ゾイドバトルストーリー 中央山脈の戦い 山岳基地攻防戦   作:ロイ(ゾイダー)

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あけましておめでとうございます読者の皆様。
次は、共和国軍が動いたことに気づいたダナム山岳基地側の話になります。
ちょっと短いです。


第16話 大雪崩 後編

帝国空軍と陸軍の偵察部隊がヘリック共和国軍のダナム山岳基地攻略部隊の移動を

発見した翌日、ダナム山岳基地では作戦会議が開かれた。

 

 

―――――――――ダナム山岳基地 作戦会議室――――――――

 

 

鉄筋コンクリートに守られた地下の掩蔽壕に設けられたこの部屋は、守備隊の各指揮官が集まり、作戦会議を行う目的で作られた。

 

 

現在、司令室には、ダナム山岳基地の守備隊の指揮官が集められていた。

 

「昨日、空軍の偵察機が中央山脈 ライカン渓谷北部付近に展開するヘリック共和国軍の大部隊を発見した。」

 

会議の議長を務めるのは、このダナム山岳基地の守備隊司令官であるクルト・ヴァイトリング少将である。

 

同時に室内の数少ない光源である大画面のモニターに画像が表示される。その画像は、偵察機によって撮影された共和国軍の大部隊の画像であった。

 

「敵の数は?」

 

「少なくとも戦闘ゾイドだけで最大で3000を下らないとのことだ。」

 

「3000!!」

 

「我々の3倍のゾイド戦力か」

 

「全ての敵部隊がこのダナム山岳基地を攻撃するわけではないだろう。ゾンネンフェルス基地やヴァイスホルツ基地等の他の基地にも攻め込むに違いない。」

 

「敵は、我々の予想通りに短期決戦を狙っているのでしょうか?」

 

第65対空大隊指揮官 カール・エルスター中佐が質問する。

 

 

彼を含め、ゼネバス帝国軍の大半の予想は、中央山脈北部に越冬可能な本格的な拠点を有さないヘリック共和国軍は、中央山脈北部が、雪の降り積もる本格的な冬に突入する前に短期決戦を挑むと考えていた。

 

 

短期決戦…………即ちダナム山岳基地に対する強襲による制圧作戦をヘリック共和国軍が敢行してきた場合、彼らは、基地外周をに張り巡らされた防御陣地……大小98のトーチカと地雷や落とし穴、カーボンワイヤーによるトラップ等の障害物と基地の守備隊戦力で進撃を阻止し、こう着状態を維持し、冬将軍の到来する時期まで持ち堪える。

 

 

 

そして冬将軍の到来後は、冬の厳しさと補給の途絶で、弱体化した共和国軍の侵攻部隊を基地から出撃したアイアンコングを中心とする重機甲部隊とレッドホーンを主力とする突撃部隊によって粉砕する。

 

 

 

これが、ゼネバス帝国側の編み出したダナム山岳基地での共和国軍の迎撃案である。

 

 

これまでヘリック共和国軍は、大軍の運用が困難な中央山脈の地形を利用したゲリラ戦に持ち込むことで戦力で劣っているにも関わらず、勝利を重ねてきた。デスザウラーを有しながらも敗北を喫してきたゼネバス皇帝は、共和国軍にゲリラ戦を挑ませない作戦を編み出した。

 

 

彼は、北国街道の要衝を守るダナム山岳基地とその守備隊を囮にすることによって、ヘリック共和国軍にゼネバス帝国軍の得意分野ともいえる平原での重装甲軍団を用いた正面戦闘を強要することで勝利を得ようと考えたのである。

 

 

 

 

「敵はまんまと我々の作戦に乗ってきたようですね。司令官閣下」

 

 

 

「共和国の奴らがこの基地を狙っているのは間違いありませんな」

 

参謀の1人が発言した。彼の意見を肯定する様に初老の基地司令官は、静かに肯く。

 

 

「皇帝陛下と参謀本部が予想されていた通りの事態になったという事だな。我々は、慌てることはない。ゼネバス帝国の軍人として、皇帝陛下からの命令を実行するのみだ」

 

「はっ!」

 

 

「了解!」

 

「皇帝陛下万歳」

 

「この基地に向かっている敵戦力については、どの様な情報が判明しているのですか?」

 

 

「現在、確認されている情報では、カノントータスやコマンドウルフ、ゴドス等の中型、小型ゾイドを主力とする部隊が大半を占めるようだ。だが、敵もダナム山岳基地を攻略する為に大型ゾイドの必要性を認識しているらしい。ゴジュラスやマンモスも確認されている。また偵察部隊からの報告では、共和国軍部隊のゾイドの多くが寒冷地仕様改造が施されていることが確認されている。」

