和田塚くんの純愛ロード   作:昼寝猫・

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善人たちがたれ流す害悪で最も大きいもの、それは彼らが『悪』というものをあまりに大きく重要視してしまうことにある。
                      ~オスカー・ワイルド~



和田塚真という男
朝の風景


「ふあ~」

 

 

 

 目が覚めると昨日のこともあり、眠かった俺はベッドで横になってダラケたまま思わずあくびをしてしまった。遮光カーテンの隙間から漏れる光が、眩しいが七時半を回ってはいないだろう。

 

 ほんの二ヶ月ちょっと前までは、規則正しく朝早くから(毎朝五時!)起きる必要があったわけだけれども、今はそんなことは全く無い。

 

 

 部屋を見渡せば、割と立派な部屋に散らかった細々としたものと、やたらと整頓された勉強机がある。遮光カーテンと本棚とベッド、押入れに机と椅子とカーペット(いい加減暑いのでそろそろしまう予定)。他には何も必要ない。

 

 

 起き上がると寝巻きを脱ぎ捨てて、制服を着てそのまま人気の無い一階に降りる。

 降りて、すぐ横のドアを開けた先にはリビングがある。白い壁紙に大型のテレビと、焦げ茶色のソファーが二つ。キッチンは引き戸を挟んで隣接しており、普段はめんどくさいので開けっ放しにしてある。

 

 キッチンには一通りの調理器具と設備、そして前に住んでいた人物が何を考えて買っていったのかはしらないが残していった業務用冷蔵、冷凍庫の二つ。冷蔵庫から残り物を取り出してオニギリにする。

 

 自分がずぼらなのがいけないのは分かっているが、正直スペースがいくらでもあると、どんどんモノが溜まっていって捨てる羽目になるので一人暮らしにこの大きさは勘弁して欲しい。

 その分一人暮らしにはミニ炊飯器が非常に便利だ。なんでもとは言わないが小さいものは良い。

 

 

 オニギリを三個ばかりかじりながらニュースを適当に流し、天気を確認しながらそんなアホなことを考えていると、そろそろ登校の時間になった。二階の部屋からカバンとセカンドバッグを取ってくると、何も言わずに鍵を閉めて家をでた。

 

 

 そう、何を隠そう俺は今、治安の良い住宅街に二階建ての庭と車庫(しかもガレージ!)付き一軒家で花の独身一人暮らしを満喫しているのだ!!

 

 

 

 

 元々俺は前の学校を卒業したあと、一年ほど色々と忙しくしていた。就職先は決まっていたし、非正規とはいえ給料も出ていたわけで、それなりに良い生活をさせてもらっていた。

 

 ここ1年は、一代でコングロマリット作って調子乗ってた九鬼の連中が、うちの市場を荒らそうとしていたのを叩きまくっていたので、結構忙しかったがそれも一段落ついた。

 

 

 基本的に九鬼というのは乗っ取って、引き抜いて、人材を独占して、身内でなあなあしている企業で、中世の封建制度みたいなところがある。タチの悪いことに、ソコら中に愛人作って火種作ったり、ひとりの幹部にいくつもいくつも仕事を放任して、権力を高めさせている。

 

 他にも、金に物を云わせていろいろゴリ押しする(いや、されるほうもそれなりに悪いけどね?)ところがあり、おまけにそのただでさえ強権の幹部が、他部署にまで口出しするのを黙認どころか推奨している節がある。

 

 その集大成が、ついこの間あった川神市でのクソ騒乱騒動だ。なんだかしらんが、偉人のクローンに日本を統治させるとかいう、九鬼幹部主導の騒乱だ。さすがに中国の偉人だから外患誘致だ、とまでは云わないが(いやまあ、中国の武装政治結社であるところの「梁山泊」しか呼ばなかったのは、かろうじて残っていた理性じゃないかと思っている)、本人たちの主張はいい加減にして欲しいものだった。

 

 

 多少気持ちはわからんでもないが、いつから日本はお前のものになったと問い詰めたくなった。

 

