施しの英雄の隣に寄り添う   作:由月

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オリ主、ドゥルヨーダナさんと会う。

※ドゥルヨーダナさんの容姿に関して少しばかり触れています。捏造です。まだ本家の方で出てきてないのでセーフですよね……?
拙作ではこんな感じなんだなぁと生温かな対応でよろしくお願いします。

あまり話が進んでいないので明日も更新します。その時にアルジュナさんの出番もある予定なのでちょっとお待ちくださいませ。

オリ主視点です。




 

――主人公side――

 

 

 

 

 時が経つのも早いもので結構この生活も慣れてきた。

 

 一番の成果は言葉のあのポンコツ翻訳がようやく流暢に翻訳するようになった事だろうか。「ココハコウスルトヨロシ」という残念さが「これはこうするといいですよ」と劇的ビフォーアフターを遂げたのだ。勿論人によって口調が様々なようだった。ここまでこぎつけるのは本当に涙なしでは語れない私の努力があるのだがそれは置いておこう。文面がぎっしりと埋まる事請け合いだからだ。ただ疲れる事は変わらなかった。これか?傲慢の対価ってこれなのか?と邪神()様に問いただしたい気持ちで一杯だ。

 ちなみに私のテレパシーもどきは片言仕様のままだ。以前近所のお世話になっているおばさんに聞いてみたところ、可哀想な子を見るような顔をされてしまったので間違いない。つらくなんてないんだからね!

 そんな感じで平穏を謳歌していた私ですがカルナさんの朝の一言で終わりが告げられた。

 

「そうだ、ドゥルヨーダナがお前に会いたいそうだ。今日、大丈夫だろうか」

『えっ』

「一体何の用かは知らないが。――身内には気のいい男だ、悪いようにはしないだろう」

 

 カルナさんは朝の和やかさをぶち壊す天才かな?と私はショックで固まる頭でぼんやりと思う。カルナさんは私の目が死んでいるのに気づいて慌ててフォローを入れた。

 

 カルナさんが困っているので私は腹を括る。

 

『大丈夫です、行きます』

「そうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後とんとん拍子に事が進み、今はドゥルヨーダナさんの待つ部屋の前に来ていた。

 

 カルナさんがあっさりと私の手を引き、入室する。部屋にはお付きの人が居らず、ドゥルヨーダナさん一人で悠然と待ち構えてた。

 

 部屋の内装は一目で一級品と分かる高級感に溢れ、床に敷かれた絨毯の上質さは足を乗せるだけで伝わる。部屋に漂うお香らしき匂いも、ふんわりと上品に香しさを運ぶくらいだった。ヤバい、前回はそれどころじゃなくって気づかなかったけれど圧倒的高貴さがとてもつらいです。

 

「ご苦労、わざわざすまんな。そら、そんな遠い所ではなくもっと近こう寄れ。余が特別に許そう」

『アッハイ』

 

 翻訳&テレパシーもどき機能をマックスにして私はロボットみたいにぎこちない頷きをした。

 

 改めて目の前のドゥルヨーダナさんを見やる。まず目を引いたのが健康そうな褐色の肌と艶やかな黒髪、次いで意志の強そうな黒い瞳だった。普通に上品な美形さんと言った印象だった。うそだろ、これで暴君とか。

 

 人は見た目によらないんだなぁと一人で頷いているとドゥルヨーダナさんの黒い瞳と視線がかち合う。ドゥルヨーダナさんはくっと喉で小さく笑った。

 

「ふふ、前回とは違い余にもお前の言っていることが分かる。けれどお前がこちらの言葉を話している訳ではなさそうだな」

『ひぇ』

 

 ドゥルヨーダナさんは笑みを浮かべているものの、目が笑っていなかった。その冷たい視線に私の口から情けない声がこぼれる。圧倒的王様オーラが半端ない。背後にいたカルナさんがそっと私の背を撫でて落ち着かせてくれた。

 

「ドゥルヨーダナ、戯れるのは止せ」

「くっくっく。いや、すまん。許せよカルナ。――小さきモノに戯れてみたいと思うも仕方ないではないか。余とて、癒しは欲しいものよ」

「程々にしてもらいたいものだ。お前の戯れは少々過ぎる事があるからな」

 

