ゾイドバトルストーリー 中央山脈の戦い 山岳基地攻防戦   作:ロイ(ゾイダー)

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タカラトミーがゾイドで新展開、みたいな話が出ていますね。
明日35周年の企画の全貌が明らかになるそうですが、本当に期待通りなのか、楽しみです。


第19話 猛虎襲来 前編

 

 

    ZAC2045年 12月25日 中央山脈

 

 

 

 

 

中央山脈北部の険しい道を赤と銀で彩られた猛獣の群れが駆け回っていた。

 

 

アルベルト・ボウマン中佐率いるダナム山岳基地守備隊 第1高速中隊は、敵の予想進軍ルート上に存在している小規模拠点の友軍部隊の撤退支援、連絡、誘導任務に動き回っていた。

 

彼の操縦するサーベルタイガーは、指揮官用に通信機能が強化され、通信アンテナを増設していた。

 

彼が率いるのは、サーベルタイガーとヘルキャットの混成部隊。この2機種は、険しい山道も容易く踏破出来た。

 

その踏破性と機動性によって彼の部隊は、撤退する友軍部隊と接触し、彼らをダナム山岳基地や後方の味方基地へと誘導する連絡任務を果たすことが出来ていた。

 

 

現在、彼らは、雪の降り積もった白く険しい岩場にいた。ボウマンらの視線の先―――――――吹雪によって閉ざされた向こうの山道には、共和国軍部隊が進軍を続けている。

 

 

 

サーベルタイガーとヘルキャットの熱センサーには、ゾイドのモーターやゾイドコアが発する熱で真っ赤になった山道が表示されていた。

 

少なくとも50機はいる、それらのゾイド部隊が、ダナム山岳基地を攻撃する為の部隊である事は明らかだった。

 

 

今の彼らの任務は、付近で撤退中の友軍部隊の撤退支援。友軍部隊は、元々基地守備隊ということだけあって機動性は低く、撤退途中である為、戦力としても低下していた。

 

 

もし共和国軍部隊を放置すれば、撤退中の友軍部隊は、背後から攻撃を受けてまともな反撃も出来ないまま全滅させられる可能性もあった。

 

 

「ボウマン中佐、どうします?いつも通りでいきますか?。新型機も多数います。」

 

 

副官のエミール大尉は、指揮官に尋ねた。

 

友軍の偵察機からの情報で、共和国軍部隊には、新型の中型ゾイドを多数含んでいる事が判明していた。

 

正面から突っ込んだ場合、サーベルタイガーといえど、深手を負う危険性があった。旧式化が著しいヘルキャットなら尚更である。

 

 

ボウマンの部隊は、所属機のヘルキャットに機動性と火器の出力を上げる現地改造を施していたが、新型機の前では焼け石に水である事は、誰もが理解していた。

 

 

「確かにいつも通りの戦術では……こちらの被害も計り知れないだろうな。……だが、今の我々には、航空戦力がある。」

 

 

現在、彼の部隊は、サーベルタイガーとヘルキャット、合わせて12機で編成されていた。

連絡任務の為にダナム山岳基地から出撃した時、ボウマンの指揮下には、自機含めサーベルタイガー4機、ヘルキャット26機があった。

 

それらの機体の内半数は、撤収する友軍の護衛や誘導役としてボウマンの部隊から離れている。ダナム山岳基地を出発してからこの日まで戦闘による損失は1機もなかった。

 

 

だが、12機で50機の敵部隊に突っ込めば、少なくない被害は免れない。その事をボウマンも、部下も理解していた。しかし、ボウマンには秘策があった。

 

 

更に今の彼らには、ダナム山岳基地を出発した時と違い、翼を持つ戦友がいた。

彼らの頭上を守るのは、第45空中騎兵中隊である。

 

3日前に放棄された第49基地守備隊に所属していたこの部隊は、サイカーチス8機で編成されていた。山道を進撃する共和国軍部隊を発見したのも、彼らの部隊であった。

 

 

「ボジェク中尉、調子はどうだ?」

 

