和田塚くんの純愛ロード   作:昼寝猫・

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そろそろテスト勉強とレポートで更新速度グッと落ちてます。
ちなみにもう一つやってる方が更新スピード早いのは文字数の関係です。話数は同じだけどこっちのが倍は文字数多い。
 にしても梓かわいいよ梓、なんでメインヒロイン枠じゃなかったんだろ?


ある日の出来事 Ⅰ

 翌日は当然学校をさぼった。

 

 

 成績は「まったく」悪くないので、たまにサボるくらい内申点が多少下がるくらいでどうという事は無い。

 

 稲村学園に入学してからも何度かサボったし、後遺症に対する病院の診察(もちろん真っ赤なデマだ!)があるのだと口裏を合わせてもらっている。だから正確には、さぼりにすらなっていない。病院も、うちの会社が懇意にしているところだから、診断書もフリーハンドで書いてもらえる。

 

 

 そんなこんなで、待ち合わせの十一時半に間に合うように家を出た。

 

 

 

 六月も終わりに近づいてきて、そろそろ最高気温が25度を超える。その割に夕方になると、ちょっと寒すぎないか?と言いたくなるくらい涼しくなる。一番中途半端な時期だと俺は思う。

 

 こんな時こそ、昼間は風を切ってバイクで出かけたい!が、家具買いに二人で行くわけだから、そんなわけにもいかない・・・。

 

 むろん、家具自体は宅配で送る。そのうえで日にちをずらし、だんだんと着くようにするから、運ぶ点は問題ないんだが(たぶん梓はこの点を忘れてるんじゃないかな~)・・・。

 梓はいつも通りの制服で来るだろうからケツに乗せられないのだ。

 

 車高が高いので、スカートでは横乗りでもZeroDSは危なくて乗れない。

 

 

 ああ、ちくしょうズボンにさせておくんだった!そうすりゃ、七浜まで行ってアウトレットの家具店に行って終わりだったのに・・・。

 

 

 ぶつぶつ言いながらも歩いていると、駅についた。

 

 この駅は海岸沿いにあるのだが、住宅地側は急な下り坂になっている。そのため、利用者はどうあっても坂を使わなければならない、めんどくさい場所なのだ!

 

 ホームは吹きさらしなので、景色、特に夕日に沈む江ノ島は最高かもしれない・・・のだが雨の日にちょっとでも風が吹くと最悪なことになる、台風の日なんて最悪なことになる、なんとも微妙な作りとなっている。ホームにいるのも最悪だが、電車通学なのに肝心の電車が動かない。

 オレ的には呆れるほどやってらんない駅なのだ!

 

 そして残念なことに稲村学園の最寄駅である・・・稲村学園、一人暮らしには厳しい学園である。

 

 

 あ、景色は良いかもしれないけど、電線を埋めてないから写真を撮るのにも向いていないかもしれない。やっぱり微妙だ。

 

 

 

「おまたせしました~」

 

 

 

 しばらくボケっと海を見ていると、梓がやってきた。

 

 

 

「おう」

 

「相変わらず、時間五分前にはぴったしッスね、真さん」

 

「まあな」

 

 

 

 携帯が普及しだしてから、私生活で平気で遅れてくる人間が多くなった。俺はそういうのは気に食わないタイプだ。

 一分一秒にごちゃごちゃ言う「日本人らしさ」も大概アホ臭いと思うが、いつもいつも一時間くらい平気で遅れてくるような奴は、殴られても仕方ないとは思う。

 

 そんな俺だから、梓も遅刻してこない。

 

 

 

「というかやっぱり制服か。梓オマエな~・・・せめて私服で来いよ」

 

「しょうがないじゃないッスか~、夕方は江乃死魔の集まりあるから私服じゃダメなんッスよ!というか陸上王国由比ヶ浜の制服ッスよ?着て来て気に入らないの、誠さんが初めてッスよ!かわいいからいいとか思わないんすか!?」

 

「・・・めんどくせーやつだな」

 

「酷いッス!!」

 

 

 

 俺は当然、私服で来ている。

 

 上等なフレンチリネンを使った、グレーブルーのVネックの七分袖ニット。タンカラーの夏用カーゴを少し裾をまくって、黒のスニーカーソックスと、ちょっとごつい感じのする茶色いアクティブな革靴。右手首の内側に文字盤が来るように巻いた、全体的に黒で文字盤に数字のないシックな腕時計。ネックレスは、うっとおしいのでつけないことにしている。やはり着るからには着心地の良いものが着たい。ボーナス入ったんだし。

 

 全体的に、ちょっと早めに夏を意識したコーデで、克着やすさも考えている今風カジュアルといったところだろうか?ちょっと色づけに、愛用しているMolleポーチをごつい軍用ベルトを肩紐代わりにしてバッグのように使っている。

 

 

 なぜ私服が当然なのかというと、俺の制服がドノーマルだからだ。

 

 改造制服でもないやつが、昼間から出歩いていればどうなるか。

 それほどスレていない日本のお巡りさんが「やあどこ行くの?ちょっとお茶でもおごってあげよう!」と、日本では少ないモノホンの拳銃が合法的に見れる場所へご招待してくれることは想像に難くないだろう。

 好き好んで、そんなところへ行きたがるやつは、そうはないだろう。少なくとも俺は喜ばない。

 

 あと、時計が利き腕の女性巻きなのは防衛上の問題だ。

 

 

 

「しかし真さん、服のセンス悪くないですよね~、落ち着いた感じはしますけど」

 

 

 

 そして今のコーデだと、シックな感じに落ち着いているから、高校生には見られない。大学生が昼間から外をうろついていても、よほど怪しくなければまず補導を受けることはない。

 

 

 

「一緒に歩いてるの見られると、結構評判いいんですよ?」

 

 

 

 当たり前だろうが!そっちは狙ってやってんだよ!!