 ついでにいうと、俺も九鬼を市場から追い出すチャンス!と現地入りした、というかさせられた。

 

 騒乱罪、クローン禁止条約、破壊活動防止法、etc。あれだけテレビで大々的にやっておいて、案の定最終的には全部もみ消されたわけだが。

 

 それでもいかに日本人が世事に疎いとは言え、あんなことやるコングロマリットだが、シンジゲートだか区別つかん連中には、治安維持とか無理だ!という風潮は流れ、警備、ロボット、軍事産業等からは大きく嫌遠され、今ではカバーカンパニーで誤魔化すことすら九鬼にはできなくなった。

 

・・・まあもう1年経っているということもあり、完全に忘れ去っている連中がいるのも確かだし、藁にもすがる思いで融資を受けて乗っ取られている企業も存在している。

 

 

 別段人間的には相当ぶっ飛んだ連中だが、悪い奴らではなかったが、一々主張がカンに触るし・・・ざまぁと感じるくらいには、個人的に嫌いだった。うん、他意は無いよ?

 

 

 おかげでうちの会社も、本格的にダーティーな手段取る事もなく、すんなりいったのはよかった。かなりデカイ規模だが、株式上場してないという訳わかめな企業体質もあって、他の同業者より疲弊が少なく今のところ一人勝ち状態!

 

 その上ホワイトナイトを二、三社やった結果として、前より手がより長くなってなんていうか・・・うははは、笑いが止まらない。

 

 

 川神騒乱でボーナスも貰ったし、とても嬉しいというのが今の現状だ。色々不謹慎だが、九鬼サマサマである。

 

 

 あ、ちなみにこの件があまりに大きかったせいか、流石に肯定派だった総理も庇いきれなかったらしく、新たに企業犯罪対策班から独立して法務局の外局である「公安審査委員会」に「企業犯罪特別対策室強行犯係」が作られた。

 

 ・・・強行犯係ておまえ・・・。いわゆる警察の「二課」と揉めるかと思いきや、扱いは二課専属のSATのようなもの、むしろ「六機」と「一課特殊班」と揉めたそうだ。

 

 しかし九鬼関連以外この強行犯係暇だろ、とか思っていたがそうでもないようで、この機にやってしまえとばかりに日本で警備業務についている、アメリカの民間軍事企業のブラックウォーターやロシア、中国のエネルギー関連企業が割を食ったようだ。これは九鬼以上にざまあだ。

 

 

 

 この話は次の機会に置いておくとして、このときの功績もあって俺はいよいよ内定が確定したため、しばらく休暇を貰った。元々内定先に学力は全くと言って良いほど関係ないのだが・・・流石に最終学歴がアレ、というのも世間体が悪い。

 

 そういうこともあり、そんなものは気にすることない!とかたくなに主張する最高幹部(ただの実力で勝ち取った家族経営)連中に断固として駄々をこねまくった俺は、ボーナスと一緒に取り敢えず有給、無給合わせて三年ほど休暇をゆすり取ることに俺は成功した。社長は泣いていたが、俺の知ったことではない。

 

 

 正当な、権利として有給を獲得した俺は、どこか良いところはないかと叔父に相談したところ、叔父が卒業したという稲村学園を紹介されたわけだ。

 

 叔父曰く、「とても活気があって、面白い学校だから」との事だったが、まさしくといったところで、俺の会社の商売柄拠点としていた埼玉とは違い、本当に活気があって良い学園だった。うん。

 

 

 この一軒家も他人名義の叔父の持ち家で、たまに来る連中を手伝えばタダで使っていいと言われ、貸されたものだ。中身も、水道、ガス、電気周りとソファー、ベッド、カーテン、冷蔵庫、ラジオ、テレビ、机、椅子そして車以外なにも無かった。

 

 仕方がないので、段々と必要な物を増やしていっているが、なにせ全て一人で運ばなければならず、依然として完璧とは言い難い状況が続いている。タンスぐらい容易しておけと。

 

 

 

「おはようございます!!」

 

「はい、おはようさん」

 

「おはようございます!」

 