 喉を鳴らし笑うドゥルヨーダナさんはそれでも優雅さを失わない。対するカルナさんはそんな彼の様子を気にもしていない様子だった。それにしても小さきもの、とはもしかしなくても私の事だろうか。そりゃあ貴方達に比べればチビかもしれないがちょっと物申したい所だ。

 

「で、何やら面妖な術でも使ったか?娘よ」

『へ?』

 

「ドゥルヨーダナ」

 

 頬杖をつきながら楽し気に目を細めるドゥルヨーダナさんにカルナさんは咎めるように声を上げた。私はといえばポカンと固まるしかなかった。

 いやだって面妖な術?なんだって?と混乱しきりだ。テレパシーもどきがそんな大層な言い方をされるとは思わなかったのだ。

 

「ははは、そう固くなるな。別に取って食いやしないさ。だからカルナよ、そう睨むでないわ」

『はい?』

 

「後ろを向いてみよ、娘よ。面白いものが見れるぞ」

 

 ドゥルヨーダナさんの楽しそうな声に思わず、私は後ろ――カルナさんの方へ振り返り見る。

 

 そこには、何やら渋面を作ったカルナさんがいた。しかめっ面というか険しい表情はある意味珍しいと私は場違いにもまじまじと見てしまった。カルナさんは真顔、無表情がデフォルトなので負の感情が表に出る事も珍しい事なのだ。

 

 私の不躾な視線が耐えかねるのか、カルナさんは顔をそむけた。それが拗ねた子供のようで、私はますます目を丸くする。一体どうしたのだ、カルナさん。

 

「ぶっはッ。あっはっはっは!! いや、愉快愉快」

 

 いきなりふきだし爆笑したドゥルヨーダナさんは、膝を叩いた。

 

「よし、余は決めたぞ」

 

 キリッと顔を引き締めたドゥルヨーダナさんに私は嫌な予感が脳内を掠めた。カルナさんは不思議そうに首を傾げていた。

 

「そなた、余の下につかぬか。――無論そなたに拒否権はないがな」

 

 にやりとドゥルヨーダナさんは笑みを浮かべた。正直悪の頂点かな?と錯覚するくらいには凄味があった事を明記しよう。

 

「……ドゥルヨーダナの悪い癖が出たか」

 

 カルナさんのぼそりと呟いた言葉に私はげんなりとしてしまった。暴君かよ……フリーダム過ぎんよ。

 

 

 

「とはいえ、すぐそのままという訳にもいくまい」

 

 笑いを収めたドゥルヨーダナさんは真面目な様子で思案する。

 

『そうなのですか?』

「ああ、お前がいくら異能の力を持っていたとしても女だ。女を戦事に関わらせるのはちと不味くてな」

 

『ん?』

「うん?どうした。ああ、異能の力か。カルナが言っていたぞ。この朴念仁が惚気か、と思えば色気のない……」

 

 ドゥルヨーダナさんはそう嘆くが、私はそれどころではなかった。カルナさんがなんだって?

 

 バッとカルナさんを仰ぎ見れば、サッとすぐにカルナさんは顔をそむける。お前か、これの元凶は!

 

『――カルナさん?』

 

「すまない、つい」

『何を喋ったんですかねぇ、カルナさん。これは帰ったら反省会ですからね』

「ああ、承知した」

 

 どうやら私の帰ったら覚悟しとけや、という意図はカルナさんに伝わらなかったらしい。すんなりと頷かれた上に少し嬉しそうでもあった。ぐぬぬと私は歯ぎしりするが、そのすぐ後にドゥルヨーダナさんのごほんとわざとらしい咳に我に返る。

 

『す、すみません』

「……夫婦仲が良いのは喜ばしいのだがな。まぁよい。それで余に妙案があるのだが」

『はい?』

 

 人差し指をたてるドゥルヨーダナさんの提案に私はのけぞる事となる。カルナさんだって目を丸くする事になるのだから、提案の恐ろしさが分かるものだ。

 

 

 