 

 

 ・・・もう一つ、俺が私服でそれなりに着飾っている理由がこいつだ。

 

 

 梓は見た目がいい。そして俺はそうでもない。

 

 

 あまりにもパッとしない恰好をしていると、ナンパしてくるやつがいるのだ!

 

 気持ちはわかる。湘南は割と開放的な空気を持つ土地であるし、そこが気に入ってるんだが・・・解放感ゆえにナンパ師のようなやつも多い。

 

 そこにいい女をつれた冴えない男がいれば、いっちょ追い払って自分が良い目を見よう!そんな事を考える奴が比較的このあたりには多いのだ、特に夏間近になってくるほどに・・・いや、割と年中いるか・・・。

 

 なんにせよ、そういう輩は、少し人気のないところで「お話し」をすればすぐに相互理解を深める事はできる。しかし、そういう阿呆にいちいち絡まれて、時間を浪費するのは御免こうむりたい。

 

 結果、それなりに私服にも気を使う羽目になったのだ。

 

 

 本音を言えば、もっとミリタリーな感じの方が好みだ。しかしそれだとオタクっぽくみえたり、違う意味でおまわりさんに目をつけられたり(美少女+ミリオタ=犯罪臭しかしない)するので、こいつと出かける際は極力カジュアルなコーデを心がけている。

 

 

 

「それで、真さんは今日は何買うんですか?」

 

「今日は食器、テーブル、椅子、座布団、客用のベッドとかが買いたいんだよ」

 

「ああ、この前お邪魔した時紙コップに紙皿しか無かったですもんね・・・さすがにあれはアズもどん引いたッス」

 

 

 

 箸すらコンビニの割り箸でしたもんね、と呆れたまなざしでこっちを見る梓。

 

 

 仕方ないだろ、一人じゃ食器類は買いにくいんだよ!

 

 地味に嵩張るし、収納考えなきゃいけないのもダルい。かと言って無いと困るが、料理を自分でしないならすぐに必要なわけでもない。

 

 いずれ困るのは分かってるが、そのめんどくささ故に、なんとなくずるずると買いに行くのが遅れてしまう。結果、うちではいまだに紙コップと紙皿が使われている。

 

 極論を言ってしまえば、割り箸一本あればいいような・・・いや、それは日本人としてどうなんだろうか・・・?

 

 

 

「まあ、割とセンス問われますからね~」

 

「俺としては、割れないから収納性の良さそうな、シリコン食器とか良い気がするんだがな。カラフルでお洒落だけど、この前登山用品店でも見かけたし、信頼性も高いんじゃないか?」

 

「・・・・・・」

 

 

 

 通販番組なんかを見ると、電子レンジにも入れられるし、便利だと個人的には思う。

 実家で皿を電子レンジにかけたときに、バチバチと鳴りだしたときは本当に焦った。金属製品がダメなことくらい知っていたが、陶磁器の金属彩色がダメだなんて普通考慮しないだろう!!

 

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 

 

 ・・・ふと梓が黙り込んでいる事に気が付く。

 

 オマエはどう思うんだと隣を目線をやると、呆れとそして何とも言えない冷たい眼差しで、梓がこっちを見ていた。

 

 さ、さっきの呆れた目より視線が酷くなってやがる・・・だと!え、さっきは服装センス結構ほめられた気がしたんだけど・・・?

 

 なぜそんな目をされているのか、さっぱりわからない。

 俺が、若干焦りながら言葉を探していると「ハァ・・・」と諦めたようにため息をされてしまった。

 

 

「・・・よし、そういうことならこのアズにお任せッス!!」

 

「ど、どうした急に」

 

「真さんにセンスのかけらも無いってことが判明したので、アズがすべて決めます」

 

「かけらも・・・?!し、シリコン食器の何が悪いんだよ!」

 

 

 

 ほんとに判らないの?このグズ。

 

 そんな言葉にされていない意思を、俺は視線から感じ取った。いつもの俺にビビっていた雰囲気が、今の梓からは微塵も感じられない。

 

 

 

「言っておきますが、真さんみたいな人にシリコン食器は無理です」

 

 

 

 食器が問題なんじゃなくて、俺が問題なのか!?

 

 そう突っ込むと、嘲るように鼻で笑われた。

 

 

 

「もう一度言わないとダメッスか?シリコン食器みたいにカラフルで、お洒落な食器は真さんには不可能です」

 

「・・・」

 

「ああいうのはもっと、今風でカジュアルなタイプの、もっとマメな人用です。間違ってもバイクを複数台持っていて、車庫にはオイルピットまで自作し、たまに会うときエンジンオイル臭かったり、その同じ車庫にサンドバッグやら得体のしれない工作台やらを所せましと置いているような、チャラさのかけらも無い、汗臭い人用ではありません。」

 

 「あ、汗臭い・・・」

 

 

 梓の口撃が止まらない。

 

 

「あれは意外と干す時に気を使うもので、生乾きでも折りたたんで適当にほっぽっときそうな真さんでは即ダメにします。断言しても良い」

 

「・・・・・・」

 

 

 

 なんか口調が・・・あれが奴の素か・・・?

 

 

 

「じゃあとっとと行きましょうか?」

 

「・・・はい」

 

 

 

 そんなことは(たぶんきっと)しないし、車庫にピットとか設置してあることのどこが悪いんだ!そう思いながらも何故かなにも言い返せなかった。

 

 




 意外と気の置けない関係

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