珍しく?シリアス風味ですが、さらっと流します。
でも糖分があるってどういうことだってばよ……。作者はカルナさんに夢見すぎています。
オリ主視点です。今更なんですが作者はマハーバーラタの概要のみの知識で書いているので、事象の時系列が前後する恐れがあります。
ふわっとした雰囲気でお読みください。
――主人公side――
カルナさんの従者として生活して早くも数カ月が経っていた。家の事も最低限やりながら弓の修行をするのはつらくもあったけれど、徐々に上達する事に精を出していく内に慣れてきた。最初の内は筋肉痛が酷かったけれど、最近はそれもなく動けるのでちゃんと進歩しているのだろう。
不慣れだった男装も今ではすっかり板について、今では特に不便に思わなくなった。
カルナさんの方は、数週間前に師事する人を変えるとかで家を留守にしていた。
なんかこう引っかかるものがあったけれど、無理に反対する理由もなかったので私はカルナさんを見送った。カルナさんを疑うんじゃなくってこう、デジャヴを覚える感覚というか悪い予感がするというか。念のためカルナさんにくれぐれも気をつけるように言い募った。けどカルナさんの頷きが普段と変わらなかったのが若干心配だ。
なのでこの数週間、私は自己練習に励んでいた。合間にドゥルヨーダナさんの話相手になったり、稀にアルジュナさんに話しかけられたりして日々を過ごしていた。話しかけられると言っても世間話程度だ。そのおかげで声が出せない代わりのジェスチャーは上達した方だと思う。アルジュナさん曰く私といると気を使うのも馬鹿らしくていい感じで息抜きが出来るそうで。……なんだろう、この扱いぞんざい過ぎて涙が出そうです。
私はこの平穏がいつまでも続くものだと、漠然に思っていたんだ。
それがどれ程甘ったれたものか、気づきもしないで。
「……ただいま」
『おかえりなさい、カルナさん』
数週間ぶりにカルナさんを出迎えた。私はいつものようにカルナさんに家に入るように促す。
けれど家の入口に棒立ちになったまま、カルナさんが俯いていた。不審に思い、私はカルナさんの顔を覗き込む。
いつもの迷いない真っ直ぐな青い瞳が、ゆらゆらと揺らいでいた。不安そうなその光は私と目が合うと困ったような笑みに変わった。
「少しばかり、困ったな。今回はそうだな、オレも自覚はなかったが」
そこで言葉を切ったカルナさんはこちらに手を伸ばし、私の頬を右手でするりと撫でた。
「弱っていたとは情けない」
『……何かあったのですか?』
「いや、これはオレの怠慢が招いた結果だ。お前が気にする事ではない」
カルナさんは淡く微笑みを浮かべ、そう締めくくった。私の頬にあてたカルナさんの手が少しひんやりとしていた。見ればカルナさんの顔色はいつもよりも悪いものだった。
これは何かあったな、と私は確信する。私は頬を覆うカルナさんの右手に手を重ねる。
『言ってください。私に関係なくたっていいんです』
「だが――」
『これは私の我儘です。……前、カルナさん“家族”だって言ってくれましたよね』
「ああ」
『なら、分かち合えると思うのです。半分を背負えなくても少しだけ、私も一緒に背負わせてくれませんか?』
「ッ!」
私の言葉を大人しく聞いていたカルナさんは息を呑んだ。くしゃりと歪んだ白皙の美貌が、泣き出してしまいそうで。私は思わず空いた片手でカルナさんの背にそっと手を回した。彼の黄金の鎧に気をつけながら、ポンポンと背を軽く撫でる。
いつの間にか私の頬から手を離し、カルナさんの手も私の背に回る。そっと、けれども不器用に抱きしめてくる手の温もりは泣きそうになる程優しかった。
「――ありがとう。お前にはいつも世話になってばかりだな」
『私の方こそカルナさんに助けてもらってばかりですよ』
「ふっ、なら相殺となるな」
『ですね』
お相子だというカルナさんに私は笑顔で頷く。くすりとカルナさんが小さく笑った。
家の中に入り、机に向かい合わせに座って人心地ついたカルナさんが話し始めた。
『呪いですか?』
「そうだ。ここ最近留守にしていただろう。あれはドローナの師にあたるパラシュラーマに教えを請うていたからだ」
『ぱらしゅ……?』
「パラシュラーマ、あの男ならばドローナでは得られなかった奥義が授かれると思ったのだが」
『なる程。でも――』
「ああ。奥義は授かれたが。……結局オレは偽った身分を暴かれ、あの男の逆鱗に触れて呪いを受けた」
