和田塚くんの純愛ロード   作:昼寝猫・

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放課後

 

 

 

 辻堂愛の事が少し理解できた事に今日は割と満足した。

 

 その日は誰かと話すこともそこそこに、とっとと学校を出てしまう。別段、誰かと遊びたい気分でもないし家に帰ってバイクに乗って遠出でもしたい気分だ。

 

 しかし海道を行くならアメリカンのHonda Super Magnaで行きたいが、レストアから帰ってきていないから断念せざるおえない。

 

 別に今あるZeroDSでもスーパーカブでも良いような気がするかもしれないが・・・いくら塞いでるとはいえ、電気車両を潮風のなか長時間ドライブというのもイヤな感じがするし、ましてやカブで長時間は苦痛以外の何者でもない!

 

 痔になってもいいなら別だが、お勧めはしない。

 

 

 というかメット壊されたばっかじゃん!!・・・鬱だ。

 

 

 

 

 

~~天上天下、愛が独尊だね~~♪

 

 

 

 

 

 結局何をしようか考えながら歩いていると、不意に電話がかかってきた。

 

 

 

「お、誰からだ?・・・もしもし」

 

『あ、どもです』

 

 

 

 ちょっと待つが名乗らない、どうやら知り合いのようだ。

どっかで声聞いたことあるような気はするんだが・・・。

 

 

 

「ん?・・・・・・・・・ああ、梓か!」

 

『ひどいッス!!今素で自分の事わかんなかったッスね!?』

 

「ごめんごめん!ほら、電話だと若干声ってかわるじゃない?」

 

 

 

ほら、PHSなんかだとさ!俺はスマホだけど。

 

 

 

『・・・この前「俺の携帯は音質すげえんだぜ!」、とか言って自慢してましたよね?』

 

「・・・おお、声マネ結構うまいじゃん!」

 

『はぐらかしましたね?』

 

「かまけえこたあいいんだよ!!・・・で、何か用?」

 

『細かくないです~・・・ようってほどのモノでもないんですけど、真さん今日、明日って何か用事あります?』

 

 

 

 ん、なんだコイツからデートの誘い?なわけないな。

 

 

 

「特にないけど?」

 

『(・・・っち)・・・あ、そうなんすか~』

 

「・・・・・・」

 

 

 

 聞こえてないとか思ってんだろうな~。ということはなんだ、今日、明日あたり俺にこのあたりをうろつかれると困るということだろうか?こいつは江乃死魔にいるわけだから昼間は無いとして・・・夜か?

 

 

 

「なになに、デートにでも誘ってくれるの?」

 

『あはは、そんなわけないじゃないッスか!(でも本当に今回のは引っ掻き回されるとマズい、かといって引き留めるのにアズが抜けるのもマズい・・・八方ふさがりじゃねーッスか!!)』

 

「ふーん(なんか本格的にいてほしくなさそうだなおい)」

 

「じゃあデートじゃないけど、明日の昼間つきあってよ、家具選びたいんだけどお前なんだかんだで持ち物のセンスいいじゃない?手伝ってくんない?」

 

『アズがッスか?えー、ちょっとめんどうなんスけど(予定外だけど家具選びなら夜には解放されるだろうし配置で夜も忙しいハズ・・・ちょうどいい落としどころか?)』

 

 

 

 値段吊り上げようと交渉してきてるなこれは。あはは、さっきの舌打ちといいなんか勘違いしてるっぽいな。

 

 

 

「あはは、勘違いすんなよ。だれもお願いなんてしてねーんだよ」

 

 

 

 

 

      「明日昼間開けろって言ってんだよ、わかったか」

 

 

 

 

 

『・・・わ、分かったッス・・・。(怖ええッス!マジ怖ええッス!!ああ、なんでこんな人と知り合う羽目になっちゃったんスか!!)』

 

 

 

 そのすぐあとおびえた感じの梓は一言二言話すと、急いで通話を切ってきた。まあ、確かに出会い最悪に近かったからな~。

 

 普通に出会ってたなら、もう少し違う関係もありだったかもしれないが・・・今の関係も俺はすこぶる気に入ってる。

 

 

 一応今の会話で向こうの嫌がりそうな事もわかったし、様子見て嫌がらせするのも面白いかもな~。

 

 しかしだからと言って、家具選びがウソなわけではない。実際、家の家具は色々と足りないものが多い。機能だけで選ぶならそれでいいんだが、できれば家くらいリラックスできる空間を演出したい。

 

 俺のセンスで選んでも問題ないのだが・・・正直そこまでこだわる方でもないし、車両ならいざしらず小物とかのセンスに自信があるわけでもない。

 

 そこを行くと普段着などを見ていても、梓のセンスはなかなかのものだ。少々女物っぽくなるかもしれないが、その時は俺が微調整していけば問題ないだろう。ある意味、梓からの電話はタイミングがよかったかもしれないな。

 

 

 

 

 そんなことを考えながら歩いていると、家の近くまで帰ってきた。冷蔵庫の中身と食べたいものが合致しなかった俺は、近場の「孝行」で惣菜を買って行くことにした。

 

