妹との別れをすませておけよ?
P・S
俺は誰の挑戦でも受ける!!
妹を殺られたくなければ、SSR棟に来い!!
来い、戦え!!
現武偵高生 夜星 朱弖羅《ヤボシ・ステラ》 』
―――――ブチィ。
俺の中で怒りのリミッターが解除された。
俺はSSRへと向かった…。
「破邪騎士宮奥義 八重極星《やつえきわみぼし》」
怒り任せに技を叩き込んだ!!
これは入った…と思ったが見えない壁みたいのに技を阻まれている…。
それどころか…これは?
伊・U戦の時に似た状況だ…。
「これは…共鳴!?」
そう、アリアや金次がおこしていたあの時と同じ現象がおきているんだ…。
「ぐっ…」
全身から朱色の光が溢れている…。
体中が痛い…。
痛みに堪えていると目の前にいた相手の姿が消えた?
これはまずい…と思ったときには遅かった。
「偏向射撃 曲弾(カーブ)」
放たれた銃弾は軌道を大きく曲げて弧を描き俺の右胸に直撃した。
だが…防弾、防刃製のシャープペンとボールペンを嘗めるなよ?
「…筆弾丸掴み《ゼロ・ペンズ》」
元従妹から貰った筆記用具で銃弾を鋏むようにして受け止めた。
衝撃は受けたが…倒れるようなものでもない。
相手の顔を見ると驚愕している。
そりゃそうだろ?
俺だって、相手の能力で弾が透過した時はおどろいたもん。
お互い様だ…。
「偏向射撃 流れ弾(スライダー)」
放った銃弾は俺の弾道予測と見当違いの方向に飛んでいきそこから直角に90度曲がって俺の左胸に直撃した。
だが…筆弾丸掴み《ゼロ・ペンズ》で受け止め、今度も倒れなかった。
…うん、俺ももう立派な超人になってきたな。
Sideステラ
どうなっている?
何故奴は倒れない?
「がふっ…」
口から勢いよく吐血した。
…まずいな。
もうもたない。
精神力もそうだが…体の方がヤバイ。
《活命制限》(ライフリミット)
反逆防止を目的に組織にある化合物を定期的に摂らないと死に至るようにされている為、あまり長く戦えないんだ。
次で終わらせないとな…。
「偏向射撃 追い弾〈シュート〉」
俺は射撃術で相手の気を逸らすためにあえて銃撃を続けた。
ちなみに技名があれなのは…趣味が野球観戦だからだ…。
「偏向射撃 落ち弾〈フォーク〉」
「偏向射撃 ブレ弾〈ナックル〉」
弾は不規則に変化して相手に襲いかかった。
連続技を繰り出し止めは…コイツだ…!!
俺は銃をしまうと最強の奥の手を出した…。
クラウチングスタートの構えから出すこの技は…。
「太陽爆発」《フレア》
超音速の突きと俺の持つ超能力の一つ『発電能力』と『発火能力』を組み合わせた回避不可の一撃だ。
「破邪騎士宮奥義 八重極星《やつえきわみぼし》」
相手は先ほどと同じ技を放ってきた。
「人工天才を…超能力人工天才を嘗めるなぁぁぁぁぁぁぁ―――――――」
「未来の借りは返す!!」
交錯する拳と剣―――――
ぶつかり合う『意地』と『想い』…。
それぞれの譲れないものが交錯し…そして…。
「もう終わりだな…ウル●ラ●ン?」
俺は止めを刺す為に方向操作で近づき相手の腹に蹴りを叩き込んだ。
あのあと相手は突然能力が切れた…。
おそらく精神力と体力が切れたんだろう…。
今回は俺の方に《武運》があったんだろう…。
「お前は弱くねぇ…ただ俺達人工天才より弱かった…それだけだ…」
またつっかかかれても面倒だったので、半殺し程度にしとこうとしたが…。
「そのへんにしとけよ?」
ジジィ――――――機械音が鳴り響き翡翠色のコートを羽織った男が現れた。
コイツは確か…?
「す…昴?」
まだ意識があった少年の呟きが聞こえた。
そうだ、さっき模擬戦で戦った相手だ。
名は確か…。
「星空 昴…だったか?」
そう確認をとると星空は…。
「今回の決闘の勝者は…夜星 朱弖羅《ヤボシ・ステラ》だ!!
蒼輝…今回はお前の負けだ!! 」
そういい風間に肩を貸してやり武偵病院へと連れて行った…。
俺は一人残されたがもう追う気力も体力もない。
それに奴らは…あの2人は危険だ。
なんとか勝ったがあのまま続けてたらと思うと…当分、死闘はごめんこうむりたい。
俺は教務課へ向かった。
Side???
数日後…。
とある一年の教室。
「インターンで転入してきた遠山 金女(かなめ)です、よろしくお願いします!!」