長いので前後編と分けさせてもらいます。それにしてもここで初めてルビ編集が出来るんだと知った私の衝撃と言ったら……!やっぱり説明書は読むべきですよね!
後半は明日更新出来ればと思ってます。
注意事項
戦闘描写ありです。なので暴力的表現、流血表現の注意です。
視点はカルナさん視点と主人公視点に分かれます。
更にクリシュナさんにねつ造あります。注意。
戦闘描写は得意じゃないので作者心配でドキドキです。精進します。
3/25 追記:アルジュナさんの武器に関して間違いが指摘されたので修正させてください。インドラ神からではなく正しくはアグニ神からの贈り物でした。
そしてクリシュナさんの不戦の誓いに関しても指摘されたのでこちらも修正させていただきます。クリシュナさんの攻撃描写を削除、加えて彼の力の描写の変更です。光の輪が攻撃手段ではなく、守護のバリア的なものに変更。カルナさんを攻撃するのはアルジュナさんに変更。
ですが大筋は変わらないのでそこは安心してください。ご指摘ありがとうございました。
――主人公side――
アルジュナさんは強敵だ。何故なら彼は授かりの英雄。今現在彼の手には破壊神シヴァの力と炎神アグニから貰った神弓ガーンディーヴァがある。その他にも神器と呼ぶべき彼の父のインドラさんから賜った宝具があるのだから凄く強い。勿論これらを賜ったのはアルジュナさんの努力の結果だからとやかく言うつもりはない。まぁこれらの情報は人づてに聞いた結果なのだけど。
けど強敵には変わりない訳でして。加えてアルジュナさんの親友のクリシュナさんもなんだっけ、ヴィシュヌ神の化身とかで凄い宝具とか使えるので油断ならない。
比べてカルナさんと言えば、最強の防具の黄金の鎧は消え、代わりに一度しか使えないインドラさんから貰った神槍のみだ。一度しか使えないのは必殺技がというだけで、普通に武器として使うのは問題ないそうだ。
カルナさん、耐久力が著しく落ちてしまったので私はとても心配なのだ。だってカルナさんの戦い方は無茶を平気で通すものだったから。自分の安全は二の次三の次で回避よりも攻撃重視なのは否めない。今までは防御力マックスの黄金の鎧があったからなんとかなっていたけれど、これからはそうはいかないのだ。
アルジュナさんとの対決は思ったよりも早くに訪れた。見渡す限りの乾いた大地、点在する小高い丘、大地が割れ、断崖絶壁となっている場所。これらがあるとは言え、おおよそ見通しはいいだろうという場所だった。
私が戦車を操り、カルナさんが相乗りをする形で、随時私がフォローをしていくという作戦だ。相手側の陣営での主力はアルジュナさんだ。しかも相手になるのはカルナさんしかいない。ので、カルナさんがアルジュナさんを相手取るのは前から決まっていた。
恐れるべきはアルジュナさんの弓矢による奇襲だ。故に私たちはあえて目立つように見晴らしの良いところで戦車を走らせていた。これならば必ずアルジュナさんが攻撃をかけてくると分かっていた。勿論、他の皆さんに決して追いつかれる事のないように私の宝具で戦車を強化し、爆走したうえで。
時速およそ六十キロは確実に過ぎていた。砂埃をたてながらの爆走は中々気持ちの良いものだなぁと我ながらの戦車の邪悪さに目を逸らした。と、カルナさんが神槍を構える。
アルジュナさんの一矢がカルナさんに迫り、カルナさんが神槍で振り払う。
散る蒼い光に私はついに時が来たことを悟った。すぐに矢が来た方向へ戦車を方向転換させ、そちらへと戦車を向かわせる。
見れば、アルジュナさんが少しカルナさんの姿を見て目を見開いていた。アルジュナさん達を分断させるべく、カルナさんは行ってくると言葉少なに跳躍した。
凡人離れした恐るべき跳躍をしたカルナさんはアルジュナさん達の戦車にインドラの神槍を振り下ろした。
あの身の丈を超える槍だ、ただの武器として行使するだけで抜群の破壊力を誇る。アルジュナさんがすぐさま神弓で受け止め、弾く。たったそれだけの動作でこちらへと衝撃波が来るくらい凄まじい衝突だった。
「貴様、その格好はどう言った事だ?」
「……?ああ、そう言う事か。貴様が気にするべき事ではない。こちらを気にする前に疎かになっている手元を見る事だ」
「ッ!! カルナ、貴様ッ!」
アルジュナさんの問いにカルナさんは一瞬目を細めた後淡々と言い放つ。アルジュナさんの弓を槍で上へと受け流し、アルジュナさんの体勢を崩す。恐らくアルジュナさんはカルナさんの黄金の鎧云々を知らないのだろう。多分。
「!? しまった……ッ!」