「ボウマン中佐、万全ですよ。」

 

指揮官機のサイカーチスに乗る中年の士官 ボジェク中尉は、右手の親指を立てて自信ありげに言った。

 

虫族の出身である彼は、浅黒い肌に短く刈った銀髪が特徴的だった。

虫族は、その名が示す通り、昆虫型ゾイドの扱いに長けた民族である。

 

ボジェク中尉は、その中でも優れたサイカーチスパイロットであった。

 

同時に彼は、サイカーチス部隊を率いる指揮官としても新しい戦法を編み出す等、優秀であった。

 

部下達もこの中央山脈北部の吹雪の中でもサイカーチスを危なげなく飛ばせるベテランパイロットだった。

 

 

「中尉、敵の地上部隊に奇襲攻撃を仕掛ける事は可能か?」ボウマンは単刀直入に質問する。

 

 

「中佐!この吹雪で、敵を正確に攻撃するのは不可能ですよ。それにあの規模の部隊に接近戦となると、サイカーチス部隊が対空射撃の犠牲になる危険性も……いささか無謀すぎるのでは?」

 

副官のエミール・マイスナー大尉は、サイカーチスによる地上攻撃がそれほど戦果を挙げられるとは思わなかった。

 

サイカーチスの地上攻撃は、共和国軍に多大な被害を齎し、一時期は共和国兵にサイカーチスのマグネッサーシステムの駆動音が死神の羽音とまで恐れられる程であった。

 

しかし、対空火器が発達したZAC2045年現在では、むしろサイカーチスは、狩人から獲物へと変化しつつあった。

 

 

エミール自身、友軍の航空支援のサイカーチスが共和国軍の対空砲火に次々と撃墜されるのを目撃していた。

 

 

「ご安心ください大尉殿、我々の部隊には、秘策があります。」

 

「……秘策とはあれか中尉」

 

「はい、以前ボウマン中佐殿にお話した……あの戦法です。」

 

「敵の追撃隊が現れたら……所定の位置におびき寄せてくれ」

 

 

「了解しました。中佐殿、連中をなるべく痛い目にあわせてやります」

 

 

第45空中騎兵中隊のサイカーチス8機は、吹雪にまぎれる様に低空飛行で山道を進撃する共和国軍部隊へと向かっていった。

 

 

共和国軍部隊から離れた位置で8機のサイカーチスは、空中に待機した。それぞれ間隔を取ったサイカーチスの編隊の中央にいるのが、指揮官であるボジェクの操縦する機体である。

 

 

ボジェクのサイカーチスが射撃を行えば、部下の機体も射撃を行う。

 

 

「第1射は、俺が送るデータ通りの位置に射撃しろ。以降はお前らの技量でやれ」

 

「了解」

 

「了解」

 

「了解」

 

「了解」

 

ボジェクは、熱センサーに目を凝らした。

 

熱センサーに表示された風景には、共和国軍のゾイド部隊が発する高熱で真っ赤に染まった山道と、吹雪によって冷やされた周辺が見事なコントラストを形成していた。

 

 

「……そこだ!」

 

ボジェクは、長射程ビーム砲の発射ボタンを押した。

 

 

指揮官機のサイカーチスの角の先端に装備された長射程ビーム砲が赤く光った。

 

部下の機体も長射程ビーム砲を発射した。ボジェクの機体が放ったビームは、並んでいたゴドス2機の頭部を同時に撃ち抜いた。

 

ビームを受けたゴドスが、頭部コックピットを撃ち抜かれて崩れ落ちる。

 

 

胴体をに被弾したガイサックが炎上する。

 

 

ベアファイターの胴体に数発のビームが命中する。

 

ガイサックやゴドスと異なり、重装甲のベアファイターは、その攻撃に耐え切った。

 

 

カノントータスも同様に装甲でビームを耐え凌いだ。それでも次々と浴びせられるビームに共和国軍部隊は損害を重ねていった。

 

 

「奇襲攻撃!」

 

「どこからだ!」

 