「おう、おはようヒロ坊」

 

 

 さて次はどんな家具を揃えようかなと考えていると、聞きなれた朝の挨拶が聞こえてきた。えーと、うん、そろそろ住宅街を抜けて海に出るから、センパイだろう。

 

 

 すぐに見つかった長谷センパイに声をかけると、おはよう、わだくんと返事が返って来る。

 

 この人は越してきて三ヶ月ちょいの俺の御近所さんで、姉と二人暮らしをしている長谷大センパイ。俺の1年センパイにあたる。

 

 年齢は同じなんだが、めんどくさいのでその事については話してはいないが、疎遠ということではなく、結構頻繁に一緒に遊ぶ程度には中々親しい付き合いをさせてもらっている。

 

 

「センパイ、そのワダってのどうにかなりません?苗字誤解されるからあんまし好きじゃないんですけど・・・?」

 

「あはは、ごめんごめん。和田塚くんて言うとほら、咄嗟のとき噛みそうになるじゃない?姉ちゃんも一回噛んで痛がってたことがあるからさ」

 

「いやいやいや、わざとッスよね?!言いにくいならマコトって呼んでください、ってなんども言ってるじゃないっすか!・・・ってか長谷センセが噛む所とか、想像出来ないんですけど」

 

 

 この人は人畜無害を体現したような人物ではあるが、タマにぶっ飛んだ事を平気で言ったり、やったりするところが面白い。しかし、あのなんでも出来そうな長谷先生が俺の名前で噛む・・・?ちょっと以上に、見てみたいぞそれは。

 

 

「いつもは人畜無害だが、タマに後輩をイジメて悦に入る、稲村学園二年一組、長谷大とそのイジメられて悦に入る友人の、稲村学園1年三組、和田塚真」

 

「うん、あれで姉ちゃん、失敗すること多いからね」

 

「ホントですか?あんまり想像出来ないんですけど?」

 

「ホントホント、マコリンはまだ見たことないんだっけ?そろそろだと思うよ?」

 

「うわ、うわ!なにその新しい呼び方!!サブイボ出てくるんで、やめてくださいよ!!」

 

「・・・スルースキルは二人とも高い、と」

 

 

 この無視に対して若干しょぼくれている人は、長谷センパイのクラスメートの坂東太郎、通称ヴァン先輩。

 

 

「おはよう、ヴァン」

 

「おはようッス、ヴァン先輩」

 

「おはよう、ヒロ、真」

 

 

 

 だいたい朝は、この三人で登校している。タマに委員長なる人物とも一緒になるので、四人になることもあるが、この三人が中々に面白い。

 

 この長谷センパイが近所づきあいで親しくしている事もあり、学校でも俺と親しく付き合っている。えらくほんわかとしたこのセンパイは、面倒見が良く、色々な人に紹介してくれたり、休日に街を案内してくれたりした。お裾わけを持ってきてくれたり、バイクの部品店を探すのに付き合ってくれたりする。

 

 

 ここまで来ると、逆に派閥のようなものへの取り込み(事実見ていると長谷センパイを起点とした人間関係が多いこと多いこと)を疑うべきなのだろうが、不思議な事に・・・俺の不良としての部分が、この人を信用するべきだと訴えかけてくる。

 

 これは俺の中では、相当におもしろい出来事だ。

 

 

 

 そしてヒロが言うなら、とあまり人付き合いの良くはないヴァン先輩も、俺とはそれなりに親しくしてくれている。

 

 

 イケメンの上に、文武両道を地で行くこの人も、中々に面白い性格をしている。融通がきかなくて面白みが無いように見えて、常に人のことを真摯に観察しているという謎の二重構造をしている。なんにでも全力投球で、この前も分からなかった中国語のフレーズのために、会話教室に乗り込んで聞き出してきたらしい。

 

 そんな学業バカかと思えばそうでもなく、始業式の始まる前の休みの間に知り合ったのだが、良くわからない基準で女性に恋に落ち、イタリア人もかくやという具合に恋愛劇を繰り広げ、そしてあっと言う間に冷めて元通りになっていた。ここだけ聞くと、訳が分からないかもしれないが、本当に訳が分からなくて面白い人だ。

