オリ主視点です。この小説は砂糖多めで書くように心がけています(笑)。折角の夢小説風味ですからね。
カルナさんのデレが凄まじいような気がしますが、日々の暮らしでオリ主が徐々に彼の壁を攻略げふんもとい突き崩した結果だと思ってください。
\合言葉はー?/ \細かい事は気にシナーイ!/ です。
――主人公side――
ここで暮らし始めて数カ月程経った。カルナさんの愛情は分かりにくいと思いきや、結構分かりやすい形で見える時がある。私に黄金の鎧の一部を使った耳飾りを贈ってくれたのがその最たる例だ。あの時、砕かれて欠けた黄金の鎧ごとカルナさんの怪我を例の邪神()の力を使って治した。それは上手くいったのだけど、あの力を使った時ちょっと目眩がしたのだ。気のせいかな?とあの時は流したけど。
で、ちょっと時間が経ってまずいかな?と考え直した。邪神()様曰く、覚悟しろとの事らしいので。一体言葉以外、どんな不具合が生じるのかと戦々恐々と私は震えている。
言葉の件に関しては朗報があった。ここでしばらく暮らして気づいたのだ。私が死ぬ気で頑張ればテレパシーもどきが出来る、と。
ただこのテレパシーもどきは私が伝われー伝われーと凄い念じなきゃいけないのと、相手の言っている事も滅茶苦茶集中しないと意味が分からない、という残念仕様だ。しかも相手の言っている事は「ココハコウスルトヨロシ」といった感じでなんか片言にしか分からないというポンコツ具合。多分私のテレパシーもどきも同じ残念仕様なんだろうなぁと遠い目をするしかない。それと結構疲れるという詰み仕様で涙を誘う事態だ。
唯一の例外はカルナさんだ。どういった事か彼にだけは普通に意思疎通出来るのだ。おかげで何度カルナさんを拝みそうになった事か。
それはともかく、さて諸君。私はいま盛大に頭を抱えていた。
カルナさんが言葉足らなくってほんとつらい。私ってなんだっけ?と思う始末だ。右耳に輝く金色に更に思い出されて頭痛がする勢いである。
何故私がこんなに思い悩んでいるかというと、今朝のカルナさんの言葉が原因なのだ。
「ああ、そうだ。今日競技会に参加することになった」
『へぇー』
「婿選びという名目らしいが、気にするな」
『ファ!?』
適当に打っていた相槌はカルナさんの発言でぶち壊される。な、なんだってー!! と叫びたい気持ちをグッと私は堪えた。
「オレは数合わせに過ぎないからな。――時間か、行ってくる」
『い、いってらっしゃい』
「ああ」
さっと背中を向けて行ってしまった後姿に私は口元が引きつるのを感じた。
やばい、あんな堂々と浮気宣言とは恐れ入る。これがジェネレーションギャップ、と私は一人慄いた。しかも数合わせ?数合わせと言ったか、カルナさんは。そんな合コンのノリで言われても。……古代インドでは普通にある事なのだろうか。
そんな感じで私はカルナさんが去った後も頭を抱えている訳です。
カルナさんの事だから、二人目の奥さんとか連れてこないとは思う。あれでも誠実な人なのだ。ただ、カルナさんは見ての通り白皙の美青年な訳で。万が一ってあるだろう?婿選びをするお姫様が絶世の美女だったら、カルナさんもグラッと来るかもだし。
私は一般人の女子高生な訳で残念ながら美少女という訳ではないのだ。自分でもがっかりしてしまう、と私は肩を落とす。
はぁ、と重いため息を吐いて私は頬を軽く叩く。
気分を入れ替えて今日も頑張るぞっと一人で気合を入れなおした。
それにしてもなんか聞き覚えのある話だな?と私はデジャヴを覚えた。
「ただいま」
『おかえりなさい』
一人で帰ってきたカルナさんを私は安心するような気持ちで迎えた。我ながら酷いと自己嫌悪に陥りながらカルナさんに椅子を勧める。
カルナさんが机についたのを見て、私は水を彼に差し出す。
『お疲れ様』
「ああ、ありがとう」
水の入ったコップを受け取るカルナさんを私は見つめてしまっていた。
「ん?どうした?」
『あ、いえ』
「お前らしくない振る舞いだ。――オレには話せない事だろうか」
カルナさんの問いにどもる私に彼はしょんぼりと肩を落とす。あっこれ良くない流れ、と私は慌てる。
『そんな事ないですけど!』
「そうか。俺なんぞでも力になれるか。……ならば聞かせてくれ」
『……』
あわあわと忙しなく動かした私の手をカルナさんはとり、こちらをじっと見つめた。視線と言葉のダブルコンボに私は言葉が喉に貼りつくのを感じた。
「お前は、もはやオレの家族だ。――大切なんだ、と思う」
手をカルナさんにぎゅっぎゅされながらのこの台詞。もう許してほしいと私は半ば涙目だ。
