今回はサイコロ賭博事件編です。
これ調べていく内にこの時既にアルジュナさんがパーンダヴァ兄弟から一時離脱しているらしい、と知り個人的に驚きました。
アルジュナさんが追放されるのは別の理由からなんですね(知らなかったなぁ)ので、この場面に彼は出ません。
オリ主視点。今回は珍しく糖分なしです。さっぱり風味。短いです。
――主人公side――
あれから戦車の操作もなんとか形になり、ようやく御者になってもいい及第点をドゥルヨーダナさんにもらえた私です。
カルナさんともあれから喧嘩もなく、邪神様の力の制御というか練習を見てもらえるまでになった。あの大剣、物理ダメージも出来るんですね。近場の岩を一刀両断して、カルナさんに滅茶苦茶心配されてしまった。身体の負担的な意味で。
勿論ノーリスクとはいかず、長時間の使用をしていると胸というか心臓辺りに痛みが出てしまうようだった。痛みと言っても死にそうになる程の激痛ではないので、私の中では許容範囲内だ。カルナさんには渋い顔をされてしまったけれど、なんとか私は言葉を重ねて押し切った。
それはともかく。
最近ドゥルヨーダナさんの機嫌が凄く悪い。カルナさんに理由を聞いてみたところ、どうやらアルジュナさんのお兄さんのユディシュティラさんが治める都の発展の凄まじさをこの前知ってしまったらしいとの事。それにしても名前言いづらいな、と私は思ってしまった。
何故そんな目の敵にしているのか?ドゥルヨーダナさん曰く、
「何故?ふん、次期王位の継承問題もあるがそれ以上に気に食わぬ。皆が奴ら側をはやしたて、良いように言うが余に言わせれば失笑ものよ」
とぎりぎり恨めしそうに吐き捨てられた。おっと、これは相当深い因縁があるようだった、私はドゥルヨーダナさんの視線の鋭さにたじろぐ。カルナさんはそんな様子を見ても平然としていた。鋼メンタルかな?カルナさんは。
「それにあいつらには煮え湯を飲まされもしたからな。余はやられるばかりは性に合わぬ。目に物を見せてくれようぞ」
ドゥルヨーダナさんはそう言って、悪役張りに凄味のある嘲笑を浮かべた。綺麗な顔をしている分、迫力が凄いと私は震えた。
ドゥルヨーダナさんは、今宵宴を開くそうだ。その中での余興でサイコロ賭博をするようで、ゲストのユディシュティラさんとドゥルヨーダナさんの伯父さんが賭け事をやる予定なのだそうだ。
なんでもその伯父さんが賭け事が得意で滅多な事では負けないそうだ。
一波乱ありそうだ、と私は今の内に心の準備をするのだった。
念の為にカルナさんに心構え的なものを聞いておこうか。なんかこういう王族が参加する催しって作法的なものがあるだろうし。
宴は順調に進み、問題のサイコロ賭博へと事が進んだ。ちなみにドゥルヨーダナさんのユディシュティラさんをのせる時の口車の上手さは詐欺師並みだった。何あれ怖い。
そして彼らの中にアルジュナさんの姿がなかったので、カルナさんに聞いてみたところ、アルジュナさんが追放された件を知って驚愕してしまった。な、なにがあったと言うのだ、と慄く私にカルナさんが追い打ちをかけてきた。本人は正直に言っただけだろうけれど。
曰く、ドラウパディー姫絡みのトラブルがあったのだとか。詳しくはぼかされてしまったけれど、義務との天秤にかけた結果、そう至ってしまったそうな。どういう事なの……と私は頭を抱える結果になったのだけど。それを超える衝撃があったので疑問が喉の方に引っ込んだ。え、兄弟共通の妻?ドラウパディー姫が?と驚愕の事実を知った私はふらついてしまった。
カルナさんはむしろ知らなかったのか?と首を傾げていた。私は原典マハーバーラタについての知識が深いわけでもない。カルナさんの呪いだって思い出すのがやっとだったんだ。細かい事など忘却の彼方だった。え、トラブルってそういう……?と私は頭が痛くなってきた。
なんて私達が茶番をやっていると、賭け事の方は大分事が進んでいるようだった。外野の人達の囁きあう内容によると、どうやらドゥルヨーダナさん陣営が勝っているようだった。所有地、財宝、財産殆どに至るまで全部巻き上げているだって?と私は耳を疑った。ドゥルヨーダナさん容赦ない……、と私はカルナさんの腕を掴み震えていた。カルナさんは頓着していない様子だったけれど。
「どうした?それで終いか。不甲斐ない」
ドゥルヨーダナさんの顔が完全に悪役な件。上品な美形さんという見た目の印象が台無しだった。けれど流石に様になっている辺りドゥルヨーダナさんらしいなと私は思ってしまう。
ドゥルヨーダナさんが嘲笑を浮かべた。あ、めっちゃ生き生きしていると流れを見守っている私にも理解できてしまうくらいだった。ユディシュティラさんを煽る煽る。
ユディシュティラさんは悔し気に顔を歪めた。