「飛行ゾイドによる攻撃か?!」

 

共和国軍は、電磁キャノンやロングレンジガンで応戦するが、低空をホバリングして移動するサイカーチスには命中しなかった。

 

サイカーチス8機は、それぞれビームを発射した後、機体を移動させていた。

 

 

同じ位置でビームを撃ち続けるのは、相手に自らの位置を露呈させることに繋がることをこの部隊の隊員達は認識していた。

 

 

更にボジェクは、麾下の機体が互いに激突しない様に位置関係も注意していた。

 

 

 

1機のベアファイターが立ち上がり、胴体下部に内蔵された6連装ミサイルポッドを吹雪の向こうに発射しようとする。だが、それが命取りとなった。

 

 

「そこだ!」

 

 

二足歩行形態になったベアファイターの弱点をボジェクは知っていた。照準を合わせ、彼は長射程ビーム砲の引き金を引いた。

 

 

ベアファイターの6連装ミサイルポッドの発射口に吸いこまれる。

 

 

直後、発射寸前だったミサイルが誘爆したベアファイターの胴体は内側から沸き起こった爆発に引き裂かれた。

重装甲に身を包んだベアファイターも弾薬が誘爆してしまっては打つ手は無かった。

 

 

 

「よし!」

 

 

吹雪の向こうで獲物の熱源が一際明るく輝き、砕けるのを見たボジェクは、笑みを浮かべる。

 

 

吹雪の中、熱センサーとゾイド本来の感覚だけを頼りに敵の種類を探り当て、その動きから弱点を察知、狙撃する――――――――ボジェクの射撃技量の高さが窺えた。

 

 

「遠距離からの砲撃………これが相棒の………サイカーチスの持ち味だ。」

 

混乱する共和国軍を尻目にビームを撃ち込みながら、ボジェクは呟いた。

 

 

彼の部隊のサイカーチスは、胴体から伸びた長射程ビーム砲を利用した狙撃で共和国軍部隊を攻撃したのである。

 

 

これは、従来のサイカーチス部隊の戦術からはかけ離れた、珍しいものであった。

 

 

従来のサイカーチスによる地上攻撃戦術は、接近しての機銃掃射(サイカーチスの内、B型、C型と呼ばれている派生型は、胴体側面の加速ビーム砲の代わりに地上攻撃用のガンポッドを搭載していた。)やビーム砲による掃射であった。

 

 

この戦術は、命中率も高くサイカーチスが投入された序盤の戦闘では、共和国陸軍の対空射撃が疎らだった事や地上の友軍メカとの連携で高い戦果を挙げた。

 

 

しかし、この戦法は、敵の対空射撃を食らい易く、犠牲も大きかった。

 

 

特に共和国側の対空火器が発達し始めるとその被害は拡大し、ZAC2045年、現在では自殺行為に近い戦法だった。

 

 

その為、ボジェク中尉は、自部隊の攻撃方法を従来のサイカーチス部隊が用いている機銃掃射ではなく、長距離から機首の長射程ビーム砲による砲撃に切り替えていた。

 

 

この戦術は、敵機との距離を取れる為、敵の対空砲火を受けるリスクも少ない安全な戦法だった。しかし、この戦術は、必然的に命中率の低下のリスクを抱えると同時に高いパイロットの技量を必要としていた。

 

 

 

雪煙が視界を閉ざし、不確かな熱センサーの像だけが頼りの状態―――――――――この悪条件でボジェクらはいかにして敵機を正確に狙撃しているのか。

 

 

それには、昆虫型ゾイドの特性があった。サイカーチスを始めとする昆虫型ゾイドは、このゾイド星(惑星Zi)の生態系において被捕食者に位置する系統のゾイドである。

 

 

その為多くの捕食者に襲われる存在である。

 

 

昆虫型ゾイドも捕食者に唯獲物とされるだけではなく、進化によって対抗策を編み出していた。モルガやスパイカーの様に多数の子供を産む事もその一つであるといえる。

 

 