 

 

 

 

『……まさか男装とは……』

 

「はっはっは、似合っておるぞ。なぁ、カルナよ。そうは思わんか?」

「ああ、少し幼く見えるが」

「そこがまた良いのではないか。――しかしこうも違和感がないとは思わなんだ」

『ソウデスカ』

 

 ドゥルヨーダナさんとカルナさんの賛辞の言葉に私の目が死んでいた。

 

 今私は少年と言っても違和感のない服装をしていた。頭からすっぽりと覆うこの白い襤褸布の存在がとても懐かしい気がする。全体的に袖や裾の長い服装で、手や足が見えるのを徹底的に防ぐ服装だ。私の肌が白いのもその徹底の一因らしい。

 

 長い黒髪も白い襤褸布の中に隠されるので目立たない。あえて難点を上げるならば、右耳を飾る黄金の輝きがちょっと気になるくらいだ。これも黒髪を結わずにそのままにしているので、布を取り外さない限りは大丈夫だろう。顔を隠す程度に深くかぶる予定だからだ。

 

 それと私は胸がその、慎ましやかな方なので布を重ね着してる現在、さらしを巻けば全然違和感がないのだ。これが悲しい現実……。

 

「カルナの身内、という設定でいこうではないか。遠い縁者で言葉が不自由なそなたはカルナを頼り、従者を務める。少々無理があるが、まぁ通せなくもないだろう」

 

 つらつらと“私”の設定を述べるドゥルヨーダナさん。よくもまぁそんな嘘がすんなりと出てくるものだと逆に感心してしまう。

 

「まぁ何かあれば余の名前を出せば大抵の者は引っ込む。藪をつつかれた時は、遠慮なく我が名を使うがいい。特別に許す」

 

 それで無理を通すがよい、ドゥルヨーダナさんは傲岸不遜に言い放った。ドゥルヨーダナさんだからこそ、言い切れる言葉だろう。素直に凄いと尊敬してしまう。

 

「故に、そなたは他の者と言葉を交わしてはならぬ。その言葉を通じさせる面妖な術も使用を控えよ。――少しの綻びが大きな穴を生むのだ」

『はい、分かりました』

「そなたの役目はカルナの傍に控える事、それのみだ。カルナを支え、助けになり、ひいてはこのドゥルヨーダナの役に立つことだ。余は無駄な投資はせぬ。――しっかりと務めを果たすように、以上だ」

 

『ドゥルヨーダナさん……』

 

「ふん。カルナよ、そなたはこやつを使えるように仕込め。――恐らく、こやつは荒事に無縁だ。そなたは分かっておるようだがな」

「ああ、承知した。ならば、ドゥルヨーダナ。お前にその猶予を貰いたい」

「ふむ、なるほど。時間を欲するか。然り、当然か。良いぞ、その代わり日に一度は余に報告するように」

「感謝する。ドゥルヨーダナ」

「ふん、これは投資だというに。礼は不要というもの。それ以上、無粋な言葉は無用ぞ」

 

 ぽんぽんと軽快に言葉を交わしあう二人は正しく友人と言う言葉が相応しい姿だった。それにしてもドゥルヨーダナさんの言葉がツンデレっぽく聞こえる私は疲れているのだろうか。

 

「ではこれで失礼する」

「ああ、またな」

『し、失礼しますッ』

 

 カルナさんに右手を掴まれ、引き連られていくように私はその部屋を退室した。慌ててドゥルヨーダナさんに頭を下げれば、彼は軽く手を上げた。

 

 

 

 

 

 




これで無事?オリ主はカルナさんと同行する事が出来るようになりました。やったぜ!でも問題が山積みなんだぜ。

※気になるであろう事柄に対して。
Qなんでドゥルヨーダナはオリ主の『ドゥルヨーダナさん』呼びをスルーしたの?
Aオリ主のテレパシーもどきは残念仕様だからです。えせ中国人ばりに片言に聞こえてしまいます。ドゥルヨーダナさんは身内には優しいので、追い打ちをかけないでくれました。


今回は微糖仕様で書いていてちょっと物足りなく感じてしまいました(笑)

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