 

 

「我軍は、敵が冬将軍の到来前に短期決戦を仕掛けてくると想定していましたが、向こうも冬季戦への備えを全くしていないわけではない様ですね。」

 

「当然の話だろう、連中も中央山脈北部の天候が変わりやすい事は知っているのだから」

 

 

「寒冷地仕様改造……奴らめ冬まで包囲を続けられると思っているとは。冬の事等心配しなくていい様に直ぐに蹴散らしてくれる」

 

 

エルツベルガーは、鼻息荒く言い放った。彼も単に敵を侮ってこんなことを言っているわけではなく、十分に敵を叩ける目算があるのと自身の部隊の実力に自信を持っていたからである。

 

 

この会議の参加者の中でも有数の歴戦の勇士である彼は、ZAC2044年の共和国首都攻略作戦の前哨戦でレッドホーン突撃隊を率いてヘリックシティ郊外の共和国軍拠点を攻撃し、ゴジュラス2機を含む共和国軍部隊を撃破する戦功を挙げていた。

 

 

「ある程度の長期戦になったとしても、その時には、共和国軍は撤退準備をしているだろう。連中もゾイドを寒冷地仕様にしただけで冬季戦が出来るとは思ってはいないだろうからな」

 

 

ヴァイトリングを含め、この部屋に詰めていた守備隊の将校達は、ヘリック共和国軍が、短期決戦を挑んでくるという前提で考えていた。

 

帝国側は、例えゾイドに寒冷地仕様の改造を施したとしても、ダナム山岳基地に侵攻してくる共和国軍が長期戦を仕掛けることは出来ないと考えていたのである。

 

 

ゾイドに寒冷地仕様改造を施すだけでは、冬の中央山脈で戦う事は出来ない。

 

中央山脈北部において、冬季戦を行うには、寒冷地仕様を施したゾイドとそれを操縦するパイロットを万全の状態に保つ必要がある。

 

戦力を万全の状態に保っておくためには、整備と補給が欠かせない。

 

 

ダナム山岳基地に侵攻する共和国軍は、ダナム山岳基地という拠点を有する帝国軍と異なり、後方の拠点から補給物資を輸送することで補給を維持する必要がある。そして、これは、容易い事ではなかった。

 

 

 

厳しい冬の中でも、拠点であるダナム山岳基地の兵站機能によって戦闘能力を保ち続けることの出来る自軍と、遠距離からの輸送部隊により、補給を受け続けることで戦闘能力を維持しなければならない共和国軍とでは、その差は大きい。

 

 

共和国軍が長期戦を挑んだ場合でも、ダナム山岳基地を擁する帝国軍の優勢は揺るがないと考えていた。

 

 

 

「司令官殿、敵の侵攻ルート上の友軍拠点はどうします?」

 

 

「当然、全て放棄する。駐留していた部隊は、可能な限り施設と物資を破壊した後、基地に配備された全ゾイドと共に指定の別拠点に移動させる。」

 

 

「閣下、死守命令を出されないのですか?」

 

 

指揮官の一人が尋ねる。彼は、共和国軍の進路上の友軍拠点にダナム山岳基地が防衛準備を整えるまでの時間稼ぎをさせるものだと考えていたのである。

 

 

実際、帝国軍は、共和国軍の大部隊の侵攻に対して小規模拠点に死守命令を出すことで本隊の戦力を整える時間稼ぎを行ったことが何度かあった。

 

 

「地図を見れば分かると思うが、侵攻ルート上の友軍基地は、どれも小規模の基地ばかりだ。この基地を狙う共和国軍の大部隊の前では、例え死守命令を出した所で、殆ど損害を与えることも出来ずに全滅するのが関の山だろう。皇帝陛下から御預した兵士の命を無駄に散らせるわけにはいかんのだよ。」

 

 

「はっ!」

 

「ですが、いきなり撤退させたのでは同士討ちや遭難の危険性もあります。」

 

「当然、この基地から連絡部隊を送る。撤退時の誘導には、連絡部隊だけでなく、空軍にも協力を要請するつもりだ。」

 

「少将!友軍部隊の誘導と護衛の任務、私の部隊にお任せください」

 

高速部隊指揮官 アルベルト・ボウマン中佐がよく響く声で言った。

 

 

山岳地でも高速移動可能なサーベルタイガーとヘルキャットで編成される彼の部隊は、この任務に最適であった。

 

「ボウマン中佐、空軍部隊で十分では?」

 