そしてサイカーチスやダブルソーダといった甲虫型ゾイドが編み出したのは、感覚器官を強化する事でいち早く捕食者を発見する事だった。

 

 

この生きたレーダーともいうべき能力によって、これらの種族は、この惑星に知的生命体が誕生するまでの今日に至るまで、捕食者に食いつくされる事無く生き延びてきたのである。

 

 

 

そして、昆虫型ゾイドとの同調性に優れた少数民族 虫族の特殊能力は、それを最大限に引き出すことが出来た。

 

 

 

第45空中騎兵中隊の部隊指揮官のボジェク中尉は、この能力と熱センサーを併用する事でこの悪条件下でも正確な遠距離射撃を可能にしたのである。

 

 

部下のサイカーチスもボジェクの搭乗するサイカーチスから送信されるデータと訓練によって正確な射撃を可能としていた。

 

 

 

この戦法は、ボジェク中尉の虫族の能力と優れたゾイド乗りである彼と彼の部下達の能力が合わさってこそできる神業といえた。

 

 

だが、この運用は、サイカーチスが開発された当初に設計者達が理想とした運用であった。当初、サイカーチスは、友軍を後方から長射程ビーム砲で援護する空飛ぶ自走砲として開発されたゾイドであった。

 

 

サイカーチスのコックピットが防弾キャノピーのみで、帝国軍小型ゾイド共通の装甲式コックピットではないのは、速度の低下と空力特性の問題だけでなく、支援用のゾイドとして設計された為という理由もあった。

 

 

 

空中自走砲として開発されたサイカーチスであったが、前線に配備された時、前線の帝国軍兵士達は、設計者の狙いとは反対に運用した。

 

 

彼らは、サイカーチスを空中自走砲としてではなく、地上攻撃機として運用したのである。

 

 

当時、共和国軍は、共和国空軍が優位であったこともあって対空火器をあまり配備していなかった。その為、サイカーチスの機銃掃射が戦果を挙げる事が出来たのである。

 

 

また帝国軍もサイカーチスの脆弱さは理解していた事もあり、対空ゾイドを最優先で撃破し、サイカーチスが撃墜される事を防いだ。

 

サイカーチスによる近接航空支援に味をしめた前線の帝国軍部隊の指揮官達は、サイカーチスを近接航空支援に運用する様になった。

 

 

 

こうしてサイカーチスは、設計者達が構想した〝空飛ぶ自走砲〟としてではなく、〝対地攻撃機〟として前線部隊において使用される事が多くなったのである。

 

 

それとは反対の運用法である、今回の第45空中騎兵中隊の戦法は、遠距離から一方的に敵を砲撃する――――――空中自走砲として開発されたサイカーチスの面目躍如と言えた。

 

 

 

「そろそろ潮時か……」

 

 

 

遠距離から撃ち込まれるビーム砲射撃に混乱する共和国軍部隊を見つめ、ボジェクは呟いた。

 

 

彼は、騒がしく動く敵機の熱源の向こうで変化が起こっている事を感じ取っていた。

 

 

 

愛機の感覚を利用したそれは、文字通りの〝虫の知らせ〟と言えるかもしれない。

 

 

「新しい敵機か?」

 

 

「ダブルソーダです!後ろの空域で待機していたみたいです!」

 

 

部下の機体のセンサーが低空を飛ぶ青い機影を発見した。ダブルソーダは、サイカーチスに対抗して共和国が開発したクワガタ型対地攻撃ゾイドである。

 

 

 

「ボジェク隊長!どうします?」

 

 

「撤退だ!ダブルソーダが現れたんじゃ俺達に勝ち目はない!」

 

 

火力と最高速度で勝るダブルソーダをサイカーチスで相手にするのは、無謀だった。

 

 

8機のサイカーチスは、上空でホバリング状態で反転すると、退却を開始した。サイカーチスの機体後部から雪煙に似た色合いの煙幕が噴出した。

 

 

 

煙幕を展開しつつサイカーチス隊は、打撃を与えた共和国軍部隊の混乱を尻目に撤退を開始した。

 

 