「呆気ない終わりだが、許せ。ここで終いとしよう」
アルジュナさんの崩した体勢をカルナさんは槍を振り下ろして止めとしようとした。
クリシュナさんがいち早く反応した。少し離れた位置にいた彼はカッと光を纏う。やばいあれ宝具だ。私はすぐさまやめさせるように戦車から飛び出す。
「それはさせませんよ」
いやに冷静な声だった。クリシュナさんは短い詠唱の言葉の後、光の輪を右手に展開させ、投げる。それはまさしく光速の速さ。間に合わない、と私は時が止まるのを感じた。
ビュンッと鋭い風切り音をたて、光の輪は目に見えない速さでアルジュナさんに向かう。何をとこちらが戸惑う暇もなく、アルジュナさんに振り下ろしたカルナさんの神槍が弾かれた。
まるで不可視のバリアがアルジュナさんを護ったかのようだった。
神槍が大きく弾かれ、カルナさんは予想外の力に身体が後ろに傾く。アルジュナさんがその時を見逃さず、矢を放つ。炎神の矢は無防備となったカルナさんの胸元を貫く。
一秒に満たない時間だった。ドバッとカルナさんの胸元から鮮血が飛び散る。カルナさんの低い呻き声が聞こえ、彼の身体が崩れ落ちる。
私はあまりの事に呆然としてしまった。すぐにカルナさんの黄金の鎧がない事を思い出す。ああ、このままではカルナさんが死んでしまう。
「アルジュナ、今です。カルナの首を落としてしまいましょう」
『!?』
頭上、戦車の上からの言葉に私は思わず見上げた。静かな、穏やかな声でクリシュナさんはアルジュナさんに促す。アルジュナさんはその言葉に目を見開いた。
「な、何を言っているのですか。クリシュナ、正気ですか?」
「ええ、限りなく本気ですとも。カルナを生かしておくのはパーンダヴァの後々の脅威となり得ますからね」
私は邪神の漆黒の大剣をギリッと握る。
まだ諦めてはいけない。私はバッと自分の戦車に飛び乗り、宝具で強化した。ブワッと膨らむ黒いもやにクリシュナさんは目を丸くした。
全速力を意識し、アルジュナさんとカルナさんの間に戦車を滑り込ませる。通り過ぎる寸前、私は戦車から、地面ギリギリまで身を乗り出しカルナさんを引っ張り上げた。
火事場の馬鹿力なのか、カルナさんを回収する事が出来た。このまま、一旦体制を整えるために戦略撤退だ。私は戦車を全速力で飛ばし、戦線を離脱に集中する。
苦し気にカルナさんは眉をしかめていた。服がもはや血濡れで染まっていない所がないぐらいに怪我が酷い。一目で見て致命傷と分かるくらいだ。カルナさんの傷に障らないように私は戦車を少し浮かせる。
アルジュナさん達の姿が見えなくなった頃、戦車の背もたれに身体を預けていたカルナさんが身を起こした。
『か、カルナさん。まだ起きちゃだめですよ』
「――くっ、すまない。オレが油断をしたばかりに」
『大丈夫ですよ、カルナさん。私こそクリシュナさんを止められなくて』
「謝るな。お前に不足などない」
『……ありがとう、カルナさん。カルナさんも謝らないでくださいよ、ああくるなんて誰も予想できないですよ』
「――ああ」
『カルナさん、こっちに手を出してください』
「うん?」
首を傾げつつこちらへとカルナさんは手を差し出した。私はカルナさんの差し出された手を握る。戦車を操る片手間で申し訳ないけれど傷を癒しておこうと思ったのだ。
淡い光が私の手に宿り、ぶわりとカルナさんの全身にわたる。きっかり五秒でカルナさんの傷が治癒する。
カルナさんの身体がぐらりと傾く。
「――ッ?! なんだ、この目眩は……」
『……ごめんね、カルナさん』
カルナさんの身体を抱きとめて、私は小さな声で謝る。カルナさんの意識が失われる寸前、信じられないそんな瞳でこちらを見た。裏切られてしまったかのような。
私は胸が裂けそうな痛みを感じた。宝具で無理を通したあの心臓が砕ける激痛よりもよっぽど痛みがあった。
戦車を私は走らせる。カルナさんは怪我が完全に治癒しているとはいえ、体の一部だった黄金の鎧を失って本調子の筈がなく。私はカルナさんに邪神の力で眠ってもらったのだ。治療するついでに、カルナさんはもうしばらく眠ったままだろう。カルナさんは戦車の背もたれに体を預けて寝入っていた。
このままではカルナさんが死んでしまうだろう、けれどそれをむざむざと許す私ではない。
ああ、胸が痛い。どくどくと鼓動がうるさく、限界が近い事を私に知らせてくる。でもけれどもそれでも抗うのだ。
『“この手が掴むは原罪の端、形を変えよ”』
私は漆黒の大剣を変形させて大きな弓矢へと変化させた。戦車を走らせながら矢をつがえ、弓を構える。