「シュトルヒやサイカーチスでは、遭難の危険性があります!貴重なこの基地の航空戦力を事故や遭難でむざむざ喪失するわけにはいきません。我々高速部隊でしたら、敵と遭遇した場合でも叩き潰すことも、やり過ごすことも可能です。」

 

「………ボウマン中佐に友軍部隊との連絡任務を命じる。第63、64強行偵察隊にも同様の任務に従事してもらう。」

 

「中将閣下!必ずや閣下のご期待に添える様に部下と共に粉骨砕身の覚悟で参ります!」

 

 

「ボウマン中佐、貴官の部隊の勝利と無事を願っている。」

 

 

 

 

 

――――――――ダナム山岳基地 メインゲート―――――――――――

 

 

 

そこでは、共和国軍の予想侵攻ルート上に存在する友軍基地の部隊の撤退支援に向かうサーベルタイガーやヘルキャット、マーダが発進準備を整えていた。

 

 

 

雪の降り積もる中を整備兵が走り回り、外のトーチカや防衛設備の強化のためにグランドモーラーやシルバーコング等のアタックゾイドが絶えず格納庫から発進していた。

 

 

 

ダナム山岳基地が戦場になろうとしている。

 

 

イルムガルトは、目の前の風景を見てそんな感情を抱いた。

 

 

今彼女がいるのは、メインゲートの前に設営された掩蔽壕の入口。

 

 

入口付近は、白い雪が降り積もっていた。外の防衛設備の強化作業には、アタックゾイドや作業用ゾイドだけでなく、モルガやハンマーロック等の戦闘ゾイドも作業に駆り出されていた。

 

 

ダナム山岳基地全体が似た様な状況だった。

 

 

もうすぐここが、共和国軍と帝国軍の決戦の場になるのかと思うと妙な高揚感が湧き出るのをイルムガルトは、感じた。

 

「イルムガルト大尉、どうした?」

 

 

恩師の声にオレンジ色の髪をした女性士官は、意識を現実に帰還させた。

 

 

「いえ、なんでもありません」

 

 

今彼女は、これから出撃する高速部隊指揮官 ボウマン中佐の見送りに来ていたのであった。

 

 

「そうか。いよいよ決戦だな。イルムガルト大尉、貴官の活躍にも期待しているぞ。」

 

「しかし、連絡任務に中佐が出撃されるとは思いませんでした。この様な任務、何もボウマン中佐自らが行かずとも……高速部隊には、連絡任務に慣れたパイロットが大勢いますのに」

 

ダナム山岳基地の高速部隊の規模を考えれば、高速部隊の指揮官自ら出撃する必要はなかった。

 

 

「部下に重要な役目を押し付ける訳にはいかないからな。指揮官としての務めを果たすだけだ。」

 

そういうとボウマンは、腕時計に目をやる。

 

 

 

「そろそろ、出撃の時間だな。イルムガルト大尉、そろそろ行く」

 

 

ボウマンは、背を向け、サーベルタイガーへと歩んでいく。

 

「……ボウマン中佐」

 

 

イルムガルトは、反射的に彼を呼び止める。

 

「どうしたんだ?」

 

「ご無事で」

 

「分かっているよ。イルムガルト大尉も無事生き延びてくれ」

 

微笑みを返すとボウマンは、愛機のコックピットへと歩いて行った。彼がコックピットに座ると同時に通信機が反応した。

 

通信は、副官機からの物であった。

 

「ボウマン中佐殿、また若い頃みたいに女性相手にもエースを目指すお積りで?」

 

ボウマン中佐の僚機を務めるエミール・マイスナー大尉は、意地悪そうな笑みを浮かべていた。

 

「エミール、冗談はよせ。」

 

長年の戦友の態度にボウマンは、少し狼狽した。

 

「まあ頑張って生き残りましょうや。あの教え子の子の為にも。」

 

「……そうだな。」

 

 

ボウマンは、操縦桿を握り、機体を進ませた。剣歯虎に率いられた猛獣の軍団は、吹雪の中へと突き進んでいく。

 

 

「ボウマン中佐………必ず帰ってきてください。」

 

 

 

メインゲート前の掩蔽壕の入口で、赤銅色の髪の女性士官は、小さくなっていく機影に敬礼した。

 

ボウマン中佐の部隊の姿が消えた後も暫くイルムガルトは、その場に留まっていた。

 

 

 

白雪が降り積もる中央山脈に両軍のゾイドと兵士達の赤い血の雨が降ろうとしていた。

 

 

 

 




次は、共和国軍の象徴的な扱いを受けているあのゾイドが活躍します。
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