しかし彼らを逃がす程、共和国軍はお人よしではない。

 

 

直ちに指揮官は、無事な部隊を抽出し、追撃部隊を編成し、サイカーチス部隊を捕捉、撃滅する事を決断した。

 

 

「逃がすな。サイカーチスを追撃しろ!」

 

 

指揮官の命令を受け、アロザウラー4機、ダブルソーダ6機が部隊から離れ、サイカーチスを追撃した。

 

 

ゴドスに変わる主力歩兵ゾイドであるアロザウラーは、前世代機のゴドスがサイカーチスの上空からの攻撃で打撃を受けた戦訓から、地上目標も攻撃可能な対空機銃を装備している。

 

 

クワガタ型小型ゾイド ダブルソーダは、サイカーチスに対抗して開発されたゾイドで、最高速度、装甲、火力、格闘戦能力でサイカーチスに優越している。

 

 

両機とも、サイカーチスを追跡するのに最適なゾイドである。

 

 

2つの部隊は、全速力でサイカーチス部隊を追撃した。やがて、彼らは、サイカーチス部隊を各機の装備火器の射程距離に捉えた。

 

 

ダブルソーダが低空を逃げるサイカーチスに照準を合わせる。アロザウラーの対空機銃の銃口が、低空を這う様に飛ぶ敵影を捉える。

 

 

「逃がすか……」

 

 

先頭を走るアロザウラーのパイロットは、照星の中心に捉えたサイカーチスの胴体を睨み据え、呟いた。後は引き金を引くだけ。

 

 

その作業だけで彼は、撃墜スコアを1つ増やす事が、仲間を一方的に攻撃した敵を葬る事が出来る。

 

 

だが、彼のアロザウラーの対空機銃が発射されることは無かった。

 

 

 

次の瞬間、突如飛び出した赤い機影が、アロザウラーに襲い掛かったからである。先頭を走っていたアロザウラーが弾き飛ばされ、岩壁に叩き付けられる。

 

 

「何!ぐわぁっ!」

 

 

アロザウラーは体勢を立て直そうとしたが、目の前に現れた敵機にコックピットを叩き潰されて動きを止めた。

 

「アレン!」

 

僚機が撃破された事にアロザウラーのパイロットの1人は狼狽した。

 

 

間髪入れずダブルソーダが胴体をビームに撃ち抜かれて墜落する。

 

「新手か!?」

 

 

「サーベルタイガー!」

 

追撃隊の目の前に現れたのは、サーベルタイガーとヘルキャットで編成された高速部隊だった。

 

 

「あのサイカーチスは、俺達をおびき寄せる為の囮だったのか?!」

 

 

目の前に現れた敵機に追撃部隊の指揮官は、自分達が狩人ではなく、餌におびき寄せられた獲物に過ぎなかった事に気付いた。

 

 

「全機攻撃開始!一匹も逃すな!」

 

 

中隊指揮官のボウマン中佐の命令一過 10機以上のサーベルタイガーとヘルキャットが一斉に散開し、追撃部隊のアロザウラーとダブルソーダに襲い掛かった。

 

 

追撃部隊のアロザウラー2機は、対空機銃と火炎放射器で弾幕を張る。

 

 

低空をホバリングしていたダブルソーダ5機も背中の対空ビーム砲と顎の4連対空機銃を連射した。

 

 

だが、サーベルタイガーとヘルキャットにはまるで当たらない。

 

 

「こいつ!当たれ!」

 

 

頭部に通信アンテナを追加装備した指揮官機のアロザウラーは、対空機銃を乱射する。

 

 

 

ボウマンのサーベルタイガーは、攻撃を回避し、ダブルソーダ2機を2連ビーム砲で撃墜する。どちらもコックピットを正確に撃ち抜かれていた。

 

 

「化け物が!」

 

アロザウラーは、両腕に内蔵した火炎放射器を発射した。

 

 

炎の渦がサーベルタイガーに襲い掛かる。オレンジ色の炎がサーベルタイガーの赤いボディを焼く寸前にサーベルタイガーは既に跳躍していた。

 