『……て言うから』
「うん?」
私のぼそぼそとした呟きはカルナさんの耳には届かなかったらしい。聞き返す声の優しさに私はやけくそに言ったれ!と腹を括る。
『だからッ! 婿選びにカルナさんが行くって言うからッ』
「!」
私のやけくそ気味な叫びはカルナさんの目を見開かせるのに充分だった。猫の様に目を丸くする彼はきょとんとしていた。そして数拍遅れて、切れ長の瞳を和ませる。
「そうか。悋気とは、ふむ。オレは存外語彙が少ないな。言い表すに値する言葉が見当たらない。精進しよう」
『――ッ!!』
納得したように頷くカルナさんのその緩みきった顔に、私は沸騰する思いをした。
「だが、安心するがいい。ドラウパディー姫はオレなんぞお断りだそうだ」
『え、どらう……?』
「今回の婿選びの姫だ。ああ、そう言えば絶世の美女という噂があったな」
『……興味なさそうですね?』
「ああ。今回はアルジュナも出るという話だったから出たまでだ」
『あるじゅな、さん?』
「そう。我が武技に勝るとも劣らない、生涯の宿敵だな。どうしてか、あの男にはどうしても負けたくないと思ってしまう」
『へ、へぇ……』
「それだけの話だ」
それで話は終いだと言わんばかりにカルナさんは握った私の手をそっと離した。こちらを見つめる彼の青い瞳は柔らかに弧を描いた。
そのカルナさんの笑みの柔らかさに私はもういいやと匙を投げた。全面降伏待ったなし。
後でカルナさんにその婿選びの競技会について詳しく聞いてみたところ。
その大会はそもそもアルジュナさんが勝つように予め用意してあったようだ。ドラウパディー姫の父君が用意した強弓はアルジュナさんしか引けないような代物だったらしい。しかしアルジュナさん並の腕前のカルナさんはその弓を見事引き絞ってみせたのだという。
『それでどうなったのですか?』
「御者の身分は相応しくないらしいからな。止めさせられた」
『うわぁ』
ドラウパディー姫がそう言ってカルナさんを拒否したらしい。カルナさんは腕が試せればいい、程度の物だったのであっさりと身を引いたという。
で、その後アルジュナさんが見事その弓を引いてその大会を見事勝ったらしい、と。ドラウパディー姫はアルジュナさんしか眼中になかったそうな。……こう言われるとそのドラウパディー姫の目は節穴なのでは、と思ってしまう。私が言うのもあれかもしれないが、カルナさんは優しいし、美形だしと良い旦那さんの条件を揃えているのに。カルナさんが選ばれなくてホッとしている癖してカルナさんが貶められると苛立ってしまうのだ。私はつくづく嫌な奴だなと自分自身を思う。けれど、嫌な奴なりに私は開き直るしかないと思い直す。こちとら邪神()様の加護?があるんだ、今更なんだと。
「元々、ドゥルヨーダナに言われての事だったからな。出さえすれば表向きの面目は立つ。――オレの役目はそれで終わりだ」
『……そうなんですね』
特に感慨を抱いてないカルナさんに私はホッと安心する。ドラウパディー姫は絶世の美女らしいのでどこか私は不安を感じていたのだ。開き直っていても、やっぱり割り切れないらしい。
こういう時はカルナさんのその飾らなさに私は救われるのだ。
息を吐いた私の様子をカルナさんは微笑みを浮かべ、
「お前の杞憂は晴れたようだな、良かった」
邪気の欠片もない様子で私の頭を撫でた。私の癖のない黒髪を優しく、けれど慣れていない様子で不器用にカルナさんの手は撫でていた。そのぎこちない動きに私は時が止まったような錯覚を覚えた。
ぎぎぎと私がカルナさんの顔を見上げれば、満足そうなそれでいて幸せを噛みしめている笑みが白皙の美貌に浮かんでいた。
私はカルナさんに灰にされるかと真剣に思ってしまった。眩しすぎかよ。何コンボくらったかな?と思う程私の精神のダメージは深刻だった。私の顔が熱いのもきっとそのせいだそうに決まっている。
オリ主さん嫉妬する編です。恋情か否か。
※悋気――嫉妬する事。カルナさんはあの時主人公に嫉妬されて密かに喜びを噛みしめていた様子。
書きながら砂糖吐くかと思いました。なんだコイツ等結婚しろリア充めあっもうしてたんだっけ、と一人漫才してました。知ってるか、コイツ等これでもハグもしてない清い関係なんだぜ……(白目)
彼女がうじうじ悩んでいたのもこの清い関係が故です。しかも甘い恋情が理由ではない婚姻関係。これでもオリ主はカルナさんに負い目があります。でもカルナさんはそうは思っていないという。ナチュラルにすれ違いが成立しちゃってますね(遠い目)