 

 

 

「おはようございます!あ、このゴミ拾っておきますね?」

 

 

 色々と喋りながら歩いていると、長谷センパイが昼寝?をしている学生の周りのゴミを片付けていた。

 

 

「あ、手伝いますよ」

 

「いいよいいよ、俺が好きでやってることだしね」

 

「・・・サンキュ」

 

 

 俺たちがゴミをかたしていると、その女学生はボソリと一言だけ礼を言った。ん?しかしこの女、たまに見かけるけどどこか別の場所で見たような・・・。

 

 

「んだよ・・・。ジロジロ見てんじゃねえよ」

 

「あ、すいません」

 

 

 中々の迫力におもわずたじろいでしまったが、この女結構ヤるようだ・・・というかやっぱり、どこかで最近あったような・・・?

 

 

「とっとといこうヒロ、真。それほど時間に余裕があるわけでもない」

 

 

ヴァン先輩ナイスフォロー!

 

 

「じゃあ行きますね」

 

「すんませんした」

 

「・・・・・・おう」

 

 

 最低限の挨拶だけすますと、オレらはそそくさとその場を退散した。

 

 

 

 

「いや~中々の迫力でしたね~」

 

「あれ、委員長いつの間に!」

 

 

 少し離れて三人で一息ついていると、ふいに声がかかった。

 

 

「いえ、つい先ほど見かけたので、声をかけようと思ったのですが、ちょっと近寄り難かったもので」

 

「あれは結構怖かったっすね、タマにこの辺で見かけますけど、どんな人なんですかね?」

 

「やめておて真、あれも「よからず」の一人だろう。関わっていいことなど無い」

 

「一応挨拶はサンキュって言ってくれたし、悪い人ではなさそうなんだけどね~」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

 

 俺とヴァン先輩、委員長センパイは一様に皆押し黙る。

 

 

「み、みんなどうしたの?」

 

「・・・ヒロにかかれば、人類みな兄弟にでもなれそうだな」

 

「長谷君ですからね~」

 

 

 これだからこの先輩は面白い。

 

 

 しかし、委員長がかかわらずにすんで幸いだった、とイケメン発言をするヴァン先輩に若干イラッとしながら、なんとは無しに四人とも学校へと歩き出す。

 

 

「不良と言えばセンパイ、噂に聞いたんですけどセンパイ、辻堂センパイと・・・」

 

 

 話題は先程の女学生から、稲村の番長こと辻堂愛と長谷センパイがペアを組む羽目になった話にシフトしていった。

 

 なんにせよこのストレートの髪、きっちりと着込んだ制服にグルグル眼鏡の女性が委員長である。朝の通学で一緒になるメンバーの、最後のひとりだ。

 

 え、他に説明はって?わははは、君面白い事を言うね。委員長は委員長じゃないか。

 

 

「うむ、まさにそのとおりだぞ真」

 

「ええ!?心の中読まないでくださいよ!」

 

「どうしたんですか?」

 

「ほっといて良いと思うよ、委員長」

 

「?・・・はあ」

 

 

 その後も、よからずの事や、稲村の番長について話をしながら学園につくと、稲村の不良共が校門前に集まっていた。朝から嫌なものを見た、と不機嫌になるヴァン先輩を長谷センパイがなだめながら、学年の違う俺たちは下駄箱前で別れることになった。

 

 

「じゃあまた!」

 

「またッス」

 

 

 こうして、俺の稲村学園での一日が始まっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 別れる前に、礼をしていないことを思い出し、ヴァン先輩さっきは助かりましたと言うと、さきほどイラっとしたことに少し後悔した。

 

 

「なに、友達のためだ」

 

 

 とそう一言微笑みながら、そう返された・・・僕の友達は、心もエリートのようです。

 




 出来るだけ原作の会話は使わないようにするつもりなんですけどおかげでだいぶ尻切れな感じががが・・・。

 段々と直していきたいと思います。
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