 

アロザウラーは、反転し逃げ出そうとした。だが、サーベルタイガーは、アロザウラーの首筋をレーザーサーベルで切り裂いていた。

 

首を切断されたアロザウラーは、地面に力なく崩れ落ちた。

 

 

切り裂かれた頭部は、宙を舞った後、地面に激突して大破した。パイロットは生きているとしても重傷は免れないだろう……。

 

「これが新型か……装甲も武装もゴドスより強化されてるな。お前ら気を付けろよ!」

 

 

「了解!」

 

 

「了解です!」

 

 

 

撃破したばかりの白い肉食恐竜型ゾイドを見つめ、ボウマンは呟いた。

 

 

ゴドスよりも重装甲で機動力に優れ、火力も増強された機体が配備されれば、これまで以上に共和国軍の歩兵部隊は強化されるだろう。

 

 

そうなれば、未だにイグアンとハンマーロックが主力の帝国軍歩兵部隊は更に苦戦を強いられるのは確実だった。

 

 

それは、ボウマンが所属する高速部隊にとっても他人事ではない。

 

 

アロザウラーが大量配備された共和国軍部隊を突き崩すのは、サーベルタイガーと旧式化が著しいヘルキャットだけでは、攻撃力が不足する日が来るのは容易に想像できた。

 

「一刻も早く……新型機が必要だな」

 

 

彼は、ヘルキャットの後継機とサーベルタイガーの強化型が開発されるまでの間、従来機で戦うしかない事を知っていた。

 

 

最後の1機となったアロザウラーにヘルキャットが3機襲い掛かる。

 

 

3機は背部に装備したレーザー機銃と2連装高速キャノンを連射、集中攻撃を浴びせる。ゴドスならとっくに爆発炎上している攻撃だったが、アロザウラーの重装甲はそれに耐え抜いていた。

 

アロザウラーは、対空機銃と火炎放射器を振り回してヘルキャット3機を牽制する。1機のヘルキャットが背後に回り込む。

 

 

アロザウラーは、背後に回り込んだヘルキャットを排除するべく、強くしなる尻尾を、スマッシュアップテイルを振り回す。

 

 

そのヘルキャットは、スマッシュアップテイルを回避すると、背部に銃撃を浴びせた。左側の対空機銃が破壊される。

 

 

「小癪な……くっ!」

 

 

アロザウラーのパイロットは、背後の敵に攻撃を仕掛けようとするが、残りの2機が集中攻撃を浴びせる為、1機を相手にすることは出来なかった。

 

今度はアロザウラーの左脚部が破壊された。

 

 

「止めだ。」

 

背後にいたヘルキャットが、同時に頭部に高速キャノン砲を叩き込んだ。頭部コックピットを撃ち抜かれ、アロザウラーは動きを止めた。

 

 

そのヘルキャットにダブルソーダが機銃掃射を仕掛ける。

 

 

ヘルキャットは、攻撃を回避し、他の2機と共に高速キャノン砲で対空射撃を浴びせる。ダブルソーダは、集中攻撃を胴体に食らって爆散した。

 

 

エミールのサーベルタイガーが最後のアロザウラーを叩き伏せ、ストライククローでコックピットを叩き潰す。

 

 

 

1機のダブルソーダが上空から機銃掃射を浴びせる。ヘルキャットは、その攻撃を回避すると敵機の胴体下部を高速キャノン砲で狙い撃つ。

 

 

胴体に被弾したダブルソーダは、その場に不時着を余儀なくされた。

 

 

ヘルキャットの左前脚がダブルソーダの頭部に叩き付けられ、ヘルキャットの爪の一撃がダブルソーダのコックピットを粉砕した。

 

 

「逃がすか!」

 

 

最後に残ったダブルソーダは、本隊と合流しようとしたが、エミールのサーベルタイガーのレーザー機銃を胴体下部に受けて墜落した。

 

 

5分も経たぬ内に10機の共和国ゾイドで編成された部隊は、壊滅した。

 


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