私の直感、五感はかつてない程冴えわたっていた。危機故か、それとも邪神様の加護かは知らないけれど、今は細かい事はどうでも良かった。
私の直感は告げる。
もうすぐアルジュナさんの必殺の一矢が来る、と。
目には目を歯には歯を、そして神の一矢には同じく神の矢が相応しい。
小高くなっている丘の上からキラリと蒼く光るモノが迫る。私は今だと矢を放った。
蒼い光を帯びた矢が四散する。私の矢で相殺したのだ。
これでアルジュナさんが気づくと良い。
私はそのまま戦車を急がせた。一先ずこの場を一旦離れなくては。
離れて、一先ずの危機は去った事を確認してから私は戦車を止めた。深く眠るカルナさんの傍に行く。
ふと邪神様から言われた事を思い出す。私は傲慢だと言うその事を。その傲慢の対価を覚悟せよと。ああ、認めよう。私は傲慢だ、諦めきれないその業を。
カルナさんの傍で私は膝をついて、カルナさんの胸元に右手を添える。
『“我が全てを汝に差し出そう、我が心臓は汝の為に”』
どくりと心臓が大きく拍動する。傍に置いてあった漆黒の大剣がスウッと空気に溶ける。カルナさんの身体へと吸い込まれて消えた。
『“故にこれは神の
不可視の鎧よ、彼を護れ。と私は締めくくった。この宝具というか邪神の力は意外と使い勝手が良い。これは形があってないようなものだ。負担を度外視すればどんな使い方だって出来る。
カルナさんは達人級というか、武の頂点まで至ったのは知っている。けれど、普段の癖というものはどうしたって出てしまうものだ。カルナさんは自分の人生の大半をあの黄金の鎧と共に過ごしてきた。つまりカルナさんは今体の一部を失ったも同然。誰だっていきなり手足や目や耳を欠損したら戦いにくくなるだろう?それと一緒だ。
だから私は代わりを用意した。正直、無理を通すどころじゃないけれどまぁカルナさんが無事ならそれでいいかなぁと思えてしまう訳でして。
ああ、これだから私は傲慢って言われてしまうんだ。
『カルナさん……。怒るかなぁ……』
ずきずきと痛む心臓に私は意識が薄れる。暗闇にのまれる寸前、カルナさんが目を開けたような気がしたけれど気のせいか。
――カルナside――
「――ッ?! なんだ、この目眩は……」
『――ごめんね、カルナさん』
カルナは理解が出来なかった。襲い掛かる目眩と視界に映る彼女の表情が。何故傷を癒した彼女はそんなに泣きそうな顔をしているのか。
俺は何か間違いを犯してしまったのか、カルナは動かない己の口を恨めしく思う。肝心な時に役に立たないのだ。
カルナの意識は闇へと落ちた。
遠のいた意識が戻る。カルナは目を開けた。目の前が陰った気がした。否、それは勘違いではない。誰かが、いや彼女だ。カルナは直感で悟った。
彼女がこちらへと倒れてきた。カルナは条件反射で手を伸ばし、抱きとめる。何故と思いはしても、そこに彼女に対する怒りはない。
カルナは腕の中で彼女の顔を覗き込んだ。真白の肌はもう血の気がなく、ただ青い。慌てて呼吸を確かめれば細くはあるもののちゃんと彼女は息をしていた。
カルナはそこまで確かめて何かがくる気配を感じ取った。この気配は間違えようもない宿敵のものだ。カルナはそっと物陰に彼女を隠す。
ここから少し離れよう。カルナは少し迷ったが、彼女の安全の為に決心する。
少し離れた所にアルジュナは居るようだった。こっちから出向いていこうじゃないか。
カルナは神槍を携えて跳躍した。
アルジュナの目の前に降り立てば、容易に殺気立った。
「――我が宿敵、カルナ。我らの因縁はここで決着をつけよう」
「然り。アルジュナよ、我が敵対者よ。お前との因縁はここで断ち切らせてもらおう」
カルナの言葉にアルジュナは頷いた。ギラギラと滾らせるその瞳の闘志はカルナを高揚させるに充分だった。けれどカルナは静かに槍を構える。心は燃え盛る業火ではない、その逆で
「だが、その前に言っておこう。オレはこの戦いを長引かせるつもりなぞない」
「なに?」
「我が槍の暴威をもって貴様を倒す。故に覚悟はいいな」
「ふん、よろしい。このアルジュナ、全てをもって貴様を討ち倒させてもらおうッ」
激しい衝突をもって神話の如き戦いは始まった。
という訳で後半に続くんじゃよ。如何だったでしょうか。文章力が足らな過ぎて作者は泣きそうでした。戦闘描写は書いて上手くなるしかないのでこれから頑張っていきたい所です。
今日中に更新出来て良かった。
後半はアルジュナさん視点から書いていきます。あのままだとアルジュナさん側がちょっと描写が足りないですし。
シリアスって難しいですねハハッ(白目)