『カルナさん……』
「お前の忠告があったというのに。呪いはオレに匹敵する敵対者が現れ、絶命の危機が訪れたとき、授かった奥義を思い出せなくなるというものだ」
『そんなのって』
「けれど、そう悲嘆する事はない。オレはここに帰ってきてそれを思い出した」
『え』
「オレにはもう得難いものを既に得ていたのだ。故に嘆く必要もない」
そう言ったカルナさんの顔に先ほどの不安は欠片もなくなっていた。顔色も通常通りに戻っていた。
「――それに気づけたのもお前のお陰だな」
ふわりと微笑みを浮かべたカルナさんは文句なしに美しかった。姿の美醜とか関係ない真正の清らかさ、それが全面に表れた笑みだった。ま、眩しい。
あれ?でも原典のマハーバーラタではもう一個、カルナさんは呪いを受けていたはずだ。私は寝る前に思い出した。でもあんまり概要を覚えていないのだ。つくづく残念な頭だなぁと自分に毒づく。
隣に眠るカルナさんの寝顔にまあ明日考えようと思いなおす。隣と言っても寝台は分けている。同じ部屋で眠っているだけだ、悪しからず。まぁ部屋を分けられる程裕福な暮らしをしていないだけって話で。我ながら色気のない話である。
さぁ眠って明日も頑張ろう。
夢を見た。目の前に広がる、墨によりも深い黒い暗闇にどこか懐かしさを感じた。いつかに見た暗闇と一緒なのだろうか。
――答えよ。
暗闇から声がする。どの人物にも当てはまらない、しかし似ている不可思議な声だった。何処を聞いても邪神様の声ですありがとうございません。
――答えよ、我が愛し子よ。
こちらの反応を少しも気にしないスタイルも懐かしいな、と私は思った。
――汝の覚悟は出来ているか。
『えっ』
――全てを捧げる覚悟を。
――汝は知ったか。我が力を。
――知らぬならば行使せよ。
――全てを知ったその時、お前の選択は如何なるものか。
――忘れるな、お前に授けた力はお前の命と等価であると。
『え?ええ?』
――その心臓に我が力は宿る。
『ファッ!?』
――故に刻めよ。力が壊れし時、汝が死ぬ運命ぞ。
――これは我が祝福。汝が縋りしはおぞましき邪神なるぞ。
物騒すぎ笑えない、とガクブル震える私に暗闇が迫る。
私の意識がふつりと途絶えた。
「――きろ」
声がする。ああ、優しい声だ。私はこの声をよく知っている。
「――だ。起きてくれ」
身体がそっと揺すられる。遠慮されたその手の力は私を覚醒させるのに充分だった。
目を開ければ、カルナさんが私の顔を覗き込むようにしていた。カルナさんが心配そうな顔をしているな、と寝ぼけた頭で考える。
瞬間、ぎょっとして飛び起きた。私がはね起きて、カルナさんは驚いたように身体を退かした。
「大丈夫か」
『ふぇ?』
「――随分うなされていた」
首を傾げる私にカルナさんがそっと頭を撫でた。するりと手が私の黒髪をすくい、逃して、またすくう。その戯れをカルナさんは繰り返した。手付きが随分優しい。
『ちょっと悪い夢見ちゃったみたいで』
感じた気恥ずかしさをへらりと私は笑って誤魔化す。カルナさんの視線は優しいまま、頷かれた。
「そうか。――それが続くようならば言え。このオレで良ければ添い寝をしよう」
『んんっ?』
「悪夢は人肌で和らぐのだろう?ドゥルヨーダナが以前言っていた」
カルナさんは優しい眼差しのままで、そこに一切の下心は感じられなかった。
どういう流れでそうなったのだろうか。
私はツッコミが追いつかない頭で呆然と頷いてしまった。
「分かった。その時はそうしよう」
『えっ』
「うん?……ああ、まだ言ってなかったな。おはよう」
『うぅん。うん。おはようございます』
カルナさんも結構マイペースな所あるようなぁ、私は疲れた頭でぼんやりと思うのだった。
今日は確か戦車の乗り方を教わる予定だっけ?
という訳でカルナさんの呪いは未然に防げませんでした。
でもカルナさんは気にしない方向で行くようです。彼のずっと心の奥底で望んでいたものを得ていたのだと気づいたからです。
カルナさんは一つの幸せで凄く満たされてそうですよね。
ところで関係ない話になるのですが、FGOの召喚ピックアップ近々カルナさんが来ますよね!いやふぅうううう!!と作者はそれだけで舞い上がっております。石、出来るだけ貯めとかなきゃ(震え声) 一日だけのピックアップなので厳しいですよね(白目)