 

 

「いらっしゃ・・・っげ!」

 

 

 

 店先で売り子をしていたポニーテールの優しそうな店員が、こちらを見るとフリーズした。

 

 

 

「よう「総災天」!」

 

「ばか、やめろ!」

 

 

 

 売り子はあわてたように店先に出てきた。

 

 

 

「なんのようだ!」

 

「今日は客だよ。唐揚げくれ、100gな」

 

「なら客らしく来い!いちいち嫌がらせのような呼びかけをやめろ!」

 

「今ふと思ったんだけど「総災天」って「惣菜店」とかけてるの?」

 

 

 

 もしそうなら結構センスわるくね?と聞くと、無視すんじゃねえよ、俺がつけたんじゃねえよ!、と半分キレながら唐揚げをつつんでくれた。

 

 

 まったく、とかなんとかぶつくさ言いながらも追加の注文も慣れた手つきでくるんでくれているこの女性の名前は武田よい子という。

 

 

 初めてあったのは、数年前に叔父と一緒に湘南まで釣りに来たとき(駅前でエサ買って観光センター近くで)だった。

 

 なんでも当時のリーダーだった人が「湘南最強だぜベイベー!とか言ってみろ」、と無茶振りをしたらしく、けなげに「湘南BABYS」なるヤンキー集団を作って近場を暴れまわっていたそうだ。

 

 そのときに運悪く、湘南ベイビーズのうちの一人が十五センチほどのサメを釣ってバケツにいれ、初めて生でみたサメにはしゃぎながら歩いていた俺とぶつかりサメを海に落としてしまったのだ。

 

 いま考えると少々大人げなかったと思わなくもないが、まだ幼かった俺は盛大にキレた。後先考えずに50人からなるそのヤンキー集団に、バケツを持って突撃した。

 

 さすがに、真夏の海で初めての釣りをして体力を消耗していた体の出来きっていなかった当時の俺一人で50人はきつかっただろうが、相手に運の悪いことにその時は叔父もいた。

 

 文字通り、千切っては投げ千切っては投げの大立ち回りを演じた末に、全員を地に下し、そいつらにサメを釣るまで延々と魚を釣らせた。

 

 サメが釣れるまでに結構釣った雑魚はどうしようもないので、その場で油で揚げて全員で食った。なかなかに良い想いでだと・・・俺は思っているが向こうのことはしらない。

 

 俺はなんだかんだで楽しかったし、最後はビビりながらも連中も魚を食った後は夜の浜辺で花火をしながら一緒にはしゃいだ覚えがあるし、楽しかったんではないだろうか?楽しかったはずさ、うん。

 

 なんにしろ、湘南ベイビーズとはそれ以来の付き合いなので、個人的にはベイビーズはそんなに嫌いではない。

 

 

 

「そういえば調子はどうよ、現湘南ナンバーワンさん」

 

「だからやめろって!!」

 

 

 

 器用に小声でどなるよい子。家の人にはヤンキーやってることは内緒にしているので、気が気でない様子。まあだからこそ、からかうためにワザとやっているのだが。

 

 

 

「はあ、言っても無駄か。で、調子だったな・・・正直あんまりよくないな」

 

「あれ、結構弱気だね?」

 

「そうだな、湘南のトップとったときにちょっと気が抜けたっていうのもある。一応、リーダーの言ってたことをやってのけたわけだからな。しかしそれ以上に・・・」

 

 

 

 ・・・三大天の実力が抜きんでているのだろうな。

 

 

 

「わかってるなら言うなよ。マキ・・・腰越は単体で最恐だし、辻堂もはんぱじゃない。片瀬はそういった意味では二人には及ばないが、計算高さとカリスマがある」

 

 

 

 腰越とかいうやつのことは知らないが、辻堂はなかなかのものだ。まだ人間性自体はあまりよくは知らないが、一度そのケンカを見たことがある。あれはよい子程度に太刀打ちできるものではなかった。

 

 片瀬は俺の嫌いな感じではあるが、その実力はなかなかのものだ。梓を配下につけているという一点もすごいが、女手一人で百人近くを規律を守らせたうえでまとめ上げるというのは、かなりのやり手とみて間違いない。片瀬財閥の人間でなければ、うちの会社にスカウトしていただろうに・・・惜しい人材だ。

 

 そうとはわかっていたが、あえて色々突っ込んで聞いてみた。それは俺が意外によい子の湘南ベイビーズの事を気に入ってるのかもしれないし、あるいはそうでない理由からかもしれない。正直自分でもよくわかっていない。

 

 

 

「自分から負ける気なんてさらさらないが・・・これからは三大天の時代なのかもな」

 

 

 

 よい子・・・総災天のリョウはそう言うと悲しげに、しかし少し誇らしげにため息を一つ吐いて俺につり銭と品物を渡した。

 

 

 

 その後ろ姿に、俺はひとつの駆け抜けるような青春の終わりを感じた。

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