「ふふ、賭けるものがなくて悔しいか?しかし、そなたにまだ財と呼べるものが残っておろう?」
「何を言っているのですか?」
「なぁ、美しいものは何においても財になるとは思わんか?」
「!? 貴様……!」
「さぁ、どうする?――幸い、余たちは寛大であるぞ。賭けてくれるのであれば、勝った暁に全てを返還してやってもいいだろう。なんなら上乗せをしてやっても良いのだぞ?」
余裕の笑みで悠然と構えるドゥルヨーダナさんの態度にユディシュティラさんは悔し気に目を伏せ、数拍後決意した顔で頷いた。
「いいでしょう。その賭けにのります」
賭けはドゥルヨーダナさん陣営に軍配が上がった。勝ったドゥルヨーダナさんの高笑いがこの場を支配する。そして賭けの対象となったドラウパディー姫を近くに控えていた兵士に連れてくるようにドゥルヨーダナさんは命令していた。
「ハッハッハ!! よいよい、そのままその女をこちらへ引きずって連れてこい」
ブワッとこちらを視線で殺さん勢いで睨むあちら側にドゥルヨーダナさんは余裕の高笑いを絶やさない。もうあれ、嘲笑なんじゃと思わないでもない。
ドラウパディー姫はやっぱり絶世の美女と相応しい、褐色の肌に美しい黒髪の色香に富んだ女性だった。凄いナイスバディ、と自分との格差に私はひっそりと悲しむ。
「手放すとは、愚かな男だな。つくづく救いがたい者達だ」
ポツリと静かなその声はこの場に通った。カルナさんの声はこの場を静まり返らせる威力を含んでいた。私はぎょっとして隣のカルナさんを仰ぎ見る。ちょっ、カルナさーん!? と私の心の中は大混乱だ。
「オレには理解出来ない行いだ。――ああ、オレとは違いソレは唯一ではなかったか」
うわぁ、カルナさんいつの間にそんな煽りスキルを身に着けたのか。冷然としたその態度は相手を見下しているかのような錯覚に陥る事だろう。
案の定、ユディシュティラさん陣営の視線はカルナさんに向いている。先程よりも鋭い殺気だった。私の背中まで寒くなる勢いだ。
「ドゥルヨーダナ」
「ん?どうした、カルナよ」
「そろそろやめた方がいいだろう。その女もそちらへ返してやれ」
カルナさんの進言にドゥルヨーダナさんの片眉がピクリと動いた。気に食わなそうな、面白くなさそうなそんな顔だった。
「何故か聞いても良いか。余の気持ちに水を差すに値する言い分があるのだろう?」
ヒヤリとしたドゥルヨーダナさんの視線にカルナさんは少しも動じない。
「その女はオレ達の益になり得ない。故に不要だ」
「ブッフ、フハハハハ!! 不要、要らぬときたか!」
カルナさんの切り捨てる言葉にドゥルヨーダナさんはふきだし腹を抱えて爆笑した。ユディシュティラさん達の殺気が止まるところを知らないんですけど。あれその内爆発とかしない?ねぇという私の心配をよそにドゥルヨーダナさんは楽し気に膝を叩いた。
「そうさな、その方が屈辱か。――おい、カルナの慈悲に感謝せよ。この女だけは返してやろうぞ」
ポツリと思案した後、ドゥルヨーダナさんはユディシュティラさん達に言い放った。ヤバい、あっち陣営歯ぎしりまで聞こえそうな勢いなんですけど。
解放されたドラウパディー姫は目を伏せ、それでもユディシュティラさん達の方へと駆けていった。それで多少は彼らの殺気は収まった。やっぱり奥さんは大事だよね、と私はしみじみと頷く。
これで一件落着かな、と胸をなでおろす私はドゥルヨーダナさんの一言で再び固まってしまった。
「ああ、そなたたちはこの地を出よ。余は優しいな、命をとらぬのだから。――追放を言い渡す、反論は許さん」
追放?鬼畜かな?と思った私は多分悪くない。
しかも十年単位とか恨まれる奴じゃないですか、と私は思わず遠い目をしてしまった。
――明かされた衝撃の事実!! 的な感じで主人公はドラウパディー姫が兄弟共通の妻である事を知りませんでした。対外的には主人公は少年の姿をしていて皆そういう話はふらなかったという裏話。幼げな印象の子にはこういう話は聞かせられないよね、ていう。個人的にカルナさんはそういう事に頓着しなさそうなイメージです。 他人事以上でも以下でもない、とバッサリしそうですよね。
※ユディシュティラさんとは――パーンダヴァ五兄弟の長兄であり、ドゥルヨーダナさんの敵となる人です。対抗馬的な感じで王位継承について争う事となります。ドゥルヨーダナさんが暴君ならば、ユディシュティラさんは聡明で公平な王様的な感じで周囲に扱われています。
アルジュナさん追放は調べて頂くと出てきます。ぐーぐる先生に聞いてね!
ところで、やっぱりこの小説に注意書きは必要でしょうか?
マハーバーラタで好き勝手書いちゃっている自覚があるだけに必要な気がしてきました。ので、後日設置したいと思います。